仮面ライダーエリシア   作:teru@T

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「あれが……エリシア」

 上空高く夕焼けから夜へと変わる境を飛行するピトフーイは戦場を見下ろし、敵対者たる仮面ライダー(エリシア)を観察する。
 危うい所こそあるが能力を駆使して2体のスコアノートを手玉に取る姿に歯噛みする。

「このまま一気に行くよ!」

 しかし、空中に飛び上がったことで届いた彼女の声を聞き、安堵とともに口を歪め笑みを見せる。

「あぁ……違う、違った! あのエリシアは……あの女じゃない……!」

 狂ったように歓喜の声を上げ、誰も見ていない空中をクルクルと羽根を広げて周り踊る。
 鮮やかなオレンジの身体と黒い羽根先が夕焼けと夜の混じる空に溶け込むように踊り、狂う。
 フッと視線を下に落とせば戦場から離れきっていない車の影に逃げ遅れたのか女が1人隠れていることに気がついた。
 その女に視線を向けるピトフーイは更に口元を歪める。

「アハッ! 運がいいわ、適合者か! クク、気分がいいの……遊びましょう、エリシア」

 ねっとりと憎むように愛でるように名を呟くと急降下、今まさに逃げ出そうとする女性の背後に音もなく降り立った。
 シャークスコアノートが撃破されたどさくさに紛れ、走り逃げようとした女性は背後に立っていたピトフーイへとぶつかり、尻もちを着く。
 絶望した様相で女性が見上げる中、ピトフーイはニヤリと歪めた笑みを浮かべたまま女性の首をつかみ上げ、持ち上げる。

「きゃあああああ!」



第六話「燻る熱は輝いて」

 女性の悲鳴にエリシアが背後を振り返るとそこには女性の首をつかみ持ち上げる新たなるスコアノートの姿があった。

 踊り子を思わせるヒラヒラとひらめく腕に携えられた羽根と腰から伸びる尾羽根。

 鮮やかな赤に近いオレンジの体躯は艶やかな女性を思わせ、膝から下は黒い鳥の脚を模しているためまるでロングブーツを履いているかのように見えた。

 鳥を模した頭部も艷のある黒に覆われ、クチバシを模した突起の下に歪んだ笑みを浮かべる人の様な顔が見える。

 

「3体目……! その人を離して!」

「クク……まぁ待ちなさい、すぐに離すわ」

「えっ? 本当に?」

 

 鳥の異形(ピトフーイ)の言葉にエリシアはホッと胸を撫で下ろす。

 しかし、今のやり取りにどこか違和感を覚え、少し考え込むとその正体に思い至る。

 

「スコアノートが喋った!?」

「あぁ……秘匿してるんだったわ。まぁ、今から殺すんだし関係ないか……ついでよ、良いものを見せてあげる」

 

 エリシアの目の前でピトフーイが取り出したのはスコアプレート。

 ダチョウの姿が描かれたそれを怯えもがく女性の胸元に押し込むと貼り付くように埋め込まれる。

 

【オーストリッチ】

「あっ……い、やあ……助けぇえええええ!」

「何してるの! 離してくれるって言ったのに! 苦しそうだよ!」

「バカね! タダで離すわけがないでしょう?」

 

 プレートから溢れた光が女を包み込むと苦悶の声を上げながらエリシアへと助けを求めるように手を伸ばす。

 だが、その手が何かに触れることはなくプレートからあふれる光が女の肉体を変質させた。

 大きな黒い瞳をギョロギョロ周囲を見回し、長い首を持った黒い体躯の鳥型のスコアノート。

 脚部を白い鱗の様に覆われたダチョウに似た異形───オーストリッチスコアノートがピトフーイの手の中で誕生したのだ。

 

