俺達勇者パーティーは今、砂漠を北進しピラミッドへと向かっていた。
勿論徒歩ではない。砂船を使っての移動だ。
船を動かしているのはイシスの軍人。船そのものもイシスの軍艦だ。
俺は、船の縁から砂漠の風景を眺めつつ、イシス城地下での会話を思い出していた。
深夜となり、俺達はロマリア王をつれて再びイシス城に忍び込む。
対峙する二人の王。
「はじめまして、わたくしはロマリアの王様です。今後ともよろしくお願いします」
「……これはどうも、わたくしはファラオと申します。古代の王なんぞしております……」
名刺を交換する王達。
なんだろう、この所帯じみた挨拶。
この世界がドラクエの二次小説だったら、きっと作者は王様同士の挨拶をイメージできなかったに違いない。
「さて、ロマリアとしては魔王軍に対する国家を跨いだ戦略が必要と考える。その為に主要国家が連携するには、特使なんて悠長な方法では間に合わん」
「……となると、国際会議であるか……」
「然り。まずは我が国が中心に支援することで時間を稼ぐ。その間に各国の代表を集め、本格的な対魔王軍戦略を構築する」
ロマリアは対魔王連合軍の盟主となりたいのだろう。重要な役割を果たせば、戦後の発言権は極めて大きくなる。
第二次世界大戦後のアメリカのようなものだ。
「……段取りには今更口出しはせぬ……だが、他国の支援、いや参戦を促せるのか……?」
「暗黒大陸がほぼ堕ちたのだ、各国も焦っている。そこに指針を与えれば、ある程度飛びつくはずだ。それがポーズだったとしてもな」
「……指針か。つまり、それは……」
王達は俺を見る。
「勇者と聖女のパーティー。ふん、担ぐ神輿としてはいい塩梅だろう」
「……さて、どうかな……」
ロマリア王の考えに、ファラオ王は異を示す。
「異論があるのか?」
「……神輿とは軽いほうがいい……だが、彼らは軽いだけの神輿ではないぞ……」
なるほど、それはそうかもしれない。
俺は勇者の息子。ルナリアはアリアハンの貴族……っていうのはさすがに弱いか。
でも実際戦闘能力はいまや世界最強クラスであるし、これからもあっちこっちに行って魔王討伐の旅をしなければならない。
神輿は軽いほうがいい。下手に動き回る力は必要ない。従順に従ってくれる駒が望ましいのだ。
もし対魔族の象徴となった俺達勇者パーティーが敗北した時、人類全体に大きな動揺が走る。
神輿が戦略に口出しを始めたら、その素人意見は全体を混乱させるだろう。
俺達は、極めて適役とは言い難い面倒くさい駒だ。
「ふむ。勇者よ、お前はどう思う」
「えっ? 俺の意見?」
「そうだ。お前の問題なのだ、何かしら考えはあるであろう」
俺が神輿、つまりこの国の名目上の王とするという話は宿屋で聞いた。
それを聞いて、俺が思ったことは一つ。
「王様になった暁には、王宮にいた美女たちとハーレムぱふぱふしたいです……!」
「……神輿には丁度いい小物であるかもしれんな……」
王達はため息をつく。
冗談だって。
「素人意見だから見当外れなことを言ってるかもしれないけど」
「言ってみよ」
「どうせこの国は富裕層と貧困層で二極化してるんだ、分断国家にしてしまおう」
王達がぎょっとした表情で俺を見た。