およそ5000キロ。それが、ロマリアからアッサラームまでの距離だ。
アリアハンをおよそ1年かけて一周した旅ですら4000キロなのだから、これは尋常なことではない。
とはいえ、ルナリア曰く事情が異なるらしい。
「アリアハンは多くの部分が未開拓地でした。徒歩での移動を強いられる場所も多く、冬を跨いだことも遅滞の一因でしょう。そもそも当時の私達は旅に慣れていませんでした」
一度ロマリアに戻った俺達。
ロマリア王に適当に言って部屋を借り、集まって今後の情報をまとめる。
3人で頭を寄せ合って、世界地図とにらめっこである。
「そう言われると、確かに悪条件が揃っていたな……」
「この旅だとなんか違うのかよ」
そもそも俺達のアリアハンの旅を知らないエイダちゃんが訊ねる。
そういえば、これが彼にとって始めての本格的な長距離旅なのかもしれない。
「アッサラームという国は私も本の知識でしか知りませんが……大陸の繋ぎ目ということもあり、四方に向けて貿易がかなり盛んなようです」
どうにも特徴が曖昧で、アッサラームという町が地球におけるどこなのかははっきりしない。
トルコ、バグダット、エルサレム……このへんだろうか?
どれにしたって、大陸の繋ぎ目であり交通の要所。
「過去何百年にも渡って、アッサラームを中心に貿易網が構築されてきました。それはロマリアとアッサラームを繋ぐ道も同様です。南方の調度品がロマリアで手に入るように、ここにはそれなりのコンスタントな物流があります」
「超長距離とはいえ、既に充分なノウハウがあるってことか」
「はい。経験豊かな商隊に護衛として雇われることが出来れば、おそらく半年以内に到着するでしょう」
今は7月だから、半年後の到着はほぼ真冬か。
とはいえアッサラームは相当に南方。ここまで南に行くとなると、冬なんてものは消滅する。
地球の場合、あのへんの国独自の言語には「冬」に該当する単語がそもそも存在しない場合だって多いのだ。
ヨーロッパ各国に植民地にされたことで、言語がぐちゃぐちゃになってるけど。
「このプランだと、3人で身を寄せ合って冬の寒さを凌ぐことはなさそうだな」
エイダちゃんがテントを拡張工事してしまったので、あのいい感じの狭さは既に失われている。
「そんなこと、アリアハンの冬越えでもやってはいませんが……」
「お前一人で震えてろよ」
ルナリアとエイダちゃんがゲジゲジを見るような目で俺を見ている。
なんてことだ、今からでも魔法のストーブを破壊しなければ。
いやちょっと待て、エイダちゃんはなんでそっち側なんだ。戻ってきなさい。