誠に申し訳ございません。少しギャグを書くモチベーションが消えてまして、公開予定が未定のシリアス系の別のアサリリ小説執筆してたというのが内情です。
ただラスバレのメインストーリーが更新される限り失踪は絶対に死んでもしませんので、数年単位で更新が途絶えた場合は、ご冥福をお祈りして頂けますと幸いです。
この日、エレンスゲ女学園のレギオン一位と二位の間でとある対立が起きた。
すなわちきのこたけのこ戦争である。
きっかけは私達がエレンスゲに遊びに来た際のお土産にコンビニで適当に買ったお菓子を渡した時に、単純に好みの問題としてどっち派かを聞いただけだったのだが……それがマズかった。
この対立はエレンスゲの校長と教頭を巻き込んで激化の一途を辿り、後にリリィ同士の戦いにまで発展する事になる。
なんかついでにゲヘナの穏健派と過激派だとか、リリィとしての戦い方だとかでも対立していったようだが、まぁそこは些細な事だろう。
私達は唯一の中立派である佐々木さんの味方となり、現在なんか人工的に作られてそうな人型のヒュージと対峙していた。
サイズはスモール級なれどその威圧感は凄まじく、気分的にはギガント級を見ているようだ。
「……あれの尻にCHARMぶっ刺したらどんな反応するんだろ。気にならない?」
「「確かに、気になりますね」」
「?」
純真な佐々木さんは首を傾げていたものの他二人は同調してくれた為、ふと思い浮かんだ私の素朴な疑問を試すことになった。
結果だけを言うと、まさに悶絶する化け物の図ができあがった。その様子を撮影してインスタにアップしたところ、バズりかけた所で謎の垢BANをくらった。悲しい。
しかしそのヒュージは私がそうしている間に立ち上がっており、尻に私のアステリオンが刺さったまま逃亡した。
「「あっ……」」
呆気に取られているうちにその反応はヒュージサーチャーからも消えうせ、完全に見失う。しかし今は一刻も争う状況の為、それを無視して元の目的を優先する。
そして急行した先では、予想通りヘルヴォルとクエレブレが戦っていたが、主にヘルヴォル側には異様、としか言えない雰囲気が漂っていた。
「さあ! 貴方も私と共にリアクション芸人として、エレンスゲの悪名を濯ぎましょう!」
「嫌よ! 意味わかんないし! というかソレをどうするつもり!? 予想はつくけども!」
まず盾の乙女の隊長は手にいつものブルトガング──ではなく、湯気の立ち上る見るからに熱そうな煮卵を掴んだ箸を持っており、抵抗する松村さんと取っ組み合いになっている。
ちなみに松村さんの鼻は既にザリガニによって挟まれており、その痛みによってか彼女は涙目になっていた。南無三。
「ねぇ真琴? どうして私に武器を向けるの?どうして私から逃げるの? どうしてどうして真琴真琴マコトマコト……」
「だからあたしは真琴じゃないって!」
芹沢さんは安定剤と入れ替えておいた筈のハッピーターンの粉で完全にラリっており、現在対峙している賀川さん含めて、目に映る全ての生物が真琴さんという人物に見えているらしい。
仮にプラシーボ効果が働いているのだとしたら安定剤の効果が現れるはずなのだが、どういう理屈なのだろう。
「敵は、殲滅する。確実、正確に……」
「くっ、ぷふ……っ。ああもう! 格好と台詞のギャップが激しすぎて上手く戦えない!」
森本さんと戦っているのは、消去法で初鹿野さんだろうか。ガーディアンスーツと入れ替えておいた、目が多少イってしまっているゆるキャラの着ぐるみを纏っているせいで外観からは判別出来ないが。
梨の妖精がCHARMを持って暴れまわる様は何ともシュールな光景に見えた。
「ねぇ、あたし、どうしたらいいのかなぁ……」
「ほんとにな……どうしてこうなったんだか」
前述のヘルヴォル三人とは違う意味でハイライトの消えた瞳を、揃って虚空へと向けているのは飯島さんと牧野さん。
ぶっちゃけヘルヴォルの中だと飯島さんが一番の被害者に見えなくもないが、全くの気のせいだろう。
「けんかは、だめっ!」
まず聞こえたその声に、いつの間にか佐々木さんが私達の傍から消えていた事に気づく。
ついで声の聞こえた方である芹沢さんと初鹿野さんの方へと目を向けると、そこには頬へのビンタで文字通り二人を張り倒す幼女の姿があった。
衝撃波を生み、音を置き去りにする速さで二人が建物にめり込んだが。
「──あんたはリアクション芸人でもないし、相澤一葉でもないのよ!」
なんか向こうの方では相澤さんのアイデンティティが崩壊したような音が聞こえるが、今はそれどころでは無い。
まさかの味方への攻撃で発覚した、二人目の神話生物の誕生。その事実に私はただただ恐怖していたからだ。
その翌日。リアクション芸人という自己斉一性を否定された事により意識不明となった相澤さんを除くヘルヴォル四人と共に、裏で進められていた過激派による記録を見ていた。
