空間に裂け目が開き、そこを通って続々とスコアノートたちがこの世界へと現れる。
その数は4体。そのうち2体はタイガーとカープだった。
「さて、出発前にも言ったが今回俺とカープは付き添いだ。手を出すつもりは……」
「良いっすよ。そんな何回も言わなくても。先輩だからってうざったいっすよ、それ」
「そうそう。ようはちゃんとキル取れば文句ないわけだろ?」
諭すような口調のカープに対して2体のスコアノートはふざけた様子でその言葉を聞き流す。
その様子にカープはタイガーへと視線を向けるがタイガーも肩を竦めるのみだ。
「そういうことならお手並み拝見させていただきましょうかねぇ」
「はぁ……そうだな……すぐにでも仮面ライダーたちが来るだろうさ」
2人の様子に何かを諦めたのかカープはため息を吐いてタイガーに従う。
それを受けた2体はニヤニヤと笑みを浮かべカープたちへと背を向けた。
「よっしゃ、ならルールはさっき話した通りっすねよね?」
「おう。地上はお前、少しでも飛んだら俺の獲物。破んなよ?」
「そっちこそ。そんじゃゲームスタートってことで!」
スコアノートの1体が屋上から飛び降りる。残った1体は屋上の上に陣取ると身体を伏せてその
2体の邪魔をしないためかカープとタイガーは少し離れたビルへと飛び移るとその様子を俯瞰する。
「なっまいきですねぇ」
「恐らく、スコアプレートに呑まれているんだろう。ここまで質が悪いからこそ、イマージュバングルの実験で消費されるのだろうな」
「まぁ、楽でいいのでは? 私たちも色々見れるわけですしねぇ」
「あぁ、それに指導ばかりで敵と斬り合わないとそろそろ腕が鈍りそうだからな」
眼下で通常よりも多くのモノコーンが出現し続けるのを眺めながら2人は言葉をかわす。
腰の剣に手をかけながらニヤリと笑みを見せたカープだったがすぐに「ところで」と視線は向けずタイガーへと語りかけた。
「お前が敵に興味を示すとは珍しいな。タイガー」
「そうですかぁ? これでもいつも真面目にやってるつもりですけどねぇ?」
「茶化すな。長い付き合いだ、お前が敵に頓着しないことくらいは知っている……新たに現れたコウモリの戦士に因縁でもあるのか?」
「……そんなものは無いですよぉ。えぇ、心当たりもありませんからねぇ」
カープの言葉に普段の調子を崩さぬように注意しながらタイガーは続ける。
「ただまぁ……少し、コウモリには思うところがあるだけですよぉ。えぇ、それだけです」
「そうか、深くは聞かん。お前が興味あるのならば残り3人はこちらで受け持とう」
「おやおや、ありがたい申し出ですねぇ。まぁ、カープくんのことですから3人と戦いたいだけでしょう?」
「はは、お前には何でもお見通しだな」
和やかな友人同士の会話を繰り広げるカープとタイガー。
だが、纏う気迫に緩みはない。
自らたちの番が来るまで静かに待ち続けるのだった───
警察の誘導に従って逃げる人々に逆らってスコアダッシャーを駆り走る盈月。
混乱した人々をなだめる警察たちにも止められること無くスコアノートの元へと向かう。
その前に見えてきたのは道路上に無造作に停められた5台の白バイ。
「あそこだ!」
「ッ! 一般人の方は退避……そのバイク、まさか!?」
「あ、この前のお姉さん!」
彼女の前に立ちはだかったのはプロテクターを身に着けた峯崎、そしてヒトツボシューターを構えたヒトツボシ隊だった。
バイクを停め、駆け寄った盈月は人懐っこい笑みで彼女たちに合流した後、眼の前に広がる光景へと目を移した。
「すごい数……!」
ヒトツボシ隊が構えた数メートル先にいたのは腕や背中などに羊の様なふわりとした毛を生やしたモノコーン。
見た目こそ今までのモノコーンと大きな差はないが異常なのはその数。
