それを率いるアホロートルはニヤニヤと笑みを浮かべて優越感に浸っていた。
「ひっひっひ! さぁ、行け。Cゴリラ、Cクラウンフィッシュ! 貴様らの性能、存分に魅せるが良い!」
「ウホヒグガアアアッ!!」
「クウ!? クルルウクウウ!!」
ライダーたちが身構える前で手を掲げ、2体のCスコアノートへと命令を下す。
Cゴリラはその命に従ってライダーたちを威嚇するように雄叫びをあげた。
それに対してCクラウンフィッシュは雄叫びに驚いたのか一足早く駆け出すと身構えたライダーたちを無視してその背後へと走り去ってしまった。
「なんだ? 私たちを無視した……?」
「ぬ……むぅ、やはりある程度素体とスコアプレートの相性でいつも以上に理性が消えてしまうか。まぁ、あれはあれで要観察だな」
「……ッ! エリーゼ、アイツを追ってくれ! あんな奴放置できない!」
「あぁ、クソそうだよな! あんな綺麗に逃げられて忘れてたよ!」
ハッと思い至ったエリーゼが背を向け空へ飛ぼうとしたその時、走り込んできたCゴリラの拳がエリーゼへと迫る。
今度は咄嗟にレディッシュがエリーゼを抱えて飛び込んだことでギリギリで攻撃を回避する。
だがCゴリラが2人を行かせまいと立ちはだかった。
「悪いな。お前たちにはコイツの相手をしてくれ。Cスコアノートの耐久力とかも見ておきたいからなぁ……そういうわけで、ここは任せるぞ、ピトフーイ!」
「ッ! 来てたのかよ……!」
ニタァと笑みを浮かべたアホロートルが上空へと呼びかけるとそれに応じるようにピトフーイが舞い降りる。
アホロートルがCクラウンフィッシュを追って走り出したのをやる気のない様子でヒラヒラと手を振って見送るとエリーゼたちへと向き直る。
「そういうわけなので相手してあげてくださいね。もし倒せたなら今度は私が遊んであげますよ」
「くッ……!」
「レディッシュ、こっちに集中するぞ……あっちには
「了解……!」
改めてそれぞれの得物を構えると2人はCゴリラとピトフーイへの敵意に応える───
Cクラウンフィッシュが迫っているという報告を聞いた峯崎率いるヒトツボシ隊は応援に来ていた警官たちも避難させ迎え撃つために陣形を組む。
幸い、モノコーンは全て掃討済み、そして住民の避難を完了していた。
覚悟を決める彼らへ煌琉からの通信が入る。
『無茶だ! 君たちのヒトツボシシューターの威力じゃスコアノートは倒せない! リゾルブフィニッシュも搭載してないんだぞ!?』
「説明は受けていますから分かっています……それでも、誰かが食い止めないと被害は広がってしまいます。それを防ぐのが私たちの役目のはずですよね? 輝散博士」
『えぇい、温斗が集めたメンツだけあって覚悟決まり過ぎだね!? もうすぐ
「善処はします……来ました!』
煌琉との通信を中断した峯崎の視界に遠方からこちらに走り込んでくるCクラウンフィッシュの姿が映り込む。
本能のままに走るCクラウンフィッシュはヒトツボシ隊を気に留める様子もない。
そんな相手に対して峯崎たちは引き金に指をかけたまま狙いを定めギリギリまで引きつける。
「───今、撃てッ!」
タイミングを合わせ、峯崎の号令でヒトツボシ隊の5人は同時に引き金を引く。
放たれた光弾は寸分違わずCクラウンフィッシュへと殺到し命中。
僅かでも足止めになれば───そう思った攻撃は意外な結果をもたらした。
「クルククウウウ!?」
「えっ……効いた……?」
攻撃を真正面から受けたCクラウンフィッシュはそのダメージに呻きながら後ろへと倒れ込んだ。
強化個体のスコアノートがこの程度なのか、そう拍子抜けしたヒトツボシ隊だったが次の瞬間、Cクラウンフィッシュは跳ね起きるとくるりと背を向けトゲを逆立たせた。
全てのトゲの白いラインが光り輝く。
『回避だ! ビームが来る!』
「ッ! いいえ、食い止めます!」
