人がおらず、薄暗いその場所で誰に見られることもなく空間に裂け目が産まれた。
その裂け目を通って現れたのはピトフーイとライノスを含む3体のスコアノート。
ピトフーイの指示により飛び立ったスコアノートはこの後、街で暴れるところを仮面ライダーたちに倒されてしまうだろう。
「本当にこれで俺等が来たことがバレないのか?」
「バレないというわけじゃないけど……タイガーさんが言うには警察は私達が裂け目を通ったことを感知しているらしいので」
「なるほど出たかどうかだけで数まで分かんねぇからってわけか」
裂け目が閉じる前で2体のスコアノートは自らのスコアプレートを取り外す。
それぞれの肉体の変化が解け、大柄だったライノスは小柄な少年となりオレンジと派手さの目立つピトフーイは外国人であることを除けば目立ちにくい服装の女性へと変わる。
「しっかし、めんどいな。目的地まで遠いってのに」
「タクシー拾ってしまえば終わりなんですから良いでしょう。ほら、行きますよ、エスコートしてください。ライノス」
「お、おう……あ、いや今は剣侍でいいよ。こんな格好の奴をライノスなんて呼ぶのは目立つだろ?」
「なら、私もリヴィアナでどうぞ」
剣侍とリヴィアナの2人は人目につかないよう、足早にその場を立ち去った。
後に残されたのは元の薄暗い路地裏、そしてそこに落ちる小さな灰色の機械片だけだった。
「博士、車も運転できたんだねー」
「こっち来てからは基本1人だったからな。やっぱあると便利なんだよ……まさか、鳥も連れてくために使うことになるとは思わなかったが」
「ご、ごめんね? 連絡したらガルダちゃんにも会いたいって言われちゃって……迎えに来てくれるとも言ってくれたんだけどね」
「気にするな。往復させるのは忍びないし、たまには車も動かしてやらないといけないしな」
盈月とエリシア、そしてガルダは羽頃盛市を離れ車でノドカな田舎道を進んでいた。
高速道路を降りた後、山間にある町々を抜けて途中に休憩を挟みながら1時間ほどのドライブ。
その目的はガルダの産まれた場所……盈月の両親の知人であるブリーダーの家に向かうことだった。
「お前の親の知り合いだと結構若いのかその人」
「うんうん。おじいさんだよ! お家が山の中にあってね、その隣おっきい檻に鳥さんいっぱい飼ってるの!」
「どういう知り合いなんだそれ?」
「えっと、元々知り合いっていうよりお父さんたちのお仕事でお友達になったって感じになるのかな?」
「仕事仲間ってことか? そういえば、お前の両親今海外ってだって言ってたけどなんの仕事してるだ?」
「2人とも学者さんだよ! えっとね……石とか調べてるの!」
誇らしげに語る盈月に対して予想外の答えにエリシアは目を丸くした。
「石だと……鉱物学か?」
「うーんと、ちょっと違ったような……でも、石取りに行ったりしてたよ!」
「親の仕事くらいしっかり覚えといてやれよ……泣くぞ、親が」
「く、詳しく教えてくれなかったんだもん! そういう博士はちゃんと言えるんだよね!? お父さんとお母さんのお仕事!」
「あっ……あー……」
言葉に詰まるエリシアを見て「やっぱり~」と盈月は頬を膨らませる。
それに対して言うべきか言わないべきか悩んだ末にエリシアはため息を付き、言葉を発した。
「話してなかったけどな、知らないんだよ。両親」
「えっ……?」
「記憶喪失……ってことになるのか。10年くらい前に育ての親に拾われるまでの記憶がないんだよ。エリシアってその育ての親に付けてもらった」
悲壮感の一切ない笑みを浮かべ自身のことを明かすエリシアに対して盈月は一気に言葉のトーンを落としてしまう。
「あの、ごめんなさい。私知らなくて……」
「気にするな。”エリシア”になる前にのことで悩んだことないしな……私は私だよ」
