今回はぶっちゃけ最後のオチが書きたかっただけですはい。そして遂に原作キャラと邂逅します。可哀想に。
我がガーデンが一機だけ持つ中古のガンシップ、名をシンザン。私はこいつに乗るのがあまり好きでは無い、何故かって?
あだ名がバカガラスの時点で察して欲しい。
窓から見える東京の景色は酷く、壊れた街並みの至る所から煙が上がっていた。これから待ち受ける戦いを思うと、窓に当てた手に力が入──
「うーん、悩みますねぇ。このルートですとやはり皇居を経由する方が……」
「あ、トランプ忘れました」
他二名はすっかり修学旅行気分だが。
机の上にはそれぞれが五百円以内で買ったお菓子が広げられており、陽菜はすごい今更荷物の確認を、果穂乃は付箋まみれのるるぶとにらめっこしている。
おう今東京それどころじゃねぇんだわ。
さて、当然と言えば当然かこの非常時にゆったりとガンシップを着陸させている暇も場所も無いため、私達三人は適当なところでフライアウェイする。
それぞれが荒ぶる鷹のポーズやスパイダーマッのポーズで着地すると、早速反応があったヒュージサーチャーを見た。
「ほーん、こっから南にそこそこ居るな」
でもやっぱ空白地帯が見えるあたり、こないだのファーヴニルによる呼応現象は異常だったらしい。
あれはやばかった、なにがやばかったってヒュージの数が多すぎてどう見ても座標が重なって挙動がバグってたし、時折ゲッダンもしてた。腹筋に悪いから切実にやめてほしい。
一番最悪だったのは現れたスモール級が尽くリアルなゴキブリ型だった事。我がガーデンのリリィ達が陥っていた状況は、まさに言葉通りの阿鼻叫喚だった。
ともあれまずは今戦闘しているであろう場所に乱入して、詳しく話を聞くのが定石か。
「んじゃお前ら、行くぞ」
「まずは新宿御苑ですね!」
「違ぇわ」
さて、レギオンたるもの一人はレジスタ持ちがいるだろうし、突然戦闘に参加しても驚かせてしまう懸念を抱かなくていいのは楽だ。
まぁうちの三人の中にレジスタは居ないが。
多分戦闘が一瞬中断したのは突然目の前にクレーターが出現したからだろう、見た目リリィがパンチで地面に穴を開けた様を見た反応としては当然か。
「ちわーっす、三河屋──間違えた、三河総合女学校でーす。外征と救援に来ましたー」
「え、あ……はい。ありがとうございます?」
ぽかんとした表情も束の間。流石は東京ガーデンのリリィ、すぐさま我に返ると戦闘へと意識を向ける。
「気をつけて下さい! そのヒュージ、素早い上に私達の攻撃を学習します!」
その警告に、私は警戒度を一気に上昇させる。とはいえ学習できるのはこちとら人類も同じ、私は読まれた行動を逆に読み返してやろうと、そのクリオネの形をした特型ヒュージをしっかりと観察──
「捕まえました」
『ゑ?』
する必要は、あるのだろうか。
縮地もびっくりな速度でヒュージの前に立った陽菜は、その頭部を片手で掴みあげていた。要はアイアンクローである。
もが……こうとしているのだろうかしばらく震えていたヒュージだったが、展開した触手は無惨に引きちぎられる。最後の手段だろうか分裂を試みようとしたものの、増えないでくださいの声と共に再び一つに文字通り圧縮されていた。
元からとはいえ更に歪な奇形となったヒュージが沈黙すると、それを投げ捨てた陽菜が帰還する。
「終わりました」
「お、おう……お疲れ」
あまりにもあっさりとした終幕。故に私は一瞬だけ気が抜けた、抜いてしまった。だから気づくのが遅れた。というのも言い訳か。
素早く上空から降りてきた、先程と同じ種類のヒュージ。落下するように降りてきたソレは、同族であるはずの遺骸を食べ始めた。
「くっ! 撃て!」
一泊遅れて弾幕が形成され、盛大な土煙が巻き起こる。しばらくして晴れたその先には、クラゲ型のヒュージがいた。
「進化までするのかー。どうしよう、一度撤退するのも手だけど」
というか、本音を言うならそうしたい。
ただまだ私達に余力があるのと、このタイミングで二つほどレギオンが合流したのでまだふんじばる。
「ヘリオスフィア持ちは交代でAZ中央で耐えて、近接攻撃得意な人達は左右から挟撃。レジスタかブレイブ持ちはその少し後ろでサポート。射撃得意な人達はTZの層を厚くして援護してくれ、テスタメント持ち、または戦闘自体が得意じゃない人、フェイズトランセンデンス持ちも温存したいからBZに集合。陽菜は殴れ、ひたすら殴れ」
咄嗟の為無意識にその場を仕切ってしまったが、三レギオンの方々は快諾して従ってくれる。全員いい子すぎて涙を禁じ得ない。
それから少しばかり経ったものの、流石に疲労が蓄積してきたか戦況は拮抗していた。
「……しゃあないか。果穂乃と……その隣の人、少しだけ二人で耐えててくれ。陽菜、カモーン」
「なんでしょうか」
「charm起動していいぞ」
「本当ですか」
分かりにくいが僅かに表情を明るくさせながら陽菜はこくりと頷くと、それまでその辺の地面に刺さって放置されていた己の得物を抜いた。そしてそのcharmへとマギを送り込むと、ガンモードへと変形させる。
「全員、左右に大きく退避してくれ!」
私の急な指示にも、彼女達は驚いた表情をしながらも従ってくれる。多分原因は、味方陣営から発せられた暴力的な濃度のマギだろう。
「マギ装填。行きます……発射」
いつもの平坦な声とは裏腹に路面を削りながら直進する極太のビームは、ヒュージの展開したマギリフレクターを紙屑のように引き裂いて着弾、大爆発を引き起こす。
さてこれで東京の割と大きな交差点が一つ、まるまるお釈迦になった訳だが……意外にしぶとい。あれを食らって生きてるとか耐久値はギガント級以上なんじゃないか?
