仮面ライダーエリシア   作:teru@T

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「ぜやぁっ!」
「ぐ、う、あ……があ!?」

 銀髪の少女を逃したエリシアは4体のモノコーンを撃破し、アロワナの異形───アロワナ・スコアノートと対峙する。
 動きの鈍いアロワナにも特に苦戦を強いられること無く、優勢に立ち回り、トドメの一撃を叩き込む。
 それを受け、アロワナの身は砕け散り、その中から1人の男が現れその場に倒れ込む。
 同時に砕けたアロワナから胸についていたプレートが弾け飛び、エリシアはそれをキャッチ。確認すると赤いフレームに泳ぐアロワナの姿が描かれていた。

「こいつで最後か……追われてた奴は逃げた……こっちは運ぶしか無いか……」

 エリシアは面倒に思いながら、腰のベルトから機械を取り外し、更にそこから青いプレートを抜き取る。
 するとエリシアの姿は解け、白衣をまとう女が再びその場に現れる。

「わっ……本当に変身してたんだ……!」
「……は?」

 背後から先ほど助けた少女の声が聞こえる。
 そんなはず無いと思いながら振り返ると木の後ろに隠れた銀髪の少女がその薄紫色の瞳をキラキラ輝かせながらこちらを覗き込んでいた。

「お前……! 逃げろって言っただろ! なんでまだそこにいる!?」
「ご、ごめんなさい! 気になっちゃって……あれ? あなた……」
「あん? ……あ、お前、隣の……」

 これが2人のファーストコンタクトではなかった。
 2人の家は隣同士、昔から住む銀髪の少女の隣に女が引っ越し、度々すれ違うたびに挨拶をする。そんな関係だった。
 しかし、この日を境に2人の関係は変化し、そして後に更に大きな変化を迎えることになるとはこの時は想像していなかった───


第二話「戦う意志/戦う理由」

「たあああっ!」

「グケェ!?」

 

 盈月が変身した戦士───エリシアがウッドペッカーたちへと飛びかかる。

 勢いを乗せた拳はウッドペッカーとその背後に控えるモノコーンたちを纏めて吹き飛ばした。

 殴りかかった反動でたたらを踏むエリシアであったが踏ん張ると確かな手応えに自身の拳を見つめる。

 

「すごい力……」

「立ち止まるな! まだ終わってない!」

「クケェェエ!」

「えっ!? わぁ!?」

 

 女の言葉と同時に激昂したウッドペッカーは起き上がり、叫びを上げながらエリシアへ向けて突撃、それに合わせてモノコーンたちも目からビームを放つ。

 油断していたところに打ち込まれたビームは命中こそしないもののエリシアをその場に留め、接近したウッドペッカーが頭を振り、その鋭いクチバシをエリシアへ向けて振り下ろす。

 

「クケェッ!」

「あぶなっ!? こんなの当たったら! 死んじゃう、でしょ!」

 

 振り下ろされたクチバシをエリシアはすんでの所で回避する。

 その後も連続で振り下ろされるクチバシと放たれるビームをなんとか回避し、隙を見てウッドペッカーの腹部を蹴り飛ばす。

 だが、ウッドペッカーは先ほどのように倒れることはなく、数体のモノコーンをエリシアへとけしかけ、取り囲む。

 

「やっ! はぁ! このぉ! うわっ!? ちょっと、離して!」

「クケケケケェ……クケェ!」

 

 エリシアは掴みかかろうとするモノコーンたちを躱し、蹴りと拳で応戦するも数に物を言わせた彼らの攻撃に対応しきれず、片腕ずつ別々のモノコーンに捕らえられてしまう。

 そこへウッドペッカーが悠々と頭を大きく振り上げながら接近してくる。

 このまま待てば訪れる結末は胸に開く大きな風穴だろう。

 なんとか窮地を脱するため、腕の拘束を解こうとするもガッチリと捕まれ外れない。

 

「離して……! 離してってば……! ど、どうしよう……!?」

「上に逃げろ!」

「上!? ジャンプしたぐらいじゃ……」

「違う! 空を飛ぶんだ! その姿なら……できると信じろ! できなきゃお前が死ぬ!」

「た、たしかに……頑張る!」

 