「そっか……ならその育ての親って人のこと教えて! そういえば博士の昔のこと聞いたことなかったから!」
「わざわざ話すことでもなかったしな……まぁでもそのうち私か輝散が教えてたろうな」
「Dr.フラッシュも知ってる人なの?」
「あぁ。私の育ての親の名前はエリーゼ。エリーゼ・フェリキタス。生物譜面学、つまりスコアノート研究の第一人者だよ」
誇らしげに語るエリシア。
開けられた窓から吹き込む風が髪を撫でるエリシアの横顔、そこに僅かな哀愁を盈月は感じていた。
「研究熱心な人でさ、食事中も構わずデータとにらめっこしてる人だったよ。おかげで私も同じ分野にのめり込んだわけだけどな」
「前に言ってた教授がエリーゼさんなの?」
「あぁ、そうだよ。私も輝散も彼女に教わってる……私の持ってるイマージュドライバーを作ったのもエリーゼさ」
「そうなんだ! すごい人なんだね!」
「そう……すごい人
エリシアから発せられた言葉に盈月は息を呑む。
続きを聞くべきか僅かに悩み、その末に口を開いた。
「もしかしてエリーゼさんはもう……」
「あぁ、出先で事故にあってな……数年前に死んでしまったよ」
「……嫌なことばっかり聞いちゃってごめんね、博士」
「だから気にするなって言ってるだろ」
タイミング良く訪れた赤信号で停車するとエリシアの手が落ち込む盈月の頭を撫でる。
優しい手つきで撫でられた盈月は上目遣いにエリシアの顔を覗き込む。
「……もうすぐ着くが気分転換と休憩兼ねてどっかで休むか?」
「うん。アイス食べたい」
「さっきも食っただろ……お腹壊すぞ」
優しく微笑み、エリシアが手をハンドルに戻すと信号が青へと変わる。
走り出した車内では和やかな雰囲気の中、他愛のない会話が繰り返された。
******
「あそこ……でいいのか? 明らかに道あるけど」
「いいはずですけど……誰もいない山のはずと言われてきたんですけどね」
渡された地図を頼りに剣侍とリヴィアナがやってきたのは山道へと続く未舗装の道。
道があるなどとは事前に言われていなかったために2人は顔を見合わせ、ここを行くべきか悩んでいた。
しかし、照りつける太陽の日差し耐えきれなくなった2人は道の前から近くの木陰へと移動し座り込んだ。
「場所間違えてるとか?」
「あなたも地図見る? 何度見ても同じ場所につくと思いますけどね」
「だよなぁ……ならやっぱあそこか……あっ」
休みながら剣侍が再び山道の方を向いたその時、1台の車がゆっくりとその山道の中へと入っていく姿を目撃した。
剣侍に続き、それを見たリヴィアナは大きくため息をつく。
「どうしますか? 女帝からは
「行き先に人がいるなら目立つなは無理だろ……でも、俺達の姿を見られてそれが警察とか仮面ライダーに伝わるのは避けたいよなぁ」
「あちらも
「だよなぁ……どうすっか」
2人が天を仰ぎ、途方に暮れているとその前に1台の軽トラが停車する。
そこから降りてきたのは農作業を終えてきたのだろう人が良さそうな老人。
「あんたら、どうかしたのか? 調子が悪いとかかい?」
「あぁ……いや、ちょっと悩み事してただけだよ」
「悩み事? 道にでも迷ったのかい? 私が知ってる場所なら案内するぞ」
親切心から声をかけた老人、そこに打算などなかったのだろう。
しかし、その老人を見つめ続けた剣侍はニヤリと笑みを浮かべ立ち上がった。
「いやぁ、いいよ。あんがとな。あんたのおかげで解決しそうだ」
「? ワシ何もしとらんが?」
「これから働いてもらうんだよ」
困惑する老人を前に剣侍は懐から取り出したスコアプレートを老人の胸元へと押し当てた。
張り付いたプレートは赤く淡い輝きを放ち、老人の肉体と一体化していく。
「な、なんじゃこれは!? が、ぐあ……!?」
「運が良かったですね。すぐに適合する人間が来てくれて」
