イシスは政治や文化はさておいてとしても、立地からして特殊な国家だ。
オアシス周辺が砂漠である以上は土地を切り開いて人口を増やす事もできず、生活範囲は水場の周囲に限定されている。
まるで魔物と砂に囲まれた土地に、忽然と現れた箱庭のような国なのだ。
オアシスの大きさは……だいたい琵琶湖くらいだろうか。一周できなくもないけど、しようと思えばそれなりに気合をいれるくらいの広さ……といった感覚だ。
これほどの水場となれば、漁業もするし農業もする。人が水場で行う営みはだいたいなんでもする。
日本人が母なる海とか言うように、イシスの人々はオアシスを自らの原点だと考えているのかもしれない。
「ここは……臨海公園か。いや湖畔公園か」
町を歩いていると、俺はオアシスを望む公園のような場所に辿り着いた。
綺麗に石畳が敷かれ、治水整備された公園。
人々は散歩したり水遊びをしたり、思い思いに過ごしている。
「過酷な土地柄の割に、生活に余裕はあるんだな」
それだけオアシスの恩恵は大きいということなんだろう。
人々はオアシスと密接に寄り添った生活を歩んでいる。
俺はここで情報収集をしてみることにした。
「すいません、旅の者なのですがちょっと訊いてもいいですか?」
「はい。いいですよ」
最初に話しかけたのは、普通に見える男性。
ぼんやりと水面を眺める姿は……昼間っから何やってんだこの人。ニート?
「私は旅行記を執筆しておりまして、今はこの国の北部にある王家の墓について調べているのです。なにかしらご存知ではありませんか?」
「……すいません、そういうことはお答えできません」
あらら、しっかりしてらっしゃる。
「そうですか、こちらこそすいません。ところで貴方は何をしてるんですか?」
「こうして夜になるのを待っています。でも、夜になるとなぜか朝が待ち遠しくなってしまうのです」
なるほど、あれだな。
哲学的で知的な会話がしたいんだな。おっけー付き合ってやんよ。
「わかります。アイスを食べるとポテチが欲しくなるし、ポテチを食べてるとアイスが欲しくなりますよね」
「……そうですね」
男性に同調してみせると、彼はなんとも言えない顔をした。
なんすか。俺も哲学トークしてやったっていうのに文句あるんすか。
こういう高尚で小難しいトークがしたいんだろ? わかるわかる、俺も中学生時代はそんなんだった。
「俺が月を見ていないとき、月は空にあるのだろうか……」
「ちょっと面白いこと言って興味引くのやめて欲しいのですけど」
確か粒子力学とかの思考実験の話だったっけ。俺が提示した月が認識されていない時に存在するのかという疑念に、男性はちょっと興味を示したようだった。
あけましておめでとうございます。
と言いたいところですが、新年早々におめでたくない事態となってしまいました。
私の住む場所は内陸なので影響はありません。無事です。
避難されている方は朝方の冷え込みに気をつけてください。寒さは本当に危険です。