「ベアーがなんか戦ってるのか?」
「のようですね……まさかエリシアが……」
「! そうか……バレちまったなら戦うしか無いよな」
戦闘音を聞いたリヴィアナがポツリと呟いた可能性、それを聞いた剣侍はニヤリと笑みを浮かべる。
すぐにライノススコアプレートを取り出し、音の響く方へと向かおうとするがその肩をリヴィアナが押さえる。
「先に用事を済ませてからよ」
「分かってるよ。で、そこの岩でいいのか?」
「えぇ、そうみたいね」
2人の目の前にあるのはむき出しになった岩壁。
鮮やかな断層を描く土壁の中に埋め込まれた灰白色の岩。
その岩を前に剣侍は自らの胸にライノススコアプレートを押し付ける。
【ライノス】
埋め込まれたスコアプレートが肉体へと融合し、剣侍の身体が盛り上がり、ライノス・スコアノートへと変化する。
変化と同時に出現した大太刀を握りしめると岩へ向けて突き立て、砕く。
ライノスは砕けた岩の中、手頃な大きさの物を掴み取る。
「こんなもんでいいよな?」
「えぇ、おそらくは……しかし、これが……」
「こんな石がスコアプレートの原料なんてな。おら、持ってけ」
自身の一部から生み出したモノコーンに石を持たせると灰色の機械片を取り出したライノスはそれを地面へと投げつける。
すると機械片から広がるように空間が裂け、空間と空間をつなぐ裂け目が産まれる。
ライノスの指示に従ったモノコーンが岩を持ってその裂け目の中に入ると再び裂け目は閉じ、その場には何も残っていなかった。
「これなら問題ないよな?」
「えぇ、これでこの先は自由時間です……私ももう我慢できません」
興奮したかのように頬を染め、艶めかしく吐息を漏らすその顔に浮かぶのは喜びと怒りが綯い交ぜとなった
【ピトフーイ】
リヴィアナの肉体が黒とオレンジの羽毛に包まれたピトフーイ・スコアノートへと変化するとバサリと翼を羽ばたかせ、木々の間を縫うように森を飛ぶ。
その後ろから木々をなぎ倒しながらライノスがドスドスと重い足音を響かせながら追いかける。
「置いていくわよ、
「ハッ! 俺よりよっぽど我慢効いてねぇなぁ!
「当然でしょう? エリシアだけは私は……あれの中身が違うとかどうでもいい。エリシアは……許さない」
瞳の先に捉えたエリシアの背中を愛おしくそして憎々しく見つめるピトフーイはその翼を振り抜いた。
「たああああ!」
新たなる姿となったエリシアOCが空を翔け、スコアノートたちへと突撃する。
迎え撃つために振るわれたピトフーイの毒翼に対し、エリシアが左手を前にかざすとその動きに追従するエネルギーシールドが毒翼を阻む。
攻撃を防がれたピトフーイへ向けてツヴァイラプターの刃が突き立てられる。
「そう簡単に盾は壊せないよ!」
「くぅっ!?」
「調子乗ってんじゃねぇ!」
「グマアアア!」
ピトフーイを斬り付けたエリシアに大太刀と爪が振り下ろされる。
それに対してエリシアが左手を振るえばその動きに合わせ更に2枚のエネルギーシールドが展開され2つの攻撃を防ぐ。
しかし、連続で打ち込まれる大太刀と爪の猛攻を前にシールドへヒビが入る。
「まず……!」
背後のシールドの異変を感じたエリシアは咄嗟にその場を飛び去る。
それと同時に振り下ろされた大太刀によってシールドが砕けエリシアのいた場所を振り抜いた。
「逃がすかよ!」
「死ねぇ、エリシア!」
攻撃をかわしたエリシアを追撃するためライノスの角がミサイルのように飛び、追いかけるピトフーイの毒翼がエリシアへと迫る。
エリシアはそれに対し"ディフェンドプロジェクション"から新たに生み出されたシールドが毒翼を弾き、ミサイルを切り落とす。
エリシアとピトフーイは入り組んだ木々の間を飛び回りながら毒翼と双刃剣が乱舞する。