「全くな。それじゃあ、行くか。せっかく快く協力してもらったんだ。しっかり働いてもらわないとな」
メキメキ音を立てながらその姿を数倍にも膨らまし老人の姿は変化していく。
老人の姿が完全に変わるのを待たず、リヴィアナと剣侍は
******
休憩を終えた盈月たちは目的地へと向かっていた。
「なぁ! 本当にここなんだよな!? 実は違っていて引き返すとか私、嫌だからな!?」
「大丈夫! 昔と同じ道だよ! 懐かしい!」
舗装された道から未舗装の山道へと移り数十分。
右手に崖、左手を森に囲まれた車1台分の道をエリシアはゆっくりと進み続ける。
やがてどこまでも続くと思われた狭い道が終わり、開けた場所へと出た。
砂利で舗装された広場とその先に1件の和風建築の家屋。
そして何よりも目を引くのは家の横に併設された大きな飼育小屋。
「着いたー! ここだよ、博士!」
「見ればわかる……というかもう道ないしな……帰りもあそこ降りるのか……」
車を駐車して帰りのことを考えてため息をつくエリシアを尻目に盈月は車を出ると荷台を開け、ガルダのゲージや荷物を車から降ろしていった。
ずっと車の中で大人しくしていたガルダも久しぶりの帰郷に喜んでいるのかゲージの中でガサゴソと動き回る音が響いていた。
そうして準備をしていると飼育小屋の扉が開き、中から1人の老人が外の音を聞きつけたのかこちらへと歩いてきた。
「あ、おじいちゃん! 久しぶり!」
「おう、久しぶりだな……お母さんににて別嬪さんになったなぁ。驚いた」
作業をしていたためかツナギを身にまとった白髪の老人は盈月の姿を見て温和な笑みを浮かべる。
対する盈月も嬉しそうに笑いながら容姿を褒められたことに頬を染めて喜んでいた。
2人で旧交を温めるように2、3言葉を交わし終わると老人はエリシアを見つめる。
「そんであんたか? 話が聞きたいっていうのは?」
「あ、あぁ。私は……」
「とりあえず、上がんなさいな。長旅で疲れたろ?」
「わかった。お言葉に甘えさせてもらう……これ、つまらない物だが……」
「おぉ、悪いな」
見定めるように見つめられたじろぐエリシアだったが老人は笑みを浮かべて親指で自身の家を指し、自分の家へと案内した。
屋外の様子と違わず、板張りの廊下と襖で仕切られた部屋には畳が敷かれていた。
手土産を渡し、案内された客間で待っていると老人は茶菓子とお茶を持って戻ってきた。
「名乗ってなかったな。ワシは
「あぁ、私はエリシア・フェリキタス。時間取ってもらって悪かったな」
「何、気にしなさんな。どうせ隠居したジジイ1人、時間なんていくらでも作れる。あぁ、そうだ盈月、ガルダの調子はどうだ?」
「元気だよ! ほら、出ておいでガルダちゃーん」
「ピィ! ピィピィ! ピィー!」
ゲージの扉が開かれると勢いよくガルダが勢いよく飛び出し、播磨の肩に止まるとスリスリと嬉しそうに顔を擦り付けた。
予想を超えて懐かれていたことに播磨は驚いた顔を浮かべながら優しく手をかざしガルダを撫でる。
「ここまで人馴れしてるのはすごいな……どうやって躾けたんだ?」
「ガルダちゃん、お利口だから自然にだよ!」
「ピィ!」
「はぁ~、やっぱ特別な子なんかねぇ。賢いなぁガルダ」
「あぁ、普通はこうじゃないんだな……良く知らないからこいつがスタンダードだと思ってたよ」
一通り播磨に甘え終えたガルダは満足したのか盈月の膝の上に移り、大人しく止まってエリシアにも撫でるように要求している。
最初こそ無視していたエリシアだったがガルダの視線に負けたのかため息をつきながらその頭を軽く撫でながら話を進めていく。
「やっぱり、特別なのかこいつは」
「まぁ、まず見た目がカッコいいだろ? ハクトウワシみたいで」
「……一般的なこいつの同種がどんなのか知らん」
