回想終わり。場面は砂船の上に戻る。
今後の王様稼業についての不安や、そもそも革命が成功するのかという疑問もあるが。
俺としては、やはり死者蘇生が失敗したことが心のしこりとなっていた。
「エイダちゃんの復活はできないのか? あれだけ準備していたファラオでさえ失敗した。素人作業の俺たちには無理なのか?」
ミイラにしてもエイダちゃんにしても、やっていることは同じだ。
復活に備えて、肉体を保存している。
ミイラは死体を乾燥させることで。エイダちゃんの死体は、肉体に無理やり回復魔法をかけることで。
「はーっ」
最近ため息ばっかりだ。
エイダちゃんを毎日回復させるのは、正直いって負担には違いない。
これをやる前にルナリアに覚悟を問われた。それが今、本当に問い直されている。
どうせ復活できないのなら、もう死体の復元はやめるか。
「はーっ」
ため息いっちょ追加。
この根気のなさ、嫌になるぜ。
やるよ。やりますとも。
まだ諦めてなんてやるものか。エイダちゃんには、色々と言いたいことがある。
「なんだ、センチメンタルにため息なんてつきやがって」
船の甲板縁より砂漠を眺めていたら、男が声をかけてきた。
ガゼルだ。
「ああ、お前もいたな」
「いたよ。なんだよ忘れてたのかよ」
「忘れてた」
「ひでえやつだな。……そのなんだ。エイダって子のことは、なんていうか残念だったな」
気を使ってくれているのが伝わってくる。
こういうところ、ガゼルはいいやつだ。なんだかんだ俺達より大人ってことなんだろう。
俺は彼の横顔を眺める。
「ガゼルは村に呪いをかけたエルフが憎いと思うか?」
「なんだよいきなり。……あー、そりゃ思うだろ。でもなあ……」
ガゼルはため息をつく。
「エルフの全会一致で呪いをかけたってわけでもないだろうし。エルフの女子供まで全部嫌いかって言われると、そんなことはねえよ」
「そうか。ま、そうだよな」
ガゼルの言うように、エルフにも悪いやつがいればいいやつもいる。
世の中はバランスだ。いい奴もいれば悪い奴もいる。きっと魔族にだって。
アッサラームを滅ぼしたキューレは多くの民間人を殺した悪人だが、直接会った俺には彼女が狂人だとも思えない。
俺はガゼルの横顔を盗み見る。
コイツに関しても、ちょっと考えなきゃいけないと思ったのだ。
「なあガゼル。お前、王様達の話を聞いただろ」
「ああ聞いたな。政治なんてわかんねーけど、勇者が王様になるってやつだろ?」
「それだけじゃなくて、国を二分して魔族と貿易しようぜって部分も」
これを聞かれたのは、あとになって考えるとよくなかったな。
「ガゼル、お前はこれからどうするんだ?」
「どうするって? 前にも言った通り、ノアニールの呪いを解く方向で考えてるが」
俺は首を横に振る。そうじゃなくて。
「お前、魔王軍のスパイだろ? これからの身の振り方を考えなきゃな」