「クォオオオオオ!!!」

「クク……ほら、約束通り離してあげたわよ?」

「人がスコアノートに……今までのもあなたがやったの!」

「あなたなんて他人行儀はやめてよ、エリシア……私はピトフーイ! あぁそれと……前ばかり気にしていてはダメよ?」

「えっ……? っ!? きゃあ!!」

 

 ピトフーイの言葉に首を傾げると同時に背中を鋭利な爪で切り裂かれ、衝撃がエリシアを襲う。

 シャークが倒され、勢いを削がれていたライオンが勝機と見て背後からその爪で切りかかったのだ。

 それに乗じてオーストリッチが屈強な脚で大地をかけて接近すると長い首を振り回しよろめくエリシアに打ち付け弾き飛ばす。

 

「いっつぅ! こんの!」

「アハハ! そんな大振りな攻撃して……私もいるのよ!」

「きゃあ! これならどう!?」

「クォオオオオ!!」

「グルアアア!」

「くっ!」

 

 弾かれたエリシアは腕を振るい、追撃をかけようとするライオンに杭を伸ばし防ぐ。

 だが、伸び切った腕を狙ってピトフーイが腕を振り上げて携えられた黒い羽根が鋭利な刃物のようにエリシアを斬り付け、更にダメージを蓄積していく。

 反撃として双剣を振るうもオーストリッチの蹴りとライオンの爪に阻まれて攻撃が通らない。

 そこに踊るように背後に周り込んだピトフーイが更に羽根のドレスでエリシアを斬りつける。

 

「つぅ……! くっ……!」

「グルルル!」

「何度もは受けないよ!」

「グラァア!?」

「クォオオ!?」

 

 痛みに呻くエリシアにライオンが更に爪を突き立てる。

 だが、何度も攻撃を受けたエリシアはその攻撃を剣で受け止める。

 更にそのまま押し返すように腕を突き出すとその動きに連動して杭を射出。

 オーストリッチにぶつけるようにライオンを吹き飛ばし距離を取って体勢を立て直す。

 

「(1体ずつ……にするには必殺技がもう1回しか使えないし……どうしよう!?)」

「打開策を考えてるみたいですが……すでに勝負はついてますから悩む必要はないですよ」

「えっ? それってどういう……っ、何、これ……」

 

 カランと音をたて、笑みを浮かべるピトフーイの前で手に持った双剣を取り落とす。

 何が起こったのか分からないまま、エリシアは全身から力が抜けるようにその場に跪いてしまった。

 当然、動きを止めた獲物に容赦する理由もなくライオンとオーストリッチはエリシアを襲う。

 

「グルルラァ!」

「クォオクォオクォオ!」

「くっ、いや……! なんで身体が……!」

『盈月! 聞こえるか!? 大丈夫か!?』

「───はか、せ……」

 

 動きにくい腕を動かし、なんとか2体の攻撃を受けているエリシア(盈月)の耳にエリシア(博士)の声が響き、痛みに耐えながらも答える。

 何が起こっているのかわからない今、誰かに頼り、助けを求める他なかった。

 

『どうした、何があった?』

「……博士……たす、けて……」

『盈月!? 盈月ぅ!!』

 

 

******

 

『身体がうまく動かなくて、

 エリシアの叫びに盈月の異常を察知した温斗は試験のために用意されていたイツツボシューターがマウントされたイマージュベルトを乱暴に手に取るとそのまま出入り口へと向かった。

 

「白バイ一台使うよ。他の課にも応援要請して市民の避難は任せた。指示出しもできなくなるから」

「待ちなよ温斗。戦う気かい? 反対だよ、確かにできたけどまだ試験が終わってないからどんな異常が出るか分からないんだぞ?」

「分かってる……それでも僕は行くよ。煌琉、お前を信じてるからね」

「……失敗だったらちゃんと逃げろよ」

 

 温斗の方を向くことはなく、激励を送る。

 煌琉からの言葉を受け取った温斗もそれに答えることはなく、部屋を飛び出すとバイクを駆り、盈月の元へと向かった。

 

