ドラクエ3リプレイ   作:蛍蛍

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だれにでもいる勇者

 

 

 女王の居室までは、さすがに他の兵士もやってこない。

 砂の中庭を抜けて、あとは城内に入るだけだ。

 

「ルナリア、アミーラ、行くぞっ」

 

「はい」

 

「…………。」

 

 俺達は頷き合って、扉を蹴破る。

 中にいたのは二人の人物。

 

「あ、ああっ、あああああぁぁぁ」

 

 乾いた声で悲鳴を上げるイシス国の女王アリアと。

 

「―――来たのか、勇者」

 

 悠然とそれを見下す、ガゼルだった。

 

「ガゼル? なんで、ここに?」

 

 俺は困惑していた。

 勇者パーティーから離反したガゼルが女王の側にいるなんて、誰が想像するだろうか。

 こいつは今、来たのか、と言った。俺達を待ち受けていたという風ではない。

 ガゼルはガゼルで、なにか目的があってここにいる。

 

「か、返して、返しなさい、それは私の力よっ」

 

 女王アリアは般若のような形相でガゼルに手を伸ばしている。

 今気がついたが、女王の顔は国中に轟いた美貌が失われ、老婆のように老け込んでいた。

 

「不老の邪法を奪ったのか?」

 

 そんなことが可能なのかは判らないけど、俺はなぜかそう確信していた。

 俺の指摘にガゼルが片眉を吊り上げる。

 

「まあ、そういうことだ。この手の邪法は対価を求められるが、それを自分で支払う必要はない」

「あー、つまり邪法の効果だけ奪って、デメリットは女王に押し付けたと」

 

 その結果が、急に老化した女王の姿というわけか。

 

「そんなっ、それは私の力よ、返せぇっ」

 

 女王アリアはなりふり構わずガゼルに飛びかかったが、軽く避けられる。

 

「あ、ああぁっ」

 

 そのまま床に叩きつけられてうめく女王アリア。

 

「馬鹿を言え、これはお前の力ではないだろう。この国の人間を何十人も生贄にして搾り取った、おぞましい力だ」

 

「え、そうなの?」

 

 俺は目を丸くした。

 この女王が魔王軍に奴隷を出荷しているとは聞いていたが、邪法のために自国民を生贄にしているなんて話は初耳だ。

 

「それでガゼル、お前はそんな邪法を奪ってなにをする気だ。お前も永遠の若さがほしいのか?」

 

「俺もちょっとデリケートな年頃だからそれも魅力的だが、そうじゃない」

 

 不老にもちょっと興味はあるらしい。

 おっさん乙。

 

「俺は嫌なんだ、奪われる側でいるのが」

 

「だから、奪う側にまわると?」

 

「ああ、そういうことだ。俺は勇者であるお前や、聖女であるルナリアのように―――誰かの身勝手に運命を左右されない存在でありたいんだ」

 

 そういって、ガゼルは懐から宝玉を取り出した。

 

「勇者アルス、聖女ルナリア。ああ、あとアミーラ嬢」

 

「……! ……!」

 

 おまけ扱いされたアミーラがプンスカ怒っている。

 ちょいちょいシリアス脱線させるのやめてくれねえかな。

 

「俺は、これまでの自分を捨てる。人間であることを、やめてやる!」

 

 宝玉が砕け散り、ガゼルの体が黒い霧のような魔力に覆われる。

 

「これはっ」

 

 ルナリアが驚きに目を見開く。

 ガゼルの気配が変化し、衣服が弾け、その全身を漆黒の魔力が覆う。

 それは、魔物――否、魔族の姿だった。

 

「ガゼル……それはちょっと、やけっぱちになりすぎじゃないか」

 

 俺はガゼルの変わり果てた姿に嘆息する。完全に人間やめてるじゃないか。

 

「俺だって、できればこんな真似はしたくなかったさ。だがな勇者アルス、お前は考えたことがあるか? 自分の運命を他人に勝手に決められて、お前の意思とは無関係にすべての生活を奪われる理不尽さが!」

 

「いやまあ、わかるけどさ」

 

 俺だってすべてを奪われて、この世界に放り出された身だ。

 誰も知り合いもいない、頼る相手もいない。そんな世界に来て、俺は随分と図太くやってこられたのかもしれない。

 なぜ耐えられたのかといえば、やっぱりルナリアの存在が大きい。

 ずっと旅を共にしてきた少女。応対も蛋白なようで、けっこう気を使ってくれるいい娘なのだ。

 

「だから俺は共感したんだ。大地をルビスに奪われ流浪の民となった哀れな魔族に、俺と何が違うのだと」

 

 ガゼルは雄たけびを上げた。

 ぬるっと新情報出してきやがる。

 

「俺は魔王軍と契約を交わして、魔族の力を得た。俺はもう一つの正義だ。この世界を魔族の土地とする」

 

 ガゼルは闇の魔力を全身から放ち、俺達を威圧する。

 

「俺は勇者になる。よく聞け勇者アルス。俺は勇者ガゼル。魔族の勇者、ガゼルだ!」

 

 キューレどころではない。ガゼルが放つ闇の魔力は、これまでのどの敵よりも強烈だった。

 

 

 

 

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