ピトフーイの毒翼はすべてシールドに防がれる一方、エリシアの斬撃は幾度もピトフーイを斬り裂いていく。
「クソッ! なんで私の毒だけ当たらない!?」
「前に痛い目見たからね! もう受けないよ! そこっ!」
「がッ!?」
苛立ちと共に大振りに振るわれた毒翼、それをシールドで受け流し産まれた隙をエリシアの刃が埋める。
突き出された切っ先が吸い込まれるように胴体を大きく斬り付け、ピトフーイはそのダメージによって墜落してしまう。
地面に叩きつけられたピトフーイを追撃するためにエリシアが下降するがそこを狙ってベアーが駆け込んでくる。
「クマアアアア!」
「なら……あなたから!」
勢いを乗せたベアーの爪を2枚のシールドを重ねて受け止めるとEイマージュドライバーの中央を連続で押し込む。
《
エリシアが両手首の結晶を緑に輝かせながら天高く飛び上がる。
それに合わせてベアーの攻撃を受け止めたシールドが消失し、ベアーの上下を挟むようにシールドが出現し押しつぶすように挟み込むと宙へと浮かび上がる。
2枚のシールドに挟まれ身動きの取れなくなったベアーに向けて急降下で迫るエリシアが上下を反転、振り上げた足に緑と白のエネルギーが輝く。
《
「たああああああ!」
空中で身動きの取れなくなったベアーへと叩き込まれるかかと落とし。
自らで展開したシールドを砕いてもその勢いは止まらず、ベアーに炸裂。
込められたエネルギーが爆発を産みながらベアーを地面へと叩きつけ爆散させた。
爆心地の砂煙をエリシアが羽ばたきで吹き飛ばすとスコアプレートを埋め込まれていた老人は地面で気を失っていた。
「よし……」
「まだ終わりじゃねぇぞ!」
「ッ! 分かってるよ!」
老人の無事を確認し、ホッとしたエリシアの元へ駆け込んできたライノスの太刀が迫る。
咄嗟にシールドを展開し攻撃を防ぎ再度、戦闘体勢を取ろうとするエリシアだがそれよりも早くライノスの拳が振り上げられる。
だが、それは上空から放たれた羽根吹雪と光の矢が阻む。
「私を忘れないでもらおうか!」
「クソが!」
エリーゼの蹴りがライノスの体勢を崩し、エリシアの拳がライノスを吹き飛ばす。
追いついたピトフーイと起き上がったライノスに対してエリシアとエリーゼは改めて武器を振りかざす。
「これで数の差は無くなった。このままお前たちも倒す!」
「調子に乗るな、エリーゼェ!」
「おい、落ち着けよ、ピトフーイ……俺に考えがある」
「貴様の考えなど……!」
肩に置かれたライノスの手を苛立ちながら払い除けるがそれでもライノスはピトフーイに顔を近づけ、作戦を耳打ちする。
今まで以上に落ち着いた様子のライノスにエリシアとエリーゼは警戒しながらその様子を見守った。
「……癪だが乗ってやる」
「ハッ!
やがて話し合いを終えた2体は息を合わせて突撃を敢行する。
咄嗟にエリシアが前に出てシールドを展開する、しかし、それこそマウンターたちの狙いだった。
ライノスが大太刀と角をエリシアのシールドに突き立て動きを封じるとピトフーイがその上を飛び越える。
背後からの攻撃を警戒したエリーゼが振り向くがピトフーイは勢いを落とさず木々の合間を抜け戦場から離脱していってしまった。
「逃げた……? いや、あっちは……!」
「エリーゼ! お願い!」
「分かった。お前も気をつけろ!」
ピトフーイの逃げた方角、それは播磨たちが逃げたのと同一のものだった。
それに気づいた2人は一言の言葉のみを交わし合うとエリーゼはピトフーイを追って飛び立つ。
「まんまと引っ掛かってくれたなぁ! そうだよなぁ、お前らならそうやって別れるって思ってたよ! これで
「この前と違って随分おしゃべりなんだね……!」
「よく言うだろ? 自分よりも落ち着き無い奴がいると冷静になれるってさ!