「えっ!? そうだったの? 茶色いんだよ!」
「良かったら見るか? ガルダの兄弟も大きくなってるぞ」
「見たい!」
エリシアの答えを待つこと無く、目を輝かせた盈月が笑顔を浮かべ、ガルダをリードに繋いでとまり木に止めると立ち上がる。
それに合わせて播磨もお茶を飲み干すと立ち上がってしまう。
反応する間もないまま話が進んでしまったエリシアは止める暇も無く、2人の後ろついていくこととなった。
家屋の隣に併設された檻の中では広々とした空間の中を数匹の茶色い鳥───普通のハリスホークが楽しそうに暮らしていた。
「ガルダ見慣れすぎてたが確かにこいつらは見たことある色だな……こいつらもガルダみたいに人懐っこいのか?」
「個体差あるなぁ。基本、ワシで慣らしとるから嫌がりはせんだろうけどガルダほど懐いてるのはおらんよ」
「そういうもんか。ここにいるのがアイツの兄弟ってことか?」
「そうじゃよ。あのおっきいのが親じゃな」
播磨が指差した先には警戒しているのか止まり木の止まってじっとこちらを見つめる他より大柄な個体がいた。
良く見てみれば目付きなどにガルダの面影を感じられたが他と同じく茶色を基本としており白と黒の羽根であるガルダとは違っていた。
「なんでガルダだけあんな色なんだ?」
「獣医が言うには突然変異ってこと以上のことは分からんらしい」
「そうか……後、そうだ。ガルダがスコアプレート持ってたっていうのはどういうことなんだ?」
「スコアプレート……あぁ、あれか。どういうもなにも産まれたガルダが下に敷いてたんじゃよ」
「……いやなんて?」
楽しそうにガルダの兄弟たちを眺め続ける盈月をエリシアが引っ張りながら家に戻ると播磨は1枚の写真を見せてくれた。
そこに映されていたのは4匹の鳥の雛。
3匹は良く似た色をしていたが1匹だけ他より白い毛の個体が映されていた。
そしてその白い個体の下、まるで守っているかのように1枚のスコアプレートが置かれていた。
「ほら、産まれてすぐの写真じゃよ。孵ってすぐなのにもう変なモノが尻の下にあって驚いたのを良く覚えとるよ」
「……本当に尻の下に敷いてたのか……」
播磨曰く、
盈月から以前聞いた話とほとんど変わりのないものだった。
「結局良く分からんで終わりか……」
「ねぇねぇ、おじいちゃんもっと何かなかったの例えばほら……産まれた時に光ったりとか!」
「そんなのあるわけ無いだろ……」
「おぉ、光ったぞ」
盈月の質問を呆れ気味に聞き流し、お茶を口にしたエリシアは播磨の肯定を受けて飲んでいたお茶を吐き出しむせた。
「ひ、光ったのか!?
「ちょっとは落ち着け。鳥が光るわけ無いじゃろ」
「いやそれは……いやそうだな、あぁ、普通光らないよな……」
「ピィピィ!」
盈月に背中を撫でられながら介抱されるエリシアは播磨から渡された新しいお茶を飲み落ち着き、改めて播磨に言葉の意味を尋ねた。
「そもそも関係あるかも分からんのじゃがな、ガルダたちが産まれる前日の夜のことじゃよ。外が妙に明るくて誰か来たんかと思ってカーテンを開けたら山の方が光ってたんじゃよ。ピカーっとな」
「何色に光ったとかわかるか?」
「青じゃな。気になるなら光った辺りに案内するぞ?」
「場所がわかるのか? それならお願いしたい」
3人はそれぞれ支度をし、ガルダもリードに繋いで盈月の手に乗ると播磨の案内で森の中へと入っていった。
播磨の手によって僅かに整えられているのか、獣道のようではあるが迷わずに歩けるようになっていた。
緩やかな上り坂を慣れている播磨と体力に自信のある盈月はスイスイ登っていくのに対し、普段から研究に時間を費やし、運動不足のエリシアは息を切らしていた。
「博士大丈夫ー?」
「ピィー?」
「だいじょう……ぶでもないが後どれくらいだ……?」