「あ! ヒュージが逃げます! 追いかけないと!」
白い制服に赤いリボン状のタイが特徴の方のレギオン隊長がそう言って追いかけようとするも、その動きはややぎこちない。
くすんだ赤色の制服と白黒の制服のリリィ達ともそれに追従しようとするのを、私は頭上で手を叩く事で引き止める。
「はいストーップ。気持ちもわかるけどどうどう落ち着いて。むしろ戦闘継続してたら危なかったでしょ、向こうさんから逃げてくれたんだから、有難く少し休ませてもらおうぜ」
私のその言葉には、今度は他校のリリィ全員が不満を露わにする。挙げられた反論に適当に切り返し、トドメに自己紹介と状況の共有を頼む事で何とか納得してくれた。
というか割と切実に自己紹介くらいはしてほしい。貴女達は一体何処の誰ですか?
でとりまわかった事は、私達と似たようなしかし色がくすんだ赤色のセーラー服が神庭女子藝術高校のグラン・エプレ、紅白がエレンスゲ女学園のLGヘルヴォル、白黒が百合ケ丘女学院のLGラーズグリーズ。
それぞれリーダーが今さん相澤さん一柳さんで以下割愛。
貰った情報は、概ね外征前に聞いた話と一致する事を確認。
そしてついでとばかりに、私達含め四レギオン混成部隊の指揮官を任された。まぁ普通のリリィならやった事あるのはせいぜいレギオン単位の指揮だけだろうし、今やちょっとした中隊レベルのこの人数故に仕方の無いことではあるが。
「めんどくせー、もうこのまま帰っていいか?」
「おそらくこのまま帰還しますと、まず間違いなく理事長にぶち殺されるかと」
「くそう、帰ったら労基に訴えてやる」
そうこうしている間に全員の小休憩が終わり、その巨体故にどこに向かったのか丸わかりのヒュージの後を追う。
その先で見たのは、都庁の一番上で繭のような形態に変化したヒュージの姿だった。
皆は動かないうちに攻撃を加えたいと口を揃えていたし、実際司令部からも討伐司令が来ていたが、私はそれに対しまたしても反対意見を口にする。
「今ここで一柳さん達が頑張る必要は、果たしてあるのかな? もし決定打を与えられなかったら? 更に強さの増したヒュージの成体に、更に消耗した私達で勝てるのかな? 最悪無駄死にするかもしれない」
弱ったヒュージが隠れているとかならそのまま攻めても良かったが、見た感じ防御にマギを全振りしつつ回復に専念してやがる。
ありゃたとえさっきの陽菜による攻撃だとしても仕留め切れるかどうか。
うちの生徒会──とまではいかなくてもせめて風紀委員でもいてくれりゃあ余裕なんだが、あの地域純血主義という名の引きこもり共が外征を決意するより先に東京が滅びそうである。
「で、でもっ」
「おそらく敵は、今までの万全以上で復活してくる。だったら私達も、せめて万全に近付いた状態で相手するのがベストなんじゃないか?」
リリィだって人間だ、人間駄目な時は何しても駄目なのだ。引き際を間違えれば甚大な被害が出る。
具体的に言うと、ここで粘っていたら羽化したヒュージの攻撃で部隊が分断されそうな気がする。
「わかり……ました。確かに、少し冷静ではなかったかもしれません」
「そうね、私達もcharmも、既に消耗しきっているわ。万が一を想定すると、一度下がった方が得策ね」
しゅんとする一柳さんを慰めるようにして、白井さんがその肩にそっと手を乗せた。
そしてそれがLGラーズグリーズ内、引いては他のレギオンにも伝播していく。
「わかりました、グラン・エプレは酒井さんの意見に同意します」
「ヘルヴォルも同じです」
「OKOKありがとう。その代わりこのヒュージは必ず倒すからさ、任せといてよ」
そうして一度駅方面まで下がった私達は、臨時の砦となっている施設でその身を癒していた。きちんとした食事を取り、きちんとした場所で休憩することでマギの回復を早める。
本当は寝て翌日攻略開始、といきたかったがそうは問屋が卸さない。おそらく今夜中には奴が羽化する。
一度撤退してしまった以上、あの場所に戻るだけでも一苦労だろう。今頃は、おそらくヒュージがひしめいてると思われる。
だから私は最終兵器として、魔改造したドイツの秘密兵器P1500を用意した。え、どこからそんなもん持ってきたって?
