「おおー!!すっごい綺麗じゃん!!」
「これは……!」
ティーパーティー御用達のランドローバーから降りるなり、ミカは歓声を上げた。続けて降りたサクラコも同様に目を輝かせる。そしてその声につられて助手席のセイアの手を離れたシマエナガくんが「チーチー」と楽しそうにランドローバーの上を旋回した。
「なるほど、ここが……」
「はい、『エフライムキャンプサイト』です!」
後部座席でウインドブレイカーを羽織ったミネの問いかけに運転席のナギサはエンジンを切りながらも元気よく頷いた。
エフライムキャンプサイト。位置はトリニティ山間部、僅かに紅葉するエフライム山脈の麓。総面積250万平方キロメートルは分かりやすく言うと東京ドーム50個以上であり、敷地内には天然の清流を利用した釣り堀や自由に使える製材所、先述の川が流れ込む湖など多くの自然とを備え、また管理棟にはホームセンターのような大きい売店も備わっていて最悪手ぶらで来てもどうにかなる感じの、総工費200億が投資されたトリニティの誇る最新最大のオートキャンプ場である。
ちなみにオープンは2日後だが、今回はナギサが権力を利用してちょっとお借りした感じだ。
「ほら、早く行こうよナギちゃん!」
「わわっ?!ミカさん?!」
彼女が運転席のドアを開けるのを見計らって、ミカはナギサをぐいっと引っ張り出す。どうやらミカの目的は管理棟でのショッピングの様子。少し困惑するナギサとノリノリのミカを「荷物は降ろしておきますので」とミネが送り出す。そしてそれを眺めていたサクラコに「たまには君もはしゃいできたらどうだい?」と折りたたみ椅子にちょこんと座ったセイアが声を掛ける。彼女は少し躊躇った後に「では、お言葉に甘えて……!」と二人の背中を追って駆け出した。
下手なスーパーマーケットよりも品揃えの良い売店を買い物かご片手に回る三人。箱入り娘の彼女達にとって、食料の買い出しというのは中々新鮮な体験だった。
「ねえナギちゃん、こういうのってどんくらい買えば良いんだろ?」
「まあ、あるに越したことはないと思いますが……」
「では色んな種類を買ってみる、というのはいかがでしょうか?」
「あ、それいいね!」
肉コーナーでパックに詰められた牛肉を手に取りながら、彼女達は言葉を交わす。とりあえずの基本方針としては、色々バラけさせて買っていく、というので決定。牛タン、ハラミ、カルビ、イチボなどなど輝く赤身がかごを彩っていた。
続けて海鮮コーナー。王道のイカやらエビ、ホタテ、あとは季節のサンマや少し早いが牡蠣なんかを回収し、野菜コーナーでカボチャや人参などを集めた後に彼女達はブラブラと店内を回っていた。
「そういえば、サクラコちゃんはなんでついてきたの?なんか食べたいものとかあった?」
「えっと、実は……」
そう言うと、サクラコはかごを置いてスタスタと何処かへ歩いていく。
そして数分経って、彼女はちょっとした荷物を抱えて戻ってきた。ナギサは「なるほど」と手を叩いた。
「分かった!焼きマシュマロだ!」
「はい、おっしゃる通りです!」
「もしかして、チョコレートフォンデュもなさるつもりですか?」
抱えた荷物の中に結構な量の板チョコと牛乳が混ざっているのを見て問いかけたナギサ。サクラコはコクコクと首を縦に振った。
「あ、じゃあさじゃあさ!チョコレートフォンデュに合いそうなやつ探さない?!」
「確かに、バナナやいちごなども試してみたいところですね」
「ぜひ!ぜひそうしましょう!」
既に山積みになっていた買い物かごに更に上乗せし、彼女達は軽い足取りで歩き出した。