ドラクエ3リプレイ   作:蛍蛍

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生きるということ

 

 

 夜の明かりが乏しいからこそ、人は日中を大切に活用して生きる。

 この世界では寝坊の責任は現代よりずっと重い。仕事は日が昇る時から始まるのだ。

 冒険者も例外ではない。日中少しでも旅路を進める為、旅立ちは早朝から始まる。

 故に、アリアハンの西門には多くの旅人が開門前から集まっていた。

 

「長蛇の列だな」

 

「私も初めて見ました。こんなにも多くの人間が町から出るのですね」

 

 出発を待つ人間はざっと数十人。開門と同時に出る人間だけで、これだけいる。

 世の中そんなに外に出なければならないのかと不思議だが、あるいは考えてみれば当然かもしれない。

 町という集落に自給自足の能力はない。足りない物は有り余る経済力で周囲の土地から輸入するのが町だ。

 町は常に大量の物資を必要としており、それを運び込むのは全て彼ら商人の手によって行われている。

 地球みたいに、貨物列車や大型トラックで一気に運び込むわけにはいかないのだ。

 ……大型トラックとはいかずとも、軽トラくらいの積載量がある車両はあるみたいだけど。

 

「馬車か」

 

 俺はドラクエ3に登場しない存在に気が付いた。

 出発を控える団体には、それなりの馬車が紛れていたのだ。

 ドラクエ3には馬車は出てこない。プレイヤーが使えないというわけではなく、イベントにもグラフィックにも出てこない。

 とはいえこの文明レベルで馬車が存在しないはずがなく、それを行商に利用していないはずがない。

 

「ということは、街道ってけっこうしっかり整備されてるのか?」

 

 道なき道を進み、森の突っ切って歩くイメージだった。

 

「開きます」

 

 ルナリアの言葉に目を向ければ、巨大な門が観音開きに開いていく。

 周囲に合わせて足を進める。

 小さな一歩。人類にとって偉大というわけでもない、ただの新米冒険者達の一歩。

 それを踏み込み、俺達は遂にアリアハンの敷地を出た。

 

 

 

 

 

 

 なんか違う。

 俺が思ったのは、そんな感想だった。

 ぞろぞろと大勢で海への道を歩く。二人旅なのに、まるで大勢で行く学校の郊外活動だ。

 

「こんな大所帯に、モンスターが襲いかかってくるものか?」

 

「さあ……どうなのでしょう」

 

 アリアハンを出て数時間。簡素ながら道が整備されており、周囲に人がいることもあって全然迷う気がしない。

 モンスターへの警戒心も散漫となる中、開けた場所に辿り着いた。

 周りの様子を見ると、ここで昼食にするらしい。

 保存食を食べる者、簡単な料理を始める者、中にはのぼりを立てて食事を販売する者までいる。

 

「保存食を齧ってもいいけど、せっかくだから野営の練習をしよう」

 

「賛成です。楽なうちに経験しておきましょう」

 

 袋を腰から外し、はたと気が付いた。

 

「ところでルナリア、料理って出来る?」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

パーティの調理スキル設定をサイコロで決定します。

 

アルス                  1

ルナリア                 2

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「すいません、私はほとんど料理の経験はありません……」

 

「奇遇だな。俺もだ」

 

 苦い沈黙が二人の間を満たした。

 

 

 

 

 

 

 やってみなければ発展はない。

 俺達は見様見真似でかまどを作り、鍋でスープを作ってみた。

 

「まずい……」

 

「美味しくないです……」

 

 出来上がったスープは不味かった。

 多少知識だけはあるルナリアと、汁物なんて煮込む物程度の認識の俺。

 俺達は思い知った。レシピって大切。

 

「たぶん火が通ってないと危ないからって、煮込みすぎたんだろうな」

 

「塩を入れすぎたのではないでしょうか。塩漬け肉がしょっぱいです」

 

 まずいまずいと唸りつつ完食する。

 保存用の堅パンがこれほど美味いとは思わなかった。

 

「ふう。味って命に関わるんだな」

 

 舌からの情報が、明らかに命を狙っていた。

 バカみたいな発想に聞こえるだろうが、マジで命を削る音がした。

 

「死ぬほどとは言いませんが、命に関わらない限り食べたくはない味です」

 

「うん」

 

 命に関する話が出たので、俺は前々から気にしていたことを僧侶のルナリアに訊ねてみた。

 

「……ザオリクとかザオラルって魔法あるじゃん。あれってほんとに死人が生き返るの?」

 

 俺の質問に、ルナリアは「よくご存知ですね」と目を丸くして答えた。

 

「それらは失われた魔法です。いえ、実在したかすら定かではありません」

 

「教会に行っても死人を蘇らせることは出来ない、と?」

 

「勿論です」

 

「……つまり、死んだら死ぬってわけか」

 

「当然では……?」

 

 そう、当然なのだ。

 死んだら死ぬ。実に道理だ。

 勇者が死んだって王様の元へ運ばれることはない。仲間が死んだって救済措置はない。

 ただ死ぬのだ。

 憂鬱そうにしている俺に、ルナリアは慰めるつもりなのかこう補足した。

 

「いえ、勇者という伝説を追う存在ならば……いつしか生死を覆す手段と出会うこともあるやもしれませんが」

 

 言われ、思い出す。

 なぜ勇者アルスは、死者蘇生アイテム「世界樹の葉」をオルテガに使わなかったんだろう、と。




本当にランダムなのに、2人とも料理下手という面白数字出してくれるの笑う
ここで主人公が料理上手で、ルナリアが彼を見直すって展開を想像してたんですけど
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