「後10分くらいじゃがあんたにペースを合わせるよ、大丈夫だと思うが逸れたらまずいしのう」
「すまん……」
2人がペースを落としたことでエリシアも息を整えゆっくりと進み続ける。
やがて、僅かなカーブを経て正面に岩壁が見え始めた時、森の木々がガサガサと揺れ音を立てる。
草木を掻き分け、警戒する3人と1匹の眼前に"それ"は姿を表した。
「グマアアア!!」
「ク、クマの化け物じゃ!」
現れたのはまさにクマの化け物と呼ぶにふさわしい巨大な怪物。
茶色い毛皮に全身覆われた体躯は獣より人に近く、腕から伸びる爪は鎌のように鋭利だった。
赤く充血した瞳は盈月たちの姿を捉えると凶悪な歯が並ぶ口を大きく開き、再度吠える。
しかし、その胸元に埋め込まれたプレートが示すように盈月とエリシアはその怪物の正体を知っていた。
「スコアノート!? なんでこんなところに!?」
「分からん、だがどっちにしろほっとくわけにはいかないだろう!」
「そうだね……ガルダちゃん、ごめんおじいちゃんをお願い」
「ピィ!」
熊の怪物───ベアー・スコアノートと対峙したまま盈月はガルダのリードを外す。
意図を察したのかガルダは驚愕した播磨の元へと飛んでいくとその肩へと止まり、逃げることを促すように翼を羽ばたかせた。
「おじいちゃん、ガルダちゃんをお願いします!」
「お願いしますって……何言っとるんじゃ! 2人も一緒に逃げるぞ!」
「大丈夫! ここは任せて!」
「播磨さん、悪いけど今からのこと誰にも言わないでくれよ……!」
困惑する播磨を守るようにベアーの前に立ちはだかる2人はイマージュベルトを腰に装着、イマージュリーダーとEイマージュリーダーをそれぞれ取り出してスコアプレートを装填した。
《フライトイーグル!》
《ブラストホーク!》
イマージュリーダーを盈月は上に掲げエリシアは下に突き出す。
待機音が響き渡り、2人の周囲にエネルギーが包み込む中、それぞれベルトへとリーダーをセットする。
《
「「変身!!」」
《
播磨が見守る中、2人を包み込むエネルギーが吸着されアンダースーツと装甲を形成していく。
それはニュースで流れた映像に映っていた、化け物と戦う戦士の姿。
《フライトイーグル!》
《ブラストホーク!》
良く似た白と茶色の戦士───エリシアとエリーゼが並び立った。
「お主らそれは……」
「こういうことだからさっさと逃げてくれ!」
「わ、わかった! 怪我には気をつけるんじゃよ!」
突然の出来事の連続に驚く播磨だったがエリーゼの言葉にハッとなり、ガルダを連れて来た道を走って戻っていく。
走り出した播磨を追うようにベアーがそちらへと視線を向けるがそれを阻むようにエリシアが間に割って入る。
「そっちには行かせないよ!」
《
「グマアアアアア!!」
分割し双剣として呼び出したツインラプターをエリシアが構えるとベアーは爪を振り上げ突撃する。
勢いを乗せて振り下ろされた爪を剣をクロスさせ受け止める。
だが、その膂力は凄まじく、エリシアの身体が沈み込み足を地面へとめり込ませる。
「すごい力……!」
「グルルマアアアア!!」
エリシアを押さえつけるように振り下ろした腕に力を込め、ベアーはもう片腕を振り上げる。
片方でも拮抗する力の差、ここでもう片腕振り下ろされればエリシアが耐えることはできないだろう。
しかし、それを阻むようにベアーへ向けて放たれた羽根が毛皮へと突き刺さる。
《
「させるかよ!」
乱舞する羽根混じって撃ち出された光の矢が振り上げられた腕を貫く。
エリーゼがボウガンモードで呼び出したツヴァイラプターの一撃がベアーを怯ませる。
僅かに腕の力が緩んだその隙にバックステップでエリシアが抜け出すと振り抜かれた爪が地面を抉り深い爪痕を残した。
「ありがとう、はか……エリーゼ!」
