────手立てがないと周囲も言う。
─────私にできることはないだろうか?
深く思考する。
私にできることは少ない。
彼女に救われたが故、力になりたいと自信の根源まで思考を沈める。
忘我の彼方、とある事柄を思い出す。
───覚えがない。ひどく懐かしい記憶を垣間見た気がする。
これは失われた私の記憶だろうか? それとも私じゃない、誰かの記憶だろうか?
───どちらでも関係ない。
この記憶にこそ、打開の妙案を発見した。
我が身が危ないかもしれない、しかし、彼女のためならば例えどんな無茶でも惜しくはない。
危険だからと禁じられていた部屋へ何の躊躇いもなく侵入する。
咎を受けようと関係ない。
全ては彼女のために……私は目の前の
「博士ー。本当にガルダちゃんおうちに置いておいて良かったの?」
「よかないわ! 何を気に入ったんだアイツ……お前の言うことも聞いてなかったが良くあるのか?」
「こんなことは初めてだよ! 反抗期かなぁ……」
「鳥の反抗期……?」
軽く昼食をとった3人は温斗の運転する車に揺られ、警察署へと向かっていた。
ガルダを一緒に連れて行くことはできないため、一度自身の家に連れ帰ろうとした盈月だったが、ガルダはそれに従わず、逃亡。
最終的に折れたエリシアの一喝でそのままエリシアの家で待たせることとなった。
「それよりも! 博士以外に仮面ライダーを作ってる人ってどんな人なの?」
「会えば分かりますが……なんと言うか、うるさい人ですね……」
「疲れる奴だよ。たく……なんで私がアイツに……」
心底うんざりした様子でエリシアは窓の外を眺めながらため息を吐く。
そうこうしていると、警察署へと到着。正面玄関では降ろされず、駐車場の端にあるプレハブの建物の近くに停車する。
温斗の案内に従い、入ったプレハブの室内はまだ新しいことも相まって非常に清潔な印象を受ける。
どこかのオフィスをそのまま持ってきたかのように整頓されたデスクがいくつか並び、角には給湯用のスペースが設けられている。
そしてその奥、壁で隔てられた先にはエリシアの家にあるような設備を備えた研究室が見えた。
「
「今日も夜明けまで作業してましたから机で寝てると思いますよ」
エリシアがズカズカと部屋の中に入り、奥の研究室へと入っていく。
自室に良く似た研究室の机に目的の男が突っ伏す形で眠っていた。
ツンツンの金髪にアロハシャツと短パン、そこに白衣をまとった奇抜な服装にまとい、サングラスをおでこに掛けた男。
エリシアはその幸せそうな寝顔を浮かべた男の背を叩き、無理矢理微睡みの淵から引き上げる。
「おら、起きろ輝散! いつまで寝てんだお前は! もう昼だぞ!」
「……あだっ!? なんだい、温斗……どっかの昼夜逆転女みたいな声出して……」
「誰が昼夜逆転女じゃ! というか、お前も大概だっただろ!」
「……エリシア!? そうか……腕の怪我が祟って命まで……惜しいやつを亡くしたな……くわばらくわばら」
「勝手に殺すな! バカが!」
「えっ、まだ生きてたのかい?」
エリシアに手を合わせ拝む男をエリシアは無事な手で叩く。
普段以上に喚くエリシアに温斗は貯め息を吐きながら盈月を案内し、エリシア共々適当な椅子を充てがった。
「久しぶりに会ったと思ったら相変わらずだねぇ、エリシア。というか良く考えたら君のほうが朝寝てる率高くなかったかい?」
「細かいこと気にするな。別にお前と旧交を温めに来たわけじゃないんだ」
「そうかいそうかい……それで、そっちの女子高生は何者?」
「初めまして! 日向盈月です! 昨日から仮面ライダーやってます!」
盈月の言葉に輝散と呼ばれた男は目を丸くして温斗の方を見る。
エリシアが怪我した以外、報告書にちゃんと目を通していない輝散に改めて経緯を説明すると「なるほどねぇ」と改めて盈月と目を合わせる。
「初めまして、盈月。俺は
「Dr.フラッシュ! カッコいい!」
「ふふん、そうだろうそうだろう。もっと褒め称えてくれたまえ!」