攻撃が効くのであればと回避よりも攻撃を優先した峯崎の射撃がエネルギーを充填するCクラウンフィッシュへと命中する。
しかし、逆立ったトゲは硬く撃ち込まれた光弾を物ともせず弾いてしまった。
「そんな……! 退避を!」
「駄目です、間に合いません……!」
「クルルクウ!!」
ヒトツボシ隊全員が急ぎCクラウンフィッシュから距離を取るももう遅い。
無数のトゲから白いビームが四方八方へと撃ち放たれる。
あるいは最初から回避に専念しても全員が避けられなかったかもしれない。そう実感させられる量の光線が周囲の建物ごとヒトツボシ隊へと襲いかかる。
ある者は屈んで僅かでも当たらぬようにしある者は一歩でも先へ逃げ、峯崎は仲間を救おうと盾となる。
直後、視界が光に埋め尽くされる───
「───変身!」
光に包まれる直前、峯崎たちの耳に届いたのはバイクの駆動音と少女の叫び。
覚悟した熱や痛みはいつまでも訪れず、不審に思った峯崎が目を開けると変わらずビームは放たれ続けている。
しかし、それは展開されたエネルギーシールドに阻まれてこちらには届いてはいない。
その前に立つのはスコアダッシャーに跨る白とメタリックグリーンが折り重なる装甲を纏った仮面の戦士。
《ディフェンド×フライト! イーグル!》
「あなたが……エリシア……」
「お姉さんたち、大丈夫ですか!? 後は任せてください!」
「お姉さ……いえ、了解です! 周辺の避難は完了してますから気にせず戦ってください! お気をつけて!」
「ありがとうございます! よぉし、行くよ!」
仮面の下から聞こえる年若い声に面食らいながらも峯崎たちヒトツボシ隊は距離を取って物陰へと退避する。
それを確認したエリシアは翼を広げるとシールドを展開したままCクラウンフィッシュへ向けて空を翔ける。
怒りに飲まれたCクラウンフィッシュ背後の様子を確認することもなく再度、白いラインにエネルギーが漲り始める。
「たああああ!」
「クルルア!」
ビームが放たれるよりも速く飛来したエリシアの双刃剣の刃が振り払われる。
一閃、二閃、と叩きつけられた刃が火花を散らす。
だが、本体へのダメージどころかトゲの1本すら折れることは叶わず、ラインの輝きが増すばかりだ。
やがて一際激しく輝き出したのを皮切りにエリシアは空高く飛び上がり距離を取った。
しかし容赦なくビームの嵐が殺到、展開したシールドで防御するもその背後で歯噛みする。
「硬いし全然痛がってない……!」
『へい! えいげっちゃん、戦いながら聞いてくれ!』
「あ、Dr.フラッシュ! 私とも通信できたの?」
『基本が同じだからちょっとハッキングをね。それよりも峯崎、さっき助けたお姉さんから君にって情報があるから送るよ!』
煌琉の声と共に送られたデータが視界の端に表示される。
僅かな戦闘時間ではあるがそのデータは有益だった。
「ありがとう! 弱点は正面、だね!」
ビームの嵐が収まった瞬間、エリシアはシールドを消して加速する。
飛行しながら双刃剣を組み換え、蒼弓モードへ切り替えると弦を引き絞る。
Cクラウンフィッシュの頭上を飛び超え、上下を逆になりながら落ちるように地面へと急降下。
逆さになった目線がCクラウンフィッシュと重なった瞬間、矢を撃ち放つ。
「クラルラッ!?」
「よし、効いた! このまま畳み掛けるよ!」
背中と異なり、正面から撃ち込まれた光の矢はCクラウンフィッシュに突き刺さりダメージを与える。
エリシアは地面に激突する直前、ほぼ直角に旋回し大地を背にしながら低空飛行でCクラウンフィッシュの元へと飛来する。
悶えるCクラウンフィッシュの胴体へエリシアの追撃の拳が突き刺さる。
「たあああ!」
「クリクククァ!? クルルラァ!!」
上下入れ替わりながら連続で繰り出されるエリシアのパンチ。更に身を丸めてくるりと回転すると強烈なドロップキックを放つ。