そこにヒュージに壊された建物やら車の残骸があるじゃろ? 三河府民たるものものづくりに関してはこの程度、小学生でも夏休みの工作で作れる。
「よし皆、準備はいいな? んじゃしゅっぱーつ!」
東京組と鎌倉組が困惑する中、後方に取り付けたロケット用ブースターを唸らせて、丑三つ時の街中を時速八十キロで爆走する。同時に大音量で流すのは、私達にとっては古きかの良曲、擬人化した競走馬がバクシンするあの歌だ。
道を塞ぐ大量のスモールとミドル級は瓦礫ごと轢き飛ばし、遠距離から攻撃してくるものは十五ミリの鉛玉と十五センチの榴弾を自動照準かつ自動射撃でプレゼント。
たかが七ミリや五ミリで有効打を与えられるのなら、倍や十倍にすれば木っ端微塵になるのは必定だろう?
「よっしゃ見えてきたな! 果穂乃!」
「おまかせを!」
唯一手動の八十センチ列車砲が動き出し、繭型のヒュージ──の少し下を狙う。轟音と共に発射された榴弾は、都庁の基礎フロアを爆散させた。
クレーン代わりに陽菜が素早く装填を行い、続けて二発ほど発射。盛大な地響きと共に、都庁は土煙を上げて崩れ去った。
『何してるんですかーっ!?』
「え、だってあんな高いところにいたら攻撃届かんじゃん」
つまりコラテラルダメージという訳だ。軍事目的の為の、致し方ない犠牲なのだ。
瓦礫の上に乗っかる繭、という形になったヒュージは未だ沈黙を貫いている。余裕の現れなのかそれとも、他に目的のある人物でもいるのか。
と、ここで一柳さんからノインヴェルトなるもののご提案。
「ノインヴェルト? あー、なんだっけ? うちの隣の尾張府でやってる、九台の車両型charmでヒュージを轢き飛ばすやつだっけ?」
「それはシートヴェルト戦術ですね。ノインヴェルト戦術は、アレですよ。近所の子供たちの間で昔から流行ってる……」
「あー、そっちか、懐かしい。子供の頃に私達もやったよな、近所にクラブもあったし」
「……? なんでしたっけ」
陽菜というまだ鶏の方が記憶力がいい一名を除いて果穂乃と納得していると、私達の言葉に違和感を覚えたのか代表して白井さんが訊ねてくる。
「えっと、何を言ってるのか分からないのだけど……おそらく違うと思うわ」
「おん? 違った? 球を九人だか五人だかでパスしあって、最後にヒュージへぶつけるやつっしょ?」
「あら? 合ってるわね?」
と目を点にしたのは今さん。どうやら私達の認識は合ってたらしい、よかった。
という事で私達も数年、下手すると十年ぶりくらいなので上手くいくかは不安が残るが、先鋒は任せてもらおう。
私達が横一列に並ぶと、普段はレギオンの司令塔を担っているのであろう方達が、物珍しげな表情をしつつも真剣な目付きでこちらを見た。
人数が少ないだとか、ポジションがどうのこうのと呟いてるが、まだ試合開始前の挨拶だぞ? まぁいいか。
「よーし、じゃあ行くぞ。せーのっ」
私の合図に全員が息を吸い、そしてピッタリと重なった声を発する。
「「「ヒュージ! ノインヴェルトしようぜ! お前マギスフィアな!」」」
『は?』
まずは駆け出した果穂乃が手近なミドル級ヒュージを蹴り飛ばし、それがマギスフィアとなって宙を舞う。
他のヒュージを避けつつパスを交わし、フィニッシュショットは陽菜へと託した。
しばらく拮抗していたもののマギスフィアが打ち勝ち、特型ヒュージに超! エキサイティン! して爆散した。
「よっし、お疲れ!」
三人でハイタッチ、胴上げまでを済ませてから、私は改めて他レギオンへと笑顔で向き直った。
「どうだった? 私達のノインヴェルト戦術」
『それノインヴェルト戦術じゃない』
どうやら違ったようである。
【適正ポジション】
酒井六花……AZ
綾瀬果穂乃……AZ
東雲陽菜……FW