キチガイトリオの外征録   作:氷華陸佐

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はじめましての方ははじめまして、そうでない方は毎度お世話になっております。
禁忌の二作目に突入しました。言わば原作のメインストーリー、双星のコントラスト完結までの繋ぎです。
さて、タイトルで分かります通り本作もまたマトモではありません。

《キャラ崩壊注意》

です。重要なのであえてもう五回言います。

《キャラ崩壊注意》
《キャラ崩壊注意》
《キャラ崩壊注意》
《キャラ崩壊注意》
《キャラ崩壊注意》

計六回の忠告も済ませたところで。それでも読んでくださる方には、ぜひ楽しんでいただければと思います。



プロローグ

 

 ヒュージ。それは今から数十年前に突如として現れた、人類の敵。これまで猛威を奮っていた近代兵器は効果が薄く、徐々に、徐々にではあるが我々はその生存圏を追われていた。

 それに対抗できるのは、リリィと呼ばれる十代の少女達。カウンターヒュージアームズ、略してcharmを操り、今日も今日とてどこかでヒュージと激戦を繰り広げている。

 さて、私の住む三河府にあるガーデン、三河総合女学校もそれは例外ではなく、入学式もとい進学式の直後から戦いにあけくれて──いなかった。

 

「ふぁーあ……」

 

 式も終わり誰もいなくなった教室で、私は一人読書をしていた。本の内容としては分類的に科学になるのだろう、今読んでいるページによると少し昔はタブレット型の携帯端末が当たり前に存在していたらしい。

 まぁ今私が使っているのがそれに該当するのだが。

 前にツレの馬鹿が夏休みの自由研究でやらかして、今やうちの地域にはコレが当たり前になっている。なんなら校内はWiFi完備だし、近所の電気屋に行けばルーターも売ってる。コミファ光に連絡すれば、例え陥落地域だろうと工事だってしてくれる。

 なんだよ《強化リリィから取りだしたブースデッドスキルを用いて半導体を錬成する方法》って。

 と、そこで教室の扉が開く音と共に、聞きなれた幼女の声が聞こえる。

 

「おお、ここにおったか酒井六花(さかいりっか)。失礼するぞい」

 

「失礼すんな帰れボケカス」

 

「最早元ネタの面影も無いのじゃが」

 

 闇暗夜空(やみくらやそら)。この学校の()()()()()()()()。世代的には原初の開闢時代のリリィなのだが、ゲヘナの実験でノスフェラトゥを施された事により不老の存在になったのだとか。

 彼女がババァ言葉で話す時は理事長としての用事の為、私は胡乱げに半眼を通り越して白目で、仕方なく、本当に致し方なくババァの方を見て顎で続きを促す。

 つうか理事長としてだろうが生徒としてだろうが、このババァが一度としてろくな案件を持ってきた試しがないんだが。

 

「お主……まぁよい。今年度でお主と仲の良い後輩二人が高等部となったじゃろ。そこで三人組にはレギオンを組んでもらおうと思ってな」

 

「意味あるんかそれ。まぁ人数に関してはあれが居りゃ心配はないんだろうが」

 

 三人組、その名自体に意味は無い。ただの近所同士で幼馴染が私を含めて三人いて未だによくつるんでいるというだけだ。

 出撃当番も同じ三人で組まれているのでレギオン作る意味はあまりないと思うのだが……まさか。

 

「お、思い至ったようじゃの」

 

「……()()()()()? 私達に」

 

 超忌々しげに私はそう訊ねる。

 ちなみに余談だが、かつて府内にいた優秀でまともなリリィは既に東京とかその辺に永久的な外征に行ってしまっているので、今ここに残っているのは超のつく地域純血主義を含んだ愉快なキチガイ共しかいない。

 

「うむ。既に知っての通り、S級ネストの主であるアルトラ級ヒュージ、ファーヴニルが新潟への侵攻を開始した。柳都女学館が対応しておるが、敗走は時間の問題じゃろうな」

 

「え、なにそれ初耳なんだが?」

 

 更に聞いた情報で少し考えてみたところ、もってあと一週間かそこらだろうと推測する。

 あとなんか戦場に立ってる御旗たるリリィが倒れたら内部分裂してそうな気がする。

 

「で? それとこれとどう関係あるん?」

 

「いやー、国連の役員とかいう七三分けのメガネ野郎がいい加減鬱陶しくての? 中部五大ガーデンとして、いい加減外征の一つでも行ってみたらいかがでしょう? なんて宣うもんでな」

 

 なるほど、つまり私達は贖罪の山羊だと。

 とはいえこのババァに真面目に外征する気は更々ないのだろう。外征レギオンを作ったという建前だけで、未だ人数不足だ何だのという理由をでっち上げて引き伸ばすつもりなのだ。

 

「安心せい、東京辺りで大規模な侵攻でもない限り、外征なぞせんよ」

 

「人はそれをフラグという」

 

 というわけで申請用紙を私の机に滑り込ませたヤツは、そそくさと逃げるようにして教室を後にする。一度プリントを持ち上げた私は嘆息しつつ、栞を挟んだ電子書籍を閉じるとLINEを開いて馬鹿二人に連絡するのだった。

 そして翌日の放課後、理事長に教えられたレギオンの控え室で待つ私なのだったが。

 

「だーれも来やがりやしねぇ」

 

 何度画面を見返しても既読すらつかない。そもそも気づいているのかも怪しいし、逆に素直に来たら来たでDNA鑑定を視野に入れた本人確認を行った上で正気を疑うが。

 

「しゃーねぇ、探しに行くか」

 

 このままほっといたらレギオン結成がいつになるかもわからん。大きく伸びをした後盛大に嘆息しつつ、私は部屋の外に出るのだった。

 え? 部屋を空けといてもいいのかって?誰も来るはずないじゃん?