エリシアの連撃でタジタジになりながらもCクラウンフィッシュも反撃に出る。
振り上げた拳をエリシアはひらりとかわす。しかし、直後に逆再生のように振り下ろされる裏拳、そこに生えた無数のトゲこそが本命だ。
「きゃあっ……!」
「クルクラァ!」
「くぅっ……!」
振るわれた裏拳とトゲがエリシアに襲いかかり、防御するも弾き飛ばされる。
直ぐ様体勢を立て直すエリシアだったが直後、眼前のトゲから放たれるビームが襲い来る。
咄嗟にシールドを展開し防ぐも釘付けにされてしまった。
その隙にCクラウンフィッシュは更なる行動に出た。
『えいげっちゃんまずいよ、スコアノートが逃げる!』
「分かってます……!」
選んだ行動は逃走。
Cゴリラを恐れて逃げた時と同じ様に難敵であるエリシアに背を向けてひたすらに走り出す。
今度はエリシアが追い掛けようとしているのを察しているのか、妨害のためにトゲからビームを放つ。
先程までの一斉射ではなくあえて発射のタイミングをズラすことで断続的にビームを放ち続ける。
弾幕を貼ることでエリシアを釘付けにするためだ。
「このくらいなら……耐えられる! 逃さない! ここで倒す!」
しかし、その小細工が裏目となった。
連続して放っていることもあり先程よりも威力の落ちたビームはダメージこそ受けるがシールドが無くとも耐えることができる。
そう確信したエリシアは攻撃にその身を晒しながらもホルダーからサメが描かれたスコアプレートを取り出し、Eイマージュドライバーへと装填する。
《
「スコアチェンジ!」
《
溢れ出すエネルギーが乱射されるビームを弾き、エリシアを包むと姿が変化させる。
白の装甲にサメを模したメタリックブルーの装甲が重なり合い、その両腕にはサメのヒレ状のブレード、"チェイスフィンブレード"を携えた新たなる姿。
《チェイス×フライト! イーグル!》
エリシア
同時にチェイスフィンブレードが青く発光。
その輝きが番えられた光の矢へ伝播し青白く輝き出した。
「いっけぇー!」
矢が連続で放たれる、その数は3射。
Cクラウンフィッシュを狙って放った、そう思われた矢は全て明後日の方向へと飛んでいた。
全ての矢がCクラウンフィッシュを飛び越え、追い越してしまう。
しかし、エリシアが焦ることはない。なぜならこれは彼女の狙いだからだ。
それを証明するかのように全ての矢が弧を描き旋回するとCクラウンフィッシュの正面へと軌道を変えた。
「クラクウ!?」
突然、Cクラウンフィッシュの正面から飛来した光の矢。
回避する間も急停止する暇もないまま自ら突っ込む形で全て命中してしまう。
これこそ、チェイスシャークの能力。狙い定めた相手を逃さない追尾能力性能。
直撃を受けたCクラウンフィッシュは多大なダメージ受け、その影響でビームの掃射が中断されてしまう。
ビームの嵐が止んだその瞬間、エリシアが空を駆け抜ける。
「たああああ!」
Cクラウンフィッシュが立ち直るよりも早く正面へと回り込んだエリシアのチェイスフィンブレードが振るわれる。
腕の動きに連動したブレードによる連続斬りはどんどんダメージを積み重ねてゆく。
防ごうと手を振るおうとも青く発光する刃は巧みに軌道を変え防ぐことを許さない。
それでも再度ラインが輝きビームをチャージし始めたのを見て、エリシアは決着のために畳み掛ける。
《
「これで───」
ドライバーの中央を連続で押し込み必殺技を起動する。
直後、発生した青いエネルギーが渦を巻き、竜巻となってCクラウンフィッシュを包み込むとその逃げ場を奪いさる。
ゆらり、ゆらりと獲物を追い詰めたサメが泳ぐようにエリシアの影が竜巻に映し出される。
Cクラウンフィッシュはその影へ背を向けビームを放つがエネルギーの本流がそれを飲み込み外に漏れることはない。
何度何度も方向を変え、影を狙い続けたその時。