「おう。しかし、結構撃ち込んだつもりだが……あんまり効いてないな」
「力もすごく強いよ」
「だろうな。純粋にタフでフィジカルが強いタイプか……遠距離から削りたいところだが」
エリーゼから受けたダメージをモノともせずベアーは再度2人に向かって突撃する。
エリシアとエリーゼは翼を展開し左右へ飛んで攻撃を回避する。
だが、木々が邪魔をしていつもみたく自由に飛ぶことはできず、木々を抜け高く飛び上がれば今度はベアーが木々に隠れて捕捉しづらくなってしまう。
そうなれば播磨を追うかもしれない以上、2人はベアーの前に居続ける他無い。
「こうなった以上、真正面からぶつかるしかないか……エリシア、頼む」
「任せて! エリーゼはサポートお願い!」
「おう……それと、これも持ってけ」
ベアーと距離を取って合流した2人は役割を決め武器を構える。
それと同時にエリーゼは2枚のスコアプレートをエリシアへと投げ渡した。
カメとサメ、これまでエリシアが戦って得た物を
「必要に応じて使え」
「ありがとう! でも今は……こっち!」
受け取ったプレートをケースにしまい代わりに取り出したプレートをEイマージュドライバー、2つ目のスロットへと装填する。
《
「スコアチェンジ!」
《
纏っていた白きワシの装甲に重なるように黄色いライオンの装甲が展開、装着されエリシアの姿を変化させる。
《ハウリング×フライト! イーグル!》
「行きます! はあああ!!!」
盈月のみが変じられる姿、エリシアOCとなると気迫を込めた声を上げベアーへ向けて低空を飛行する。
その背後から牽制を目的にしたエリーゼの羽根と矢がベアーへと発射される。
先ほどの一撃から矢の方が威力があると学習しているベアーは多少羽根が刺さることを無視して矢のみを回避する。
「今度はこっちの番、だよ!」
「グマアアアア!!」
「そこッ!」
羽根に紛れ迫るエリシアに対しベアーは刈り取るかのように爪を振り上げる。
迫る爪は翼の制動だけでは回避できない速度とタイミング、だからこそエリシアは拳を横へと突き出す。
蓄えられた音を"ハウリングアンプリファイア"で増幅し、突き出された拳から放った衝撃波によって強引に軌道変え紙一重で爪の一撃をすり抜ける。
同時に振るわれた剣がベアーの毛皮を斬りつける。
振動を乗せたその刃は分厚く硬い毛皮を薄皮を裂くかのように容易く斬り裂き、ベアーへとダメージを与える。
「グマアッ!?」
「まだだよ! たああ!」
剣が振るわれる度に振動を乗せた刃が毛皮を斬り裂き、エリシアの動きに翻弄されるベアーへのダメージが蓄積し続ける。
持ち前のタフネスで耐えている、それでもいつまでも耐えられないとベアーはメチャクチャに爪を振り回し、エリシアの接近を拒絶する。
なりふり構わないその攻撃に目論見通りエリシアは距離を取る───その隙間を縫うようにエリーゼから放たれた矢がベアーの眼を貫いた。
「グマアッ!? グマアアアア!?!?」
「どんだけ頑丈だったとしてもあくまで毛皮だけだ。それ以外の場所なら効くと思ったよ」
「さっすがエリーゼ! なら、一気にトドメを……」
「ッ! 盈月、後ろだ!」
痛みに悶えるベアーと決着を付けるため、必殺技を起動しようとエリシアがベルトへと手を伸ばす。
そのエリシアを狙ったミサイルのような攻撃が彼女の背後、森の中から飛来する。
エリーゼの忠告により咄嗟に身を翻し、切り落としたそれにエリシアは見覚えがあった。
「今の、ライノスの……!」
「えぇ、それに私もいるの。お久しぶり、ねぇ!」
「ッ! ピトフーイ……!?」
音もなく接近していたピトフーイがエリシアの背後へと迫る。
例えエリシアOCと言えどピトフーイのスコアプレートを蝕む毒を受ければその機能は止まってしまう。