『博士、身体がうまく動かなくて……スーツが重いというかうまくうごかな、きゃあ!』

「盈月!? くっ、どうすれば……!」

「エリシア! そのままパソコン貸すよ! それでライダーのデータ拾えばそのままよりはマシだろう?」

「悪い、恩に着る! 盈月、少し待ってろ!」

『頑張る……けど急いで欲しいかな……くぅっ……!』

 

 通話越しに攻撃を受けていることが伝わり、焦る気持ちを抑え再びキーボードを叩く。

 煌琉の助言に従い、仮面ライダーの現在の状況がデータとして画面上へ映し出すことに成功、それをひと目見ただけで変化の原因は明らかだった。

 すべての出力が著しく低下していたのだ。

 

「何が起こってるんだこれは……盈月、敵はなにか分かるか?」

『えっと、サメは倒してぇ! くっ、後はライオン……!』

「その2体でどうにかできる感じはないが……」

『その後にぃ……いたっ! えっと、喋る、確か……そうだ、ピトフーイ! きゃあっ!』

「っ! 盈月!?」

『まだ大丈夫……だけど喋るのは難しい……かも』

「すまない……だが、原因は分かった。なんとか対処してみるから耐えてくれ!」

『がん……ばる……!』

 

 本当ならば敵の詳細など聞きたいのは山々だが通信しながらでは戦闘の邪魔になってしまうため、一度通話を終了し改めてキーボードを叩き始める。

 

「原因が分かった。毒だ」

「毒? 根拠は?」

「盈月が言ってた。敵のうち1体はピトフーイ……毒鳥のスコアノートだ」

 

 ピトフーイ───ズグロモリモズをはじめとする有毒の鳥の総称である。

 本来、その毒は捕食者から身を守るため体内に溜め込まれているものであり攻撃に使用することはない。

 だがスコアノートとなったことで能動的に毒を注入する手段を獲得し、その毒がスーツを犯し機能を低下させていると予測を立てた。

 

「毒か……血清は毒を採取しないと難しいな……」

「あぁ、だから他の切り口で毒を和らげる方法を考えないといけない……クソっ! 時間が足りない……!」

「落ち着きなよ。焦ったって案は浮かばないだろう?」

「それはそうだが……! いや、そうだな……焦っても仕方がない、か」

 

 焦るエリシアをいつもと変わらぬ調子の煌琉が諫める。

 煌琉に焦りはない。言葉を紡ぎながら黙々と作業を進めている。

 その様子に落ち着きを取り戻したのかエリシアも再び手を動かし始める。

 

「そうそう、そうするしか無いよ。向こうは温斗に任せなよ」

「あぁ……お前も温斗もお互いを信頼してるんだな」

「……当然だろ?」

 

 エリシアの言葉にピタリと煌琉の手が止まる。

 横目で見つめたのはエリシア本人。作業に集中しているのか、その様子に彼女が気づくことはなかった。

 

「俺もあいつ(温斗)同じ人間(エリシア)目指してるんだ。できることをやった今は信頼しかないさ」

 

 

******

 

 ───温斗とスコアノートとの出会いは平凡であった。

 市民から化け物がいると通報を受け、いたずらにも思われた先にいた異形(本物)

 装備も整っていない中では太刀打ちもできず、部下がやられ温斗本人にもその牙が向けられたその時。

 

「大丈夫か? 後は任せて下がってろ」

 

 翼を広げた翼(仮面ライダー)に救われた。

 異形を難なく打ち倒したエリシアはこちらを一瞥し無事を確認すると何も言わずに飛び去ってしまった。

 総じて言えば彼女(エリシア)との出会いも平凡であったと言えるだろう。

 だが、彼の心には確かな熱が灯っていた。

 人を守るという彼の基礎が。

 何もできなかったと言う事実が。

 守るために培った精神が。

 救ってくれた彼女の背中が。

 熱く灯る熱となって彼の心に燻った。

 

