翌日。
「うぇ……頭が痛いです……」
朝起きてみると、ルナリアが廊下の床でぐったりしていた。
ちゃんと帰ってはこれたらしい。
美少女が台無しすぎる。
「おいおい、若い娘がこんな場所で寝るなんて不用心だぜ!?」
いつの間にか部屋に戻っていた船長が苦言を呈する。
年の功というべきか、意外と常識人だ。
「あ、いえ、お気になさらず」
たとえ酔いつぶれた状態でも、ルナリアがそこらの男に襲われる状況が想像できない。
酔った勢いで頭をスイカみたいに握りつぶしかねない。
「このダメ人間は放っておいて、俺達だけでギルドに行くか」
頷くアミーラちゃん。宿を出て二人で港を歩いていると、曲がり角で誰かと衝突してしまった。
「おっと」
俺は踏みとどまり、その人物を見た。
マルコ
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ステータス外要素をサイコロで決定します。
性別(6以上で女性) 4
年齢(あまりに不自然であればやり直し) 40
容姿(かっこよさ、かわいさ) 5
頭の良さ 4
運動神経 10
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職業をサイコロで決定します。(不可能ならやり直し)
1勇者 2賢者 3盗賊 4魔法使い 5僧侶 6武道家 7戦士 8商人 9遊び人
7 戦士
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「ちょっと! どこ見てんだよ!」
そこにいたのは美少女……ではなくガタイの良い中年の男性だった。
誰得だよこの展開。そろそろルナリアのライバル的なサブヒロイン出ると思ったのに。
「ああ……悪い」
「まったく、遅刻しちまうぜ! 遅刻遅刻ー!」
ドタバタと走り去っていくおっさん。
俺達は気を取り直し、海洋ギルドへと向かう。
なんだろう、次の展開が読める。
「ああっ、お前はっ!」
海洋ギルドに入り受付に対応してもらって応接間で待っていると、そこにやってきたのは……!
「ん? あー、また会ったな」
「知ってた」
曲がり角のおっさんだった。
むしろここでニューフェイス美少女が出てきたらどうしようかと。
おっさんは大股で歩き、俺の対面の席へと腰を下ろす。
「勇者王が来てるって聞いて来たんだが、まさかお前がそうなのか?」
「ああ、はじめまして。勇者兼イシスの王様をやってるアルスだ」
「ほー」
関心した様子のおっさん。
イシスにいた頃からちょいちょい小耳に挟んでいたけど、俺は諸国では勇者王と呼ばれているらしい。
ライオンの顔がついたロボットを連想するからちょっとやめてほしい。
「俺はマルコ。このギルドの長をやっている。まあ、よろしく頼むわ」
「よろしく」
「で、勇者王。今日は何しに来たんだ?」
「ああ、俺達のことは知っているみたいだが……俺は勇者として、世界を巡る旅をするつもりだ」
「ふむ」
「7つの海を駆け回るとなれば、やっぱり海洋ギルドに登録しておく必要がある」
マルコは興味なさそうに相槌を打つと、受付の人に飲み物を頼んだ。
「登録すりゃあいいじゃねえか。別にいちいち審査とか面接なんてしてねえよ、俺だってそこまで暇じゃねえ」
「だからって挨拶もしないで書類だけ提出するってわけにもいかんだろ」
勇者で王様の俺が、他国の権力者の近くまで来て顔を出さないってわけにもいかないのだ。
「まあそうだな。仁義を通すってんなら、たしかに承ったぜ。あとはどこへなり好きに航海しな」
マルコはひらひらと手を振る。
「つーかよ勇者王、ここまで来んのにおめー、幽霊船とでくわしたらどうするつもりだったんだよ」
「倒すけど」
簡単に言ってみせた俺に、マルコは唖然とした顔を浮かべる。
「おいおい、あの化け物相手に勝てるっていうのかよ」
「まあ、たぶん。勝算はある」
少なくとも俺達にとって、幽霊船は逃げ回らなければならない対象ではない。
幽霊船に勝てると主張する俺に、マルコは考え込んだ。
「……勇者王。船団護衛の依頼ってのはできるか?」
「船団護衛?」
「ああ。知っての通り、今この港には幽霊船にびびって出港できない船が大勢いる。そいつらをまとめて守ってほしいんだ」
「あー、海に出られないのに町に人が多いのは、母港に戻れない奴が大勢いるからなのか?」
「それもあるな。街全体としては人が多くて金が落ちるから儲け時だけどよ、船乗りに負担を強いる現状はやっぱマズイ。店子から搾り取りすぎれば、店子が居なくなっちまう」
俺は考え込んだ。正直俺はさっさと船で大海に出て、ジパングに行きたいと思ってる。
数年ぶりの米が俺を待っている。ジャポニカ米を食べないと日本人は死んでしまうのだ。
ついでにヤマタノオロチも待っている。こいつは首が8つあるという伝説を持つ5つ首のドラゴンだ。
どっちやねん。
対してマルコの悩みの種である滞った海運業者は、主に地中海内を航行している船なんだろう。
つまり、俺はポルトガから西に行きたいけど、マルコの依頼では東へ向かうことになる。
「どーすっかなー」
悩んでいると、隣のアミーラちゃんが俺の服の裾をクイクイと引いていた。
彼女を見ると黒衣のベールで覆われて表情が伺えないものの、唯一露出している目がキラッキラに輝いていた。
この依頼を通して金稼ぎをする方法を思いついたらしい。
俺はため息をついた。彼女がこうなったら、俺にはもう止められない。
「わかった、引き受けよう」
「おっ。ありがてえ、助かるぜ! とはいえすぐに出港はできねえだろうな。3日ほどゆっくりしていけよ」
「なんで?」
すぐに出港できないというのはその通りだけど、具体的に3日と指定されたのが不思議で首を傾げる。
「3日後に城で舞踏会がある。お前さんの立場としちゃあ、出席しないわけにはいかないだろうよ」
俺は眉をひそめてしまった。
そういう面倒くさいのから逃げるためにイシスを出奔したというのに、結局王様稼業をしなければならないのか。
「めんどい」
「そうは言ってもなあ。国賓としてもてなされるのも、お前さんの仕事だぜ」
やれやれとマルコは頭を振った。
やっぱり勇者なんて、世間で言われるほど楽な仕事じゃない。
約得だと期待していたイシスの美女女官さんとのアヴァンチュールもなかったし。
そんなことを考える俺は知らなかった。この港町で、運命の女性と出会うことを……
「モノローグでフラグ立てといたぜ」