羽頃盛高校がスコアノートの襲撃を受けてからおよそ3週間が過ぎた頃。
校舎の修繕や不足した人員の補充などが終わり、体制を整えた事で生徒たちは登校を再開する事となった。
「吉美ー! 詩歌ー! おっはよー!」
「えいげっちゃんおっはよー! いやぁ、えいげっちゃん久々……でもないね」
「休みの間結構な頻度で会ってたからねー。まぁ、夏服になっては今年初めましてかな?」
盈月と吉美、詩歌の3人も夏服へと袖を通したこと以外、休校前と変わらぬやり取りを繰り広げていた。
しかし、全てが同じままというわけにはいかなかった。
始業のチャイムが近づく中、本来全て埋まるはずの座席に空席がいくつもできている。
スコアノートたちに拐われた者だけではなく、襲撃がトラウマとなり登校できない者や親の意向で転校してしまった者など理由は様々だが10人ほどの人数が登校をしていなかった。
「っ……」
それを見た盈月は自然と自らの手を握り締めていた。
あの日、もっと自分に力があれば───その考えが頭を過った時、ペシリと吉美が盈月の頭を軽くハタいた。
「こーら、えいげっちゃん。ダメなこと考えてたでしょ?」
「うちらみたいにえいげっちゃんに助けられたおかげで学校来られた人もいる人忘れないでね?」
「吉美……詩歌……」
2人からの激励に盈月の沈みかけた心が浮かび上がる。
零れかけた涙を自らの中に生まれた後悔と共に頭を振って吹き飛ばすと弾けるような笑顔を2人へと向けた。
「えへへ、ごめん! 2人ともありがとう!」
悩みは尽きれども今の彼女には頼れる
あの時のような自らの思いを殺すことはもう無くなるだろう。
タイミング良くチャイムが鳴り響き、生徒たちが着席すると担任が教室へと入ってくる。
本来なら1人だけのはずが今日に限り、担任に続いてもう1人教室へと入ってきた。
「今後について話す前に今日からこのクラスへ加わることになった留学生を紹介する。アメリカから来たルシエさんだ」
「ルシエ・ホワイトバーチ、アメリカから来た。ふつ……ふつつか?だがよろしく頼む」
ホームルームのためにやってきた担任が連れてきたのはプラチナブロンドの髪をなびかせた女性───ルシエだった。
スラリと背が高くモデルの様なスタイルの彼女が学生服を纏うその姿はある種のアンバランスさがある。
それでもそれを着こなす彼女は彫刻のように整った顔でクラスを興味深そうに見回している。
突如現れた転校生、それも外国人の美女となればクラス中がざわめくのは避けられないことだった。
「ほら、静かにしろ。じゃあ、ルシエさんは日向の隣は
配慮も込めて強調するように言葉を発する担任。
担任が示した方へと視線を向けたルシエは笑顔で手を振る盈月と目が合い、驚きと共に目を見開いた。
「むっ……エーゲツ。まさか、同じ学校だったのか」
「ねー、私もびっくり! ルシエさんカッコいいから年上だと思ってたもん」
「ふふ、サクヤから聞いてたから私は知っていたぞ」
そのまま隣へと座り、クラス中に注目されながら言葉を交わしていたが担任の咳払いに2人揃って前へと向き直った。
「あー、知り合いなのはいいが今はこっちの話を聞いてほしいな?」
「ごめんなさい! 終わったら話します!」
「すまなかった」
2人揃って頭を下げると担任は改めて連絡事項と今後のことを話し始めるのだった。
******
「ピィー!」
ガルダの叫びが響くとともに青く輝く身体から羽根が抜け落ち、真下にあったスコアプレートへと吸い込まれるように消滅。
後に残されたのは純化されたスコアプレートと疲弊してその場に腰を降ろしたガルダ。
普段ならば盈月がすぐに抱き上げてくれるのだが今日にガルダを抱き上げたのはエリシアだった。
直後、周囲で見守っていた白衣の大人たちがスコアプレートの変化にどよめいた。
「───まぁこれが隠してた純化の秘密だよ。見ての通りコイツがバテるから緊急で戦力が必要な時以外はやってないがな」
今いる場所はエリシアの自宅ではない。
そこは涼が作った国営のスコアプレート研究施設。
内観は真新しい白を基調にした研究所───だが、その外観はカモフラージュのために寂れた倉庫の様になっていた。
実演を終えたガルダを労いながらエリシアは優しくガルダをゲージへと入れる。
懐いている様子のガルダは抵抗すること無くエリシアへと甘えながら大人しくゲージへと収まった。
「手に入れてから純化までが早すぎると思った時があると思ったら……どういう原理なんだい?」
「オイオイ、ヒカル。それが分かってたら今日わざわざ見せるわけ無いだろ?」
「言われてみれば。エリシアがわざわざ教えるわけないか!」
「お前らじゃないんだからそんな事するわけ……無いとは言えないな……お前らに教える義理も薄いな……」
否定しようとしたところで考えてみれば否定する理由もなく咳払いをして「とにかく!」と話題を切り替える。
「実際に見せたんだ。何が起こってこうなったのか調べて欲しい。私個人の物よりここの方が設備はいいだろ? 郡山がケチるわけないからな」
「分かってんなぁ!