目を輝かせる盈月に気を良くした煌琉はうんうんと満足そうにうなずく。
それに「調子に乗るな、バカ」とエリシアが頭を叩き、温斗は貯め息を吐く。
「彼はエリシアさんと同じくスコアプレートの研究をしてる科学者で今は僕ら警察に協力してもらっています」
「おいおい、温斗! 何度も言ってるだろう? この女の再現性がなくて気軽にできない純化と研究が進めば誰でも使える疑似プレート、一緒にはしないでくれよな!」
「全くだ。在学中から作ってたくせに未だに完成できず、その間にイマージュドライバーまで実用化した私とこいつを一緒にしないでくれ」
「ハッ! そんな喧嘩腰だから腕の骨折るんじゃないか? カルシウム不足だと怒りっぽいって言うだろう?」
「誰がカルシウム不足じゃ!」
「おぉ……博士と張り合ってる……」
再びバチバチと言い争いを初めた二人の様子に盈月は感心したように呟く。
その後も言い争いを繰り返す2人をよそに盈月はフッと疑問が浮かび、温斗の服の裾をひいて小声で話しかけた。
「ねぇ、温斗さん。疑似プレートってなぁに?」
「あぁ、それは……」
「それはだねぇ!」
温斗が説明しようとしたところに煌琉が割り込み、盈月に向けてずいっとパソコンの画面を見せる。
そこに映されていたのは4種類の違う種族の動物が描かれたプレートと1枚の見覚えのない黒いフレームのスコアプレート。
描かれていたのは五つ星を背負ったテントウ虫だった。
「通常、スコアプレートは未純化と純化の2種類の色と哺乳類、爬虫類、魚類、鳥類の4種類の生物種が確認されている。ただ、入手が不安定な上に純化しないと使えない、その上、今のところ
「そうなの!?」
「あぁ、私はすごいんだぞ。もっと褒め称えろ」
「たしかにすごいけど技術としてはナンセンスだ。再現性のないものの価値は薄い……そこで! 俺が大学時代に提唱したのがこの疑似プレート!」
4枚のプレートを押しのけるようにテントウ虫のプレートが大きく画面に映し出される。
「スコアのコード配列を分析、それを元に純化を必要とせず作成方法を学べば誰でも作れるプレート! それこそ、疑似プレートだ!」
「すごい! 博士もすごいけどDr.フラッシュもすごい!」
「机上の空論をよくもまぁそこまで突き詰められたもんだな」
「ハッハー! 今や絵に描いた餅ではなく、杵つき餅さ!」
「まだもち米だろ……さっさと捏ねてつけ」
感激する盈月をよそにエリシアと煌琉は睨み合う。
またしても本題からかけ離れていく2人に温斗は頭を抱えながらため息を吐く。
「ところで」と今までの言い争いが無かったかのように煌琉が話を話を切り出した。
「世話話しに来たわけじゃないだろう? こっちもお前の言う餅つきで忙しいんだ。要件を話せよ、エリシア」
「世話話しはじめたのはそっちだろうが……まぁいい、1回しか言わないから良く聞け」
今までの口調と変わらぬ調子で煌琉がエリシアに話を振り、それに答えるようにここに来た経緯───タートルスコアノートへの対抗策を探しに来た事情を話す。
しばし、エリシアの言葉に各々が耳を傾け、煌琉はその間も自身のパソコンを叩いて聞いた情報を分析していく。
「まぁ、こんなところだ。現状、私だと手詰まりでな、良い案無いか?」
「なるほど……そんなら、俺から渡せるのはこれだね」
「っ!? 煌琉、それは……!」
「カッコいい! 銃なのかな、これ!」
話を聞いた煌琉が研究室の奥、厳重に鍵のかけられたケースから取り出した物に温斗が目を見開く。
それはトリガーと銃口があることから大型の銃であると分かる代物。
最も特徴的なのは本来は撃鉄があろう部分に装着されたドラムマガジン状のパーツ。
5箇所のプレート挿入口を持ち、それぞれその上に黒い円、それ以外は赤で彩られたそれは羽を閉じたテントウ虫に似た形状をであった。
「名付けて”イツツボシューター”! 開発中のライダーシステムとの組み合わせて使うことを想定したサポート兵装さ! 本来は疑似プレートを挿入するがもしもに備えてスコアプレートでも使える様にしておいてよかったみたいだね」