「手助け? 必要ない。戦うのは私だけでいいんだよ……」

 

 彼が非凡であったのはその後だろう。

 羨望(嫉妬)の対象である兄が連れてきた薄青髪の女(エリシア)

 どう調べたのかは分からないが兄が仮面ライダーの正体は彼女であると突き止め、協力関係を気づくためにもと連れてきたのだ。

 しかし、エリシアはそれを突っぱねた、組織の力は必要ないと。

 兄の交渉の結果、どんな敵が現れたのかだけは報告をしてもらえるよう、見返りに出現したら連絡を入れるよう細い繋がりだけは持つことができた。

 しかし、彼の内に灯った熱を満たすには足りなかった。

 

「その熱、俺が形に変えてやるよ」

 

 兄が次に連れてきたのは金髪の男(煌琉)だった。

 エリシアとは学友であったというその男は開口一番、温斗にならば協力するとそういった。

 兄の顔を見れば思惑とは違う煌琉の回答だったらしい事がわかる。それでも、断ることはなかった。

 なぜ煌琉がこんなことを言ったのか、温斗にはすぐに分かった───コイツ(煌琉)も僕と同じだ。彼女(エリシア)の姿に熱を燻らせていたんだ。

 自身に満ちたその男の顔を見て、内に秘めた熱は更に熱く滾る。

 

 それから数ヶ月、煌琉の手でドライバーが組み上がっていく中、スコアノートによる被害は拡大していった。

 確かにエリシアによってスコアノートは撃破できてはいたがそれでも攫われて行方不明になる事例が減っていない。

 エリシアしか脅威がない故に囮を使ったり、誰にも気付かれない様に活動している者がいるだろう事は予想が付く。

 そんな状態でも避難誘導やパトロールしかできない警察が温斗の心に燃料を焚べる。

 

「あ、あの。私、何もしてなくて……えっとぉ……」

 

 怪我をしたからドライバーを別の人物に預けた。

 彼女の報告書に書かれた一文、それに居ても立っても居られなくなった温斗が飛び出した先にいた少女、日向盈月は至って普通の少女だった。

 誰からの協力にも応じなかった彼女が託したのだから勝手に特別だと思い込んでいた自分を恥じるほどの普通の少女───守るべき一般市民だ。

 

「───だから僕だけがこれ以上足踏みしてるわけにはいかないんだ」

 

 誰に言うわけでもない、自分に言い聞かせるようにいつか吐き出し言の葉。

 エリシアは盈月に力を託した。

 盈月は託された力に応えるために戦っている。

 そして煌琉は約束通り、力を授けてくれた。

 ───ならばこそ後はこの熱を焚べる、それだけだ。

 

 

******

 

「オォオオオオオオ!!」

「グオオオオオオオ!!」

「くっ……きゃあ!」

 

 スティングバンカーを盾代わりに亀のように縮こまることでなんとか防いでいるがそのエリシアを蹴り、引っかき突き飛ばす。

 ピトフーイの毒により動きを制限されたエリシアはオーストリッチとライオン、2体のスコアノートにいたぶられていた。

 当のピトフーイはといえばその様子を少し離れた場所からクツクツ笑いながら眺めていた。

 

「あの女ではなかったですが……ふふ、同じ名前の奴の無様な姿を見るだけでも溜飲が下がりますね……ん、この音は?」

 

 民間人が逃げ去り、遠方ではパトカーのサイレンが響く中、バイクの駆動音がピトフーイの背後から接近してくる。

 クルリと背後を振り返ると一台の白バイがこちらへと近づき、乗っていた人物───温斗が恐れることなく降り近づいてきた。

 その手にはテントウ虫型の銃(イツツボシューター)が握られており、牽制のためピトフーイへと銃口を向ける。

 

