キチガイトリオの外征録   作:氷華陸佐

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 気付いたら一年近く経ってました申し訳ございません。少々執筆どころか妄想自体のモチベが消え去っておりました。
 キチガイ成分を再摂取するべく検索した所、なんと拙作のリスペクト元の作者様が復活しておりました。ウレシイ……ウレシイ……。
 ところでサングリーズル編が剣誓ミームのせいで感動シーンに浸れないのどうにかなりませんかね。



ルナティックブーメランサー

 

 あれからしばらく経ったが、私達は未だに自分の府に戻れずにいた。原因は勿論、あのジャガーノートとやらに奪われたままである私のアステリオンだ。

 今は箒に三角定規二つとダミーコアをくっつけた急造品でなんとかしているが、やはり変形速度に難があるし切れ味も悪い気がする。

 という事でエレンスゲ校長の知らせで、私達とヘルヴォル、クレエブレはジャガーノート目撃情報のあった場所へと来ているわけだが。

 

「見つけました! ジャガーノートです!──っ、あれは……」

 

「アステリオン!? そんな……! 誰かやられてしまったというの……!?」

 

 あれは私のアステリオンです。なんて声をかける間もなく、必死の形相を浮かべたヘルヴォルとクレエブレがジャガーノート目掛けて突っ込んでいく。

 というかこの状況を鑑みるに、私の持ってるコレを未だに皆がアステリオンだと認識している事になるのだが。

 それはそれとしてヒュージの尻に刺さるCHARMを、見た目麗しい少女達が追い求める様は中々に異様な光景に見えた。

 

「戦況はこちらが有利! ヘルヴォル、クレエブレ合同、ノインヴェルト戦術を開始します! 但しCHARM回収のため、フィニッシュはダイレクトとします!」

 

「でしたらフィニッシュはわたしが!」

 

「任せたわ! 結爾!」

 

 しかも故人(彼女達の中では)の為という名分があるからか、ヘルヴォルとクレエブレ間の連携力がいつもより凄く、更に言い出せない雰囲気となる。

 遂にヒュージまでCHARM代わりにぶん回すようになった陽菜を見て現実逃避していると、不意にジャガーノートは攻撃のフリをして逃走、またしてもお預けを食らったのだった。

 というわけで現在青ヶ島。ガーデンから送られてきた情報によるとG.E.H.E.N.Aが人為的にアルトラ級を造ろうとしているらしく、その調査とジャガーノート追跡の為に赴いていた。

 それぞれいつの間にか人数が増えていた一柳隊やグラン・エプレと合流し、島民を島の外に避難させてから謎の繭討滅作戦を開始する。巻き込んじゃうと危ないし、万が一討滅と避難の二面作戦になるとめんどくさいからね。

 東西南北からそれぞれのレギオンが攻め入る包囲殲滅陣にて進撃中、一柳隊の方でジャガーノートが出現したのが見えた。

 戦闘経験の観点とアステリオンの件からエレンスゲ特命部隊と私達で当たる事とし、持ち場を離れてジャガーノートへと突撃する。

 

「グンタイアリはグラン・エプレが抑えてくれてる! 行けっ、陽菜!」

 

「ばっちこいです」

 

 今回は雑魚に構う必要が無いと判断し、ジャガーノートへと陽菜をぶつける。残像を置いてジャガーノートへと肉薄した陽菜はその頭を掴みあげるとほぼ同時に、謎の繭に向けてぶん投げた。

 ……ジャガーノートと繭を同時に破壊しようと、類人猿かも怪しい頭で考えてはくれたのだろうが。

 今回ばかりは本当に運悪く、それが裏目に出た。

 

「──っ、果穂乃っ!」

 

「はいっ!」

 

 ジャガーノートがまず繭を取り込み、その後地下へと吸い込まれるように消える。途端に吹き出す負のマギの奔流を、間一髪で果穂乃のヘリオスフィアが防いだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、目を開けた私の視界に映るのは巨大なヒュージの姿。

 

「定盛砲発射用意、撃ちます」

 

「次弾装填、松村砲用意!」

 

「発射」

 

 空気抵抗を減らした体勢でCHARMを構えつつの定盛さんとは対照的に、今までの態度とは裏腹に可愛らしい悲鳴を上げながら推定アルトラ級へとカッ飛んで行く松村さん。

 私がアレを認識した瞬間には既にそうなっていた為、後輩二人の伝達神経は脳まで届いていないのかもしれない。頼むから届いて。

 

「貴方投げられたのになんでそんなに冷静なワケ!?」

 

「防衛構想会議の時に投げられ過ぎて慣れたのよ。というか今気付いたけど、投げられてる時だけマギの出力が上がるのよね、新しいサブスキルかしら」

 