 女の言葉を受けたエリシアが戸惑いながらも彼女の言葉を信じ、暴れることをやめて足に力を込める。

 ついにエリシアの前に限界まで胸を反らしたウッドペッカーが辿り着き、その鋭利なクチバシを振り下ろす。

 

「クケェェ!!」

「飛べる……うんうん……飛ぶんだ! やぁっ!!」

 

 勝利を確信し、振り下ろされたクチバシは勢いのままに目の前のエリシアへと突き刺さり貫く───はずだった。

 

「ッ!? グッ!? グゲェ!?」

 

 しかし、クチバシが貫いたのはエリシアではなくその背後に控えていたモノコーン。

 貫かれたモノコーン驚愕に目を見開いたまま、塵となって消滅する。

 エリシアとそのエリシアを捕らえていた2体のモノコーンが突如として姿を消した。

 ウッドペッカーや残ったモノコーンは周囲を見回し、その姿を探すが見つからない。

 

「こっちだよ! こっち! それ!」

「クケッ!?」

 

 エリシアの声が上から降ってくる。

 ウッドペッカーが上を向くとそれに合わせて空からエリシアを拘束していた2体のモノコーンが降ってきてウッドペッカーに激突、そのまま塵となる。

 更にその上空、モノコーンたちが落ちてきた先を見れば背中の突起”フライトスパウト”から吹き出したエネルギーが白いワシの翼を形作り、エリシアが大空を舞っていた。

 

「ほ、本当に飛べた……危なかったぁ……」

『呆けるな! まだ終わったわけじゃないんだぞ!』

「えっ!? 博士どこから!?」

『落ち着け。そのスーツに搭載した通信機能だ。私の位置は変わってない』

 

 突如、耳元から聞こえた女の声に周囲を見回した後、下を見る。

 スーツにより強化された視界がスマホを片手に異形たちから隠れるように木々の間に身を潜めた女の姿を捉える。

 

「そこに隠れていてね、博士。空を飛べるならこのまま上から一気に……」

『バカ! もう忘れたのか!?』

「えっ……?」

『あのスコアノート……いや、怪物はどこから来た(・・・・・・)!?』

 

 女の言葉を聞く中、ウッドペッカーが動く。

 その両腕を広げるとその下に羽根がせり出し、大きく腕を動かしてエリシアの元へと飛び上がったのだ。

 なおかつ、先ほどは頭を振ることで得ていた勢いを空を飛びスピードで賄うことにより正面を向けた鋭利なクチバシでエリシアを狙う。

 

「クケェェェ!!」

「うわっ!? さっきよりも! 厄介になった!?」

 

 ウッドペッカーの突撃を翼を動かし、回避する。

 しかし、攻撃はそれだけでは終わらない。ウッドペッカーは旋回し再度エリシアに突撃する。

 どれだけ回避しようとその突撃に終わりはなく、地上の時よりもその攻撃の頻度は格段に増える。

 

「ど、どうしよう博士!?」

『心配するな。あっちがクチバシ(武器)で攻撃してくるならこっちも武器だ。ベルトの中央に丸いボタンがあるだろう? それは左、中央の順の押せ!』

「分かった!」

 

 時間を作るためにエリシアは空を駆ける。

 ウッドペッカーもそれに追従し、空を飛ぶ。両者のスピードは拮抗し逃げ切れず、追いつけない。

 その時間を利用し、エリシアは指示の通り、ドライバーを操作する。

 

APPORT(アポート)! ウェポンラプター!》

 

 その操作に対応しドライバーから音声が響く。

 するとエリシアの手元の空間が引き裂かれ、そこから武器が現れる。

 エリシアが手に持ち、それを引き抜くとその全貌を露わにする。

 それは両側に片刃の剣が付いた双刃剣。鳥の翼を模した両の刃はそれぞれ逆側を向き、それを接続する握りの中央には丸い装飾があり、そこにはドライバーと同じくプレートの挿入口があった。

 

『”蒼弓風刃ツインラプター”! そのままでもいいし、分割して剣2本にもできる! もう1つ形があるが今は忘れろ。どっちでも好きな方で戦え!』

「ありがとう博士! 武器があれば……あの攻撃を防げる!」

 

