砂船は巨大だ。
そして、砂漠に住まう魔物はその砂船に匹敵する巨体であった。
現地において地獄の鋏と呼ばれるカニ型の魔物。ゲーム中においても強敵だったが、その理由を直面して俺達は理解した。
でっかい。
建物のように巨大なカニが、砂漠を爆走しているのだ。
そんなものに襲撃されるならば、そりゃあゲームでも強敵なわけだ。
「奴には物理攻撃は効かない! 魔法を使える奴は攻撃し続けろ!」
対処に慣れているらしい船員が叫ぶ。
甲板にいた者達は各々に武器を構え、魔法を放とうとして―――
「やっ!」
ジャンプで肉薄したルナリアが、杖による殴打の一撃で硬い甲羅を粉砕した。
華麗なアラビアン衣装で宙を舞い、一撃で強敵を撃破する姿はまさに英雄。
彼女はカニの巨体を蹴り、再び船に戻ってくる。
杖を構え、やがてカニが沈黙しているのを確認して警戒を解いた。
「う、うおおおっっ!」
「すげえ! すげーぞ聖女様!」
「やべえ! 可愛いのに強い!」
船員も乗客達も大興奮だ。
美しく可憐な美少女が戦う姿に、伝説を見ない者はいない。
彼らはそこに、確かに英雄を感じ取ったのだ。
「…………。」
俺、勇者だよな?
主人公交代のお知らせ。
というか、なんか同じ裏技を使ったはずなのに、ルナリアの方が強いんだよな。
これだからこの裏技を使いたくなかったのだ。
バグ技だから、なにが起こるかわからない。
結果から言えば、俺は強くなった。
そして、それ以上にルナリアが超強化されてしまった。
どうなってんだこれ。これじゃあ本当に俺がおまけで、聖女ルナリアが主人公だぜ。
「こういう意味不明な副作用が起こるから、出来ればこの裏技は使いたくなかったんだ」
俺はニヒルな笑みとともに呟いた。
自分の声が震えていた。
「勇者様、この力があればきっと魔王を倒せます。きっとこの力は神の思し召しでしょう」
そう言って聖印を切るルナリア。
「きみ、割と都合のいいときだけ信心深くなるよね」
俺のツッコミを無視して、彼女は微笑んでいる。
最近思うんだけど、ルナリアは聖女というより魔女かもしれない。
「神父の父がよく言ってました。良いことがあれば神の祝福、悪いことがあれば神の試練ということにしておけと」
「ひでー神学もあったもんだ」
「悪事を働く時は明白なる天命と言い張れ、とも言っていました」
「マニュフェストディスティニー!?」
俺は思う。
邪神ってこうやって生まれるんだろうな。
現在のレベル
アルス レベル99
アミーラ レベル99
ルナリア レベル198
ルナリアはレベルカンスト化がなぜか2回発生したので、ほぼステータスマックスでカンスト状態です。
アルスもレベルマックスで異常なステータスになりましたが、ルナリアは更に頭一つ飛び抜けてトチ狂った数字になりました。
勇者(笑)