そして再び、俺達は砂船に乗ってピラミッドへと向かう。
事態の推移は早かった。
船の甲板にて、俺はイシスの精鋭兵士達に囲まれていた。
「貴様が噂の勇者か」
イシスの兵長が話しかける。
「はあ」
「女王様の命令である。ここで死んでもらう!」
「えぇー。なんでですか。こんなに真面目に勇者してるのに」
「貴様が魔族と内通していると、女王様よりご指示があった! よってここで死ね!」
イシスの兵士は皆筋肉隆々だが、精鋭ともなるともはや彫刻のような肉体の持ち主達だ。
そんなムキムキメン達に囲まれる俺。砂漠であるという以上に絵面が暑苦しい。
見るからに強者な兵士達が抜剣し、俺の命を狙う。
「ちょ、ちょっと待ってください! 俺は魔族と通じてなんかいません! 僕はしにましぇーん!」
「ええい五月蝿い、惰弱者は砂の海に呑まれるがいい!」
問答無用で襲いかかってきた。
俺はブーメランを取り出す。
「殴打、殴打!」
「ぐわッ!?」
「あばばっ!?」
「つ、強い!」
俺はイシス兵を蹴散らしていった。
ブーメランを振るえば旋風が巻き起こり、兵士達が薙ぎ払わる。
ブーメランは断面が翼のような形状となっている。つまり航空力学だ。
それを振るえば竜巻が起こるのもまた航空力学の妙なのである。
航空力学万能論。
「っと、目的は足止めだったな」
この者達にとっての生命線はこの船だ。船なくして、彼らはこの砂漠で生きる術はない。
というわけで、船の風車にブーメランを投げつけて破壊。
古来より船の動力喪失は、撃沈と等しく扱われた。動ける基地であることが船の長所であり、動けなくなった船など脆弱な建築物でしかないのだ。
「よしてめぇら、ずらかるぞ! ケツまくって逃げろ!」
「セリフが賊のそれです」
「…………。」
ルナリアの呟きとアミーラのジト目をスルーして、船から飛び降りる。
俺に続く少女達。その背の鞄には、必要な食料などが既に確保されている。
「どういうことだ、勇者は弱いはずでは……!?」
「うろたえるな! 追うんだ! 殺すんだ!」
「この地点から徒歩で人里に辿り着けるはずがない! 何を考えている……!?」
俺達は、追跡してくるイシス兵を丁寧に叩きのめしていく。
間違えてはいけない。兵士達は女王の命令に従っているだけだ、殺したらイシスの民が困るし、反感を持たれたら面倒だ。
だから殺さず、かつ革命を起こすまで人知れずに無力化する必要があった。
故に砂漠のど真ん中まで精鋭兵士達を引きずり出したのだ。
「あとはイシスまで走るだけだな」
「解決法が力技です」
俺達のステータスなら砂漠を走って横断できる。昼間の灼熱だって、ヒャドで仮設小屋内を冷やせばやりすごせる。
ここまで来てなんだけど、実は砂船を使わなくても旅はできたのだ。
面倒だから船を使ったわけだけど。
3人は砂の海を疾走する。目指すはイシス。
到着すればロマリア王と合流して、いよいよ革命だ。
「ところで貴方様、首尾よく精鋭兵の皆様が暗殺をしてきてくださりましたが……」
「ルナリア、言葉が変だぜ」
「……くださりましたが、もし暗殺が行われなければどうするつもりだったのですか?」
どうするって、そりゃあ……
「殴打、殴打っ」
「蛮族ですね」
俺達の応酬に、アミーラちゃんが声を殺して笑っていた。
ツボったらしい。