これまでは多くとも100匹程が限度だった。それも複数のスコアノートが生み出してようやくその数であった。しかし、今盈月たちの前にいるのは視界を埋め尽くさん限りの1000を超える同じ特徴を持ったモノコーンの群れ。
モノコーンたちはヒトツボシ隊や盈月を気に留める様子もなく彼女たちとは逆、モノコーンの腕や足が斬り飛ばされる群れの中心へと視線が向いていた。
「私たちが来た時からこうでした。郡山刑事たちは今向かっている最中ですので恐らく前回のライダー───ルシエだと思います」
「すごいこんなに速く! ありがとうございます! 私も……行ってきます!」
「今のところ散開する様子はありませんがその際は我々が可能な限り抑えます。お気をつけて」
「助かります! 変身!」
《フライトイーグル!》
モノコーンたちの方へと飛び込むとともに盈月はエリシアへと変身する。
直後、それまでは興味すら示さなかったモノコーンたちの一部がその一ツ目をエリシアへと向けた。
双剣モードのツインラプターで群れの中へと切り込むエリシア。数こそ多いが所詮はモノコーン、一太刀で数体を纏めて斬り飛ばしながら群れの中心へと突き進む。
本来ならば対集団を想定したスイープオーストリッチの方が適切だ。しかし、エリシアは刃を振るいながらスコアプレートの力で強化された視覚を用いてモノコーンの合間からその先を覗き見る。
「……見えた。ルシエさ……ルシエ! おまたせ!」
「む、エーゲツ。いや今はエリシアか」
「スコアノートは?」
「まだだ。だが、確実にこの中にいる」
合流したエリシアとルシエ。
常に隣り合わせとはいかず、四方から迫るモノコーンたちに対処するため2人は背中を合わせ互いの背後を補い合う。
エリシアの刃が連続で斬り伏せる間にモノコーンの隙間を縫うように駆け抜けるルシエ。彼女の軌跡にそってモノコーンの肉体が切り刻まれ消滅してゆく。
戦闘を続けながらも2人は情報をすり合わせてゆく。
「君が来るまでの間にそこそこ数は倒した。だが、明らかに数が減っていない」
「つまり、群れに紛れて補充してる?」
「恐らくは。2人で削り切って見つけるのも手ではあるが……」
「私が空から見てくる!」
その宣言を受けてルシエは動きを変える。
正面の敵を後ろ廻し蹴りを放ち、踵に装備された”アクロバットナイフ”が切り裂き僅かなスペースを生み出した。
次なるモノコーンたちが殺到するよりも早く回転の勢いを活かしてバク宙でエリシアの正面に回り込むとエリシアが相手するモノコーンを代わりに引き受けた。
直後、背後から襲われるよりも早くエリシアは翼を展開、空へ。
「どこかに……あそこだ!」
上空から見下ろすエリシアの視界の下に広がった白い綿毛の群れ。
変わらぬ個体が並び立つその端に目的の姿を発見する。
モノコーンたちと同じ様に白い綿毛、それを全身にまとい、その頭には大きな2本の巻角。周囲にモノコーンを生み出し続ける羊のスコアノート───シープ・スコアノートの姿を。
敵も空を飛ぶエリシアを目視し目を細め睨みつけている。早急に撃破しようと剣を構え、エリシアはシープの元へと急降下を───
「───へへ、1キルいただきィ!」
「ッ!? なっに……!?」
不自然な音に上を見上げたルシエは異常を即座に察知した。
空中にいるエリシアの身体が不自然に後ろへと弾かれると力なく落下し始めてしまったのだ。
モノコーンたちはなにもしていない、ならば考えられる可能性は1つだ。
「狙撃か……!」
身を晒せば自身も撃たれる、それが分かっていてもルシエは受け止めるべく空中へと飛び出した。
このまま地面へと落下すればエリシアはモノコーンたちに拿捕されてしまう。例え1撃で倒せる相手でもこの数に身動きを封じられてしまえば逆転することは不可能だ。
空中で受け止められたエリシアの胸部の装甲には彼女の推察を補足するように僅かにエグれ、焦げた跡がついていた。