「───終わりだぁ!」
Cクラウンフィッシュの正面で竜巻が食い破られる。
回避の暇は与えない───エリシアの両刃が振り抜かれる。
《
弾けたエネルギーが水のしぶきのごとく舞い飛ぶ中、青い軌跡を残しエリシアの刃がその肉体を噛み裂く。
両断され、引き裂かれたCクラウンフィッシュは爆散。
腕に装着された銀の腕輪は砕け散り、残骸と共にその場に残したのはスコアノートとされていた男性と2枚のスコアプレート。
「はぁ……はぁ……倒せた。良かったぁ……」
『お疲れのところ悪いけど事後処理は峯崎ちゃんたちに任せて温斗たちの所へ向かってほしい! あっちはまだ戦闘中なんだ!』
「博士と温斗さん、苦戦してる……すぐに向かいます!」
労いもそこそこに煌琉からの通信に応えたエリシアは息を整え、再び翼を広げ大空へと舞い上がる。
目指す先はもう1つの戦場。
そこへ向けて翼を羽ばたかせたエリシア───その首に何かが巻き付いた。
「ッ!? あ、ぐぅ……! なに……!?」
「ひっひっひ! まさかCスコアノートをあぁもあっさり倒すなんてなぁ。驚いたよ」
「っ、喋るスコアノート……!」
エリシアを絡め取るのはピンク色のヌメる触手。
それの出どころにいたのは2体のスコアノート。
言葉を操るアホロートル、そして口から伸ばす舌でエリシアを絡め取るカエルのスコアノート───フロッグ・スコアノートの2体。
「ここへ来る途中に1匹用立てといて良かった良かった」
「これ、くらい……!」
「悪いな。こう見えても準備はしっかりしてくる質なんだ」
舌を切り裂こうとするエリシアをニヤリと笑みを浮かべて見やるアホロートルの手には銀色の腕輪。
それをフロッグの腕に装着すると新たなるスコアプレートを装填、起動する。
【セシリアン】
【
エリシアの腕に新たな触手が纏わりつき、その動きを妨げる。
更に追加で3本、両手足に巻き付いた触手は生物のようにウネウネと蠢いている。
その出処は変貌したフロッグ・スコアノート。
セシリアン───アシナシイモリの特徴を獲得したCフロッグはその体からはうねうねと自身の肉体の一部であるミミズのような肢体を蠢かしていた。
「やはり、同系のスコアの方が制御しやすいみたいだ。くく、ほらもっと締め上げろ」
「ゲコゲリアァ……!」
「ぐぅあ……! はな、してぇ……!」
手足と首を締め上げられギリギリと音がなる。
動きを封じたエリシアを自身の近くに下ろさせるとアホロートルはエリシア───特にEイマージュドライバーに注視し観察する。
「ふぅむ、やはり青いスコアプレート……
1人でブツブツと呟いていたアホロートルだったがやがて顔を上げ苦しそうに呻くエリシアの顔を見る。
「おい、お前。このプレートどうやってこの状態にしたんだ?」
「教えるわけ……ぐあぁ……!」
「その強気な態度悪くないなぁ。でも、さっさと教えて貰いたい。
ニヤニヤと眺めていたアホロートルとCフロッグへ向けて光弾が着弾する。
ダメージは軽微、何事かとそちらへ視線を向ければ峯崎たちヒトツボシ隊が隊列を組み狙いを定めていた。
「彼女を離しなさい!」
「なにかと思えばこちらの防衛組織か? ハッ、この程度とは嘆かわしい。Cフロッグ、薙ぎ払ってやれ」
「ゲシリゴアァ!」
連続で放たれる光弾を物ともせず、興味なさそうなアホロートルの命を受けたCフロッグは自身から伸びる触手をムチのようにしならせる。
勢いを乗せて振るわれたムチは横薙ぎにヒトツボシ隊へと向かう。
そちらに向けてヒトツボシューターを連射するも意に介することはない。
「だめぇ……! にげ、てぇ!」
締め付けられ、身動きの取れない
無情に振るわれた触手はまっすぐにヒトツボシ隊へと向かいそして───
******
エリシアが死闘を繰り広げるのと同じ頃。
エリーゼとレディッシュもCゴリラとの戦いが続いていた。
《サイスマンティス!