 エリシアは飛行をやめ、その場に滞空すると早速ツインラプターを中央で分割し、双剣モードに変化させてウッドペッカーを待ち受ける。

 エリシアが止まったことにチャンスと思ったのか勢いを増し、エリシアへ突撃する。

 

「クケェー!」

「……今! はぁ!」

「グゲェ!?」

 

 剣を十字に構えたエリシアはウッドペッカーの接近を待ち、自身にぶつかる直前、片手の剣でそのクチバシを上へと弾く。

 勢いの乗った攻撃の軌道が変えられ、ウッドペッカーの胴が無防備に晒される。

 そしてウッドペッカーが体勢を整え直すより早く、エリシアは翼を羽ばたかせ、すれ違いながらその胴を斬り裂く、ダメージを与える。

 

『翼だ! 片翼でも切り落とせば墜ちる!』

「了解! やぁ!」

 

 反撃とばかりにエリシアの刃が牙を剥く。

 盈月に剣の心得はない。しかし、これまでの動きで今はこのスーツ自身の動きをサポートしているため、力強く振るった刃を叩きつけ、斬り裂く。

 防戦にまわったウッドペッカーは体勢を立て直そうと先ほどのエリシアの様に距離を取ろうと背を向けた。

 その隙をエリシアは逃さない。

 

「逃がさない! てやぁ!」

「グケェ!?」

「もう一個も!」

 

 エリシアの刃が閃く。

 右の剣の切り上げで羽根を斬り落とすと逆の剣で斬り下げ、両翼を奪う。

 翼を失ったウッドペッカーは浮力も失い、重力に従ってその身は大地へ向かう。

 

『決めろ! ドライバーの中央を2回! それで必殺技が使える!』

「必殺技!? わかった!」

 

 必殺技、その言葉に心をときめかせながらエリシアは指示の通り、操作を行い堕ちるウッドペッカーへと接近する。

 

SET(セット)! フライトイーグル!》

 

 音声と共にエリシアの周囲にエネルギーが発生し、それが右脚部へと集まる。

 それを認識するとエリシアは反転、エネルギーの集まる脚部をウッドペッカーへ向け、翼を羽ばたかせて加速する。

 

「これで……終わりだ!」

RESOLVE(リゾルブ) FINISH(フィニッシュ)!》

 

 エネルギーが最高潮に達すると同時にキックがウッドペッカーへと直撃し、脚部に溜まったエネルギーが流れ込む。

 ぶつかったとてその勢いが殺されることはなく、地面へと叩きつけた。

 

「グ、グゲェェェェェ!?」

 

 ダメージを受けたウッドペッカーの肉体がひび割れ、内側から輝きが溢れ出すとそのまま爆散する。

 砕け散ったその後に残されたのはキックのままエリシアに踏みつけられた気を失った会社員。

 そして、その横に落ちたキツツキが描かれた赤いフレームのプレート。

 

「怪物が人になった!? って、わわ、ごめんなさい!」

 

 倒した相手が変化したことに驚きつつ、踏みつけていた足をすぐに退ける。

 パッと見た所、倒れた男に外傷は負っておらず、エリシアは安堵の息を漏らす。

 

「そうだ。まだ怪物いるんだった!」

「心配するな……見ろ」

 

 フラつきながら女が近づき、ウッドペッカーと共にいたモノコーンたちを示す。

 エリシアがそちらを向けば彼女たちの目の前で全てが独りでに塵となり、その姿を消した。

 

「あいつらはさっき倒した奴の分身みたいなものだ。本体を倒せば塵に帰る」

「そうなんだ……じゃあ、これで安心だね!」

「安心だね……じゃないわバカ! 何勝手なことしてるんだ!」

「あ……ごめんなさい」

 

 怒る女性の勢いに変身を解除しないままエリシアはシュンと小さくなる。

 その様子を睨みつけた女であったがため息をついてエリシアへと近づき、その胸部を軽く殴る。

 痛みはない、コツンと鉄を殴る音が響くだけだ。

 

「今はこれで許す……助かったのは確かだしな」

「う、うん……ありがとうございます!」

「お礼じゃなくて謝罪のほうが……まぁ、いいか。悪いがもう一仕事してもらうぞ。私を抱えて私の家まで飛んでくれ」

「えっ、でもこの人は……それに博士も怪我してる!」

「後だ! もう警察が来るからこいつはそっちに任せろ。私も病院は後で良い。それよりもお前のプレートの出処のほうが重要だ」

 