ボブの号令を受けた白衣の研究者たちは録画した映像や純化されたスコアプレートを分析用の機械にかけるなど各々動き始める。
別の区画では事前に渡されていたヒトツボシューターの量産と
ボブが一通り指示を出している間にエリシアたちの元へと来たのは温斗と涼だった。
「エリシアさん。どうしてこのことを隠していたのかとなぜ教える気になったのかを聞いてもいいかな?」
「言わなかったのは悪かったと思ってる。ただ、初めてのケースだったしなにより
「なら、なんでこのタイミングで?」
「調べる理由ができたから……が1番の理由だな」
チラリとエリシアが温斗へと視線を向ける。
あらかじめ示し合わせていた温斗がそれに対して頷くとエリシアは事前に用意していたデータを全員へと見せた。
それは前回───Cゴリラ並びにピトフーイSとの戦闘における
そして、温斗のメディカルチェックの結果だった。
「煌琉は気づいてると思うが前回の戦闘でピトフーイの強化体……ピトフーイSと名乗ってた奴の一撃はレディッシュの装甲を貫いていた」
「そうだね……このデータの通りあの時、攻撃はアンダースーツすら貫いていた。間違いないよ」
「いや、そりゃおかしいだろ。それが本当なら
データは嘘をつかない。
それであるならば同時に示されたメディカルチェックの結果にも嘘はない。
健康そのもので怪我1つ発見されていない結果が。
それは証明するように温斗は自らの服をめくり、傷1つない腹部を皆に見せる。
「だが、間違いなく僕は腹を杭に貫かれた……感覚として覚えてる」
「……錯覚や幻痛の可能性は?」
「それも考えたけどそれなら
そう言って温斗が取り出したのは普段着ているものと同じスーツ。
それがあの戦闘時に着ていたものであることは一目見れば明らかだった。
腹部に大きく空いた穴。
そしてそこに染み出し赤黒く乾いた血痕がそこにはしっかりと残されていたからだ。
「これは……」
「……この大きさで貫かれたなら見るからに致命傷、そうじゃなくても今元気に歩けるわけねぇな」
「でも実際には温斗は無事……エリシアさん。何があったんだい? あの場で他にいたのは君だけだろう?」
涼の問いかけに全員の視線がエリシアへと集まる。
エリシアは「信じられない話だと思うが」と前置いた後にあの時起こった───いや起こした現象を全員に共有した。
その内容に3人は驚きを隠せない。
「───いや、いやいや流石にオカルトがすぎるだろ」
「ふむ……実演はできるかい?」
「悪いがあの時も無我夢中だったしその後何をどうしてもできなかった……あの時だけ何があったのか私自身も分からん」
「その件だけど、おそらくエリシアさんがその”青い光”を使ったのは僕の時の1回だけじゃない。最低でも後2回は使ってると思う」
「あん? どういうことだ温斗?」
打ち合わせにはなかった話にエリシアは怪訝な顔を温斗へと向けた。
それに対して温斗はエリシアの右腕を指指した。
「1回目はあなた自身の骨折。あれも急に完治して不思議に思っていたんだけど僕の時と同じなら納得できる」
「それは……確かに思ったが。じゃあ残りのもう1回は?」
「盈月さんがライノスに負けた時です」
学校襲撃の際、剣侍が変じたライノスとの戦闘で盈月は気を失い、病院へと入院している。
検査結果として怪我はなかったはずだが温斗曰く、その時にもエリシアの力が使われていたのではということだった。
「ふむ……だけど、温斗。あの時、盈月さんは無傷だったんじゃないのかい?」
「あぁ、病院に来た時点で傷はなかったよ。でも剣侍くんに聞き込みしている時、気になることを言っていてね。あの時、かなり手酷く傷を負わせたのに盈月さんに傷がなくて驚いたとさ」
「なるほどな……確かに状況としては合致するな……」
「でも、温斗を治した後エリシア自身も疲労感あったんだろ? そういうのあったのかい?」
煌琉に言われエリシアは当時のことを思い返す。
首を横に振ろうとしたがピタリと止まると顔を手で覆った。
「なにか思い当たることがあるのかい?」