「エリシア、無事か!?」
「っ、うっ……ルシエ、次が来る……!」
ルシエに揺り起こされ意識を取り戻したエリシアが顔を上げる。
その視線はモノコーンたちの群れの奥、数百メートル先にあろうかというビルの屋上にいる狙撃手を捉えてた。
こちらを狙う銃口、2体目のスコアノートの姿を。
銀の体躯の流線型のような身体を持ち、左腕が変化したスナイパーライフルのスコープを覗き込んだ魚のスコアノート。
「ハッ! 今更見つかったってなこいつで2キルだ!」
カジキの特徴を持つスコアノート───マリーン・スコアノートの凶弾が放たれた。
到達までの時間は僅か。今だダメージから復帰しきれないエリシアと空を飛べないルシエの2人に回避の術はない。
《
《
ルシエの背中を狙った銃弾が横に逸れる。
いや、着弾よりも早くルシエは空中で水平に移動し銃弾を躱したのだ。
壁に
そのカラクリは脚部に装着された銀色の蜘蛛の形をした強化装甲。そこから射出した糸で自分たちの体をビルへと引き寄せ、片足4脚合計8脚のマニピュレーターを壁に突き刺すことで直立を成立させていた。
《アクロバット×スパイ! バット!》
「助かったエリシア。後ろは見えなかったからな」
追撃が来るよりも早く、ルシエはビルから跳び出し、モノコーンの群れから距離を取って放置された車両の後ろに着地する。
地面に降ろされたエリシアはダメージから復帰し僅かな痛みこそ残るもののルシエに礼を言って彼女と同じ様に敵を観察する。
「エリシア、スコアノートは2体いたということで間違いないか?」
「うん、羊と詳しくは分からなかったけど屋上の魚みたいなのがいたよ」
「そうか、2体が役割を分担しているということだけが分かれば十分だ」
状況の整理はできた。だが、相談している時間は多く残されていない。
物陰に隠れて狙撃は防ぐことは出来ていたがシープの産み出すモノコーンたちは続々と2人の隠れる車両を取り囲んでいく。
空はマリーンが制圧し地上はシープが数で削り尽くす。非常に厄介な組み合わせだった。
「これだけちゃんと役割を分けてるってことはもしかして……マウンター?」
「恐らくは……厄介だな」
再び背を合わせたエリシアとルシエはモノコーンたちを倒していく。
物陰から飛び出しても狙撃はない。どうやら空中に出なければこちらを狙うことは難しいようだ。
しかし、このままではジリ貧。なんとか打破しなければ───そう考えた直後、2人の背後から放たれた乱れ飛ぶ羽吹雪と光弾がモノコーンを次々撃破していく。
「遅くなってすまない」
「状況は理解してるつもりだ!」
「レディッシュ! それに博士!」
遅れてきたレディッシュとエリーゼ、そしてそれを支援するかヒトツボシ隊の射撃が次々とモノコーンを倒してゆく。
中でも広範囲を攻撃できるエリーゼの羽吹雪は効果的だった。
僅かに空中に浮かび上がることで打ち下ろすような突風とともにモノコーンの動きを制限し次々と撃破していく。
「モノコーンは任せとけ!」
「うん……! それならルシエ! 私たちでスコアノートを!」
「あぁ……考えがある。手を貸して欲しいエリシア」
レディッシュとエリーゼそしてヒトツボシ隊による波状攻撃は確実にモノコーンの数を減らしている。
それでも数の多いモノコーンたちは恐れること無く進行を続けている。
だが、数の減った群れへと向かってルシエは飛び出した。同時に蒼弓モードへと切り替えたエリシアの矢が正面のモノコーンの足を撃ち抜きその体勢を崩す。
ルシエはそれを足場にスパイダーの力で強化された脚力を活かして空へと跳び上がった。
「ハッ! バカだなぁ! お前が飛べないことは知ってんだよ!」
直後にマリーンの射撃がルシエを襲う。
それを予測していたルシエはスパイシューターで糸を射出、マリーンの陣取るビルへと向けて加速して弾丸を回避する。
