ドラクエ3リプレイ   作:蛍蛍

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勇者の城

 

 

 続いた。

 

「ははは。久しぶりであるな、勇者よ」

 

「セリフがちょっと変わってる」

 

 色々と予想しちゃった読者さんに謝れ。

 

 

 

 

 

 

 朝食を食べてさっさと就寝しようとしていた俺。そこに訪ねてきたのは知り合いの男であった。

 なんで彼がここにいるかはさておいて、偉い人なのでちゃんと挨拶はする。

 

「ロマリア王、お久しぶりです」

 

「うむ、久しぶりだな。勇者はちゃんと勇者をしておるか?」

 

「そりゃあもう、超勇者でした」

 

「であるか。その割に、盗賊の討伐はしないまま旅立ったようだが」

 

 おっと、この人平静な顔で怒ってる。

 俺がカンダタ討伐の依頼をブッチしたのがそんなに悪いのか。

 約束を破るのは問答無用で悪いことだな。

 

「違うのです。実はあの時、神からのお告げがあったのです。南部に強大な魔族の気配があると」

 

 言い訳に便利過ぎるだろ、神のお告げ。

 そりゃ地球の歴史上の王達も多用するわけだ。

 彼はしばしじっと俺を見つめ、ため息を吐いた。

 

「……まあ良かろう。お主が魔族と交戦したという情報はこちらにも入っている」

 

 ロマリア王は俺の許可も取らず、ドカッと椅子に座る。

 

「私は幽霊船についての会談をする為に、船でこの国に来たのだ」

 

 とのこと。

 この宿は迎賓館のような役割も持つこの国自慢の高級宿であるようで、自ずと要人である俺と彼は同じ宿に案内されたらしい。

 イシス側から聞いたのか自前の情報網に引っかかったのか知らんけど、俺がいると知ったとしても1人で乗り込んでくるなよ。

 

「王が国元を離れるというのは滅多にないが、それでも内海が使用不可能なのは大きな問題だからな。複数国で当たらねばならない議題だ。というか勇者になんとか出来ないのか? ……無理か」

 

「答え聞く前に諦めないでください。強さ的には幽霊船を攻略は可能です。でも人間側から幽霊船に接触する術がないでしょう?」

 

 ゲームではキーアイテムがないと幽霊船には乗り込めなかった。

 レベルカンストしているので攻略は可能だけど、まず会敵できない。

 

「確かに幽霊船は神出鬼没だ。海軍による討伐部隊を送り込んだこともあったが、どうにも発見に至らない。まあ海戦とはそういうものではあるのだが」

 

「そういうもの?」

 

「大海の中で船と船が出会おうというのだ。予め場所を打ち合わせて居ない限り、遭遇はほぼ不可能だ」

 

 そうか、こっちじゃレーダーとかないしな。

 ……じゃあ昔の海戦ってどうやって互いを探してたんだ? まさかのいきあたりばったり?

 

「だがそれにしても、不思議なほどに遭遇できんのだ。海軍の連中も首を傾げていた」

 

「精霊神ルビスのお告げでは、幽霊船と出会うには特定のアイテムが必要だと仰ってました」

 

「神のお告げとは妙に具体的なのだな。して、そのアイテムとはなんだ?」

 

「……すいませんがそこまでは判りかねます」

 

 俺は誤魔化すことにした。

 幽霊船と遭遇するには船乗りの骨というアイテムが必要なのだが、これの所持者は北国に住む老人だ。

 具体的な所在もわからない上に、仮に判明すれば複数の国家が1人の老人にキーアイテムの提供を要請(強制)するかもしれない。

 なにせ複数国の経済問題を改善する芽があるアイテムだ。老人が国家権力を前に所持品を奪われる景色など見たくない。

 いや普通に対価として大金を提示されて、喜んでアイテムを国に売却するかもしれないけど。

 

「あの、ロマリア王。ところで俺、疲れてるから寝たいんですけど」

 

「なんだ夜遊びでもしていたのか? 夜の勇者は獰猛であったか」

 

「我が聖剣は未だ鞘から抜けないままです。あ、いえ違います。このイシスには魔族が侵入していて、夜な夜な激闘を繰り広げています。さながらジュブナイルです」

 