《スプリングホッパー!
ゴリラと馬、その2種が合わさるCゴリラは分厚い筋肉で2人の射撃を受け付けない。
それに対してレディッシュは両腕に鎌、脚部にスプリングを形成、装着する。
「エリーゼ! 上空から牽制を頼む! 少し考えがある!」
「そういうことなら任せるよ。
エリーゼが飛び上がり背後で控えるピトフーイを視界に収める。
それに対してもピトフーイが動く様子はなく微小を浮かべながら静観を続けている。
1対1となったレディッシュ、スプリングの跳躍力を活かし一足で距離を詰めるとCゴリラの纏わりつくように両腕の鎌を振るう。
「ハァッ!」
「ウゴヒヒガア!」
至近距離で振るわれる鎌がCゴリラの肉体に僅かな切り傷を刻む。
ガタイが大きいからこそ近くに張り付くレディッシュに対処しにくいCゴリラ。
だが、振るわれる剛腕が1撃でも当たればレディッシュの装甲も砕けてしまう。
スプリングの機動力でギリギリを躱し続けるレディッシュがCゴリラの背後へと回り込む。
その瞬間、馬の下半身から放たれる砲弾のような勢いの後ろ蹴りが繰り出された。
「ッ!!」
「ヒヒウハホオオ!!」
咄嗟に背後へと跳んだことで後ろ蹴りの威力は減衰された。
それでも弾き飛ばされたレディッシュへ向けてCゴリラが雄叫びと共に駆け出した。
レディッシュが封じていた勢いを乗せた拳が迫る。
「レディッシュ!!」
「大丈夫!
速度を上げ迫るCゴリラに対して仮面の下でほくそ笑んだレディッシュは臆すること無く前へと跳ぶ。
交錯の瞬間は一瞬。
駆け抜けたCゴリラに対して振るわれた剛腕を回避したことで無理な姿勢となってのかレディッシュは倒れる。
だが、この交錯の勝者はレディッシュだった。
「ウホヒアガアア!?」
痛みにより絶叫するCゴリラ。
その馬の胴体には鎌によって切り付けられた傷跡が大きく開いていた。
自らの力だけではダメージを与えられない、交戦の末にそう悟ったレディッシュはCゴリラのスピードを利用したのだ。
「今だ! エリーゼ!」
《
「言われるまでもない! これで決める───!」
動きを止めたCゴリラの上空でエリーゼがボウガンモードのデュアルラプターへプレートを装填する。
真下へ向けた射出口にエネルギー収束、矢を創出すると躊躇うことなく引き金を引いた。
《
勢い良く射出された矢は真下へと飛び、魚型のエネルギーへと変化するとCゴリラへと命中、爆発が起こり爆煙を巻き上げる。
普段ならばすぐにプレートの回収と変身者の安否確認を行うがまだピトフーイがいるため、2人とも即座にピトフーイへと武器を向け直す。
「あなたもここで倒す!」
「あぁ。リヴィ、悪いけど手加減はしないからな」
「そんなの期待してないですよ。それにそもそもまだ終わってないですよ?」
「なに……?」
直後、爆煙が内側から打ち払われる。
2人が何事かと振り向けばそこにいたのは大きくダメージを受け、その場にうずくまりながらもいまだに姿を保ったCゴリラだった。
「なっ!? リゾルブフィニッシュが直撃したのに……!」
「先輩たちが使ってるオーバーコートと一緒ですよ。2枚分で出力を底上げしてますからそう簡単には倒せませんよ……まぁ、
「想定? まさかこの腕輪はお前が作ったのか?」
「さぁ、どうでしょうね?