 遠くからサイレンが近づいてくるのを聞き、女は落ちている赤いプレートを拾いながらエリシアを急かす。

 急かされたこともあり、だらりと垂れ下がった腕に注意しながら女を抱き上げると再び翼を拡げ、エリシアは大空へ飛び立った。

 

 

******

 

 

『ウッドペッカーがやられた……!?』

『結局そうなったか……まぁ、初めてにしてこんなものだろう」

「ッ……その言い草、こうなることが分かってたみたいですねカープさん」

 

 カープの態度にピトフーイは怒り震える。

 それに対してカープは腕を組んだまま目を閉じ答える。

 

「初めなんて誰でもそんなものだ。気にする必要はない。それに……」

「それに、作戦(・・)は無事成功しましたから問題ありませんよぉ。ピトフーイさん」

「戻ったか。タイガー」

 

 2体の異形の元に男声の別の異形が歩み寄る。

 それは遠目で見ればマジシャンの様な格好をしていた。

 白と黒の縦縞のスーツのような物をまとっているがその下から白い体毛が覗く。

 カツンカツンと鳴らすステッキを持つ手は肉食獣のモノ。

 そして白黒チェック柄のシルクハットの横には獰猛な獣の牙を覗かせる。

 

「タイガーさん……作戦とは何のことですか? 私、何も聞いていませんが?」

「言っていませんからねぇ。まぁ、新入りはそれだけ信用がないということですよぉ」

「貴様……!」

 

 ついに激昂したピトフーイがタイガーへと掴みかかろうとするが両者の間をカープの曲刀が阻む。

 そうなることが分かっていたのかタイガーは涼しい顔のままピトフーイを見下す。

 

「何も言わなかったのは謝罪しよう。俺も共犯だ……タイガー、成果は」

「3人ほど。1人はとても有望で協力的と大当たりですよぉ。おまけにもう1人、自我を失くされてしまったのでこの罪を全て被ってもらいましたぁ」

「ならば今は帰還だ。それだけいれば女帝(エンプレス)も満足する。これは3人(・・)の手柄だ」

「……」

「えぇ、えぇ。帰りましょうかぁ、カープくん。ほら、ピトフーイさんも行きますよぉ」

 

 曲刀を収めたカープとタイガーが一足先に移動する。

 納得のいっていない様子のピトフーイだがタイガーに急かされ、大きな舌打ちを打った後2人に続き闇へと消えていった。

 

 

******

 

 

 公園から撤退した盈月は自分の家から隣の女性の家へ入る。説明のための物を取りに行くと一度別れただけであるため玄関のドアは開いていた。

 

「ごめん、博士! お待た……わぁ、すごい散らかってるね?」

「放っておけ……片付けの時間がないだけだ」

 

 中に入れば玄関には脱ぎっぱなしの靴やサンダルが適当に放られており、一歩家に上がればプリントが床を埋める。

 ゴミのたぐいは落ちていないが飲み終わったであろうペットボトルは廊下にも放置されていた。

 それから目を逸らす女は自身で手当をしたのか、乱雑ではあるが怪我をした腕に添え木をしていた。

 

「そんなことよりも……それはなんだ?」

「ガルダちゃんだよ!」

「ピィーピィピィ!」

「名前は聞いてないわ! なんで鳥を連れてきたのかって聞いてるんだよ!」

 

 盈月に紹介され、ガルダは翼を上げて女性に挨拶する。

 その2人の様子にこめかみに青筋を浮かべながら叫んだ。

 

「なんでって私の持ってたプレートは元々この子の物だからだよ」

「何……? とにかく、上がれ。奥で話そう」

「うん。あ、お茶とお菓子持ってきたよ!」

「楽しくおしゃべりするわけじゃないからな!? ありがたいけども!」

 

 ため息をつきながら女性は盈月を奥の一室へと案内する。

 そこは研究室。複数の機械が所狭しと並び、資料棚にはパンパンに書類が詰まっている。

 パソコンの前に女性が腰掛け、盈月は近くの作業台の上にガルダを下ろし、自身もそこにもたれ掛かる。

 