まぁエレンスゲに来た初日の遊びとしてハッキングをしてるので、私達は既に知っていたが。
一つ気がかりなのが、教頭が自殺したという点。……なるほど、相澤さんに施された実験と照らし合わせるに、そういう事か。
その日から、どこかで生きている筈の教頭と私による駆け引きが始まった。
しかし今回は相手の方が一歩上手だったようで、私達がヘルヴォルの穴埋めで代わりに出撃していた際にそれは起こった。
神話生物の一匹がお眠である真夜中を狙い、突然教頭が襲来。護衛に当たっていたまだ人間の範疇の強さであるヘルヴォル三人を、いとも容易く蹴散らして相澤さんを拉致した。
せめてもの抵抗として、次善の策として用意していたGPSを付けることには成功したらしいが。
その後正式に教頭の捕縛要請が出され、私達もまた同行していざ殴り込みに。
教頭の居場所である独立ラボの周囲にも内部にもヒュージがひしめいていたが、二体かつお眠では無い神話生物の前では濡れたポイよりも脆い。
校長率いるクエレブレよりも先に最深部へと到達したヘルヴォルと私達。そこに現れた教頭は、得体の知れない笑みを浮かべて口を開いた。
「ようこそ、ヘルヴォルの皆さ──」
「一葉をかえしてぇぇええッ!」
「月牙天衝」
しかしそれは、二人の少女により阻止された。
弾丸以上の速度で飛来した二振りのCHARMが教頭を吹き飛ばし、壁へとめり込ませる。
丁度合流しその光景を見てしまった校長及びクエレブレの皆さんが驚くも、直後更に驚くべき事が起きた。
どう見ても操られている白髪の相澤さんと共に現れたのは、一体のヒュージ。しかもそのヒュージからは教頭とおもしき声が、直接脳に響いてくる。
「フフフフ……アハハハ……! さあ、相澤さん、最終実験を開始しま──」
「「しつこい」」
「くぁwせdrftgyふじこlp!?」
しかし二度目の登場もまた同じく遮られ、二人による前後からの光速の連続殴打をくらいその場に崩れ落ちた。
今度は相澤さんの方に駆け出した佐々木さんに一瞬戦慄したが、そちらはそちらで既に飯島さんが相澤さんにマウントポジションを取ってタコ殴りにしている。
なので私は構わず、二重の意味で変わり果てた姿になった教頭先生へと駆け寄った。
「教頭!? なにやってんだよ、教頭……!」
「グ……グガアアアアア!」
「うるさいです」
起き上がりかけた教頭は最後の力を振り絞って負のマギを展開しようとしたが、陽菜に軽くはたかれた事により再び光の速さで地面とキスをする羽目になった。
「なによ……全然、敵わないじゃない……」
「きょ、教頭……あっ、ああ……」
「なんて声出してるのよ、部外者のキチガイのくせにぃ……」
力無く浮かび上がりゆっくりと前進する教頭の視線からは本気の怨嗟を感じたし、言っている事も至極もっともではあるのだが、今そんなものはさして重要では無いだろう。
ほら、果穂乃も空気を読んでスマホでフリージア流し始めたし。
「だって、だって……」
「私はエレンスゲ女学園教頭であり、ゲヘナ過激派の西村乃恵美よ。人類の為、ひいては栄光の未来の為。これくらいどうって事ないわ……」
なんか後ろで校長が、リリィを犠牲にして作られる未来など認めるわけにはいかない、とか言って周囲も同調しているが、丁重に無視した。せっかくの面白──ゲフンゲフン感動のシーンに教頭が付き合ってくれているのだ、私はそれを演じ続ける。
それと途中で見えた、何故か顔面がボコボコになっている相澤さんも見なかったことにした。正気には戻ったようだが、代わりに美少女としての尊厳を失っていた。
「そんな……人類なんかの為に……」
「たとえ非道な方法に手を染めてでも、人類の未来を守るのが私達過激派の役目よ……」
「でも!」
「いいから行くわよ。皆が待っているの。それに……」
教頭は私達全員を睥睨する。
最期まで実験体としてしか見ていなかったリリィ達に、最後の言葉を残すべく。
「ゲヘナは止まらないわよ。ヒュージが止まらない限り、過激派はその先にいるわ。だから、止まるんじゃ、ないわよ……」
遂に浮かんでいたその身を床に落とし、うつ伏せになって倒れる。一本の触腕を前へと掲げ、前方を指し示しながら。
ぶっちゃけエレンスゲに来てから数回しか会わなかった教頭がどんな人なのかも、どんな過去があったのかも全く知らんけど、マギの粒子となって消えゆく教頭の顔はどこか満足気な様子だ。
彼女は何に満足したのだろう。それともリアクション芸人と化したヘルヴォルと関わっていくうちに感化されトチ狂ったのだろうか。
完全に消滅し、天井へと吸い込まれていくように消えゆく粒子を見上げながら、私はそっと呟いた。
「……オルガ?」
『何コレ』
ヘルヴォルとクエレブレ全員の声が、初めて綺麗に重なった瞬間だった。
【スキラー数値】
酒井六花……立原さんよりかは高い。
綾瀬果穂乃……立原さんの数十倍はある。
東雲陽菜……フリーザ様の戦闘力と同じ数値しかない。