灼熱の太陽は沈み、夜の帳が降りた頃。
明るい月光の下、俺達はコソコソとイシスの王城、その塀の外を歩いていた。
「どっかに侵入経路があればいいが……」
「いつから俺達は盗賊団になったんだ?」
俺の呟きにガゼルがツッコんできた。
「やれやれ……いい加減勇者に幻想を抱くのはやめろガゼル。俺達は所詮、魔王軍という勢力に少数で入り込む暗殺部隊だ。それが勇者という言葉で装飾された精鋭部隊の本質なんだ」
「貴方様、この壁に埋め込まれた宝石は高く売れそうです」
「でかしたルナリア! 持ってけ持ってけ!」
「おい精鋭部隊が窃盗するな」
ルナリアが城の壁に刻まれた宝石を作業用ナイフで外して懐に入れる。
この聖女、盗みに躊躇いがない。
ガゼルが「お前もか」みたいな目をルナリアに向けていた。
「そんな目で見ないで下さいませ。少なくとも私は節制を心掛けておりますし、この宝石で助けられる者がいれば活用することを躊躇うつもりはありません。彼の言葉を借りるならば、「祈らず行動を起こした者こそ、奇跡を成し遂げる」ということです」
「ルナリア嬢、あんたこの自称勇者に悪い影響を受けてないか?」
「そんなことは……いえ、ないとは言い切れませんが」
ルナリアは出会った当初からハングリー精神旺盛な女だったが、この2年の付き合いで俺に影響されていないとは言い切れない。
「夫婦が一緒に暮らしているうちに似てくるように、俺達も互いに影響を受けているんだろう」
「貴方様も、私の影響を受けているのですか?」
「受けているとも。この宝石が手に入ったのは神の思し召しだろう。神様サンキュー」
「…………。」
おっと、アミーラちゃんの冷たい視線が強くなってきた。
そんな印象はなかったが、ひょっとしたら彼女は意外と信心深いのかもしれない。
いやそれはないか。商人なんて信仰心とは最も程遠い人種だ。人の心なんてあったら商人なんて出来ない。
なんて考えていると、ズゴゴゴと壁がせり下がっていき通路が現れた。
「……宝石を外したのがロックの解除だったのか? ふっ、俺の読み通りだな」
「セリフの前後で矛盾しているのですが」
俺達は顔を見合わせ、そして俺に注目が集まる。
どうやらここはパーティーリーダーたる俺に一任してくれるらしい。
俺は作戦を提案する。
「一番防御力が高いルナリアを先頭にして、この通路に突入を」
「貴方様……」
ルナリアがあまりにも残念な者を見る目で見てきた。
「ここは男児たる俺の役割だな、女の子を盾になんかしないさ」
俺は武器を天に掲げ、勇ましく宣言した。
「行くぞ我が戦友達! 俺に続けぇー!」
なお掲げているのはブーメランである。