「エリシア! 無事ですか!?」

「あつ、とさん……! あぶない、よ! くぅ!」

「大丈夫! 今、助ける!」

「その銃でですか? いくらなんでも舐め過ぎでは?」

「っ!? 喋るスコアノートだと!?」

 

 小馬鹿にしたように肩を竦ませるピトフーイ。

 盈月と同様、温斗も驚きこそしたが構えを解くことはなく警戒を怠らない。

 対するピトフーイはつまらなそうに嘆息を漏らすとヒラヒラと煩わしそうに翼を振って去るように促す。

 

「今は気分がいいですからね。そのまま回れ右すれば今日は見逃してあげますよ?」

「……状況から察するにお前が人間をスコアノートに変えている元凶か?」

「だとしたら? そのおもちゃで私を懲らしめますか?」

「あぁ……だが、心配するな。退屈はさせないさ」

「なに……?」

 

 怪訝な顔を浮かべるピトフーイの前で温斗は取り出したイマージュベルトを装着し、レディッシュリーダーを前に突き出し構える。

 

「っ、それは……まさか……!」

「2つ目のドライバー!? 温斗さん、もしかして……!」

「これからは彼女(エリシア)1人には戦わせない!」

 

 驚愕するピトフーイとエリシアを前に温斗は決意の叫びと共にレディッシュリーダーを起動する。

 

READY FLASH(レディッシュ)! BUG SET(ヴァセット)! 》

 

 エリシアのイマージュリーダーとは異なり、スコアプレートを装填すること無く起動しただけで待機音が鳴り響く。

 起動することでリーダー内部に埋め込まれたフラッシュレディバグスコアプレートが自動的に読み込まれているのだ。

 

「……変身!」

I(アイ) AM(アム) MAJORITY(マジョリティ)! REQUIP(リクイップ)!》

 

 掛け声とともに温斗は迷うこと無くリーダーをベルトへと差し込む。

 2つが合わさり誕生した新たな機構、レディッシュドライバーはイマージュドライバーと同様に変身音と共に温斗の周囲に人型のエネルギーを形成、更にその周囲にテントウ虫を模した赤い装甲が展開される。

 だが、そこからイマージュドライバーにはない変化が発生する。

 赤い装甲の周囲に全身を覆うな鈍く光る黒い重厚な装甲が更に形成され、赤い装甲はドロリと溶け、赤いエネルギーの流体となって装甲の内部へと吸い込まれたのだ。

 

《フラッシュレディバグ! READY(レディ)! FLASH(フラッシュ)!》

 

 音声が鳴り響くとともに装甲が周囲を包むエネルギーごと温斗を覆い尽くす。

 黒いアンダースーツを覆い隠した鈍く輝く黒いパワードスーツは関節部を守るプロテクターは5つの丸穴が空き、中央に線が引かれたテントウ虫を模した形をしており、ゴツく強固な装甲の随所にもテントウ虫の星を模した丸いくぼみが装飾されていた。

 また、腕部の装甲は左右で異なっており、左腕のみ装甲の上に更にカバーの様な装甲に覆われており、昆虫を模した中央に2本の短い触覚を持つ頭部はアイバイザーが目元を覆い隠していた。

 装甲が完全に装着されると身体中の星、そしてエネルギーのラインを示すように赤く光を放ち、その光が頭部のアイバイザーに達するとアイバイザーがそしてその奥にあるアイレンズが赤く輝き、ここに新たな戦士が起動する。

 

「この姿の名は仮面ライダーレディッシュ……これなら不足はないだろう? ハァッ!」

「っ! それだけで調子に乗らないで貰いたいですね!」

 

 変身が完了した温斗改めレディッシュは右手に構えるイツツボシューターを発砲しながらピトフーイへと接近する。

 衝撃によって動きの止まっていたピトフーイであったが発砲音を聞くとハッと気付き、攻撃を回避しながら応戦する。

 

