ピラミッドは側面に、無造作に大穴が開いている。
かつて盗賊が魔法でぶち抜いた穴らしく、正規の出入り口ではない。
町での聞き取り調査によると、この目立つ穴に突入すると地下ルートに突入するらしい。
あまりにあからさまな入り口なので昔は少なくない盗賊はこちらから侵入しており、そして戻ってこなかったとか。
正規ルートは大穴の横8メートルにひっそりと開いており、こっちから入れば上部ルートに突入する。
「まあこっちはこっちで落とし穴があって、ひっかかると地下ルートに突入してしまう。むしろ地下ルートは本来なら脱出不可能な袋小路だったのかもしれんな」
「詳しいですね。本職の方ですか?」
「誰が盗賊やねん」
メラの炎で坑内を照らして進む。
たしかドラクエにはレミーラという周囲を照らす魔法があったはずだが、冷静に考えると炎を出す魔法でどうとでも代用できる。
光と熱を発するメラより、光だけ発するレミーラのようが燃費がいいとかそんな感じなのかもしれない。
「しかし意外と進みやすいな」
これまで挑んだダンジョンは洞窟が多く、長い上に足元が不安定だった。
それに対してピラミッドはそもそも人工物なので大きいといってもたかが知れている。地面だって埃っぽいけど平坦だ。
こりゃ案外すぐ探索できるかもな、と予想していると、宝箱を発見した。
「ひゃっはー! お宝ゲットだぜー!」
「やはり盗賊では……?」
喜び勇んで宝箱を開ける。
空っぽだった。
「……まあ、盗掘も多いらしいしな」
ここまで簡単に来れたんだ。過去の盗賊だってここまでは楽勝だったろう。
でもなんで蓋を律儀に閉めてるんですかね。あとから来る人への嫌がらせっすか。
幾つか宝箱はならんでいたので、パカパカと開いていく。
一つがミミックだった。
「うぎゃー!」
上半身をばっくり食べられてしまう。やばいパクリとか言われてしまう!
「あれだな、ミミックも生物なんだな。生ぬるい。ネチョっとしてる」
「まったく、なにをしているのですか」
ルナリアが呆れた様子でミミックの口を無理矢理開く。
俺だからノーダメなわけだが、たぶんコイツの顎は人体をかみちぎれるほど強い。
それをひょいと無理矢理開くルナリアもルナリアだ。さすがは最強の攻撃手段が物理な聖女。
探索を進めていくと、多数のミイラ型の魔物が現れた。
「はあっ!」
ブーメランを投げるも、狭い場所なのですぐ壁にぶつかって落下する。
仕方がないのでブーメランを拾い、鈍器として殴打、殴打。
あっ汚い。ブーメランがいつも以上に汚れてのお疲れ様だ。
「これってもともと人間だったのかな」
ブーメランの汚れを拭きつつ、ふと疑問を口にする。
「違うと思います。古代の王が死後の身の回りの世話をさせるために家来を一緒に埋葬したという話は聞きますが、ファラオという王はそういうことはしないでしょう」
直接会った感想だった。
確かに彼? はそんな理不尽を部下に強いるタイプではなさそうだし、そもそもミイラにする加工はそれなりに魔法的な手間暇がかかってそうだ。こんな大勢に施すのは難しそうに思える。
というか、こうして動いて襲ってくるあたり死者蘇生の儀式が半分成功していることになってしまう。さすがにそれはない、ということで別物なのだろう。
「そういう魔物ってだけか」
「はい。……あ、いえ、あるいはこういう魔物を参考に復活の儀式が発案されたのかも……?」
思考に耽るルナリア。
興味深い考察だけど、今は冒険に集中してほしい。
いや俺から言い出した話題だけどさ。
ピラミッドの内部を進む。ミイラや大きなカエルを薙ぎ払って進んでいくと、やがて巨大な石扉を発見した。
ダンジョン内の4つのボタンを正しい順番で押すと開く、古典的な謎解きの扉だ。
「たった4つのボタンを押す順番のパターンなんて24しかないのに、なんで今まで開けられなかったんだろうな」
俺はファラオに教わった通りにボタンを押していく。
開かない。
「どうやら仕組みが古くなったせいで、ちゃんと動かないようですね」
ルナリアは扉の隙間に細く美しい指を突き刺し、左右に無理矢理こじ開けていった。
脳筋すぎる。
「あっ」
「あっ」
ルナリアが扉の中を見て、声を漏らす。
同時に、中からも軽い驚きの声が聞こえた。
ルナリアは石扉に指を突き刺し再び閉じる。そっ閉じだ。