「すごーい! 5カ所入れるところがあるから5枚入るの!?」
「大っ正解! 1枚ごとの出力はドライバーのリゾルブフィニッシュに劣るけども3連装で同等、5連装なら1.5倍! 要求数が増えた代わりに消費は通常とも変わらない! ベストアンサーだと思うけどね!」
盈月の反応に気を良くした煌琉が声高に機能を話し、それを盈月が誉める……このループにより煌琉のテンションは際限無く上がっていった。
詳細な使い方が盈月に享受される中、エリシアがいまだに表情を曇らせていることに気づいた温斗が彼女に声をかける。
「まだ何か気になるんですか? 僕も最適解だと思いましたが……」
「機能自体は問題じゃない。相変わらず私にないものをポンポン作りやがって……」
「ふふん。純化技術とドライバーは君に劣るけどこっちは得意分野だからね」
「それならついでだ。疑似プレートも数枚貸せよ」
気を良くした煌琉にエリシアが手を差し出す。
しかし、それに対して煌琉は首を横に振る。
「悪いね。疑似プレートはまだ最終調整中だ、貸せないよ。何より、イツツボシューターもまだ疑似と純正、混ぜて使うことは想定してない」
「なら、純正のプレートでいい。研究用に持ってるだろ?」
「そっちも残念ながら。データだけ取って涼に返したよ。スコアプレートなら君も枚数持ってるだろう?」
「……協力のためにと研究資金用に郡山へ渡した」
「俺が警察に協力するって連絡した時、金のために魂売ったとか言ってた女がやることかい、それ?」
「……あの時はこうなると思わなかったから……悪かった」
バツが悪そうにエリシアが目を逸らす。
”郡山”とエリシアが呟いたことで盈月は温斗の顔を見るが温斗は困ったように首を横に振る。
「あれは僕じゃなくて僕の兄さんのことだよ」
「温斗さん、お兄さんがいるんですか? 警察の人?」
「いや、兄さんは警察じゃない……けど国の役人だよ。元々エリシアさんを見つけたのも煌琉をこっちに引き込んだのも兄さんなんだよね」
「へぇー! すごい人なんですね!」
「……うん、すごい人だよ。本当に」
目を輝かせる盈月に対する温斗の表情は明るくない。
兄を褒められているのに暗い表情の温斗に盈月は首を傾げるが追求する前にエリシアが口を開く。
「とりあえず郡山には連絡してみるよ。今の手持ちで使えるのはイーグルとホーク、それにアロワナの3枚。それでなんとかするしか無いか……」
「あ、博士! あれは昨日倒した……えっと……」
「ウッドペッカーとエイプだろ、忘れるな……純化には時間がかかるんだ。最低でも5日かかる」
「そんなにかかるんだ……」
ここに来ても有効な手を手に入れることができず、盈月とエリシアは同時にため息を吐く。
悩んでも仕方がないとエリシアはイツツボシューターを盈月に預け、立ち上がった。
「とりあえず、これは借りてく」
「使い心地のレポートは頼むよー」
「はーい! 頑張ります!」
「じゃあ、2人とも送ります。煌琉はどうする?」
「行くわけ無いだろう? 適当に腹に入れて調整を続けるよ」
要件を終えたとヒラヒラと手を振って煌琉はパソコンへ体ごと目を移す。
それに「素直じゃないね、君も」と肩を竦めた温斗は盈月とエリシアを連れ、部屋を後にした。
残された煌琉は作業を続けながらとあるファイルを開く。
それは写真のデータ。校舎の前で撮った集合写真。
ブロンドの長い髪を揺らし、中央にて座す白衣の女性を中心に十数人大学生が各々好きなポーズをとって写っていた。
そんな中、煌琉の姿は中央近くにあり、隣にいる薄青い髪の女性───エリシアと睨み合い写っている。
「……大切なドライバーを誰かに貸すなんてこの頃から変わんないなぁ、アイツは」
フッと口元を綻ばせると写真を閉じて代わりに転送されて送られてきているエリシアの報告書を開く。
「とはいえ……エリシアの認証は遺伝子情報をコード化してたんだったかな。それなら他の誰かが変身するのは難しいと思うけども」