会話しながら力で押すライノスの攻撃によってシールドが砕け、大太刀が振り下ろされるが双刃剣で受け流して空へと逃走。
同時にツインラプターを分離し反転、再度接続して蒼弓モードへと切り替え後退しながら矢を放つ。
放たれた矢はライノスに大太刀による対処を余儀なくさせ、追撃の手を押さえつける。
「冷静だって言うなら教えてよ! なんで学校を襲ったり、人をスコアノートに変えるの?」
「ハッ、
「知らない……?」
「あぁ、知らねぇよ。願いを叶えて貰ったからその代わりに言うことを聞いてる、そんだけ……だ!」
連続で放たれる角をシールドで防ぎながら弓を引き絞り、ライノスへと接敵すると同時に解き放つ。
至近距離から放たれた光の矢はライノスの硬い装甲を貫き、体勢を崩させる。
「こんなもん……!」
「ッ!」
ライノスへと更に追撃しようとするエリシアだったが崩れた姿勢から振り上げられた大太刀がツインラプターを弾き飛ばした。
更に地を蹴り、接近したエリシアにシールドを出現させる隙も与えずにサマーソルトキックを放ち同時に体勢を整え直す。
なんとか腕をクロスさせ直撃こそ免れたがエリシアも着地を余儀なくされ、弾かれたツインラプターは遥か後方へと突き刺さった。
「前に戦った時よりも……うんうん、
「当然だ。こんだけ体格差があるんだぜ? 俺が万全に動いたらお前なんか勝てるわけねぇよ」
「そんなのやってみないと分かんないでしょ?」
「分かんだよ! 俺がそうだったんだからなぁ!」
言葉こそ乱暴だがライノスの動きに乱れはない。
エリシアがツインラプターの下へとたどり着けないように立ち振る舞い、大太刀を振り回す。
「俺さぁ、中学になっても背が伸びなくてさ、友達にチビだって馬鹿にされたんだよ」
大太刀を振るい、エリシアが生み出すシールドに2撃、3撃と斬りつけることで砕きながらライノスは語り続ける。
「悔しくてさ、そんなら強くなって見返してやろうって剣道習ってさ。これでも結構才能あったんだぜ……こんなふうになぁ!」
「っ……!」
語りに勢いが乗るに連れて大太刀の
そして、シールドを砕くとともに大きく踏み込み接近したライノスは上段に構えた刀を鋭く振り下ろす。
シールドの生成こそ間に合わなかった。エリシアは身体を捻りすんでのところで刃を躱す。
しかし、その右肩から胸にかけて細い一閃が刻まれていた。
「でもさ、そんな俺が気に食わなかったんだろうな。道場の先輩たちに寄って集って滅多打ちにされてよぉ! デカいだけでそんなに偉いのかってんだよぉ!」
「本当に……! こんなに強いのに……!」
「───ハッ、
「それなら余計に……なんでこんなことをするの!?」
「ッ! だからぁ、言ったろ!? この力を、この姿を貰った! どんな奴でも圧倒できる力と体躯をなぁ! だからその代価に言うことを聞いている! それだけだ!」
気迫とともに振るわれる大太刀は正しくエリシアの正中線を捉える。
今のライノスの一太刀は1枚のシールドでは容易く両断されてしまう。
だからこそ、エリシアが腕をクロスさせると共に両腕の結晶体が輝きを放つ。
出現したシールドは2枚、1枚は両断されるも重ねた2枚目のシールドが振り下ろされた大太刀を受け止める。
「……私はあなたのこと今聞いただけしか知らないから偉そうなこと言えない! それでも、今の話を聞いて負けられない理由ができたよ」
「理由だと?」
「今の私は確かにあなたより小さいよ! だから───私が負けたらあなたに身長なんて関係ないって言ってあげられない! だから、負けない!」
「ッ!! どこまでも……見下してんじゃねぇ!!」
激昂し、振るった大太刀だが恐ろしい速度と精度でエリシアを切り裂かんと迫る。