「くぅ……! 温斗さん、気をつけて! そのスコアノートの攻撃受けると体が動かなくなっちゃう……きゃっ!」

「何!? エリシアが動けないのはそのせいか……! 待っていてくれ、今助ける!」

「させるわけないでしょう!」

 

 エリシアの助言を聞いたレディッシュは受けようとしたピトフーイの翼撃を半歩下がることでギリギリのところで回避する。

 続けざまにエリシアを襲うライオンとオーストリッチへと狙いを付けようとするもピトフーイの翼がそれを許さない。

 連続で踊るようにふるわれる翼は攻撃の密度を増し、やがて回避しきれなかった一撃がレディッシュの装甲を掠め、火花を散らした。

 

「っ! このぉ!」

「くく、自棄になりましたか? それならば私の毒をもっと味あわせてあげますよ!」

 

 攻撃を受けたレディッシュは回避を諦め、逆に攻勢へ出る。

 厚い装甲のおかげでダメージは無い、だが、攻撃を受けた以上いつエリシアの様に動けなくなるかわからない。ならばこそ、その前に決着をつけるために攻撃の密度を上げたのだ。

 対するピトフーイはニヤリと笑みを浮かべ、余裕の表情でレディッシュの攻撃を捌き、翼で切り付けていく。

 イツツボシューターによる攻撃だけは油断できないにしても速度も膂力もエリシアを下回る彼の攻撃をかわすことは容易い……そのはずだった。

 

「たぁっ! ハァッ! ふっ!」

「(おかしい……なぜ、まだ動ける!? とっくに毒が回っているはずなのに……!)」

「ここだ……!」

「っ!?」

 

 何度も切り付け、そうでなくとも最初に投与した毒が回り動きを封じていてもおかしくない時間が経過した。

 だが、目の前の戦士は攻撃の速度も密度も落ちることはない。

 焦ったピトフーイの大ぶりの一撃、それを見逃さなかったレディッシュは攻撃を躱しイツツボシューターをピトフーイに押し当て、ためらうこと無く引き金を引く。

 放たれた光弾がピトフーイを吹き飛ばし苦悶の表情を浮かべるピトフーイを他所にレディッシュはエリシアへ向けて走り出す。

 

「お前たちも大人しくしていろ!」

「グルアッ!?」

「オォオオ!?」

 

 レディッシュの登場以降もエリシアをいたぶり続けていたライオンとオーストリッチの背中を狙撃、衝撃で動きを封じた後に勢いを乗せた回し蹴りで2体同時にうずくまるピトフーイの方へと弾き飛ばた。

 

「えいげ……エリシア。大丈夫かい?」

「私は大丈夫……とは言いにくいかも。それよりも温斗さん……じゃなかったレディッシュは大丈夫なの……?」

「えぇ。特にこれと言った異常は無いですね……理由はわかりませんが」

『それはだね!!!』

「うおっ!? 煌琉か!?」

 

 3体の異形から視線を外さず、エリシアへと話しかけるレディッシュの耳に煌琉の声が大音量で響く。

 エリシア同様、スーツに内蔵された通信機越しに大声で話しかけられビクリと体を震わせていた。

 

「少し声を抑えてくれ、煌琉。それで理由は?」

『あぁ、彼女(エリシア)の異常を調べた結果、ピトフーイの毒はエネルギーラインを伝いスコアプレートに蓄積、作用してその動きを鈍らせていた。だが! 君の装甲は切り付けられたくらいじゃ毒がエネルギーラインに達することはない! 装甲の上に装甲を纏う”オーバーコートシステム”を活用した賜物とというわけさ!』

「なるほどな……怪我の功名というわけだ」

 

 煌琉の回答に温斗は仮面の下で笑みを浮かべる。

 彼女(盈月)の使うものと同じシステムが稼働せず焦らされたあの時間が、そのために新たなシステムへの変更が今この有利な状況を生み出したその皮肉に笑みを浮かべずにはいられなかった。

 だが、戦いはまだ終わっていない。

 体勢を立て直したスコアノートたちがレディッシュとエリシアへと殺到する。

 