報告書の記述、バグにより盈月が変身を可能だったこと、そして未確認だった純化済みスコアプレートを彼女が持っていたことを何度も見直す。
「彼女か……はたまた、その
頭を振って雑念の元となっていた報告書を閉じると改めて自身の作業へと没頭していった。
******
「へぇー博士とDr.フラッシュは大学で一緒だったんだ!」
「あぁ、生物譜面学……スコアの研究をしてるところでな。ドライバーの基礎とかはそこで産まれたんだよ」
「博士の学生の頃の話とか聞きたい!」
「また時間があるときにな……ほら、まずはガルダを回収してこい」
温斗に送られてエリシアの家へと帰ると温斗は1日職場にいない訳にはいかないとそのまま来た道を戻っていった。
家に入ると盈月はガルダを探し、声を出しながら屋内へと入っていく。
「ただいまー。ガルダちゃーん、帰ってきたよー」
「悪さしてないだろうな……? いや、多少の汚れは諦めてるが……」
エリシアの予測が当たったのか、1階の奥、研究室のある方へと行った盈月が血相を変えて戻ってきた。
「博士、博士! 大変だよ!」
「おう、何があった? どこかにフンでも落ちてたか?」
「研究室が青く光ってる!」
「何しやがったあの鳥!!!」
盈月の言葉に急ぎ、研究室へと向かう。
確かに閉まっていたはずの扉が半開きになっており、その奥から見覚えのない青い光が漏れ出していた。
不安そうにオロオロしている盈月を下げながらエリシアが室内を覗き込む。
光の元はデスクの上、パソコンの前だった。
青く輝く”それ”は羽根を広げ、丸くうずくまったガルダそのもの、そしてその下には1枚のプレートがあった。
「ガルダちゃん!? どうなってるの!?」
「分からん……今までこんなことは……無いわな」
「当然だよ!」
盈月とエリシアが困惑する二人の目の前でさらなる変化が発生する。
ガルダを包む光が一層激しく輝くと丸く開かれた翼からハラリと羽根が落ち、プレートの上へ落ちると吸い込まれるように消滅した。
その後、輝きは徐々に弱まり、ついには青い光が消えるとガルダは二人の方へ振り返り、ぐったりした様子でその場に倒れ込むがそれは盈月が咄嗟に拾い上げた。
「ガルダちゃん!? 大丈夫!?」
「ピィ……ピィーピィピィ……ピィ」
「怪我とかはしてない……みたいだけど、後でお医者さん連れてくからね!」
「ピィ……」
弱々しい反応を示すと共に腕に抱かれて安心したのか顔を擦り付けて甘えているようだった。
そして、エリシアはガルダがいた場所に残されたプレートを手に取る。
それは純化の途中だったウッドペッカースコアプレート。
まだ、赤かったはずのそのプレートではあるが手に取ったそれは青いフレームへと変化していた。
「純化されてるだと……!?」
「えっ!? 本当だ! 青くなってる!」
「本当にどうなっている……わけが分からん」
顔を見合わせる2人。
しかし、悩みの時間はエリシアのスマホから鳴り響く着信音で切り裂かれた。
「誰だ……って温斗か。なんだ、何か伝え忘れか?」
『違います! 今、無線が入りました。スコアノートです! 来ている情報から恐らく朝と同じ奴かと!』
「っ、忙しい時に……分かった! 向かわせる! 聞いてたな、盈月!」
「う、うん! 行ってきます! ガルダちゃん、ちょっと待っててね!」
ガルダを近場の作業机に休ませると盈月を見送るように力なく羽根を上げる。
心配をかけないように振る舞うガルダを気にしながらもイツツボシューターを片手にスコアダッシャーのあるガレージへと走る。
残されたエリシアはパソコンの前に座り、何かの機械にウッドペッカープレートをセット。
データを読み取りながら盈月への指示とスコアダッシャーの操作を行い、時折、振り返ってはガルダの様子を気にかけるのだった。
******
盈月が変身した
朝破壊された2枚の盾は朝の時と同じ様に構え、しかし、朝とは異なり、タートルの周囲を守るように幾体もの甲羅の一部を体に貼り付けたモノコーンたちが徘徊していた。