 ロマリア王はため息を吐いた。

 ため息多くないですか。幸せ逃げますよ。

 

「実際どうなのだ? この国には魔族からの干渉を受けているのか?」

 

「……なんでそう思うんです?」

 

「ロマリアとイシスはほそぼそとだが交易があるし、小規模ながら密偵も入れている。数字は嘘をつかんよ」

 

「数字?」

 

「数字は冷徹だが正直者だ。誰が利益を得ているのか、誰が手引をしているかはおおよそ判る。特にこういう閉鎖的な国であれば、外の影響がないだけ純粋なデータが得られるというものだ」

 

「そこまでいうのなら、答えも判っているのでは?」

 

「女王であろう。私も昨日顔合わせをしてきたが、とんだくわせものだな。言動に致命的な破綻がないのがかえって胡散臭い」

 

 ロマリア王はあっさりと正解を当てて見せた。

 俺達みたいに答えを教えてもらったわけでもないのに、判る立場であれば判るらしい。

 

「どういうデータを見ると判るんです、そういうのって」

 

「塩の輸入量、鉄器の購入量、オアシスの水価格の相場などだな。どれも命の維持に必須だからこそ、常に市場価値は国家の内情を反映し続ける。国家が運営する規模の組織による調査であれば、他国の内情であってもほぼ完全なレベルで把握可能だ」

 

 そういうものなんだろうか。

 日本人からすれば北の将軍様の国とかはブラックボックスのように中身が見えてこないが、それでも公安とかは北の国の内部情報をほぼ正確に把握してたりするんだろうか。

 いやしていないはずはないのか。そう考えると、国家ってやっぱ強い。

 

「まあいいや。俺としてもどっちに肩入れする理由もないし、正直に白状しますよ。黒幕はおっしゃるとおりに女王様です。魔族と通じて不老不死になってるとか」

 

「不死なのか? それは勇者でも殺せんのか?」

 

「あ、ごめんなさい。不老ってだけです。不死じゃないかも」

 

 知識ふわふわでごめんち。

 不老と不死ってワンセット感あるじゃん。

 

「魔族側としては不労所得で生贄ゲット、もしもの時は女王を暗殺可能ってことですかね」

 

「いいや、ばれない程度の少数の生贄なんて全体としては小さすぎる。きっとこれは人類の傀儡国家を作る実験か、あるいは何かしらの戦略規模の陰謀であろう」

 

「傀儡国家?」

 

「人間とて家畜を飼育するだろう。他の生物であっても必要な数を飼育する意義はある」

 

「家畜ですか。食べるんですかね」

 

 吸血鬼のキューレが人間をムシャムシャ食べる光景はあまり想像できない。

 いや吸血する姿なら普通にイメージできるんだけど。吸血と捕食は別なんだろうか。

 

「対人間用の魔法や毒物の実験台とかかもしれんぞ。殲滅しては実験しようがない」

 

 この人は俺より更にリアリストだよな。王様ってそういうものなのかもしれないけど。

 考えたらこの人も、自国では奴隷制を容認してるんだっけ。

 この人も必要とあらば自国内の奴隷を魔族に流したりするんだろうか。

 うーん、闇深。

 

「というわけで、どうします?」

 

「どうするとは?」

 

「貴方も何か思惑があってここまで来たんでしょう? いらっしゃい、俺の城へ」

 

 この人が、このイシスを人間側に引き戻す方法を考えつかないとは思えない。

 間違いなく、既に俺と同じ結論に至っているはずだ。

 すなわち―――他国の介入。

 

「どします? イシス、買います?」

 

 今なら、イシスは経済的な負担だけで掌握できる。

 海外からの支援を取り付けるということは、保護してくれる相手には逆らえなくなるということだ。

 ロマリアが女王不在となったイシスをすかさず支配し、その統治に総督でも送り込めば傀儡国家の出来上がり。

 命のリスクもなく、カネだけでイシスをゲットである。

 ……とはいえ、それは相当な負担だ。

 しかも手に入るのは魔物の影響力のど真ん中。旨味があるかは怪しい。

 これを高いと見るか安いと見るか、俺には荷が重い天秤だな。

 

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