まるで羽虫の様に飛ぶイグアス並びにオールマインド。それを黒を基調とした射撃性能と近接性能、APやEN出力を重視した重量二脚機体、エクスキューショナーに乗る621が追い、ショットガンや蹴り、垂直プラズマミサイルやRaDの30連ミサイルを叩き込み、チェンソーを打ち込むための隙を作り出すべく猛追と猛撃を繰り返す。
量産型シースパイダーの妨害もあり中々スタッガーのタイミングにチェンソーを叩き込めなかったが漸く蠅の様に跳び回るオールマインドに統合されたイグアスの機体をチェンソーが捉える。これで大体半分くらいか。レイヴンはそのタイミングで機体状況を確認する、APは十全、リペアキットは残り1、そしてなによりパルスアーマーが未だ未使用の状態で残っている。
エアが居る現状では量産型シースパイダーも障害物でしか無い。この様子では余裕を持ってアレを仕留められる、そう確信したレイヴンだが、直後に動きを止める事になってしまった。
「てめぇら……纏めて消えろ!」
『!?この反応は……!』
「イグアス……!?何を……!」
先程まではオールマインドが意識の主導権を握っていたのだろうが、如何やらイグアスが一気に前面へと浮上して来たのだ。
機体からエネルギーが発せられ、エアの機体が主を失った様に動きを止めた。
『干渉……!?機体との同調が……!私が手伝えるのは……ここまでのようです……!』
オールマインドは主導権を奪われ、エアは機体から弾き出されてしまった様だ。最早量産型シースパイダーもイグアスが墜としてしまい、障害物も僚機も無い。完全にイグアスとの1対1となった。
「耳鳴りも……鬱陶しい声も消えた……透明だ、気分が良い……後は……俺達だけだ……」
そんな事を言いながら、ブレードを主体の戦法に切り替わったにしてはすばしっこく引き撃ちばかりしながら逃げ回るイグアス。結局の所やる事は何も変わりなく、猛追し、体勢を崩すべく蹴りを初めとした各種兵装で攻め立てる。
「てめぇは何時も……俺の上を行った。クソみてぇな旧世代形……てめぇと俺で、何が違った……?」
何を言うかと思えばそんなそんな答えの分かり切った言葉を投げかけられる。環境も、自らの在処も、何もかもが違うだろうに。そんな答えを言葉煮出すことは無く、只黙々とイグアスに攻撃を行い続ける。
「取り込むべきでは……無かった……イレギュラー」
その言葉は恐らく、自ら主導権を奪ったイグアスと、今正に自らの計画を潰そうとする自分への言葉だろうとレイヴンは当たりを付けた。自分に至ってはイレギュラーも何も、オールマインド自身の失敗が積み重なってこの様になってしまったのだろうに、その挙げ句勝手にイレギュラー呼ばわりとは随分な扱いである。
レイヴンとしては此方が手伝わなければ勝手に潰れていた計画を散々手伝ってやったというのに只言いたかっただけでたろう戯言を抜かしながら此方に銃を向けてきた。終には無様にもイグアスに主導権を奪われ、そのイグアスからも最早余裕が失われつつあるではないか。
『レイヴン……!好機です……!』
「これで決める……」
エアがトドメとなり得るスタッガーに対して言及する。そんな事は分かるがエアとしても見ているだけなのが歯痒くなったが故に出て来た言葉なのだろう。その声音からは緊迫感すら感じる。しかし、距離は離れており、右手武器も両肩にある武器も全てリロード中である。ならばこれが最も手早いとアサルトブーストを噴かし、一気に距離を詰める。
トドメは、リロードを待ち切れずにスタッグしたイグアスへのブーストキックであった、敵機は右腕、右脚と順に爆発しする。
「俺は……てめぇが妬ましかった」
イグアスはブレードを展開し、此方へ向けて振り翳してきた。しかし、その狂爪が届く事は無く、右腕も爆ぜる。
先程の一撃で道連れにしようとしたのだろう。だが、既に機体は限界を迎えもう直ぐ完全に機能を停止する。その直前、イグアスが最期の言葉を紡いだ。
「イラつくぜ……俺は野良犬に……憧れたんだ……」
その言葉を最後に、機体が大きな爆発を起こし、上半身と下半身が泣き別れた。
そして、宙に浮いた機体から覗く頭が、此方を向く。
「我々の……計画が……人類と生命の……可能性が……」
『そのトリガーは、私達が代わりに引きます』
オールマインドが完全に機能を停止しする。
間もなくして、バスキュラープラントが内包しているコーラルが許容量の限界値に達したのだろう。接合部が軋み、大質量のコーラルから発生した引力によってバスキュラープラントの外壁が内側へと引っ張られ、自壊していく。
そして、エネルギーが飽和点を向かえたのだろう、バスキュラープラントは瞬く間に発生したブラックホールへと消え、直後には日蝕のような球体へと変わっていた。
それは瞬く間に周囲のコーラルを吸い上げ、爆発的にその勢いを増していく。
『……コーラルリリースが、始まります。美しいと……思いませんか?』
視界は最早赤から白に変わりつつある。異常なまでの光によって最早視界は意味を成していなかった。
既に真白に染まった意識の中で、一人の、最後まで連れ添った友の声が聞こえる。
『ありがとう……レイヴン』
その声を最後に、レイヴンは意識を閉ざした。
≪≪♢♢♢≫≫
あれからどれだけ経ったのだろうか。コーラルリリースが始まり、エアから感謝の言葉を聞いてからの記憶は無い。本来ならば自らの意識はコーラルの中に溶け。その向こう側で新たな闘争へと身を投じていたのだろう。しかし、自らの身体は強化手術の実験体としての機能以外が死んでいるAC生体パーツの様な状態では無く、健常な肉体であった。
そして、アイビスの火によって灼けた空では無く、雲間から覗く陽光と果てなく広がる晴天、ごく普通の人々の営みが育まれる様な場所だった。
もう既にレイヴンが目覚めてから十五年は経っている。そんなごく普通の生活の中。唯一変わらないものがある。
『行きましょう、レイヴン。入学式に遅刻しては皆に良くない印象を与えてしまいます』
「分かってる。だがそう急かす事も無いだろう、エア。もう少しこの平穏に
そう、こうして脳内に響く声、Cパルス変異波形“エア”の存在である。
そして、レイヴンはこれから、世の中に現状たった二人しか居ない
前作と今作何とか両立させて行きたいですが、リアルが忙しいのとやりたいゲームやAC6が楽しいので恐らく筆が酷く遅い可能性がありますが読者方のコメント等は結構な励みになるので遠慮なく書き込んで下さい。そしてもう一つは誤字や脱字、其れ等に気付いた人は無遠慮に報告お願いします。直せる限り直します。
追伸、次回で主人公の名前公開します