わりとピンチな出版社に勤めるしがない新米編集者なんですが「よし、取材に行くぞ」と言って怖いところに行きたがる件   作:SUN'S

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やはりベテラン漫画家の岸辺露伴は「君ってヤツは本当にッ」と静かに呆れ果てた。ちなみに新米編集者はその事に気付いていない

私の担当する作家さんは売れっ子だ。

 

ちょっと、ほんとにちょっとだけ性格の悪いところを除けばいい人なんだろうけど。私との相性は最悪と言っていいほど最悪だ。

 

彼の暮らす杜王町に出張するのは都会のゴチャゴチャとした嫌な気持ちを整理するための気分転換になるし。なにより美味しいイタリア料理店〈トラサルディー〉があるのだ。

 

そんなことを考えながら彼の指定した〈カフェ・ドゥ・マゴ〉に到着すると「おいおいおい。君ってヤツはこの前より2分早く(・・・・・・・・・)ついているじゃあないか?」と彼は言う。

 

別に早く到着するのは良いことではないだろうか?と思いつつ素直に謝罪する。だが、やっぱり良いことなのに私が謝るのは少しだけ不服だ。

 

「ふん、まあいいさ。新連載の話だったか?」

 

はい、そうです。

 

私は静かに珈琲を飲む彼の問い掛けに頷き、木製のラウンドテーブルに新連載のための〈題材〉と〈取材予定の場所〉で頻発している事件について纏めたレポートを並べて置く。

 

彼は二つの紙束を拾うと「随分と用意周到じゃあないか」と怪訝そうに私を見る。確かに、今回の新連載は当社の社運を懸けているそうなので。そう率直に伝えると「成る程、この僕に頼るわけだ」と言って彼は性悪い顔で笑う。

 

しかし、直ぐに顔を歪める。

 

「〈呪いの痣〉ァ~~ッ。なんとも古典的かつ面白みに欠ける噂だ。こんな胡散臭い噂の話を漫画にしろって言うのか、この岸辺露伴にッ!!」

 

そうなります。と、私は憤慨する彼の言葉を肯定するように頷き、ゆっくりとシャツの襟元を開いて真っ正面に座っている彼に首筋と鎖骨の真ん中にハッキリと浮かんでいる〈呪いの痣〉を見せる。

 

すると。さっきまで怒っていたのが嘘だったかのように私の顔とレポートを見比べている。二度、三度、その行為を繰り返した後、彼は静かに「ああ、分かった。この仕事は受けよう」と言った。

 

それは良かったです。

 

「ただし君も来るんだ!その〈呪いの痣〉の真実を解き明かしてやろうじゃあないか。…………それと女性が無闇に肌を晒すのは止めておきたまえ」

 

そりゃあそうだと納得し、私は彼の忠告を受け入れて襟元を正す。こいうときはタイトスカートやミニスカートのほうがいいんですか?と彼に聞けば「……セクハラで訴えるつもりか?」と睨まれた。

 

今のってセクハラになるのだろうか。そんなことを考えながら私は会計を済ませて、彼の座っていた席に向かうとファンに群がられていた。やっぱり売れっ子さんはすごいなあ……。

 

「……さて。それじゃあ行くとしようか。この噂を調査しているという〈九条館〉へ」

 

「いえ、その前にご飯を食べましょう」

 

「君ってヤツは本当にッ」

 

私の後ろで文句を言っている岸辺先生にどうしますか?と聞けば「…僕は鮑のリゾットだ」と仕方ないと言わんばかりに答えた。

 

なるほど、確かに杜王町は海辺近くに立地しているし。海鮮料理はベストな選択だと納得しながら私の乗ってきた特徴的なデザインの車(     パイクカー     )の〈パオ〉の助手席に座って貰う。

 

 

 




〈岸辺露伴〉

ベテラン漫画家。

どこかマイペースな新米編集者に呆れながら彼女の勤める出版社の社運を握っており、なにかと優位に行動することは可能である。だが、彼女の突拍子もない行動に興味は持っている。

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