「それで、そいつの持ち物っていうのはどういうことだ?」

「うん……あのね」

 

 彼女の持っていたプレートは10年ほど前に両親の知り合いの元へ赴いた際、ケージの中のガルダと仲良くなり、その時にガルダが自身の手に乗せたのだという。

 その知り合いが言うのはそのプレートはガルダが産まれた時、タマゴから一緒に出てきた物で幼い盈月が手にするまで頑なに誰にも取れずにいたのだ。

 その後、ガルダを家で飼うために連れてきた後、母親が失くさないようにとペンダントを渡され、今日まで大事に保管していたのだ。

 突拍子もない話だが女性は盈月の話を真剣な眼差しで聞いていた。

 

「……っていうのが全部だよ。これ言ってもみんな信じてくれないんだけどね。えへへ」

「まぁ、そうだろうな、そんな無茶苦茶な話。漫画の読みすぎだってなってもおかしくない……が、プレートの自然発生か……考えたこともなかったが確かに……」

「でも、博士は信じてくれるんだよね? だからそうやって難しい顔で考えてくれてるんでしょ?」

「まぁ……そういう突拍子のない話には慣れてるからな……」

 

 考え込んでた女は盈月がこちらを笑顔で見てきたのに照れたのか考え込むのをやめ、咳払いしてからお茶を飲み干す。

 すると、先ほどのドライバーと音楽プレイヤーを盈月に差し出す。

 

「そっちが話したんだ、今度はこちらの番だ。まずこれは”イマージュベルト”と”イマージュリーダー”そして2つ合わせたものを”イマージュドライバー”という」

「イマージュドライバー……」

「あぁ、詳しいシステムは……いいか。とにかく、仮面ライダーに変身し”スコアノート”と戦うためのアイテムだ」

「スコアノート……さっきの鳥さんたちだよね?」

「鳥さん……あぁ、そうだ。あいつらだ」

 

 喋りながらベルトとリーダーを脇に置き、今度は2枚のプレートを取り出す。

 1枚は青いフレームのタカが描かれたプレート、もう一枚は先ほど拾った赤いフレームのキツツキのプレートだ。

 

「スコアノートを説明するためにも先にこっちを説明しておく。これは”スコアプレート”。生物のデータ……スコアが入力された記憶媒体だ」

「生物のデータ……?」

「あぁ、誰がどういった原理で作ってるのかはまだ研究中だが……このスコアを読み取って入力するとその生物の特徴を獲得できる……お前が変身した姿やあのスコアノートみたいにな」

「おぉ……なるほど……」

「かつて、私の師匠……というか大学の教授が発見、その後も各地で発見報告があるものだ。利点は特徴獲得だけでなく、今は特定の周波数と磁場の元でしか使えないがスコアの内部データを利用すれば特定地点同士を空間を飛び越え移動できる……お前が使ったドライバーと武器の転送はそのデータを応用したものだ」

「すごい! そんなこともできるんだ!」

「だが、良いことばかりではなく欠点があってな……発見されたそのままの物を相性の良い人間に近づけるとその人間と融合し化け物に変える……その化け物がスコアノートだ」

 

 赤い方のプレートを押し出し、「こっちがそのタイプだ」と盈月に見せる。

 人体に埋め込んだ結果は先ほど嫌というほど見せつけられている盈月はそれを静かに聞き、話を理解しているのかわからないガルダも暴れずに佇んでいた。

 

「あれ、でも博士はさっき手で持って帰ってきたけど大丈夫なの?」

「エリシアの必殺技で撃破すればな。エリシアの必殺技で人間とプレートを分離する時に同時にプレートの機能をダウンさせる。再起動しない限りは人間に融合することはない」

「そうなんだ……でもなんでそんなに危ないの?」

「それはこのプレートには生物の破壊衝動や凶暴性が多く入力されているからだ……なんでそういう風になっているのかは出自がはっきりしないことには分からないがな」

 

 女性が肩をすくめ、赤いプレートをなにかの機械に差し込むと今度は青い方のプレートを盈月に近づける。

 

「データを読み取り、破壊衝動や凶暴性と言った危険なデータを本来そいつが持つレベルにまで間引いてやったのがこの青いプレートだ。入れ替えるわけではなく、その作業が完了するとこの色に変わる。この作業を私は純化(クリア)と名付けた。こっちは人間に融合することはない安全なプレートだ」