「……あの頃、研究で徹夜しまくってたからその疲れなのか光ったせいなのか分からん」
エリシアの告白に煌琉とボブはガクリと崩れ落ちる。
「まさか生活習慣で検証止まるとは思わなかったよ……」
「相変わらず不健康な生活送ってんなぁ……」
「お前らも大して変わんないだろぉ! それにその時はあれだ……Eイマージュドライバー作ったり盈月のサポートのために骨を折ってた時期だから仕方ねぇんだよ!」
「へぇ。今はちゃんと寝てるのかい?」
「……寝ないと盈月とガルダがうるさいからな」
その後もエリシアを質問攻めにするも確証に至る答えを得ることは出来なかった。
それでも状況からしてエリシアが治療したというのは間違いはないだろう、そういった結論となった。
「OK、分かったよ。とりあえずガルダの方を調べてみる。それで多少はエリシアに起こったことも分かんだろ」
「悪いな、助かるよ。本当は私自身で調べるべきなんだが私も戦力強化に知恵を割きたくてな」
「検証の結果、レディッシュはイツツボシューターの5連装ならなんとか出力足りそうだよ。それでも強化は必要だけどね」
「となるとCスコアノートを倒せないのは
未だに強化の方向性の定まっていないエリシアは頭を悩ませていた。
そんなエリシアへとボブが改めて声をかける。
「そういうことなら情報提供の礼代わりだ、ほらよ。ヒカル、お前にもおまけだ」
「あん? っ、これは───!」
ボブが押し付けるように2人の手に握らせたもの、それはスコアプレートだった。
青いフレームの純化されたプレート、ただし今までの物と異なり本来は刻印されている動物の絵が描かれておらず無地である。
「バットスコアプレートを作ったのと同じ、俺が精製したクリアプレートさ。ここにスコアを入力すりゃスコアプレートの完成ってわけだ!」
「確かにすごいけど冷静に考えるとその元のスコアを手に入れるためにはスコアプレートがいるわけなんだよね」
「そうだな。でも今からスコアをいれるなら何か使い道がある……気がする。ありがたくいただいてくよ」
エリシアがクリアプレートをケースへとしまう。
その時フッとなにか思いついたのか煌琉はそのクリアプレートを観察しボブへと質問を投げかけた。
「……そういやボブ。これって
「ん、あぁ。作ったときから純化されてたぜ。ついでにいうとそれにスコアを入力しても青いままだ。それがどうかしたか?」
ボブが首を傾げ他の3人も煌琉の質問の意図がわからず顔を見合わせている。
それに対して煌琉はブツブツ呟きながら自らの考えを纏めてゆく。
「いや、エリシアが光って
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「待たせたな、女帝。頼まれていた追加のスコアプレートができたぞ。
帝国の居城。
その謁見の間へとやってきたアホロートルは下卑た笑みを浮かべたまま女帝へと頭を垂れる。
その手に抱えていたのは新たに製造された大量の
「あぁ、もちろんだとも。さぁスコアプレートをこちらへ」
女帝が手を差し出す。
透けるような───いや実際に透けている半透明の腕が明かりに照らされる。
アホロートルが杯を献上するかのように容器をその手の下へ。
「さぁ───私に染まりなさい」
直後、女帝の手から溢れ出した赤黒い液体───いや、赤黒い
粘つくように絡みついた光は1枚1枚それぞれのプレートへとバチバチとスパークを発しながら浸透してゆく。
やがて、輝きが収まった後に残されたスコアプレートは1枚残らずフレームの色を赤く変色させていた。
手を引いた女帝はそれを満足そうに眺めると玉座へと深く腰掛ける。
「流石にこの数を一気に染めると疲れるよ。まぁでもそれだけあれば足りるだろう?」
「Cスコアノートの運用しても十分な数だとも。くく、イマージュバングルか。ピトフーイも良いものを作ってくれた……おっと」
ポロリと漏らしたアホロートルに女帝はわざとらしく「おやおや」と笑みを零しながら反応する。
「