しかし、マリーンもその回避は予測済みだ。
即座に狙いを定め直す。ルシエ自身ではなくルシエの移動するその先へ。
「貰った! キルマークいただきィ!」
狙いは頭。ルシエの軌道上へと撃ち込まれた銃弾と糸に引かれるルシエが交錯するのは必死。
迫る銃弾を前にルシエは空中で
「はぁ!? 空中ジャンプ!?」
勝ちを確信していたマリーンは目を見開く。
───仕掛けは至って単純だ。
その答えはルシエの足元に展開された六角形のシールド。
いつの間にか変身していたタートルスコアプレートを使用したエリシアOCが展開したシールドだった。
最初から撃たれることを予測し2人がタイミングを示し合わせていたのだ。
「───見つけた」
ルシエが膝の射出口から新たな糸を連続で放つ。
1本は足の方向が悪かったのか斜め下の明後日の方向へと射出された。
だが、続く2本目は真っ直ぐにマリーンの背後へと接着。勢い良くルシエの身体を引っ張りマリーンへと接近させる。
「クッソがよ……! だけどもう避けらんねぇだろ!」
悪態をつきながらも正面から迫るルシエへとマリーンは照準を合わせる。
いくらルシエが高速で迫ろうとマリーンが引き金を引くほうが早い。
もしも再度シールドで跳ねるのならばそれで時間を稼ぐことはできる、そう思考したマリーンの銃弾が踊る。
だが、対するルシエが選んだのは回避ではなく新たなスコアプレートの装填だった。
《
ルシエの前に出現したのは銀の体躯を持つサソリの形をした装甲。
出現した装甲が盾の代わりとなり、マリーンの銃弾は弾く。
「なにっ!?」
「奥の手という奴だ……スコアチェンジ」
《
屋上に着地するとともにルシエの上半身へとサソリの装甲が稼働し分割され装着されていく。
左腕にサソリの両腕が装着、挟角が1つに合わさった盾”チャンピオンシールド”へと変化する。
そして右腕にはサソリの尻尾型のしなる棍”チャンピオンケイン”が装着される。
残りの部位が胴体を守る装甲へと変化した。
《
上下半身それぞれに別々の装甲。
細身で軽装だったルシエから一転、混然一体となった装甲が全身を包み込み、騎士を思わせるの重鎧を纏っていた。
ルシエの語る奥の手、2種の疑似スコアを纏う形態───ルシエ
「さて……スナイパーがこれだけ近づかれて果たして勝てるかな?」
「舐めんなよ! こっちにも奥の手ってのがちゃんとあんだよぉ!」
構えるのをやめて起き上がったマリーン、その腕には銀色の腕輪───イマージュバングルが装着されていた。
迷うこと無くすでに装填されていたスコアプレートを起動する。
【バラクーダ】
【
直後、溢れ出した黒いエネルギーがマリーンの肉体を貫き、苦しそうなうめき声を上げながらその肉体が変質させてゆく。
全体が大きくなりヒレなどが鋭く尖りながら更に鋭い歯の様なトゲが生え揃ってゆく。
最も変化したのは最大の特徴である右腕のスナイパーライフル。全体が太く鋭く尖り、銃口の先に貫くための槍のような物質が生成される。
マリーンが変質したCマリーンは右腕を持ち上げると力強く踏み込み、ルシエを刺し殺さんと槍を突き出した。
「オラァ! これで近接戦でも俺は最強だァ!」
「……残念だがその程度で私は砕けない」
ニヤリと勝ち誇った笑みのCマリーンだったが突き出した渾身の一撃をルシエは左腕の盾で受け止めた。
金属同士がぶつかり合う音が響き押し込むCマリーンに対してルシエも力を込めてそれを抑え込む。
直後、振り上げられた脚が槍を蹴り上げると盾を貫かんと放たれた銃弾が明後日の空へと打ち上げられた。
「なっ!?」
「さぁ、反撃だ……!」
「グエッ!?」
不意を一撃を防がれ驚愕するCマリーンを他所にルシエの動きは止まらない。
蹴り上げた槍に脚を絡めると今度はCマリーンを引き倒し、勢いを付けて振り上げた棍がその顔面を打ち据えた。
