「おー、相変わらずの美少女だ」
俺は思わず声を漏らしてた。
今の俺よりちょっと年下くらいの、細身の美少女。
ウェーブがかかった栗色の長髪、くりくりと瞬く輝きに満ちた瞳。
オフィシャルな場だというのにミニスカドレスなのはいかがなものかと思うが、それが一周回ってよく似合う、文句のつけようのない美貌。
ここまで新キャラがオッサンとかババアとかばっかり出てきたから、いざ年頃の美少女が出てくると困惑するわ。
彼女は興味深げに会場を見渡し、そして俺で視線が止まった。
「勇者王様っ!? お久しぶりです! ソニアですっ! このたび晴れてポルトガ王になりました!」
「あ、はい。お久しぶりです」
なんかすっげぇテンション高く挨拶された。
「まさか勇者王様が我が国に来てくださるなんて、夢にも思いませんでしたっ! 結婚してください!」
「いやです……」
久々の再会で求婚してくるやべー女だった。
「えー!どうしてですか!?私こんなに可愛いのに!?」
自分で言うか。可愛いのは確かだが、あざとい。
俺はルナリアにアイコンタクトをする。
「俺はルナリアと婚約したんだ。だからきみの気持ちには答えられない。すまない」
「いやです……」
ルナリアが冷たい声で拒絶してきた。
演技であっても俺と婚約は嫌らしい。
「じゃあ愛人でもいいです!」
「いやです……」
俺は思わず敬語になる。
「えー! どうしてですか!? 私こんなに可愛いのに!?」
「いやです……」
いやです、がゲシュタルト崩壊してきた。
宝石メーカーかなにかだろうか。
しかし、とんでもない女に目を付けられたものだ。
……さて、ここまで話を進めておいてなんだが。
俺は、この少女と会ったことがある。
というかイシスの王様をやっていたのだ、他の国の王とも会う機会はある。
現代地球のように気軽に海外渡航できる世界ではないけど、それでも王族が大使として派遣されてくることはあるのだ。
俺がイシスで王様やっているときに、彼女はポルトガの姫としてイシスに訪問していた。
そこで武闘大会で活躍する姿を見て、彼女は俺に惚れてしまったらしい。
ソニアは少し悩み、ポンと手を叩いた。
「そうだっ! 良いこと思いつきました!」
「うん? なに?」
「私を娶らないなら船旅を禁じますっ! 海運ギルドに圧力をかけて!」
笑顔でエグいこと言ってきやがった。
「それ、脅迫?」
「そんなー、誤解ですよぅ。ただ、海運ギルド加盟の審査内容についてはお答えできません! 次回の機会をお祈りしております!」
お祈りメールをされてしまった。
ルナリアがずい、と前に出た。
「ソニア様、お久しぶりです」
「はいっ! お久しぶりです、聖女様!」
「ソニア様は勇者様に同行したいそうですが、私達の旅は極めて危険です。事実、魔族との戦いで仲間を失ったこともあります」
「知ってます! 私、これでも格闘技を嗜んでいるんです! それなりに強いんですよ!」
「それなりでは駄目なのです。いざ同行とするなれば、私達は貴方様を守りません。自衛し、時に戦力として頼れるくらいでなければ、少なくとも私は仲間入りを賛成できません」
「聖女様! それは聞き捨てなりません! 私はお飾りではありません! そういうことなら、力試しをしましょう!」
「力試し?」
「勇者様がお認めになるくらいの武勇を示します!」
ソニアが衛兵に指示すると、そそくさとテーブルが脇に寄せられて中央にスペースが作られた。
ソニアとルナリアが対峙して立つ。
「なんてこった、舞踏会が武道会になっちまった」
アホなことを呟いたら、隣のアミーラちゃんが無言で脛を蹴ってきた。
「勇者様っ! 開始の合図をお願いします!」
「あ、はい、はじめっ!」
俺が開始の合図を出すと次の瞬間にルナリアはソニアを制圧していた。
改行どころか句読点すら挟まないスピード敗北だった。
知ってた。世界最強の聖女であるルナリアに、ちょっと武術を嗜んでいるだけのソニアが勝てるわけがない。
「ふ、ふふっ! お見事です聖女様……。今回は私の負けを認めます……。ですが覚えておいて下さい! 私を倒したところで、第2第3の私が現れるでしょう! ということで失礼しますっ!」
ソニアは勢いよく舞踏会の会場を走り去り、姿を消した。
「なんだ? 珍しくあっさり撤退したけど」
「さあ……?」
首をかしげる俺達。
というかこの世界だと微妙に洒落にならんな、第2第3の魔王ネタ。