 さて、早速アホ後輩の一人をとっ捕まえに工廠科へと向かう。

 ところで我が校では工廠科は、寮の代わりに個別の個人用工廠が与えられる。つか工廠を共用化しようものなら共同研究で何やらかすかわかったものでは無いとも言う。キチガイ共に徒党を組ませてはいけない。

 目的の部屋が見え、ちらりとネームプレートを確認したその瞬間。爆発音と共に目の前で扉が吹っ飛んだ。

 呆れつつ扉の反対側の壁を見ればツレ唯一の工廠科、焦げ茶色のミドルロングしか特徴の無い少女、綾瀬果穂乃(あやせかほの)が目を回していたのだった。

 

「──いやあ、参りましたね」

 

「参ったのはこっちだわ。LINE見てねぇの?」

 

 しばらく後、目を覚ました果穂乃に案内されて私は、何故か内装が全くの無事な彼女の工廠へと入っていた。

 なんでも課題研究で進展があったから見て欲しいのだと。

 

「LINEですか? 研究に没頭したくて電源を切ってました」

 

「んなこたろうと思った」

 

 スマホを取りに行こうとする果穂乃を制し、口頭で簡単に説明する。

 それでとっとと次のやつを捕まえに行こうと思ったのだが、それを止められた。

 

「お待ちください。先程も申しました通り、見せたいものがあるのですよ」

 

 そうして手で指し示されれば、最初から視界の端に映っていたソレを認識せざるを得ないだろう。

 三秒に一個ほどのペースで揚げたてのファミチキを吐き出し続ける、変わり果てたケイブの姿を。

 

「……え? なに? お前あの控えめに言って頭のおかしい研究、マジでやるつもりなの?」

 

「はい! とりあえず初日でここまでこれましたが、これからが正念場ですね」

 

 うちの学校では、工廠科の生徒は中学と高校でそれぞれ一つずつ、己自身で課題を決めて研究を行う。

 こいつの中学時の課題《散布するとヒュージがフローラルな香りになる薬品》も大概頭おかしかったが、高校進学前から決めていた《ファミチキからマギを確保する方法》はヤベェ方向に成長しているだろ。

 つか仮にこの課題が達成出来たとして一体何の意味があるのだろうか。

 

「……よーし、次はあの神話生物だな」

 

「えっ、待っ、せめて何か感想を……!」

 

 何も見なかった聞かなかった事にして部屋を出る私に追いすがる彼女に、私は笑顔を浮かべてキチガイと吐き捨てるのだった。

 と、そこで不意にヒュージ襲来のアラームが鳴り響き、私達は一度最後の一人の捜索を諦めた。そして振り向く途中にあった廊下の窓へと目をやった際に、それは見えた。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 冷や汗を流し硬直する私達の前に、一見大人しそうな優等生の印象を受ける、ブロンドの長髪少女が舞い降りる。

 その容姿に不釣り合いな巨大な槍型charmを携えた彼女──東雲陽菜(しののめひな)は、何事も無かったかのようにエメラルド色の瞳を細めて微笑んだ。

 

「ただいま戻りました」

 

「「何してんのお前」」

 

 後に、頭に螺という概念のない未確認生命体の被告人はこう弁解する。ペットのコモドオオトカゲと遊んでいたらヒュージが出現したと。いやなんの弁解にもなってねぇわ。

 翌日。我が校の環境委員会により無事山は元通りに直され、私達三人は改めてレギオンの控え室へと集まっていた。

 

「つーわけでレギオン名決めまーす。何か意見ある人ー?」

 

「「鉄華団」」

 

「外征先で華々しく散るつもりか貴様ら」

 

 しかもその名前だと隊長である私の死が確定するし、最終的に組織が空中分解するんだが。

 というかもしかしなくともコイツらまともに考える気がない。

 陽菜はペットのコモドオオトカゲやヒグマと遊んでいるし、果穂乃に至ってはネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲型charmを制作している始末。つか完成度高ぇなおい。

 まぁ最初からこいつら二人には期待していない。要は私の独断でつけていいという言質が欲しかっただけだ。

 とはいえ外征レギオンとして登録される以上、外国語でつける方向に考えた方がいいだろう。

 スマホで安心と安全なWikipediaを検索したところ、どうも他校では厨二病っぽい名前をつけるのが流行ってるらしいし。

 他の地域から見た私達の特徴は……うんまぁキチガイなのは確定として、ポジティブに考えれば自由とかその辺か。外征先でもそれは変わることない。つまり不変という単語を自由平等博愛の国フランスから語を取って。

 

「LGエテルネル」

 

 口に出してもさして違和感は無い。うん、これでいこう。

 ちなみに馬鹿二人は結局最後まで興味を示すことは無かったとだけ言っておく。

 そしてその約半年後。

 鎌倉の百合ケ丘女学院というガーデンが、担当ネストの一つである由比ヶ浜ネストを討滅したらしい。しかしそれからそれほど経たないうちに、その情報は私達三河府のリリィ達にも伝わった。

 新宿にあるエリアディフェンスが崩壊し、それに伴い新型の特型ヒュージが出現したと。

 





【簡単な人物紹介】
酒井六花……本作の語り部兼主人公。見た目のモデルはFateの姫ギル黒髪黒目ver。戦闘における頭脳枠。
綾瀬果穂乃……名状しがたいヒロインだったもの。見た目のモデルはカゲプロの楯山文乃。戦闘以外での頭脳枠。
東雲陽菜……ある意味主役の神話生物。見た目のモデルは作品名キャラ名共にヴァイオレットエヴァーガーデン。破壊神枠。
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