回避する暇もなくクリーンヒットした一撃でCマリーンは背後へと弾かれる。だが、倒れることは許されない。
新たに射出された糸がCマリーンへと絡み付き、脚を後ろへと下げる動きに連動してCマリーンは強引に引き起こされる。
「ふっ───はぁ!」
「いだぁっ!? やめっ!?」
畳み掛けるように繰り出されるルシエの蹴りと棍。まるで起き上がり小法師の様に都度弾かれ、引き起こされるCマリーン。
繰り返される攻撃に対してCマリーンは反撃することも叶わず、打ち据えられ続ける。
「これで───ピリオドだ」
引き起こしたCマリーンが糸に手繰られこちらへ近づく中、ルシエが棍棒を槍のように構える。
それと同時にドライバーを操作、必殺技を起動した。
《
「や、やめ……!」
迫る危機に自身を絡め取る糸を引き千切ろうとするCマリーンだったが靭やかにして強靭な糸は
棍と脚部、それぞれにに2重の銀と青紫、3種の閃光が絡みつく。
その輝きが最高潮に達した時、ルシエはCマリーンを迎え入れるように前へと飛び込んだ。
《
右脚を軸足にマニピュレーターを突き刺すことで無理矢理体勢を保持、片脚で立ったルシエの左脚がCマリーンを連続で蹴り抜く。
最後の一撃でCマリーンを吹き飛ばすと同時に真っ直ぐに突き出した棍がその身を貫き、Cマリーンを爆散させた。
残されたのは高校の学生服を着崩した少年と2枚のスコアプレート、そして砕けたイマージュバングルのみだった。
「おやおや、あれだけ粋がっていてこの程度ですか……まぁ、うるさいのがいなくなってくれてお話はしやすくなりましたけどねぇ」
コツン、と響く杖を突く音と声。
ルシエが振り返るとそこにいたのは白黒のチャックの紳士服を纏ったトラのスコアノート、タイガーだ。
「お前、は……!」
その姿を見たルシエは目を見開き、そして即座に飛び出した。
その瞳に宿した感情は───
******
「うげっ!? な、なんすか? ……糸?」
上空をルシエが駆け抜けたことに気づいていたシープだが反応したのは自らに起こった変化だった。
安全圏にいると思いこんでいたシープにとって突然の攻撃。
しかし、それは弾丸などではなく
先ほどルシエが放ち、明後日の方向へと飛んだと思われた糸。それは正確にシープを狙った物だった。
ルシエの狙いそれは───
「私にあなたの位置を教えてもらうこと……だよ!」
「っ!? やべ、見つかった!?」
空から降り注いだ糸の終点、それを観測していたエリシアがシープの元へと駆けつけた。
モノコーンたちを蹴散らし、投げつけられた剣がシープを斬りつける。
即座にシープに向かって疾走するがエリシアが着くよりも早く、シープは再度モノコーンの群れへと潜り込む。
「俺はクレバーなんで直接戦うとかしたくないんすよ! さっさと削り倒されて欲しいっすけどね!」
「残念だけどかくれんぼはおしまい! 1回見つければもう逃さない……よ!」
《
周囲に迫るモノコーンを蹴散らしながらエリシアはスコアプレートを入れ替えながら同時にツインラプターを蒼弓モードへと切り替える。
シープの姿は見ることはできない、それでもすでにエリシアはシープを捉えている。
「スコアチェンジ!」
《
「はぁ!」
メタリックグリーンの装甲がメタリックブルーへと切り替わる。
同時にチェイスフィンブレードが青く輝くとエリシアは上空へ向けて矢を連射する。
「へへ、自棄っぱちっすか? そんなの当たるわけ無いじゃないっすか!」
重力を無視して空を目指した青い輝きを纏う矢の群れ。
それが突然、軌道を変える。
弧を描き180度向きを変えると下へ。そして紛れ込んだシープを正確に射抜いた。
「がっ!? は、はぁ!?」
「まだまだぁ!」
両腕のブレードでモノコーンを斬り裂きながらエリシアの矢は止まらない。
放たれたすべての矢はシープへと向かう。
