投稿直前に気付いて、あわてて修正しました。
「えんだああああああああああぁぁぁぁっ!」
アリア号の船首でアミーラちゃんとタイタニックごっこをしている時、俺はふと気付いて愕然とした。
「なんか俺、21歳になってた」
地中海をうろちょろしているうちに、俺達はイシスを経ってから1年経過していた。
おかげさまで俺も堂々と酒煙草を嗜んでいい年齢。
いやアリアハンは16歳で成人だし、この世界だと酒や煙草は子供でなければ許されるガバガバ判断なのだけど。
「私は23歳です」
訊かれる前に自己申告してくるルナリア。
まだまだデリケートな年齢という感覚はないらしく、平然とした様子だった。
たぶん年齢がデリケートになり始めるのは20代後半じゃないだろうか。
「…………。」
アミーラちゃんは確か15歳になるはずだ。
地球でいえば中学校卒業間際ってところか。ほぼ身長の伸びは完了したと考えるべきだろう。
ほぼほぼ平均的な体格だと思うけど、相変わらず黒衣だからよくわからない。
「私は17歳になりましたっ! 女盛りですね!」
キャピるんとウインクするソニア。
女盛りは19だとあなたが言った……いや言ってない。
今でこそミニスカドレスを纏うソニアだが、彼女もいつかはミニスカートなんて無理だと主張するのだろう。
「がはははは! 俺は98だぜ! まだまだテメーらなんて乳飲み子よ!」
ラハブ船長が豪快に笑って俺達の背中をバシバシ叩く。
一応ここにいるのはイシス王、聖女、ポルトガ王女だというのに遠慮がまったくない人である。
「俺達がいつか魔王を倒すときが来るとして、その時俺らって40代とかになってないか?」
俺がつぶやくと、さすがに沈黙が降りた。
「120歳か……さすがに生きてっかな」
ボリボリと後頭部をかく船長。
できるかどうかはさておいて、やる気ではあるらしい。
この船で一番やばいのはこの爺さんなのかもしれない。
「しかし、1年か……」
また1年経ってしまったのか。
最近気軽に1年経ちすぎ。これがジャネーの法則ってやつなのだろうか。
「船団の護衛依頼も一通り片付いたし、地中海の海運の混乱もおおよそ収束した。ここらでどこかに立ち寄って、ちょっと休もうぜ」
なんかお疲れ様会がしたい気分なのだ。
異論はないらしく、皆が首肯する。
「船長、この辺で飯が旨い町ってどこです?」
「ああ、そうだな……ああ、ここがあったな」
船長は海図を見渡し、ふと一点に視線を向けた。
「一度は壊滅しちまったが、あれから2年も経ったんだ。ある程度復興しただろうし、行ってみるか?」
そういって指さした町、そこは……
「アッサラームか」
アミーラちゃんが顔を上げた。
眠らない町アッサラームは、2年前に魔王軍の大侵攻を受けて壊滅した。
しかしそれでも生き延びた者はいる。多くの取捨選択を強いられ、多くの苦痛を飲み込み、それでも人々は生きることを選んだ。
必ず復興する。そんな決意を背に、俺達は砂漠へ旅立ったのだ。
そして2年後。再び訪れた町は―――
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町の状況をサイコロで決定します。
発展度合 7
治安の良さ 8
教育レベル 3
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「ほーっ、こりゃ大したもんだ」
―――なかなかに復興していた。
やや騒がしく雑多な印象こそあるが、それはたぶん元々。
陸上輸送の要所ということもあり行き交う人々は多い。幽霊船による海運の停滞により、陸路の重要性は増すばかりだ。
町を行き交う顔ぶれを見ると、多いのはやはり商人、そして冒険者か。
ここも最前線に近い。西には魔物の支配領域の中にイシスがある。
人類に魔王軍との戦いの意思がある限り、ここは多くの物資が通過する要所なのだ。
「イシスの王様やってたんだからちゃんとこの町が復興してるのは知ってたけど、こうして直に見ると感慨深……おーい?」
感傷的になる俺に対して、アミーラちゃんは魔法の袋を持ってさっさと商談に行ってしまった。
この少女、地中海を駆け回った1年で巨万の富を築き上げていた。
海上輸送が停滞する昨今、大量の物資を魔法の袋で輸送することによって。
この予算はパーティーの共有財産……というわけもなく、彼女のポケットマネーとなっている。
彼女の才覚と努力で稼いだのだからそれはいいのだけど、あまり溜め込んで経済を停滞させないか心配だ。
「ルナリアとソニアは宿と夕食の店を確保してくれ。商人が通過する町だ、いい店があるだろう」
「はい、わかりました」
「りょーかいです! 任せてください!」
勇者パーティーは現在4人だけど、船の乗組員を含めるとそれなりの大所帯だ。
この人数がまとめて入れる飲食店というのは中世ファンタジー世界だと少ない。
少なくとも、小さな町や村では店が対応できない。
というか当日にいきなり依頼されて受け入れ対応するのは、この世界だと大きな町の高級店でも難しい。
こんな時は綺麗どころ2人の出番だ。ルナリアとソニアの2人にお願いされると、男性店主であればだいたいの場合は頑張ってくれる。
男って馬鹿という話だ。
「俺はアミーラちゃんについてくわ。あの子、商売にかまけて実家に顔出さない気がするし」
俺はアミーラちゃんの小さな背中を追う。
俺の今の任務は、彼女をなんとか教会までつれていくことである。
「うえーい! ビビアンちゃーん!」
魔都アッサラームの夜。
俺は美しい娘たちが華麗に踊る、ダンスショーに熱狂していた。
「ははは、お若いですね勇者様は」
隣で朗らかに笑う男性。アミーラちゃんの父、エルマン氏だ。
彼は神父でありながら商人ギルドのギルドマスター。商人の親玉という、自愛とか無償奉仕とかとは真逆の男である。
路頭に迷った民間人を奴隷として売り払う神父とか邪悪すぎる。
いや何もしないよりマシという判断だったわけだが、清濁併せ呑む、というか清濁ゴクゴク飲みすぎ。
「結局アミーラは現れませんでしたな。まあ商売が楽しいのでしょう、落ち着いたらくるのではないかと」
アミーラちゃんを見失った俺は結局1人で教会を訊ね、彼と再会した。
せっかくだし情報交換しようと誘われ、俺は踊り子の舞うあからさまにいかがわしい店につれてこられた。
薄着の娘たちがひらひらと舞う。
けしからん。じつにけしからん。
「うおおおおっ! ビビアンちゃーん!」
俺の隣の男性が叫ぶ。
こういう場所では変に恥ずかしがる方が間違いだろう。推しの娘をガンガンプッシュだ。
どうやら隣の男性は俺と趣味が合うらしい。勝手に親近感を懐き、ちらっと隣を見る。
「ビビアンちゃーん! 好きだー!」
「ガゼル?」
「あん?」
隣の男性、ガゼルは俺をちらっと見て、そのまま興味を失ってビビアンちゃんへ視線を戻し、その後ギョッと俺を見た。
「あ、お、おう。久しぶり」
「あ、うん。久しぶり」
片手をひょいと上げて挨拶。
おいどうするんだよ、魔王軍の勇者とこんなところで会っちゃったよ。