純化(クリア)……あ、じゃあ! ガルダちゃんのプレートは青いから安全ってことだね!」

「そう。そこが問題なんだ……さっきも言った通り、プレートは基本的に全て純化しないと使えない……お前の持ってたイーグルプレート以外はな」

 

 そう言って女性は盈月にベルトとリーダー、そしてタカのプレートを手渡した。

 なぜ渡されたのかわからない盈月は首を傾げながら女性を見返す。

 

「もう一度、変身をしてみてくれ。ただ、今度使うのはその【ブラストホーク】スコアでだ」

「う、うん。分かった! ガルダちゃん、すごいから見ててね!」

 

 パァッと盈月は顔を明るくし、それらを受け取ると立ち上がり先ほどと同じ様に装填していく。

 

《ブラストホーク!》

「変身!」

 

 最後にイマージュリーダーをベルトに装填し、ドライバーと化す。

 先ほどはここで音声とともに周囲をエネルギーが包み込んだ。しかし、今度は何も起こらず、ベルトも反応しない。

 

「あれ……? おかしいな……さっきはできたのに……」

「……やはり、できないから。イーグルに差し替えてみろ」

「う、うん」

 

 指示された通り、プレートを差し替えドライバーに装填する。

 

SET(セット)! YOU(ユー) ARE(アー) MAJESTY(マジェスティ)! REQUIP(リクイップ)! フライトイーグル!》

 

 今度は公園のときと同じくエリシアの姿となる。

 初めてみた盈月が変身した姿にガルダは驚き、しかし、自身に似た姿へ盈月が変身したのが嬉しいのかピィピィ嬉しそうにその周囲を旋回し、肩に止まって顔を擦り寄せる。

 ちゃんと変身できたのを確認すると盈月はエリシアの変身を解き、女にドライバーを渡そうとするがそれを女自身が制止した。

 

「それを持たせたまま聞く。そのドライバーは本来、私のデータが入力してあり、私以外には使えないものだ。だが、お前は使うことができる」

「うん……ビックリしたけどすごいよね! カッコいいし!」

「あの時、私の言葉を無視して使ったのはカッコいいからか?」

 

 女性は真剣な眼差し盈月を見つめる。

 その瞳に喜びから笑顔を浮かべていた盈月の笑顔も消え、真顔となって女性を見つめ返す。

 

「最初に会ったときも言ってたな。ヒーローみたいだと。漫画やアニメのヒーローみたいだからあの時勝手に変身したのか?」

「……違うよ」

「今までのお前の言動からは信じられないな……ならばなぜだ?」

「確かにヒーローみたいでカッコいいって思った気持ちはあるよ……でもあの時は……」

「あの時は?」

「……もし、これを博士に渡したら怪我したまま博士が戦ってた。そうしたら博士の怪我がもっと酷くなってたかもしれなかったから渡せなかった」

「それじゃあ、半分だ。その理由なら渡さないだけで良かった」

 

 ピシャリと言い放つ女性に盈月は萎縮する。

 それでも、盈月は再び女性を見つめ、更に言葉を続けた。

 

「それだと……あの怪物を倒せなかった。あいつを倒さないと博士以外も助けられなかった。私は博士も他に人も助けたかった」

「その結果、もっと被害が出るとは考えなかったか? もし変身できなかった時は? 扱えなかった時はどうするつもりだった?」

「それ……は……」

 

 視線が下を向き、ドライバーを持ったはダラリと垂れ下がるが握り込む力だけは更に強まる。

 盈月の表情の変化を見たガルダが女性を鋭く睨みつける。それは主人を心配しての行動だがそれを感じ取ったのか盈月自身が手を前に出し、それを制した。

 あの時は必死だった、そこまで考えていなかった。言葉にするのは簡単だ。しかし、その言葉は今、不義理だと盈月は考え口を噤む。

 

「何より……お前自身も危険だった。私が逃げろって言ったのはお前と同じ気持ちだったからだ。私だって他人に怪我させたくない」

「……ごめんなさい」

「その心からの謝罪は最初に会った時に聞きたかったな……まぁ、分かったのならそれでいい」

 