ニヤリと笑みを浮かべたピトフーイは自身の腕に腕輪を装着する。
通常のスコアノートでもあれほど強化されたことからマウンターがどれほど強くなるのかとエリーゼとレディッシュは身構える。
そんな2人が見守る中ピトフーイは取り出したスコアプレートを見せつける。
「っ! それは、スティングペッカー……!」
「前回、奪われたと言ってたプレートか……!」
「えぇ、このために必要だったんですよ!」
ピトフーイが腕輪へとスティングペッカースコアプレートを装填すると中央を押し込み装置を起動する。
【ウッドペッカー】
【
腕輪から溢れ出したエネルギーがピトフーイの肉体に突き刺さり、沈み込む。
深く深く───肉体に潜り込み混ざり合う。
肉体を作り替える感覚にピトフーイは悶える。
「っ、くあっ! ふ、ふふ……変身───いえ、こういうのはどうですか?
ピトフーイの叫びとともに溢れたエネルギーが弾け、ピトフーイの肉体の変化が完了する。
その変化は前例たるCスコアノートたちとは異なっていた。
ヒラヒラとした羽根はそのままにその根本である肉体は装甲のように硬質化。
腕の一部が大きく盛り上がり大型のガントレットの様な形状となり、その脚部は血のように赤く彩られ、その背にキツツキを模した巨大な翼が出現する。
「っ! マウンターが強化か……! エリーゼ、どう思う?」
「私たちなら難なく勝てるって言って欲しいなら他当たれ」
「同意見で安心したよ……! 来るぞ!」
「く、くく……見せてあげる。カオス……あぁ、いえ、
2人が身構えるとともにピトフーイSが翼をはためかせた。
その直後、エリーゼの横を突風が駆け抜ける。
突然のことに被害を確認しようと横を向くがそこにいたはずのレディッシュの姿が消えていた。
「っ!? レディッシュ!!」
何事かと周囲を見回すとパラリと空からレディッシュの鎌の破片が落下してくる。
バッと上を向くとそこにレディッシュとピトフーイSの姿があった。
ピトフーイSの毒翼を腕をクロスして受け止めたレディッシュだったがその勢いの押され上空へと連れ去られていたのだ。
鋭さを増した羽根であったがレディッシュの装甲を傷つけるには至ってはいなかった。
「くっ!?」
「あはは! どうですか!? あなたに負けたのずっと根に持ってたんですよ!」
「そうだとしてもまだ僕は倒せてないけどね……!」
「分かってないですね! なんで私がこのスコアを使ったと思ってるんですか!?」
ピトフーイSがレディッシュを弾き飛ばす。
空中に投げ出されたレディッシュは飛行できずに地面へ向かって落下していく。
地面への激突を食い止めようとエリーゼが空へ飛び上がるがピトフーイSも黙って見てはいない。
狙いをつけるように腕を上げ、落下するレディッシュへとガントレット正面の穴を向ける───スティングペッカースコアのエリシアと同じ様に。
「さぁ、これが私の発明……イマージュバングルの力ですよ!」
エリーゼがレディッシュの元へ辿り着く前にガントレットから杭が射出される。
鳥のくちばしを模した杭は素早くまっすぐに伸びレディッシュを貫きくと勢いのままに突き落とす。
「がああ!?」
「レディッシュ!! ッ!? きゃあ!」
エリーゼが受け止めるも勢いが衰えることなく2人はもつれ合いながら地面へと叩きつけられた。
アスファルトを砕き土煙を巻き上げて地面とレディッシュに挟まれたエリーゼはダメージこそあるものの無事だった。
「ぶ、じか……エリー……ゼ……」
「っ、ぐぅ……レディッシュ無事なら早くど───」
起き上がるためにレディッシュを確認してエリーゼは仮面の下で目を見開く。