「オォオオオオ!」

『温斗! ホルダーの疑似プレートを左腕に装填しろ! 武器が手に入る!』

「助かる!」

 

 内蔵された通信機越しに煌琉(相棒)の声が響く。

 それに従い、左腕の装甲をスライド。現れたスロットへと腰のホルダーから取り出したカブトムシの描かれた疑似プレートを装填し、再度装甲をスライドさせる。

 

《ランスビートル! BUG SET(ヴァセット)!》

 

 音声が響くと同時に左腕にある赤く光る丸穴からエネルギーが吹き出し、左腕を覆うようなカブト虫の角を模した槍を形作るとそのまま凝結。

 そのまま長い首を活かして遠距離から攻撃してきたオーストリッチのくちばしを受け止める。

 ガキンッ!と甲高い音で拮抗する中、右手に構えるイツツボシューターでオーストリッチに発砲、隙を作るとランスでオーストリッチを弾き、そのまま迫るライオンを薙ぎ払う。

 

「グラァ!?」

「なるほど、これならば!」

「調子に……乗るな!」

 

 ダメージを受けるライオンの陰から低空を飛び迫ったピトフーイはその毒翼をレディッシュへと振るう。

 ランスで受け止めるも勢いの付いたその一撃にレディッシュは後退を余儀なくされる。

 ピトフーイは知る由もないが装甲に阻まれ毒の回らないレディッシュに毒を刻みつけるように何度も切り付け続ける。

 

「これなら! これだけ切りつければ! いい加減倒れろ! 跪け!」

「残念だが……お前の毒は効かない!」

「っ! そんなはず無い!」

 

 焦るピトフーイの攻撃はドンドン雑な物になっていた。

 そうなれば防戦回るレディッシュも回避とランスによる防御を織り交ぜながら隙を作り、反撃を放ちその攻撃を受けるたびに焦りが加速する悪循環。

 先程までの有利が消えたピトフーイだが彼女の転落はまだ終わらない。

 

SET(セット)! REQUIP(リクイップ)! フライトイーグル!》

「はあああ!」

「な……にぃ!?」

 

 響く音にそちらを見れば毒で苦しんでいたはずのエリシアが立ち上がり、番えた矢が放たれた瞬間を目にする。

 閃光の様に迫る矢を咄嗟に回避するもその隙をついたレディッシュのランスを打ち付けられ、弾き飛ばされる。

 毒が効かない2人目のライダーの登場に動けないはずのエリシアからの攻撃。

 肉体的なダメージ以上に焦りと疑問によりその精神がボロボロになっていた。

 

「ありがとう博士。プレートを変えただけなのにこんなに動けるなんて……」

『毒がプレートのみに蓄積してくれていて助かったよ……ドライバー自体への影響だったら今すぐに対処は難しかったからな」

「うん、でもこれでまた戦えるよ!」

『油断はするなよ。替えのプレートが無い以上、もう1度でも毒を受けたら今度こそ対処法は無い。それにエネルギー残量も少ないからリゾルブフィニッシュも禁止だ! 分かったか!』

「了解! レディッシュ、私サポート頑張ります!」

「よし、頼むよ。エリシア!」

 

 声をかけると同時に黒い戦士(レディッシュ)が駆け出し、白い戦士(エリシア)が蒼弓モードのツインラプターを構える。

 襲いかかるオーストリッチの強力な蹴りをランスで受け止め弾き、ピトフーイの毒翼を銃撃で牽制する。

 そして手が回りきらなくなった所へ迫ったライオンが爪を振り上げるがそれを咎めるようにエリシアの矢がライオンの腕に突き刺さりその動きを封じ、怯んだライオンにランスが振るわれる。

 手数の差によりレディッシュの被弾はゼロではない。だが、そのダメージを意に介さない果敢な攻め、そしてエリシアからの援護射撃はそれ以上のダメージと疲労をスコアノートたちへと刻んでいく。