だが、回避する時間は残されておらず、踊るように振るわれる極彩色の翼がエリシアの装甲へと迫る。
「させるか、よ!」
「ッ! いつの間に……!」
金属同士を擦るような不快な音と共に火花が散る。
その発生源はピトフーイの翼、そして斧モードへと切り替えたツヴァイラプターの刃だった。
間一髪のところで割り込んだエリーゼがエリシアへと迫った毒牙を防いだのだ。
「ありがとう、エリーゼ!」
「エリーゼだと……? エリシアだけでなくその名前も……どれだけ私の神経を逆撫ですれば気がすむ……!!」
「この名前を知ってる……まさかお前……」
「うるさい!」
発狂したように翼を振り乱すピトフーイ、エリシアとエリーゼは振れるわけにはいかないと背後へと飛び距離を取る。
衝動に任せそれを追おうとするピトフーイだったがその肩に大きな手が置かれ、それを静止する。
大柄な体躯に大太刀を担いだスコアノート、ライノス・スコアノートだ。
「落ち着けよ、感情に任せてたら前の二の舞になるっつってたのはだれだよ」
「ッ……! ふぅ……! 悪いわね、やっぱり対面するとダメね」
「ハッ! まぁ、戦い始めちまったら関係ねぇがな!」
「ライノス……!」
「よう、久しぶりだな。お礼参りに来たぜ、エリシア」
ニヤリと凶悪の笑みを浮かべるライノス。
姿形こそ変化はないがその立ち振舞からは前回対面したときのような荒々しさは消えていた。
更に痛みに悶えていたベアーも怒りと憎しみを込めて隻眼となった眼光をエリシアとエリーゼへと向ける。
「前回はきっちりリベンジされちまったからなぁ、今のところ1勝1敗だ。勝ち越させてもらうぞ」
「スコアプレートと分離したのにやっぱりちゃんと覚えてるんだね」
「俺たち、マウンターはただのスコアノートとわけが違うんだよ」
「そうなんだ……なら、今度こそ、私たちが勝って色々教えてもらうよ!」
構える3体のスコアノートに対してエリシアとエリーゼも武器を構える。
人数差もあるがそれ以上に2人が警戒するのはピトフーイの毒。
毒を防げるレディッシュがいない今、ピトフーイの攻撃を僅かにでも受ければその瞬間に戦闘不能となってしまう。
それをライノスとベアーの2体の攻撃もかいくぐりながらとなると至難の業だ。
「……エリシア、まずはピトフーイからだが、行けるか?」
「正直、余裕はない気がする。どうにか攻撃を防げれば……そうだ」
「相談は終わったかしら? なら……死ね!」
「卑怯だなんて言うんじゃねぇぞ!」
「グマアアアアア!」
ピトフーイの翼がライノスの大太刀がベアーの爪が一斉にエリシアとエリーゼへと殺到する。
エリシアはエリーゼの前に出ると腰のケースから1枚のスコアプレートを取り出すとそれをハウリングライオンと入れ替える形で装填する。
───打開の手段はこれまでの戦いの中にこそあった。
《
《
殺到した3体の得物はエリシアへと届くことはなかった。
それぞれの武器とエリシアの間に出現した緑光が輝く3枚のエネルギーシールドがすべて受け止めていた。
「なっ!?」
「これは……!」
驚愕するマウンターたちを前にエリシア自身の姿も変化している。
ライオンを模した装甲からメタリックグリーンの六角模様が組み合わさったカメの甲羅を模した装甲が白い装甲に重なり合う。
両腕と胸部に装着され、煌々と輝きを放つ六角の結晶体”ディフェンドプロジェクション”より生み出したシールドを操作し、3体のスコアノートを押し戻す。
ツヴァイラプターを組み合わせ、双刃モードへと切り替え槍のように右手で構え、シールドの1枚を左手付近に発生させた。
広げた翼で飛翔するその姿はさながら戦乙女を思わせる。
《ディフェンド×フライト! イーグル!》
「エリシア
攻防一体の新たなる姿となったエリシアが天を駆け、スコアノートたちへと突貫する。