一度宿に戻り、俺達は聞き込みの成果を擦り合わせることにした。
市中での情報収集では、成果らしい成果は出なかった。
「やっぱ駄目だったか。童歌なんだから、市井で伝わっていても不思議じゃないと思ったんだけど」
「……やっぱ?」
ルナリアが俺の言葉の問題点を的確に見破った。
しどろもどろに俺は弁明する。
「いや、その、ちゃうねん」
「怒らないので、なにが「やっぱ」なのか教えてください」
「……俺の知識だと、童歌は王城の中で伝わっていた」
仲間達の責めるような視線が俺に集まった。
怒らないって約束を3秒で破らないでほしい。
「しょうがないだろ、俺あの王城に入りたくないし」
「それは……そうかもしれませんが」
ルナリアは意外なことに、俺のわがままに同意した。
「あのお城……といいますか、この国は……どこか歪です。社会制度云々というより、根底から何かがおかしい」
「ルナリアにしてはふわっとした意見だな。俺も似たものは感じてるけど」
理路整然としている彼女としては感覚的な話だ。
いや、それだけしっかりと違和感の要因も取り繕っているということか。
ダークマター的な違和感だ。違和感はあるけど辻褄は合っているから、ルナリアみたいな頭でっかちだとかえって混乱してしまうのかもしれない。
「ならよ、なおさら城に乗り込んで調べるべきじゃねえか? 国がおかしいっていうなら国の中枢を調べるべきだ」
「ガゼル、何言ってるんだ?」
俺は呆れた顔でガゼルに訂正を告げる。
「俺達は英雄じゃないんだ。どれだけ国がおかしかったって、それを是正するようなヒーローじゃないんだよ」
「いや勇者だろ。勇者だよな?」
「だって誰も俺のこと勇者って認めてくれないんだもん」
「もん、ってお前な」
なんかガゼルが常識人っぽいポジションからマウントとってくる。
だが間違えないでほしい。怪しい居城に近付かないどこう、って俺の判断の方が世間的には常識的だ。
「むしろスポンサーとしては小金しかくれなかったアリアハンより、色々免除してくれて高級宿とってくれたイシスの方が上客だ。裏で何かやっていたとしても半笑いで見て見ぬ振りをするのが人情ってもんだろう」
「王家の墓を墓荒らししようって奴が何言ってんだ」
古代の王様だって、自分の死後の栄達より現代に生きる人々の安亭を良しとしてくれるだろうさ。
なあ、そうだろ―――ファラオ。
俺は会ったこともないこの国の太古の王に語りかける。
「…………。」
続いて意思表明をしたのはアミーラちゃん。
彼女は無言でオアシスの……正しくは城の方を指差す。
「…………。」
「はい、行きます。行かせていただきます……」
俺は無言の圧力に負けた。