 今にも泣き出しそうな盈月の頭を女性が撫でる。

 ここまでずっと張り詰めていた女性であったが盈月を撫でる彼女の顔は声色は慈愛に満ちていた。

 

「意地悪な質問をしたな……お前の気持ちだけ確認したかったんだ。ただ浮かれて危険を犯すような奴なら叩き出してたが」

「そんな……浮かれてたのは本当だよ」

「知ってるわ。あの森で逃げなかった奴にその気持ちが一切ないとは思ってない」

 

 その時、女性のスマホが通知を知らせる音が鳴る。

 「いいところで……」と悪態をつきながらも相手を確認し、その電話をとる。

 

「何のようだ。さっきの報告書ならもう少し……何? スコアノートがまた?」

「えっ……?」

「……分かった。場所はパソコンに送れ。すぐに向かう」

 

 手短に通話を終えると再び女性は盈月に向き直る。

 その眼差しは元の険しいものだ。

 

「スコアノートがまた現れた。改めてお前に頼みたい。私の腕が治るまでの間、戦ってほしい」

「でも、私は……何も考えずに……」

「そんなもの最初から全部考えて頭に入れてる奴の方が稀だ。足りない分は私が補ってやる」

「……分かりました」

 

 零れ落ちそうになっていた涙を腕で拭い、顔をあげる盈月。

 その瞳には先ほどまでの好機はなく、覚悟を秘めていることを女性は感じ取る。

 

「よし、付いてこい。鳥はここで待ってろ。下手に家の中飛ばれるのは困る」

「ピィ……」

「お願い、ガルダちゃん。すぐ戻ってくるから!」

 

 盈月が元気を取り戻したのを見たガルダは翼をあげて2人を見送る。

 女性に連れられ、盈月が向かった先はガレージだった。

 そこにあったのは1台のバイク。

 全体で茶色いタカを模し、カウルも鳥の頭を模しており、ヘッドランプ周りは黄色いクチバシの様になっている中型バイクだ。

 

「エリシア用のマシン。”スコアダッシャー”だ。これを使ってスコアノートの元へ向かえ」

「でも、私、免許が……」

「こっちで自動運転とパソコンから制御するからそこは心配するな。カモフラージュ機能があるから変身して乗っておけば一般人にはバレない様にしてあるしな」

「よ、よぉし! 分かった!」

 

 女性に促され、盈月はエリシアに変身、スコアダッシャーに跨る。

 すると、スロットルが勝手に回り、エンジンを稼働させる。

 女性がガレージの扉を開くのと同時にエリシアを乗せたスコアダッシャーは猛スピードで駆け出していった。

 

「うわぁ!? い、行ってきまーす! わぁー!」

「落ちないように気をつけろよ!」

 

 エリシアを送り出すと女性は急いで研究室に戻り、パソコンからスコアダッシャーに目的地を入力、遠隔での制御を開始した。

 

 

******

 

 

 羽頃盛市にある幹線道路。

 ラッシュのピークが終わり、通行する車が減った中を走る車の前にロープの様な物が張られる。

 突然のことに驚きながらも車は急停止、前を見ればロープだと思ったそれは植物のツタ。

 直後、そのツタを伝って大柄な猿(・・・・)が派手な音をたててボンネットに着地する。

 

「ウキャキャキャッ!」

「ば、化け物!? うわぁ!!」

 

 運転手が血相を変えて逃げ出す中、猿の異形、エイプ・スコアノートは喚きながらバンバンとボンネットの上を跳ねる。

 ひとしきり車を破壊して満足したのか手を斜め前に掲げ、電柱に狙いを定めると手首の下からツタが射出され、電柱に巻き付く。

 そのツタにぶら下がるとターザンロープの要領で弧を描き空を跳ぶ。

 それを繰り返すことで夜空の中を縦横無尽にかけて行く。

 

「見つけた……!」

「ウキャ?」

 

 夜を駆けるエイプの元にバイクの音が迫る。

 エイプが振り返れば遠方からエリシアの駆るスコアダッシャーが猛スピードで迫っていた。

 

「ウキー! キャキャ!」

「博士、もっとスピード出して! 追いつけないよ!」

『無茶言うな! もうトップスピードだ!』

 