真っすぐ伸びた杭。その先端は胴体装甲を貫きレディッシュの内部に埋まりこんで見えなくなっていた。
ピトフーイSが杭を引き戻すとずぶりと音を立て杭が引き抜かれる。
「ぐ、あああああ!!」
直後、循環するレディッシュのエネルギーが吹き出すと共に赤い雫が周囲に撒き散る。
ピトフーイの頃から強化された毒とエネルギー漏出で変身が維持できずに装甲が光となって消え去る。
残された温斗の腹は抉られ、赤い染みが穴の空いた服に滲んでいる。
苦しそうに呻く温斗の顔には苦悶の表情が浮かんでいた。
「温斗!? おい、大丈夫か!?」
「僕は、いいから……まだ、敵が……」
「放って置けるわけ無いだろが!」
限界を迎え気を失った温斗を抱え上げ、エリーゼは敵たちへと対峙する。
空中からこちらを見下し、くつくつと笑うピトフーイS。そしてCゴリラもダメージから復帰し起き上がると威嚇するように胸を叩く。
追撃をかけるため下降しようとしたピトフーイSだったが突如頭を押さえて空中で呻き出す。
「っ! ぐぅあ……!
頭を振って意識を保つと眼下でこちらを見上げる
「前の溜飲は下がりましたから今日はこれで許してあげますよ、先輩」
「ハッ! 強がるなよ。もう戦えないってことだろ?」
「好きに思っていただいて結構ですよ……それに次があるかはソイツを倒せたらですけどね」
捨て台詞を残し空間の裂け目へとピトフーイSは姿を消す。
残されたエリーゼが正面へと目を向けると怒りに燃えるCゴリラがこちらへと突撃してくる。
「ウホホヒヒホォオオ!!!」
「くそっ! お前に構ってる時間は無いのに……!」
翼を広げ横跳びに空へと逃げる。
激しい動きに合わせて温斗の傷から血が舞い飛ぶのを見てエリーゼは速度をセーブせざる得ない。
そんな事情に構うわけもないCゴリラは全力でそのエリーゼを追い、徐々にその距離を縮めていく。
「ウホヒィ!!」
「ッ! やめ……!」
勢いに任せ跳躍したCゴリラの腕がエリーゼの足を捕らえる。
エリーゼの制止も意味をなさずぐるんぐるんと振り回して勢いを付けると近場のビルへ向けて投げ飛ばす。
空中でなんとか体勢を整えることができたエリーゼだが抗えず、ビルへと激突。外壁を破って瓦礫転がる室内へと落下した。
温斗の身体を抱え込みなんとか守り抜いたがそれでもそこがエリーゼの限界だった。
ダメージの限界を超えその装甲が光と砕けて変身が解けてしまう。
「く、そ……温斗、大丈夫か! 怪我は……っ」
呼びかけに答える声はない。
服に染みる赤は広がり続け、気を失っているその顔色からは少しずつ血の気が引いていく。
急ぎ手当しなければ訪れる結末は一目瞭然だ。
だが、エリシアの力では成人男性を抱えて運ぶなどできるわけもない。
「ヒヒウホオオ!」
「っ! きっちりトドメを刺しに来たってわけか……!」
追い打ちをかけるようにCゴリラがエリーゼたちが開けた穴から顔を見せた。
その瞳に宿る怒りに従い、眼前のエリシアたちへ歩み寄ってくる。
「───
絶体絶命、それでもエリシアは諦めない。
例えどれだけ共に戦う相手が増えてもその全てを守る、その意志に変化はない。
───だってそうしなければ私のせいで犠牲が出る。
「……あの人、って誰のことだ……?」
自らの意志に生じた自らが知らない記憶。
思い出そうにも何も思い出せない、
それを自覚した時、自身の手元が青く輝いた。
「ウヒホッ!?」
「な、なんだ!?」
Cゴリラは当然のこと発光の大元であるエリシア自身も何が起こったのか分からない。
ただ彼女の手元───温斗に触れた手が青く輝いている。