それに対しエリシアはシールドを出現
イーグルの持つ視覚強化で軌道を捉え、身体を捻ってライノスに背を向けながらギリギリで回避する。
しかし、ライノスは振り下ろされた刃を即座に翻す。
エリシアが1回転して振り返る中、ライノスは勝利を確信し笑みを浮かべる。
「───私はね、あなたみたいに腕を磨いただけじゃ勝てないと思ってる。だから、
「あぁ……?」
振り返りつつあるエリシアは右腕を伸ばし手のひらを天へと向けていた。
攻撃のための手刀とするには指を開いている───そうまるで落ちてくるものを受け止めようとするかのように。
そしてエリシアは左手でEイマージュドライバー操作する。
《
「ハァッ!!」
直後、エリシアの開いた手のひらの上の空間が裂け、遥か背後に突き刺さっていたツインラプターが出現。
手の上に落ちると同時に握りしめ、回転の勢いを乗せてライノスを横一文字に斬り裂いた。
「があああ!?」
「まだ……!!」
「なぁっ!?」
予想外の一撃はライノスの装甲を斬り裂き、よろめきながら大太刀を取り落とす。
怯んだライノスに対しエリシアは更に弓を押し付け弦を引くとゼロ距離から放たれた矢がライノスを吹き飛ばした。
更にエリシアはスコアプレートを取り出し、ツインラプターの中央へと装填して弦を引き絞る。
《
「これで……!」
待機音が鳴り響く中、とエネルギーが集まり光り輝く矢へと姿を変えてライノスを狙う。
柄のトリガーを引くと同時に最大まで引き絞られた矢は放たれた。
《
放たれた輝く矢はアロワナの形のエネルギーを纏いながら低く大地の上を泳ぐ洋に飛ぶ。
突き進む矢はまもなくライノスを貫き、勝負に決着を付ける───
「まだだ! まだ終わらねぇ!」
───だが、ライノスは諦めない。
取り落とした大太刀へ向けてエリシアの必殺の一撃に自ら近づきながら飛び込む。
自らの得物を拾い上げると間近に迫った輝く矢へと刃を振り上げる。
その斬撃は決して拮抗したものではなかった。
振るわれた大太刀は砕け、拾い上げた右腕も再起不能のダメージを受ける中、矢の軌道は逸らされたことで直撃を免れる。
「そう簡単に終わってたまるかよぉ!」
「そうだと……思ってたよ!」
「ッ!? いつの間に……!?」
エリシアの追撃は止まらない。
手にした武器は分割し、双剣モードとして両手に構えていた。
その一方に搭載されたスロットへと
《
───この時、盈月は必殺技が2度しか使えないことを失念していた。
ただまっすぐに眼の前の彼に勝って彼の試みが間違いでないと示す、そのことしか頭にはなかった。
だからこそライノスは勝てていたのだろう───OCにより出力が増し、必殺技の使用回数が増えてさえいなければ。
「今度こそ!」
握りしめるとともにトリガーを引いたエリシアが片手の刃でライノスを斬りつけ、空へと飛び上がる。
ライノスがそちらへと顔を向けるよりも早くエリシアは天から地へ急降下しながら更に斬りつける。
「がっ!? なんでそんなに速く……!?」
空中を旋回したのではあり得ない切り返し、その答えは空に発生させたシールドだった。
再度、地を蹴り斬りつけると共に空へと飛び上がったエリシアはシールドを発生させ、それを蹴って加速しながらライノスを斬りつける。
上下左右、縦横無尽に飛び回り、跳ね回るエリシアは光の軌跡となってライノスを取り囲み斬り裂き続ける。
「これで、終わり、だあああ!!」
《
光の軌跡が通過する度にライノスは斬られてゆく。
すでにダメージを蓄積したライノスはエリシアの動きに対処することもできず受け続け、やがてその身は刻まれ砕け消滅する。
後に残されたのは機能を止めたライノススコアプレート、そして悔しげに膝を付いた小柄な少年、剣侍だった。