どれだけモノコーンの群れを掻き分けて場所を移ろうと血の匂いを覚えたサメのように矢の追尾は終わらない。
「クソクソクソ! マリーンの奴も見えてるなら手伝えっての……!」
「い、た……!」
「ひっ!?」
エリシアは逃げ回るシープの姿を再度捕捉した。
モノコーンの生成に長けるシープは本体の戦闘能力が極めて低い。
接近戦となれば勝ち目は薄いだろう。
「で、でも俺にはこれがあるっすからね……!」
エリシアに追いつかれるよりも早く、シープはイマージュバングルを起動する。
【ウルフ】
【
溢れ出したエネルギーがシープの身体を貫きその肉体を変質させていく。
羊の毛に覆われた下から伸びるのは狼の口。
そして両手足には同じく狼の爪が伸びる。
苦手であった接近戦能力の強化、Cシープとなったことで獲得したそれは今最も欲している物だった。
「へ、へへ! 俺やっぱ運がいいすっね! これで、勝て……」
勝ちを確信したCシープが逃げるのをやめ、エリシアへと振り返ったまさにその時。
Cシープの横にいたモノコーンたちが攻撃を受けて消滅した。
何事かとそちらへと視線を向けたCシープ。
その目に映ったのはイツツボシューターを構えたレディッシュの姿。
《
「……へ?」
イツツボシューターにはすでに5枚のプレートの装填は完了している。
エリシアがわざわざ矢を打ち上げていたのはこれが理由だ。
「居場所が分かれば……後は追い込まれるの待つ。それだけだ!」
Cシープの変異が完了するのとほぼ同じタイミングでレディッシュが指をかけたトリガーを押し込んだ。
《
6色の輝きが混ざり合う特大の極光が射出される。
Cシープは即座にモノコーンを生み出し盾にしようと試みるが出現とほぼ同時に蒸発するように消滅してゆく。
「う、うそだあああ!?」
やがてその輝きはCシープ本体を呑み込み、背後にいたモノコーンたちごと纏めて消し飛ばす。
光が消えるとスコアプレートが落下するのに合わせ立ったまま気を失っていた高校生の少年がふらりと後ろに倒れた。
それをエリシアが受け止めところで残されていたモノコーンたちが主であるCシープの消滅に合わせ霧散して消え失せた。
「さすがレディッシュ!」
「エリシアが良いところに誘導してくれたおかげだよ」
「おい、油断は後にしとけ。反応だとまだいるはず……エリシア、後ろだ!」
エリーゼの叫びを聞いたエリシアが咄嗟にシープであった少年を抱えたままその場を飛び退く。
飛び退くより早く振り下ろされた剣が腕に切り傷を刻みながらもレディッシュとエリーゼの元へと合流し振り返る。
そこにいたのは着物と鎧が組み合わさった鎧装の鯉のスコアノート、カープだった。
「お前は……前の時にいた。カープ……だったか」
「覚えていたか。光栄だよ、仮面ライダー……レディッシュ、だったか?」
言葉こそ軽やかだが一切の隙を見せることはない。
少年をヒトツボシ隊に預けるとエリシアはツインラプターを双刃モードへと切り替え、レディッシュ、エリーゼに並び立つ。
「さて、終わった直後で悪いが……今度は俺と死合って貰おうか」
カープの踏み込むは一足で3人との距離を自らの間合いへと縮めた。
振り上げられる曲刀が狙ったのはレディッシュ。
だが、その攻撃は差し込まれたエリシアの刃が受け止める。
「1VS1じゃなくてごめんなさい!」
「構わないとも、元より3VS1のつもりで来ているからな」
「なら卑怯なんて言うなよ!」
エリシアと鍔迫り合う真横からエリーゼがアックスモードのデュアルラプターを振り上げ迫る。
振り下ろされた一撃を腰に差した直剣を抜き放ち防ぐがカープは弾かれる。
いや、エリーゼの攻撃を利用し距離を取った。
「正直に言おう、レディッシュ以外は眼中に無かった。非礼を詫びなければならないな」
「そのまま舐めたまま倒されてくれるとありがたかったんだけどな」