 その現状を打破するために動いたのはライオンスコアノートだった。

 

「グゥウウウオオオオオオオオ!!」

「オォオオオオ!?」

「っ!? 私達が近くにいるでしょうバカが……!」

 

 エリシアの狙撃とレディッシュの銃撃、それが偶然にも同時となったその時、ライオンが今日一番の咆哮を上げる。

 それは衝撃波となり周囲の地面を砕きながら放たれた攻撃を弾き、近くにいたオーストリッチとピトフーイも少なくないダメージとともに吹き飛ばされる。

 当然、レディッシュも衝撃波の影響を受けるのだが吹き飛ばされない様に踏ん張り、正面から受け止める。

 

「今更……こんな程度で止まりはしない!」

 

 衝撃波を受け止めながらドライバー中央のボタンを連続で押し込み、ランスをライオンへと向けて構える。

 

READY FLASH(レディッシュ)! ランスビートル!》

 

 溢れ出したエネルギーが左腕のランスへと集約。

 大きく鋭く変化したランスを突き出し、一歩一歩速度を増しながらライオンへと温斗が進む。

 それに恐怖したライオンが更に叫びをあげようともすでに戦士の歩みを止めるには足りず、ついにランスが到達する。

 

RESOLVE(リゾルブ) FINISH(フィニッシュ)!》

「はああああああ!」

「グルアアアア!?」

 

 一際激しく赤い閃光を散らすランスはレディッシュの気合の叫びと共にライオンの雄叫びをかき消し、断末魔へと変えてその肉体を貫き爆散させる。

 しかし、レディッシュの動きはそこで止まらない。

 ランスを解除し、腕に挿入したビートルプレート、そしてホルダーから更に4枚、合計5枚の疑似プレートを取り出しそれをイツツボシューターへと装填していく。

 

《ランスビートル!》

《セイバースタッグ!》

《ウィングバタフライ!》

《サイスマンティス!》

《スプリングホッパー!》

FIVE(ファイブ) FLASH(フラッシュ)!》

 

 5枚の疑似プレートを装填したイツツボシューターがエネルギーをチャージし始め、銃口を倒れるオーストリッチとピトフーイへと向ける。

 5色の輝きが1つに収束、それを束ねるように赤い輝きに包まれ螺旋を描くように銃身へと集まっていく。

 

「っ……! く、くそ!」

 

 危険を感じたピトフーイが選んだ選択は反撃ではなく逃走。

 チャージ時間で射線から外れるために翼を広げ空へと飛び上がる。

 だが、空へ向かうピトフーイの更に上から翼へと矢が突き刺さる。

 

「行かせない! やぁ!」

「っ……! 私の邪魔をするな……! エリシアァァ!」

 

 ピトフーイの行動を読んだのか、先に翼を広げ空を舞っていたエリシアが続けざまにピトフーイへと矢を放つ。

 回避しきれなかったピトフーイは突き刺さった矢によるダメージにより空から地へと落ちてゆく。

 

RESOLVE(リゾルブ) BURST(バースト) FINISH(フィニッシュ)!》

 

 落ちゆくピトフーイへ向けて放たれる6色が渦巻く特大の閃光。

 その射線上にいたオーストリッチは為す術もなく飲み込まれ、勢いが落ちぬままピトフーイへと迫る。

 

『仮面ライダーは複数の形態、武装を有している。相性次第では格上とて呑む』

 

 脳内に反芻されるアリゲーターの言葉。

 眼前まで迫った自身を滅ぼす閃光とそれを放った戦士を思い浮かべながらピトフーイはその意味を噛み締め、閃光へと飲み込まれた。

 




第1話、読了ありがとうございます。
なんとか年内に更新できました。
来年はペースあげていければ良いなぁ!と思いながら頑張っていきたいと思いますので応援よろしくお願いします!
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