「すいません、この船……船? に乗りたいのですが」
悠久たる大河を見据える、砂漠への旅立ちの町。郊外の砂丘には、幾つかの砂船が鎮座している。
砂船の出港? 準備をする船員? に声をかける。
「あー、はい。あの店で受付をしているので、確認を取ってもらえますか?」
砂対策なのか、暑そうな厚着を着込んだ船員はそういって近くの店舗の一つを指差した。
土壁の店に入ると、そこは小さな雑貨屋のような店舗になっている。
「ん? 店? あの、ここって船の受付ですよね?」
「ああそうだよ。物を売ってるのは、ここから先はろくに店も町もないからさ」
受付のお婆さんは、俺が言いたいことを察して教えてくれた。
ここで物資の補給を忘れたら、もうあとはない、ということらしい。
「お前さん、砂船は初めてかい?」
「はい。仲間に1人経験者はいますけど」
アミーラちゃんは乗ったことがあるらしい。
経歴がよく判らない子である。
「そんじゃあ料金は……」
「あ、そうだ。これ」
カリーム氏に渡された手紙をお婆さんに渡す。
お婆さんは手慣れた様子で封蝋と割り印をチェックし、ハンコや奇妙なペーパーナイフなどを使って何やら手順を踏んでから手紙を取り出した。
偽造防止などの為の規則なのだろう。
「あの坊主の紹介か。へえ、あんたら何者だい?」
「なんて書いてあるんです?」
「一等客室をあいつ持ちで使わせろとさ。このご時世でこれだけ投資するんだ、只者じゃあるまいよ」
あの小さな船? の一等客室なんてたかが知れてそうだけど、なんにせよ高額なのは間違いないだろう。
あのおっさん、俺になにを期待してるんだか。
「この手紙を持って『アルマリカ』って書かれた船に乗りな。ああ、一度乗ったら簡単には降りられないからね。ちゃんと準備を整えてから乗るんだよ」
「わかりました」
まるでボス戦前の忠告である。
RPGみたいだ。
RPGだったわ。
「足りない物はここで買っておきな。別に不当に高いってわけじゃないからさ」
そう言いつつも、店の品揃えは妙に高い。
不当じゃないけど正当に高いということだろうか。
「おいこれ見ろよっ」
ガザルが何やら興奮した様子で商品を見ていた。
それはアラビアンナイトな感じの女性用の衣装であった。
「これルナリアに着せようぜ!」
「お前どんだけ欲望に忠実なんだよ」
アミーラの踊り子衣装を露出度多めにした感じだけど、こんなの外で着ている人なんて見たことがない。
たぶん現地でも一般的とは言い難い、ネタ系の衣装なのだろう。
このエロ衣装に対して実際のところルナリアはどんな反応を示しているかというと、別段怒るということもなく。
「すいません、一等客室というのは男女別室ですか?」
「そのへんは客が決めることさね。けど部屋は二人部屋であんたらは男女で2人ずつみたいだから、男女別でいいんじゃないかい?」
「なるほど。では部屋着として購入しましょう、砂漠は噂通りに暑そうですから」
あっさりと買っていた。
部屋着にすると断言するあたり、俺達男組に見せる気はさらさらなさそうだ。
俺は魔法の袋に入っていたルナリアの法衣をこっそりお婆さんに売却した。
なお裏切るのは主人公とする