エリシアが現れたことを確認するとそれらが一斉にエリシアの方へ向き、攻撃が開始された。
「ガメェ!」
「~~っ!!」
「今度は負けないよ! 仮面ライダーエリシア、行きまーす! たぁっ!」
タートルの指示の下、モノコーンたちが目からビームを放ちながらエリシアへと接近、爪で攻撃を仕掛けてくる。
それに対し、両刃モードのツインラプターを呼び出したエリシアはビームを回避すると大振りな振り回しにより、接近したモノコーンたちを薙ぎ払う。
大きく、振り回すように両刃剣を振るいモノコーンたちを攻撃しながらタートルへと接近する。
勢いを乗せて振り回された刃、しかし、その攻撃は朝と同様にタートルが構えた盾に阻まれ、弾かれる。
「ガメェ!」
「くっ、やっぱり硬い……それなら!」
弾かれ、振り回されたのを利用してバックステップ。モノコーンからの追撃も回避しながら距離を取ると腰に吊り下げたイツツボシューターを手に取り、引き金を引く。
銃口から放たれたエネルギー弾は攻撃を行おうとしていたモノコーンの瞳を貫き、その身体を灰へと変えた。
続けて狙いを盾を構えるタートルへ向ける。
当然、狙われたタートルは盾を構えるがエリシアはそれを見越して翼を広げ、斜め前に飛び上がると盾を構えた腕そのものを狙い撃つ。
「ガァ!?」
「よし! 銃、便利!」
「ガメガ! ガメェ!」
しかし、タートルとてそのまま受け続けはしない。
号令を出すように叫ぶと散らばってモノコーンたちがタートルの周囲に集まり、タートルの脇を固める。
先ほどのように飛び回り、盾を掻い潜ろうとするも周囲を固めたモノコーンたちが邪魔をし、逆にビームによって狙いを付けようと動きを止めたエリシアが攻撃されてしまう。
一度、距離を取るもタートルたちは固まったままジリジリとエリシアを攻撃するため近づいてくる。
「(剣の攻撃は盾に弾かれちゃうし、銃や弓も……モノコーンを全部倒すにしても数が多いしタートルがあんなに近くにいたんじゃ攻撃を防がれちゃう……)」
「ガガガガメェ」
「……こうなったら!」
一か八か、連続リゾルブフィニッシュを放つためにエリシアはプレートを取り出す。
手元にあるのはホークとアロワナの2枚、そしてドライバーにセットされているイーグル。
シューターを腰に下げ直し、手に取ったアロワナプレートを両刃剣の中央のスロットへ挿入しようとした時、
『待て、盈月。賭けをするなら私の案に乗る気はないか?』
「博士! 何か方法あるの!?」
『できるか分からないが……どっちにしろ賭けなきゃ勝てないんだ。それならいくらでも博打を打ってやるさ!』
「分かった……教えて!」
『よし来た。まずはプレートを送るから受け取れ』
「りょーかい!」
タートルたちが近づいてくる中、博士の指示に従ってプレートを呼び出す。
手元に現れたプレートは先ほど、ガルダの謎の力によって純化されたウッドペッカープレートであった。
『確認は済んだ。そのプレートはもう使える……だから、それをイーグルプレートと入れ替えるんだ』
「えっ!? でも……」
『だから賭けだ。そのイーグルも元々はガルダの持ち物だったんだよな? それなら、同じガルダのおかげで純化できたこのプレートなら使えるかもしれない』
「なるほど……分かった。やってみる!」
『あぁ、スコアを変えれば本体の性能も変化する。そしてウッドペッカーの力ならば……勝てる!』
「よぉし……えい!」
博士の説得を受け、エリシアはドライバーからイーグルプレートを取り出し、掛け声とともにウッドペッカープレートを挿入する。
昨夜、ホークプレートを挿入した時はドライバーの認証が正常に働き、この後何の反応も示さなかった。
そして今回は───
《スティングペッカー!》
───認証を示す音声と共にドライバーから変身待機音が鳴り響く。
2人の賭けは成功したのだ。
『よっしゃあ! スコアチェンジだ、盈月!』
「よぉし! いっくよー、スコアチェンジ!」
《
「ガ、ガメ!?」
