ドラクエ3リプレイ   作:蛍蛍

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ギルドは日本語で組合

 

 

 アリア号。この船の動力は、船の中央に据えられた椅子に座った人間の魔力だ。

 既存の砂船は風を動力に動く半動力船だが、それでは風が安定しているこの砂漠でしか運用できない。

 だから俺はこの船を作った。レーベの村で貰った魔力ストーブを船に組み込み、魔力で蒸留水を沸騰させての蒸気駆動を可能としたのだ。

 船体は水上船をベースとした水陸両用となっており、外輪船のように左右についた車輪が回ることで前進する。

 砂漠の国であるイシスに水上船を作るノウハウがあるのかと思うかもしれないが、琵琶湖より大きなオアシスを内包するだけあってちゃんと大型船舶の職人もいた。

 陸上特化の砂船より相当重くなっているが、それについては蒸気機関の高出力によるゴリ押しで動いている。

 ただ冷却による真水の循環はできていない。陸上ではヒャドで氷を生み出して、それを溶かして蒸気にして使い捨てている。

 当初は一部の蒸気機関車のように再冷却して使いまわしたかったのだけど、それは俺が思っている以上に難しい技術らしく、中世なこの世界では船サイズでも不可能だった。

 曲がりなりにも蒸気機関を作れたのだって、イシスの職人達が砂船というもので駆動系の制作に慣れていたからだ。粗末だがベアリングとかもあったし。

 そんなわけで、この船は色々と無茶を重ねているわけである。

 ただ魔法を使って有利なのは、簡単に蒸気ボイラーの圧力を上げられることかもしれない。俺の知る限り、蒸気機関というのは最終タイプでさえ蒸気圧を上げるのにかなりの時間がかかっていた。

 そういった面については、レーベの魔法使いが作った魔力ストーブがとにかく優秀だった。石炭が薪ストーブなら、魔力ストーブはガスコンロ並に手軽なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 イシスを旅立ち2ヶ月。

 アリア号は俺、ルナリア、アミーラちゃんの魔力を原動力にして北上していた。

 

「俺の故郷では100歳を百寿、99歳を白寿っていうんだ」

 

「はあ」

 

「船長は97歳らしいし、つまりマイナス3で口寿ってわけだな」

 

「勇者様って私が文脈を理解できないこと理解した上で、気にしないで突き進みますよね」

 

「それでも話に付き合ってくれるルナリアのことが大好きです」

 

「あんまり続けると嫌いますよ」

 

「捨てないでー!」

 

 アリア号はかなり小さい船だ。

 いや船体はそれなりに大きいが、機関部が大きすぎて居住区が小さい。

 よって俺達が居座る空間は、艦橋なんだか機関室なんだか休憩室なんだかわからん場所だった。

 

「マーク1戦車かな」

 

「またわけのわからないことを自己満足で言っています」

 

 それでもちゃんと返事をしてくれるルナリアは優しい子だと思います。

 

「しかし、このタイミングで船を手に入れることになるとは」

 

 俺は燃料席で感慨深げにつぶやいた。

 ゲームだと船を手に入れるのはポルトガに行き、黒胡椒を調達してからになる。

 だがそれに馬鹿正直に従う必要はないのだ。というか中世時代において金と同価値だったとはいえ、黒胡椒で船がもらえるのはシンプルに意味不明である。

 

「おい勇者! まずはポルトガに行くぜ!」

 

「ああ、頼んます」

 

 船長に確認され、俺は肯定する。

 なんか、結局ポルトガに行かなくてはいけないらしい。

 船はこうして手に入れたものの、世界中の海を駆け回るにはポルトガの海洋ギルドに登録する必要があるのだとか。

 

「冒険者ギルド、商人ギルド、海洋ギルド……なんでもギルドがあるんだな」

 

「しかし、世界を旅するのに顔を出す必要があるいうのは驚きです。国家間を跨いだギルドというのは初めて知りました」

 

 ルナリアが感心した様子で言う。

 艦長はそれを笑って否定した。

 

「ガハハハ! そうじゃねえよ、海洋ギルドだって小さいのが各地、各国に数え切れないほどあるんだ。ポルトガの海洋ギルドだってそのうちの一つでしかねえ」

 

「では、なぜラハブ船長はポルトガのギルドを重要視しているのですか?」

 

「ポルトガのギルドの重要さは地位や権力じゃねえ、役割だ!」

 

 船長の言葉でピンときた。

 

「あ、そうか、市場みたいなものか」

 

 俺は情報化が進み、生産地から自宅まで注文した物が直越届く現代社会に生きていたせいで、間違った前提で考えてしまっていた。

 けどここは中世の世界。どこで何が手に入るかなんて、リアルタイム情報が得られるはずがない。

 だからこそ、一度商品を運び込んでその地で顔を突き合わせての商談をする必要なのだ。

 

「当たりだ! ポルトガには世界中の商会や船乗りが集まってくる! 商品をそこに持ち込んで売り捌くんだ!」

 

「なるほど。その市場……みたいな仕組みを運営しているのがポルトガの海洋ギルドってわけですか」

 

 国力としてはロマリアに劣る印象があったポルトガだが、海運の中継地としての地位で言えば下手な大国より影響力があるのかもしれない。

 

「船長、海が見えてきました!」

 

 はるばる砂漠を進んできたアリア号が、ついに地中海にたどり着く。

 

「さあ、いよいよだ! アリア号、海に入るぞ!」

 

 船長が大音声で宣言した。

 目の前に迫ってくる大海、そこに突っ込んでいくアリア号。

 ……あの。海上運行の試験、してるんだよね?

 試験してるにしても、一旦乗員を降ろして様子見たほうがいいんじゃないっすかね?

 しかしアリア号はそのまま浜辺を疾走し、海に突っ込んでいく。

 

「ちょっとま、おいおいおい!」

 

 この船長、思い切りが良すぎる。

 ついに船体が水に突入。波にさらされ、船体が大きく上下する。

 俺は座席にしがみつき、転げ落ちないように踏ん張る。

 やがてアリア号は船体を海面に安定させ、そのまま進んだ。

 

「どうだ! てめえら、船は問題ねえか!」

 

 艦長が船員達に叫んだ。

 

「船底、水漏れありません!」

 

「構造体への負担、想定の範囲内です!」

 

「経路変更! 冷却機構の稼働開始しました!」

 

 船体が思ったより揺れて焦ったけど、特にトラブルということではないらしい。

 波に揺すられるたびに船内の椅子や樽が揺れているものの、ひっくり返るほどじゃない。

 内海船しか作ってこなかった工房の船なので心配だったけど、少なくとも近海では大丈夫そうだ。

 外洋航海についてはいまだ不安が残るわけだけど。

 船員達の報告を受け、船長が頷く。

 

「よっしゃあ! 目的地はポルトガだ! 北西に進路を向けろ!」

 

 こうしてアリア号は、海路を進み始めたのだった。

 幽霊船については、でくわしたらでくわしたで叩きのめす所存である。

 

 

 




実機プレイをしていると、このタイミングでのイシス→ポルトガ行きはロマリアへのルーラを使ってかなり短時間での移動となります。運が良ければモンスターとのエンカウントすらしないレベル。
リプレイ小説として考えるとまたグダグダと長旅するのもゲーム内容の反映とは言えないので、ここはサクッと船を使っての旅としました。
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