その輝きにエリシアは見覚えがある。それはガルダが純化行う時に放つのと同じもの。
「なんで……何が起きて……」
変化は続く。
光は触れた手から温斗へと移りその全身を包むと淡く輝かせる。
それに呼応するように彼の顔は少しずつ血色を取り戻し、更に腹の穴が
やがて光が収まると血が滲み、大きな穴の開いた服だけを残し温斗の怪我は全て消え去っていた。
呼吸も穏やかになり、ただ気を失っているだけのようだ。
「これ……は……? っ、なにが……」
直後、光を失ったエリシアに訪れたのは虚脱感と疲労。
数日徹夜で働き詰めた様な肉体の疲れが突如彼女に伸し掛かった。
戦うのはおろか、動くことすらままならないだろう。
「ウゴゴヒハァ!」
「やば……い……!」
光が落ち着いたことでCゴリラはハッとなり自身を鼓舞するように胸を叩き鳴らすと四脚の足をバタつかせエリシアたちを潰さんと動く。
まともに動けないエリシアはせめてもの抵抗として温斗を守るように覆い被さる。
しかし、天は彼女たちを見捨ててはいない。
壁の大穴が透明な
「ウホヒガァ!?」
───それは不可視の衝撃波。
背後から打ち据えられたCのゴリラは吹き飛ばされ壁へと押し付けられその動きを封じられる。
《ハウリング×フライト!
「たあああああああ!!」
直後、飛び込んできた白光。
ハウリングフライトスコアを纏うエリシアの必殺のキックがCゴリラへと突き刺さる。
度重なるダメージを受けていたCゴリラはその一撃をもって沈黙。
爆散し、人と2枚のプレートそしてイマージュバングルの破片のみを残して消滅した。
「博士、温斗さん! 大丈夫だった!?」
「盈月……良かった……ありがとう」
敵の撃破、そして増援の到着に
2人の無事を確認すると
周囲の被害こそあったが早期の避難対応で人的被害は最小限に抑えることができていた。
「そうだ、私はいいが温斗が重症……のはずなんだ」
「? う、うん! もうすぐ警察の人も来てくれるから博士と温斗さん2人とも病院に運ぶからね」
「頼むよ……しかし、よく1人で勝てたな」
ピトフーイSの存在があったとは言え2人掛かりでも手を焼いたCスコアノート。
盈月が戻ってきたということは1人で撃退あるいは撃破したことを意味している。
実際、盈月はCクラウンフィッシュを単独で撃破をしていたがエリシアの言葉に「うーんと、実はね……」と曖昧な様子だった。
「最初の1体は倒せたんだけど……その後、助けてもらったの」
「助け? 警察のヒトツボシ隊にか?」
「うんうん。えっと───」
地上に降り立った彼女たちの元に新たな誰かが近づいてくる。
その人物を見たエリシアは驚愕し目を見開いた。
「なっ……」
「あ、この人だよ! 私を助けてくれた───仮面ライダー!」
そこに立っていたのは青いアンダースーツが剥き出しとなり関節部や胸部、手甲と脚甲と言った各所に青紫色の装甲を身に着けた戦士。
頭部のマスクを始め各所に散りばめられたコウモリの意匠。
その腰に巻かれたベルトはベースこそイマージュドライバーだがレディッシュと同じ様に特殊な形状をしておりこちらも翼を広げたコウモリを思わせ、
身体つきから女性と判じられるその戦士は3人の下へと歩み寄る。
「お前……なんだ? 誰なんだ?」
「誰……ふむ……」
やがて、ちらりと
「───ルシエ」
「ルシエ……?」
「そう、私の名前。あなたたちの言葉を借りると……仮面ライダールシエ」
青い戦士───ルシエの凛とした声が響く。
いくつもの事象が絡み合いながら状況は目まぐるしく変化してゆく───