「クソ……!」
「あなたは悪いことをしたからちゃんと罪を償って欲しい……でも」
トン、と剣侍の前に着地したエリシアの姿が光となって解けると彼の眼前に手が差し伸べられる。
手を追って視線を上に上げていくとすぐにエリシアの顔が見える。
「ちゃんとごめんなさいしたら、嫌だったこととか相談に乗るよ! あ、私、盈月、よろしくね!」
「……はっ、なんだよそれ。完敗じゃんか」
屈んで目線を合わせた彼女の顔に浮かんでるのは弾けるような笑顔だった。
先程まで戦っていた相手が向けるその顔を見た剣侍は毒気が抜かれたような───あるいはスコアプレートが機能を止め、負の感情が抑制されたが故に───脱力し、自嘲気味に笑うとその手を取った。
「俺は剣侍だ。負けた以上抵抗しないよ、好きにしてくれ」
「えへへ、素直でよろしい! あ、それなら手伝って! この人運ばないといけないから!」
「おう……って待て、ずっと手を握っていくのは流石に恥ずかしいし持ちにくいと思う……!」
有無を言わさず手を握り返した盈月は剣侍の手を引き、ベアー・スコアノートにされていた老人を抱えると播磨の家の方へと歩み始めた。。
******
───エリシアとライノスが死闘を繰り広げる中、エリーゼとピトフーイもまた戦いを繰り広げていた。
「追いついたッ! 大人しく、しろ!」
「ッ! 追ってきたのはお前か、エリーゼェ!」
木々を避けながら飛ぶ両者だが僅かに速度で勝るエリーゼが放った無数の羽根がピトフーイへと襲いかかる。
咄嗟に空中で身を翻し、致命傷を躱しながらピトフーイは目標をエリーゼへと変え憎悪とともにその毒翼を振るう。
斧モードのデュアルラプターで迫る毒翼を弾く、しかし、場所は踏ん張りの効かない空中。
お互いに僅かに距離をあけながら再度加速して1撃、2撃と巧みに木々を避けながら打ち付け合う。
「エリーゼ! お前たちはなぜその名を名乗る!?」
「人がどんな名前使おうと勝手だろうが! お前に許可でも必要だったかぁ!」
「うるさい! その名前だけは……その2人を巻き込むなぁ!」
激昂するピトフーイは素早さこそ増すが攻撃が大ぶりになり隙が増えてゆく。
それに対してエリーゼは冷静に攻撃を捌き、躱し大きく毒翼を振るい背を向けたピトフーイへと羽ばたきと共に羽根吹雪を浴びせかける。
「なっ!?」
「……やっぱそういうことかよ。私もお前に聞きたいことができた、大人しくしろ!」
「があああ!?」
不可避の一撃を受け、連続で羽根を突き刺されたピトフーイが仰け反ると共に急接近から振り下ろされた斧がピトフーイを地面へと叩きつける。
胸から墜落したピトフーイだが即座に背後へと振り返る。
だが、その先のアクションを起こすよりも速く、その眉間にボウガンモードへと切り替えられたデュアルラプターが突きつけられた。
そして持ち手に備えられたスロットへとエリーゼはスコアプレートを装填する。
《
直後、エネルギーが番えられた矢へと収束を開始する。
後はトリガーを握りしめたトリガーを押し込めばそれで決着する。
だが、エリーゼは動かない。
「っ、なんのつもり……」
「尋問……とは違うな。1つ答えろ」
「だれがあなたの言葉なんかに従うものか……!」
「お前───リヴィなのか?」
「───はっ?」
エリーゼの放った言葉にピトフーイ───リヴィアナの濁った思考は急速に引き戻された。
「エリーゼとエリシア、その2人を知っていて
「それを知るお前は……? まさか……エリシア
狂気を孕んでいた瞳に光が戻り、仮面越しに見つめる
ピトフーイの手は無意識のうちに持ち上がり、求めるかのように伸ばされる。