ドライバーの中央を押し込むことでエリシアの姿が変化を始める。
アンダースーツを残し、ワシの特徴を持った装甲が剥離、その代わりとなる新たな装甲が出現する。
タートルたちがその様に驚愕する中も変化は続く。
現れた装甲、イーグルの時よりも長く、鋭いキツツキのクチバシを模し、頭頂部が鮮やかな赤に彩られたヘルムが頭部に。
同じく、キツツキのクチバシに見立てた紺色に白のラインの入る装甲が両肩に、関節部を保護するようなイーグルの時よりも軽装なプロテクターが全身に。
そして、腕には金色の腕輪に代わって装甲に合わせた紺色に彩られた無骨なガントレット───”スティングバンカー”が両腕に装着される。
《スティングペッカー!》
鳴り響くドライバーの音声と共にアンダースーツのカラーが紺色地に各所に白のラインが走る物に変化すると装甲が定着、変身が完了したことを示すように蒸気が上がる。
仮面ライダーエリシアスティングペッカースコア、新たな力が彼女の身へと宿ったのだ。
「すごい……あれ、でも翼だせなさそう……?」
『イーグルの時とは大きく性能が変わってる! とはいえ、やることは簡単だ。近づいて……殴れ!』
「わかりやすいね! いっくよー!」
指示に従い、エリシアが駆け出す。
殴れ、その指示に従うためにも手に持っていたツインラプターを投げつけた。
接近してきたモノコーン数体を巻き込み塵へと返し、タートルの行軍を止めたが残念ながら盾に阻まれて地面へと落下した。
それを気にせず、接近してくるエリシアに対し、タートルは盾を構える。姿が変わったとはいえ、彼女の攻撃にこの盾への有効打はない、その自信とともに。
「たああああっ!!」
「ガメェ!」
掛け声とともにエリシアは右の拳を構えられた盾へと突き出す。
ガキンッ!という音が鳴り響き、攻撃が盾に阻まれたことを主張する。
だが、エリシアの
その直後、ビシリと音を立て、タートルの盾にヒビが走る。
「ガ、ガメェ!?」
「もう、一発! やあ!」
驚愕するタートルを無視し、エリシアは左の拳を突き出した。
すると拳の上、腕に装着されたガントレット、スティングバンカーから拳の動きに連動するように杭が勢いよく射出され、拳を振り抜く勢いも合わせて盾を打ち据える。
ヒビの入った箇所へ打ち据えられた一撃は盾を粉砕せんとそのヒビを更に深刻に広げていく。
『機動力こそイーグルに劣るが見ての通り、攻撃力は段違いだ! 攻めきれ!』
「うん! このまま行くよ!」
「ガ、ガメェ!」
一転攻勢へと出るエリシアに焦るタートルはモノコーンたちをけしかけ、後退する。
ビームを放ち、近づくモノコーンたちだがスティングペッカーの特徴故か、素早く鋭いエリシアの拳と蹴り、そして射出される杭に蹂躙されていく。
更には実際に拳を当てるわけではないため腰に下げた銃を抜き、射撃、別の相手のに銃を持ったまま拳を突き出し杭を打ち出し縦横無尽の動きによって数をどんどん減らしていった。
「今……たぁっ!」
「ガ、ガガメェ!?」
モノコーンの数が減ったことで産まれた隙を逃すことはなく、エリシアはタートルへ接近、ひび割れた盾をめがけて拳を突き出した。
咄嗟のことに反射的にその盾を構えたタートルだが後悔をする時間はない。
拳の動きに連動し、射出された杭は的確に盾を打ち据える。
先刻の攻撃でダメージを蓄積していた盾は3度目の打撃に耐えきることができず、盛大な音とともに砕け散った。
呆然とするタートルであったが、エリシアは止まらない。盾を失った好機に逆の拳を突き出し、杭による一撃をタートル本体に直撃させた。
肉体に突き刺さった杭はタートルに大きくダメージを与えながら吹き飛ばす。
「ガメェー!?」
『よし、1枚壊した……今なら、勝てるぞ!』
「分かってる……決めるよ!」
《
勝機と見たエリシアがベルトを操作する。
必殺技のコマンドが入力されたことにより、右の拳を構えるとスティングバンカー包み込むようにエネルギーが漲る。