「くく、それを咎める貴方ではないだろう?」
「咎める? なんでだい?」
アホロートルの皮肉を込めた言葉に対して女帝はきょとんとした声色で返す。
「君の方が先に持ってきて私の役に立った。そこのどこに咎める要素があるのかな?」
「いんやどこにも。やはり、貴方に仕えて正解だよ」
「それは良かった」
女帝の答えにニヤリと笑みを浮かべるアホロートル、そして女帝はそのアホロートルを満足げに眺めていた。
仰々しく、わざとらしく頭を下げたアホロートルは謁見の間を立ち去ろうと振り返り、何かを思い出したように立ち止まった。
「そうだ、女帝よ。仮面ライダーたちは青いプレートを使っていたぞ。それも我々から奪った物はずの物もな」
「……へぇ。それはそれは。
「人間どもが女帝の影響を取り除く手段を見つけた可能性もある。だが、全く関わってないとは思えない……Cスコアノートの運用のついでとしてマウンター共に探らせるか? カープたちやピトフーイが聞くとは思わんが
「必要ないよ。私たちが
興味なさそうに疲れた身体を伸ばす女帝。
一通り身体を動かし終わると赤い紅の引かれた妖艶な口を僅かに綻ばせながら続く言葉を紡ぐ。
「
彼女の言葉には裏も表ない。
ただ、思ったことを思ったままに───全てを統べる彼女の言葉が真であるのだから。
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「はい。それじゃあ、えいげっちゃん。ルシエさんの紹介よろしく!」
「うん! えっとね、名前はルシエさん! 私の友達!」
「こっちはエーゲツ。同じく友達だ」
「よぉし、そんな気はしてたけど質問考えるからご飯もぐもぐしてて!」
「2人いて情報1個も増えないことあるんだねぇ」
久しぶりの授業をこなした昼休み。
盈月そして吉美と詩歌は他のクラスメイトが誘うよりも早くルシエを教室から連れ出すと屋上でランチを拡げていた。
自発的な紹介を諦めた吉美はメモ帳に聞くべきことを書き出していく。
その前で残りの3人は持ち寄った弁当やサンドイッチを談笑交えながら食していた。
「ほらー、吉美も食べないと時間なくなるよ? あーん」
「あむ……うん、やっぱえいげっちゃんのご飯美味しいー! そのままどんどん食べさせて!」
「いや、自分の食べなよ。吉美」
「エーゲツ、私も。私もあーんしてほしい」
「いいよー、あーん」
右手に焼きそばパン、左手にサンドイッチを持って交互に食べていたルシエがキラキラとした目で盈月の差し出した卵焼きを口へと収める。
その味に舌鼓を打つ様は第一印象のクールな様からかけ離れた笑みを浮かべている。
次に彼女が目に付けたのは詩歌が持つメロンパンだった。
「シーカ、シーカが食べてるのは本当にメロンパンなのか……? コンビニにそんなサクサクしてるのは無かったが」
「あぁ、これ? 近所のパン屋さんで買った奴。コンビニのよりサクサクだよー。ほら、あーん」
「んむ……本当だ、サクサクで甘くて美味しい……!」
「いやー餌付けしがいあるなぁ、ルシエさん」
まるで子どものような笑顔でちぎって渡したメロンパンを食べる様子に惹かれた詩歌はひょいひょいとメロンパンをルシエに与えてゆく。
そうこうしていると吉美の「できた!」という叫びと共にルシエへと質問を列挙したメモ帳を手渡した。
サンドイッチを頬張り手を空けたルシエが受け取り、盈月と詩歌が後ろから覗き込む。
「ふむ……好きなものは日本のコミックを読むのは好きだ。趣味もそれということになると思う」
「へぇーどんなの読んでるの?」
「学園モノ? というのを良く読む。サクヤが日本語の勉強のついでにとよく渡してくれるんだ」
「朔夜はねー私のおかーさん!」
その後も記された質問をゆっくりと噛み砕きながらルシエは1つずつ答え、内容の不足を詩歌が追加で質問することで補ってゆく。
順調に答えていっていたが『日本に何をしに来たの?』という質問でピタリと言葉を止めて考え込んでしまった。
「……なんと答えるべきか。勉強をしに来ただとまずいだろうか?」