「やっぱりか……なんでお前がスコアノートに! なんで研究室やめちまったんだよ……!」
「なんで……? そんなの決まっているでしょう……!」
「ッ!」
伸ばされた手はエリーゼの言葉を受け、自身に向けられたボウガンを強く握りしめる。
咄嗟のことで反応が遅れたエリーゼは即座にトリガーを押し込もうとするがそれよりも速く、ピトフーイが力強く引き寄せた。
眉間に突き付けられていた射出口は狙いを逸らされ、エリーゼ自身も前のめる。
「あなたが私の見つけた
「違うっ! 私は教授にも見つけたのはリヴィだってちゃんと……!」
「うるさい、うるさいうるさい!」
今にも額がぶつかりそうな距離に近づいたピトフーイの顔に浮かぶのは憤怒の表情。
狼狽えたエリーゼを振り払うかのように毒翼は振るわれる。
直前で気がついたエリーゼはデュアルラプターを手放し大きく後ろへと飛ぶ。
しかし、僅かに遅れたエリーゼの装甲へと毒翼が掠め、火花が散った。
「ッ! しまった……!」
「私だって信じてたのに! なのに教授は先輩が見つけたと決めつけて! 私が受けるはずだった称賛を……あなたは!!」
「クソッ……私への文句ならいくらでも聞いてやる! ……お前を倒したらな!」
《
受けた毒は僅か、機能が止められるまで猶予があると考えたエリーゼは決着を付けるためにベルトを操作し、右脚にエネルギーを蓄える。
怒りに任せデュアルラプターを握りしめたまま振り回されるピトフーイの毒翼を搔い潜り、輝く右脚を回転の勢いを乗せて突き出す───!
《
キックの反動を利用し後ろに跳びエリーゼが着地する。
それと同時にスコアプレートへと回った毒が彼女の動きを妨げ、その場にガクリと沈み込んでしまう。
「……クソッ、ここまでか」
必殺技の衝撃で白煙を上げるピトフーイを前に変身を解除し、悪態をつく。
汗を流すエリシアは苦々しい表情でピトフーイを睨みつけると白煙の中からオレンジの翼が現れ払い除けた。
「蹴った感覚で分かったが……なんでそんな冷静に受けてんだよ」
「……自分でも不思議ですけど先輩を見てから怒ってるのにすごい思考が澄んでるんですよ。動かないでくださいね、生身に使ったこと無いので毒でどうなるかしりませんよ」
「ッ!」
バラバラとピトフーイの手から零れ落ちたのは機械のパーツ。
彼女が握りしめていたデュアルラプターでエリーゼの一撃を受け止めて防いでいたのだ。
その衝撃でデュアルラプターは砕け散り、中に装填されていたスティングペッカースコアプレートが地面に落ちる。
ピトフーイはエリシアへと毒翼を向けながら落ちたそれを拾い上げた。
「ちょうど欲しかったんですよ、
「……今倒さないと後悔するかもしれないぞ」
「しませんよ。ここで殺したら私の作ったものを見せられないじゃないですか……楽しみにしていてくださいよ。先・輩」
狂ったように笑みを浮かべたピトフーイはプレートを握りしめるとふわりと飛び上がり、エリシアから距離を取る。
直後に灰色の機械片を投げ捨てると背後の空間に裂け目が産まれる。
「私のほうがあなたより優れてるってすぐに分からせてあげます。今度こそ……私の価値を……!」
「リヴィアナお前そんな風に……」
怒りと憎悪の眼差しを向けたままピトフーイは裂け目へと入る。
カツンと爪が硬い床材を叩く音を響かせながら空間が元に戻るとその姿はその場から消失する。
訪れた静寂を斬り裂くようにエリシアは悔しそうに地面を叩いた。
「誰もお前を認めてないやつなんていないんだよ……リヴィ」
ポツリと出た言葉は誰に伝えるでもなく虚空へと消える。
その後、追いついた盈月の元気な声が聞こえてくるまでエリシアは
******
「本当はゆっくりしてってほしいがそうも言ってられんのぉ。全くこの歳でこんな体験することになるとは」