それを見たタートルはダメージに苦しみながらも残った1枚の盾を投げ捨て壁へと変じさせ、背中の甲羅をエリシアに向ける。
今朝と同じ様に、しかし、壁はすでに1枚砕けている。そして、
《
突き出した拳からエネルギーをまとめた杭が打ち出される。
通常よりも長く、鋭い杭は壁へと激突すると砂糖細工の様に容易く砕くとタートルの甲羅へと激突する。
火花を散らし、甲羅とせめぎ合う。だが、それも長くはなかった。
ビキリ、ビキリと徐々に甲羅へヒビが走り始め、数刻も待たぬうちに盛大に最後の護りが粉砕される。
全てを破壊しても杭は止まることはなく、タートルへと突き刺さる……だが、2枚の護りは役目を果たしており、威力が大幅に減衰された一撃はタートルに軽くダメージこそ与えるが人間とプレートを分離させるには至らなかった。
「ガ、ガメ……ガァ……」
《フライトイーグル!》
「ガ、ガメ!?」
しかし、そうなることを予測していたのかエリシアは更に動き、いつものドライバーとは違う音質の電子音が鳴り響く。
杭を打ち出すのと逆の手に握っていたイツツボシューター、その上に搭載されたテントウ虫型のドラムマガジンに手持ちのプレートを装填していく。
《ブラストホーク!》
《タックルアロワナ!》
「今度こそ……終わりだ!」
3枚全てを装填するとマガジンを上から押し込む。
するとプレートが装填された上にある丸い模様が輝き、銃口へとエネルギーを充填し始める。
エリシアがダメージによって動けないタートルへ銃口を向けると最大まで蓄積されたエネルギーを放つためにその引き金を引く。
《
余剰のエネルギーがマガジンからエリシアを包み込むように放出、銃口から特大のエネルギーがレーザーとして放たれ、タートルを撃ち抜く。
防ぐものを失ったタートルはその攻撃を防ぐ術はなく、回避もできずに直撃した。
「ガメエエエエエ!!」
エネルギーに飲まれ、断末魔を上げながら肉体が消滅、宿主となっていたであろう青年が地面に倒れ、排出されたスコアプレートが地に落ちる。
わずかに残ったモノコーンたちも主の消滅と同時に塵へと帰り、戦いが終わりを告げた。
******
「ただいまー! プレート回収してきたよ!」
「ピィー!」
「ガルダちゃん! ちょっと元気になった?」
プレートを回収し、その場を警察へと託すと盈月はスコアダッシャーに乗り、エリシアの家へと戻ってきた。
研究室に入るとガルダがアピールするよう翼を広げて迎えていた。
まだ、いつものような元気は無いが戦いに行く前よりはマシと言った様子だった。
「雰囲気的に疲労してただけみたいだな……獣医に見せた方がいいが説明めんどいな……」
「光ってましたとは言えないもんね」
「そうなんだよなぁ……まぁ、今回はこいつのおかげだし、今後も頑張ってもらわないとな」
「ピィ? ピィッピィン!」
「結構フワフワしてるな……」
エリシアが恐る恐る手を近づけ、労いの意味も込めてガルダを撫でる。
ガルダは急なことに驚きはしたが褒められたのがわかったのか腰に手を当てる様に羽根を曲げ、胸を貼った。
「……と、そうだ。忘れるところだった、盈月」
「なぁに?」
「さっき、温斗から連絡があってな。お前んちに教習所の資料送るから全部書いて送るか持って来いだとよ」
「ふぇ?」
「まぁ……
「学校の勉強もあるのに!? う、うーん……でも確かに大事だよね……うん、頑張る」
ガクリと肩を落とすも諦めたように涙目で拳を握りしめる盈月。
今度はその盈月を慰めるようにエリシアとガルダが盈月を撫で、励ましながら穏やかな時間が過ぎていった。
第四話の読了ありがとうございます。
2人目の開発者が出てきたり、新武器だったり新フォームだったり色々ありました。
なぜガルダが関わったプレートでは変身できるのか、それは今後明かされていきますので楽しみにしていただければ幸いと思います。
励みとなりますのでご意見、ご感想、評価、読了報告その他色々していただけますと嬉しさの余り暴れ倒します。嘘です、周囲に迷惑はかけない程度に喜びます。
次回もお楽しみに。