「その言い方はそれ以外あるやつじゃん!」
「言わなきゃそれで良かったんだけどね」
「むぅ……そうだな……エーゲツ、どうすればいいだろうか」
「私? 2人は私が仮面ライダーなの知ってるよ?」
盈月はルシエの質問にさも当然ように答える。
吉美、詩歌、ルシエの三者の間に沈黙が広がる。
盈月の言葉は実質、ルシエもその1人であると明かしたようなものだった。
「……なら、良いのか。私も仮面ライダーだ。
「それ本当に私たちに言ってよかったのかな!?」
「うーんダメな気がするから……うん、胸の奥に仕舞っとこう、吉美」
「ありがとう。キビ、シーカ。それで私が日本に来た理由だが───」
きょとんとしていた盈月が詩歌に失言をしたことを指摘され、ルシエに謝る中、ルシエの言葉は中断された。
盈月とルシエ、2人の懐から響く異なる音の2つのアラートが彼女たちの談笑を切り裂いた。
「っ、これ……」
「あぁ……スコアノートだ」
音の元は盈月のEイマージュリーダー、そしてルシエの持つ翼を畳んだコウモリを思わせる装飾の施されたリーダー、”
それはスコアノート出現を知らせるアラート。
リーダーを確認すれば大まかな場所と4体出現したことを示している。
「すまない、行ってくる」
「吉美、詩歌ごめん。私も早退するね」
「OK。先生にはなんか良い感じに言い訳しとくね!」
「後でえいげっちゃんち集合ね。午後の授業のノート見せたげる!」
「ありがとう!」
即座にスコアダッシャーをオート操作で学校近くへと呼び出し、階段を駆け下りようと走り出した盈月の歩みがすぐに停止する。
なぜなら同じ様に向かうと思っていたルシエが立ち上がった後に僅かに距離を取るのみでその場に立ち止まってしまったからだ。
何かあったのかと盈月が声を掛けるよりも早く、ルシエはバックルを自らの腰に巻き付けるとBATリーダーのスロットへとスコアプレートを装填した。
《アクロバットバット!》
プレートを装填されたBATリーダー、その両翼が展開する。
コウモリの翼に似たそれは疑似プレートを装填するためのスロットだった。
3人が突然のことに呆然と見守る中、ルシエはBATリーダーを握り締めた右腕をまっすぐ真横へと伸ばす。
《
握り締めたBATリーダーを勢い良くバックルへと装填。
同時に青紫色のエネルギーフィールドが展開されルシエの周囲を包み込んだ。
「……変身」
《
エネルギーが収束しルシエを包み込むように人型を形成する。
全身を覆う青いアンダースーツ、その上に装着されてゆくコウモリを模した青紫色の装甲。
関節や胸など急所を守り、攻撃のために必要な最低限の軽装の鎧。
そのすべてが装着された時、アイレンズが黄色く輝きを放って点灯した。
《アクロバットバット!》
軽装甲を纏うコウモリの戦士───仮面ライダールシエは手すりへと跳び乗ると背後を一瞥する。
「エーゲツ、先に行っている」
そう一言残したルシエは屋上を跳び出した。
校門へと着地し跳ね、街路樹を足場として更に跳ねると近くの民家の屋根を伝って駆け抜けてゆく。
僅かな時間で気がつけばその姿が点にしか見えないほど遠くへと離れていた。
一瞬の出来事であったが階下からその姿を目撃した生徒たちのざわつく声が盈月たちの元へと届いた。
「……さっき機密って言ったよね。あれそのうちバレない……?」
「えいげっちゃんとは違う意味で目が離せない子かも、ルシエさん」
「うーん、ボブさんに後で伝えておいたほうが良いのかな……?」
「とりあえず、えいげっちゃん。追いかけなきゃ」
「……そうだった! ごめん、私も行ってきます!」
ハッと我に返った盈月は弁当箱を吉美へと預けると屋上の扉から勢い良く飛び出しルシエの後を追ってスコアノートの元へと向かった。
お久しぶりです。
リアルのほうがごたついていて執筆できませんでした、気がついたら年明けてました……今年初投稿……!?
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