戦いの後、播磨の家へと帰った盈月たちは互いの無事を確認し合うと警察へと連絡。
スコアノート関連であるため管轄外だが温斗たち特殊事象対策課が応対し、盈月たちが剣侍を羽頃盛市警へと連れて行くこととなった。
「おじいちゃんごめんね。こんなことになるなんて思わなくて……」
「気にせんでよい。ワシこそあまりもてなせんで悪かった……と、そうじゃ、博士さん。これを」
「これは……石か?」
播磨から手渡されたのは灰白色の石。
怪訝な顔で受け取ったエリシアは太陽光に照らすなどいろいろな方向から眺める。
「話しとった青く光ってた場所の石じゃよ。場所を見せれんかったが実物あればなんかわかるかもしれんじゃろ」
「ありがたい……けど良く持ってたな」
「盈月の父親のおかげじゃよ」
「お父さん!? なんで!?」
「研究に使いたいからって送ってくれって時々メールが来るんじゃよ。海外へ石送ることになるとは思っとらんかったわい」
肩を竦める播磨に対して盈月はエリシアに対してなぜか得意げに胸を張っていた。
そんな盈月を横目に無視しながらエリシアは播磨へとお礼を述べると受け取った石を大切にしまい車へと乗り込む。
「置いてくぞー」
「無視なんてひどいよ! お父さんのおかげで手に入ったのに」
「それでお前が威張ること無いだろ……後ろのお前のちゃんとシートベルト締めろよ」
「なぁ、この鳥ずっと見つめてきてちょっと怖いんだけど……」
後部座席に大人しく座っていた剣侍だったがガルダの視線に耐え兼ねて乗り込んできたエリシアへと助けを求める。
しかし、それに対してエリシアは「知らん」と冷たくあしらった。
「まぁ、そいつ賢いから監視してるんだろ……諦めろ」
「ピィ!」
「もう暴れる気はねぇから大人しくしてるよ……」
諦めた剣侍が窓の外を眺めれば盈月が播磨に呼び止められていた。
「盈月。戦ってることは父さん母さんには伝えたのか?」
「うんうん、まだ言ってない……直接会ったらって思ってるよ」
「そうかい。それならワシから言うことはなんもない……本音としては無茶はしてほしくはないがの」
「ありがとう。でも大丈夫!」
心配する播磨を安心させるように笑顔を見せた盈月は目線を車内へと向ける。
そこにはどこか遠くを眺めるエリシア、そして自分にできることをやろうとするガルダがいる。
彼女たちを見つめニコリと改めて笑みを浮かべた盈月は播磨へと振り返る。
「博士とガルダちゃんが一緒にいてくれるから無茶なんかしなくていいから!」
その笑顔に心配を払拭した播磨も笑顔で盈月たちを見送るのだった。
播磨が盈月たちを送り出している時、彼のパソコンが独りでに光を放つ。
メールを受信したことで消えていた画面がついたのだ。
開かれたままになっていたメール画面には新着のメール、そしてそこに添付された写真が映し出されていた。
『拝啓
播磨拓殿
最近、忙しくてメール遅れてすまなかった。
携わってたプロジェクトが佳境で中々時間取れなくてな。
あんたに送ってもらった鉱石のお陰で良い感じに進んでるよ。
そういや、もうすぐ俺たち日本へ1回帰ることになったんだよ。
次の段階が日本で活動するからって、その後また戻ってこないとらしいから一時帰国だけどな。
時間があれば娘とガルダと一緒に顔を出すよ。
そんじゃあ、また日程決まったら連絡するから。
敬具
PS.
同封した写真見てくれよ! ガルダが産まれたときから持ってたのに似てるだろ?
これ、俺たちが作ったんだぜ!
詳しくは機密だから言えないけど言って良いことは聞いといたから話せる限り教えるよ!
改めてじゃあな!
日向遊舞』
メールへと添付された写真に映されていたのは1枚のプレート。