「はい、というわけでガゼルが裏切りましたー! いえーい!」
「はあ」
「…………。」
「ちょっとちょっとー! テンション低いよ、バイブスあげてこー!」
「はあ」
「…………。」
「うぇーい! とりま気分上々↑↑っしょー!」
「はあ」
「…………。」
パーティーに招集をかけての緊急会議。レオパレス仕様の船内だと逆に情報漏えいするリスクがあるので、俺達は甲板上で顔を突き合わせていた。
そして俺が語る衝撃の内容。それを聞き、仲間達は驚愕を浮かべた。
「そういう行動を起こす前は、ちゃんと事前に相談していただけませんか? 報告連絡相談です」
「…………。」
「すいません以後注意します」
そんなに驚愕してなかった。
めっちゃ冷静にダメ出ししてきやがる。
その通りだ、3人でこっそり囲んでから糾弾していればガゼルを逃さずに済んだかもしれない。
「俺は、お前達に仲間を疑うような真似をさせられなかったんだ……」
「そこまで考えが回ってなかっただけでしょう。思慮が足りません」
「…………。」
アミーラちゃんが無言で腕をバツにしてダメ出ししてくる。
俺の独断行動が大層気に入らないらしい。
「いえしかし、考えてみれば不審な点に気付きながらも相談しなかったのは私も同じです。あまり貴方様のことを責められはしません」
「なんだ、ルナリアもガゼルの不自然さに気付いてたのか?」
「はるか北方の地でおきた問題を解決するために、ここまで南部に来る時点で違和感があります。それに、貴方様が露骨に警戒していましたから」
なるほど?
ゲームであれば納得できなくもないが、現実となったこの世界の距離感でいえば世界を4分の1周するほどの距離だ。
みなさんご存知の西遊記はそれだけで長編の体を成す長編小説であるが、ガゼルはここまで来るだけで三蔵法師クラスの長旅をしている。漠然とした目的でできる旅じゃない。
「スパイってことは、俺達の情報収集が目的だったのかな」
「彼が人間であることを鑑みれば、それが第一の目的ではないかと。人間同士の戦争とは違い、スパイを仕立てることも魔王軍としては困難でしょうから」
シンプルに殺し殺されの戦いをするだけなら話は簡単なのに。
互いに正義をぶつけ合う戦いなんて、どこにも勇者の需要はないぞ。
「…………。」
アミーラちゃんが船の舳先を指差す。
それにつられて見ると、ついにそれが視界に入った。
複数に連なった、巨大な四角錐。
人類最初の高層建築物、ピラミッドだ。
ゲームでは漠然と砂漠のど真ん中に存在しているイメージのピラミッドだったが、実際は側に人里があった。
それはそうだ、僻地に巨大建築物を作るなんて古代には難しい。
ピラミッドの側にはスフィンクスのような石像も存在しており、俺達は彼(彼女?)の視線の先にある宿に部屋をとった。
「この町の名物は揚げ物だそうです。周辺には火炎ムカデが多く生息しているので、油が比較的安価なのだとか」
「虫の油かぁ……」
ルナリアが店員から受け取ったのは、鶏の揚げ物であった。
この砂漠には火を吹くムカデがいるわけだが、どうにもその火は魔法ではなく物理的な炎らしい。
体内に蓄えた油で火炎放射器のように吹き出しているとか。
「身体の脂肪を燃やして燃焼系、燃焼系、ってわけか。ドラゴンのブレスとかもひょっとしてただの油なのか?」
「あれはれっきとした魔法です」
「ドラゴン油はないのか。まあ鶏肉だって脂肪分が少ないし、そういうものなのかも」
人間にとって油は希少だ。取れる手段があるならどんなものからも取る。
食用としては勿論、道具の手入れや夜の明かりに。あらゆる部分に使うからこそ、人間は油を求める。
だからって、ムカデから取らなくたっていいだろうに。
口から火を吹くんだから、クジラみたいに頭に油を蓄えているんだろうか。
「いかん、食事中にムカデのことを考えるべきじゃないな。今は飯に集中だ」
届いた肉にかじりつく。
衣の味付けが強く、から揚げというよりはフライドチキンに近い。
いやから揚げだってフライしたチキンなんだけど。
「ここらでは油より水の方が高価なんだってさ。水分は酒で取るらしい」
「まるで船ですね」
俺はコップに注がれた酒を揺らす。
ヤシの実を発酵させた酒で、正直あまり美味しくはない。
この町には子供がいない。更にいえば女性も少ない。
まさに、油の為だけに存在している町って感じだ。
「出稼ぎの町、炭鉱町みたいな場所なんだろうな。少なくとも普通の一家が穏やかに暮らす町ではない」
「おいおいおいおい。女性が皆無ってわけじゃないみたいですよ!」
ルナリアがエキサイトしてた。
しまった、さらっと彼女に酒を与えてしまった。
砂船でもヒャドの氷を溶かしてでも水を確保して与えていたというのに。
ルナリアはウエイトレスを見た。なかなかの美人さんだ。
こんな砂漠と男の町だ。ウエイトレスはもはやアイドル扱いされている。
「もてたらもてたで、たぶん気苦労が絶えないんだろうな」
「それあるー!」
うんうんと深く頷くルナリア。
彼女もまた、気苦労が絶えない側だったらしい。
なぜかアミーラちゃんも頷いている。
心当たりがあるガールなのだろうか。
ロードバイクが趣味です。
この季節は乗るのが難しいですが、だからこそ腰を据えてカスタムしたりしています。
この小説がなかなか更新されないのはスランプとかではなく、休日はだいたいロードを改造しているか日曜大工で本棚作ってるから……げふんげふん。
通勤の足として直線の多いコースを走ることが多いので、私のロードバイクはほぼTT化しています。(同じ趣味の人にしかわからない会話)