 とはいえ状況はあまりよろしくない、いくら陽菜とはいえ特型のアルトラ級とあっては瞬殺は難しい。完封はしているが。

 そっちは時間をかければなんとかなるが、同時に現れた無数のラージ以下のヒュージに当たっている三レギオンが物理的に潰れそうなのだ。

 第二の神話生物となった佐々木さんを軸にした撤退作戦を心の中で練っていると、上空にガンシップが見えた。そこから降りてきた一つの影が着地した瞬間、そこの中心に半径十メートル内のヒュージが同時に真っ二つとなる。

 

「ほう、その制服……三河総合女学校か」

 

「ん? おお、誰かと思えば高松祇恵良さんじゃん」

 

 刀型のCHARMを振り切った体勢の祇恵良氏は、こちらに気がつくと歩み寄ってくる。

 その間も時折手首がブレてはヒュージの首が落ちていくその様は、比較対象が三河武士か薩摩武士しか見つからないくらいだ。もしくはガーデンの地理的に、実は鎌倉武士の生き残りなのかもしれない。

 

「して、夜空姉さ……こほん、夜空殿はお元気か?」

 

「あれ? 会ってないん? こないだ老人会の面子で、御蔵島に旅行行ったとか聞いたけど」

 

「……だからG.E.H.E.N.Aのラボが更地になっていたのか」

 

「あの人ら何してるん?」

 

 着々と他のガーデンからの援軍も到着していた為いくらか余裕が出てきており、その隙に祇恵良氏から話を聞く。

 曰く自分のガーデン──この場合は百合ケ丘のリリィがG.E.H.E.N.Aに連れ去られたので、連れ戻しついでに御蔵島に乗り込んだところ、まるで建物なぞ最初から無かったかのように空き地となっていたらしい。

 

「その人達、会ったかも。私が見たのは黒髪の小さな女の子と、槍型のCHARMを持ったおじいさんだった」

 

 とその時、ヌルッと会話に挟まってきた安藤さんがそうこぼす。という事は件の事件の被害者が彼女なのだろう。

 

「黒髪幼女はうちの理事長やね、祇恵良さんが言ってた夜空って人。んでもう一人は……多分、というか間違いなく近所に住んでる本多のジジイだな」

 

「その人、CHARMユーザーなの?」

 

「え? あの槍CHARMじゃないよ? ただの槍だよ?」

 

「は? ギガント級しばき倒してたけど?」

 

 まぁあのじーさんは仮にも老人会のナンバーツーにして自治会四天王の一人だし。

 丁度一年くらい前に、裏山に現れたアルトラ級を本多流槍術で蜂の巣通り越して粉微塵にしてたのが記憶に残っている。

 

「ろ、老人会ってなんなの……?」

 

「一言で説明するのは難しいけど……あえて現すなら、一人一人が陽菜をひよっこ扱いできる強さの老人集団?」

 

「それ存在しちゃいけない集団じゃない?」

 

「むしろそんなレベルの化け物共と過ごしてなきゃ陽菜みたいなキチガイは誕生しないと思うんだけど?」

 

 自分で言ってて納得できてしまうのが悲しい事実に安藤さんは閉口せざるを得ず、またうちの理事長の理不尽さを知っているであろう祇恵良さんも深く頷いていた。

 件の陽菜に目を向けていると、彼女は近くにいた白井さんで目を止めており、まるでそれが運命の出会いであるかのようにゆっくりと歩み寄っていた。

 

「な、なにかしら、東雲さ」

 

 困惑する白井さんの言葉を遮って陽菜がその襟首に手をかけ、その不躾過ぎる行いに空気が凍る──間も無く。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 同時に、白井さんが握るグラムにはめ込まれたマギクリスタルが輝き始め、持ち主の髪や瞳は鮮やかな紅色へと変わっていく。

 

「え、ちょっと待ちなさいなんでオーバークロックが勝手に起動して」

 

「アルトラ級ヒュージ、その心臓、貰い受けます」

 

 最早リリィかどうかも怪しいキチガイは、マギともどこか違うような謎のエネルギーを迸らせながら大地を踏み締め、アルトラ級ヒュージへと肉薄する。

 

刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)ッ!」

 

「それ別のCHARMじゃないのよぉぉぉおおおお!」

 

 そして直立不動で赫色に輝く白井さんを、アルトラ級ヒュージに向けてぶん投げた。

 射程圏内ならば、心臓に槍が命中したという結果を作ってから槍を放つという原因を作る。そんな因果逆転や回復阻害の呪い、果てには内部破壊という妙に既視感を感じる効果を何故だか再現した一撃は、理不尽にもアルトラ級ヒュージの核を正確に貫くのだった。

 ちなみにだが、私のアステリオンは戻ってこなかった。おのれG.E.H.E.N.A。

 





【マギ保有量】
酒井六花……天野さんとだいたい同じくらい
綾瀬果穂乃……天野さんの数十倍くらい
東雲陽菜……七大アルトラを全て足した量より多い、でも近所のババアよりは少ない
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