 直進でのスピードならばスコアダッシャーの方が勝っている。

 それを分かっているからこそ、エイプは頻繁に十字路へ差し掛かり、その度に曲がってこちらの速度を落としてくる。

 しかし、路地に入るなどはしないところからこちらをわざと追わせて楽しんでいる様だった。

 

『くっ……このまま逃げ続けられると先に変身を維持するエネルギーが無くなる……!』

「……博士、聞いて良い? 公園で言ってたこと何だけど───」

 

 エイプを見失わない様にそちらに集中しながらエリシアは思いついたことを女に話し、女はそれの可否を判断していく。

 そしてお互いの納得のいく案が生まれるとそれを実行に写し、ドライバーを操作する。

 

APPORT(アポート)! ツインラプター!》

 

 再度、エリシアの手に握られた両刃の剣。

 操縦を自動制御に委ね、手を離すとその武器を分離、刃の向きを逆に……両刃が同方向に向くように装着する。

 それを合図に剣先同士を繋ぐ、光の弦が現れる。

 ツインラプターの第三の形態”蒼弓モード”だ。

 

「博士、絶対バイク倒さないでね! よいしょ!」

『お前も落ちそうになったら全力で踏ん張れよ!』

 

 エリシアが器用に手足を駆使しバイクの上に立ち、エイプへと狙いをつける。

 動き回るエイプであるがツタが掛かればその軌道はある程度予測ができる。

 その間に先ほど教えられた通り、ドイライバーを右、中央の順にボタンを操作する。

 

APPORT(アポート)! スコアプレート!》

 

 空間が裂け、エリシアの手に一枚のスコアプレートが収まる。

 描かれた絵柄は泳ぐアロワナのモノ、それを弓の中央に装填し、弦を引き絞る。

 

SET(セット)! タックルアロワナ!》

 

 音声とともに待機音が鳴り響くと弓にエネルギーが集まり、矢となって番えられる。

 エネルギーが少しずつ集まり、1本の矢に凝縮される中、エリシアは強化された視覚でエイプの姿を捉え続ける。

 そして、エイプが新たなツタ伸ばし、それを巻き付けて軌道を変えた。

 

「今……! これで……終わりだ!」

RESOLVE(リゾルブ) SHOOT(シュート) FINISH(フィニッシュ)!》

 

 握にあるトリガーを引き、矢を放つ。

 放たれた矢はアロワナの形をしたエネルギーをまといながら真っ直ぐ進む。

 脅威を感じ取ったエイプが背後を振り返るももう遅い。

 エイプの軌道と矢の軌道が重なり、炸裂する。

 

「ウキャアアアアアア!?」

「おっと!? セーフ!」

 

 激しい叫びとともにエイプは爆散。

 宿主となっていた人間とスコアプレートが落下するがギリギリで追いついたエリシアがどちらもキャッチし、事なきを得る。

 エイプが消えたことで彼が発生させたツタの残骸も全て塵となって消え失せた。

 

『よぉし、よくやったぞ! ……あー、えっとすまん。名前を聞いてなかったな』

「そういえばそうだった! 私、日向盈月だよ! 博士は?」

『……笑うなよ?』

「人の名前で笑わないよ! だから、教えて?」

 

 言い淀む女を盈月が急かす。

 女はため息をつき、観念したように口を開いた。

 

『……エリシア』

「えっ?」

『エリシア・フェリキタス……それが私の名前だ』

 

 女、エリシアは恥ずかしそうに自身の名を口にする。

 それを聞いた盈月は言葉の意味を理解し、クスリと笑みを漏らす。

 

『おま、笑うなって言っただろ! そのドライバーは私しか使うつもり無かったんだから、それなら名前そのままで問題ないだろ!?』

「ご、ごめんなさい。エリシア博士って変なところで手を抜くんだなって……これからよろしくお願いします!」

『短い間だけだがな……頼むぞ、盈月』

「はい!」

 

 少女の元気な声を響かせ、ライトの軌跡のみを残しエリシアは夜の街へと消えていった。




第二話の読了ありがとうございます。
プロローグ、一話と出ずっぱりだった博士の名前がようやく出せました。ずっと出てはいましたが出てませんでした。
今後も頑張って投稿を続けていきますので応援いただければ幸いです。

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次回の更新もお楽しみください。
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