「そんなもったいない事できるわけがないだろう?」
会話を続けながらもカープの猛攻は続いている。
曲刀と直刀、軌跡も間合いも異なる2振りの刃。それだけで3人のライダーの攻撃を捌き、光弾を躱し、攻勢を仕掛け続けている。
攻められ続けるライダーたちが仮面の下で冷や汗を流す中、カープは少年のような笑みで刃を振るい続けていた。
「はは、納得だ。確かにこれならライノスが負けるわけだ」
「皮肉かよ……!」
「称賛に決まっているだろう? 弱い者を褒める趣味はないさ」
「それなら、負けられない……ね!」
ツインラプターを分離、片刃で突き出された直刀の突きを弾き落とすと同時に剣をクロスさせ地面へと押し付ける。
それを見たエリーゼは合わせるように曲刀に斧を引っ掛ける様に当てると抱え込むように抑え込んだ。
両手の得物を封じられたカープであるがその表情に焦りはなく感嘆する様相であった。
だが、封じられる時間は僅かだ。すぐにでも彼は解放されるだろう。
「レディッシュ! 今だよ!」
「分かっているとも! ここで倒す!」
「おっと、これは……まずいか」
だからこそ、レディッシュもすでに動いている。
イツツボシューターの砲撃ではエネルギーチャージの間に逃げられる、そう判断したレディッシュはドライバーを操作し必殺技を起動した。
《
エネルギーが集約され、走るレディッシュの右脚が閃光を放ち、光が力となる。
例えマウンターと言えどリゾルブフィニッシュの直撃を受ければスコアプレートが機能を止めることを免れない。
そんなピンチのカープは楽しげに笑みを浮かべたまま両手に握った武器は手放した。
《
突き出された右脚はエリシアとエリーゼの間の空を蹴る。
自らの得物を放棄し自由の身となったカープはリンボーダンスの様に膝を曲げて腰を逸らせることで必殺の一撃を回避したのだ。
3人が驚愕する中、カープはそのまま地面に手をつくと上下反転の回転蹴りでライダーたちを蹴り飛ばし、同時に己の得物を蹴り上げ勢い良く起き上がりそれをキャッチした。
「油断をしてたら今のでやられていたな。やはり、お前たちは強い」
カープは満足気に直刀を立て直すライダーたちに向ける。
「この人、本当に強い……!」
「今までのスコアノートと強さの
「さて、このまま楽しまさせて貰おうか……!」
再度、駆け出そうと構えたカープに対して迎え撃つために武器を構えるライダーたち。
しかし、激突するよりも早くルシエのいた屋上から落ちてきた物が地面へと激突し、アスファルトを砕いて土煙を上げた。
その土煙を払い除けて現れたのは重武装のルシエTD、そしてタイガーだった。
「はあああ!!」
「全く、話をしたいだけなのに血の気が多くて困りますねぇ……!」
「ルシエ……?」
烈破の気迫とともに棍を振り回し、糸でタイガーの動きを奪おうと連射するルシエ。
その動きは先程までの落ち着いた彼女の様子とは異なっていた。
だが、タイガーはバックステップで攻撃を躱しながら爪を振るい斬撃を飛ばして糸を切り裂く。
「初対面のはずなんですけどねぇ……私、あなたに何かしましたかぁ?」
言葉こそ変わらずふざけた調子のタイガーだったがその動きに余裕はない。
だが、その言葉がルシエの神経を逆撫でした。
「何かしたかだと……? あぁ、私はなにもされていないとも」
「でしょうねぇ。コウモリのスコアプレートには見覚えがあってもあなたには見覚えありませんから……どこで手に入れたんですか、それは」
「……貰ったんだ」
「貰った……っ、まさか」
ルシエの言葉にタイガーの動きが一瞬止まる。
対するルシエの怒りを込めた一撃が動きを止めたタイガーの腹を突き吹き飛ばした。
「あぁ、そうだ。私は忘れないぞ───お前がビエンを殺したことを!」
殺意を込めた視線がタイガーを射殺さんと睨みつける。