ウチの庭にダンジョンがあります   作:ShilonkS

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131『低負荷高回転の筋トレは、純粋にメンタルにクる』

 

「いや、そりゃ先生みたいに筋肥大ってのを目的にしてれば、筋トレは太るとも言えるけどさぁ……」

 

 深夜のジム、荷物をしまってコートを脱いで、いつもの緑ジャージで準備万端になった美寧は、どこか疑うような目を秋水へと向けていた。

 秋水の方も懸垂を1セットで切り上げて、すでに準備万端である。

 筋トレは太る。

 この手の話題は女性に対して非常にデリケートなのは、秋水は身を以って知っている。特に最近はクラスメイトの女子2名のせいで。

 なので本来であればあまり口にしたくない話題ではあるのだが、美寧の筋トレをちゃんと見るのだと覚悟を決めた以上、避けて通れない話題なのだ。

 

「まあ、いつもとは方向性の違う筋トレ、というのを試してみるのは良いことですよ。いつもと違う刺激が入ると、筋肉は活発になりますから」

 

 落ち着き払ってそう言いながら、秋水はトレーニングマットを2枚持って来た。

 内心はちょっと緊張している。

 ジムの中で、ここはバーベルのあるパワーラックでも、懸垂スタンドでもトレーニングベンチのところではない。

 ストレッチや体操を行うスペースである。

 秋水は準備運動をいつもここで行うし、美寧もウォーミングアップとしてラジオ体操をやっている場所である。

 ダンベルはないし、特別なマシンもない。

 ただただ広く取られた場所でしかない。

 

「うーん……」

 

 美寧の前にトレーニングマットを敷くが、やはり美寧の視線は胡乱気なものであった。

 その視線を受けながら、秋水は頭の中でこれから教える筋トレメニューを再度思い返していた。

 自分の筋トレメニューではない。

 美寧の筋トレメニューだ。

 これは地味に、緊張する。

 秋水はトレーナーではなく、ただの一般人でしかない。

 教え合うような筋トレ仲間も、特にはいない。

 誰かの筋トレメニューを考えるというのは、実は初めてのことである。

 今までも確かに美寧に色々と教えてはいたものの、それは基本的に美寧がやりたいという筋トレのやり方を教えていただけに過ぎない。

 唯一の例外は、マシントレーニングをお勧めしたときだろうか。

 だが、あれは結局、筋トレメニューやトレーニングバランスなどは一切考慮せず、このジムの中にあるトレーニングマシンの使い方を一通りレクチャーしただけである。

 

「それでは美寧さん、確認ですがプッシュアップのやり方はご存じですか?」

 

「プッシュアップ、って言うと、えーっと……腕立て伏せのことだよね?」

 

「はい、腕立て伏せのやり方です」

 

「それくらいなら、そりゃもちろん」

 

 まずは自重トレーニング代表格、腕立て伏せである。プッシュアップとも言う。

 まあ、フォームの確認は大事だもんね、と美寧は言いながらトレーニングマットの端に座り、そのままうつ伏せになってから両手をマットについて上体を持ち上げ、続けて臀部も上げる。

 腕立て伏せの体勢だ。

 出来るかなあ、と少し難しい顔をしつつ、美寧はそのまま肘を曲げて体を沈み込ませていく。

 頭から腰、腰から尻、尻から足まで、それなりに一直線である。

 やや尻が上がっているが、頑張っている方だろう。

 ある程度体を沈ませてから、今度は両腕に力を入れ、ゆっくりと逆に持ち上げていく。

 完全に腕の力だ。

 そして、ある程度、だ。

 とりあえず腕立て伏せを一度終えた美寧は、最初の姿勢に戻ったまま数秒固まった。

 

「…………なるほど、できてない!」

 

 驚くことに自己申告である。なんと指摘のし甲斐がない。

 腕立て伏せのスタートポジションのまま、ばっと秋水を見るように振り向いた美寧の顔は、何故か驚きの表情であった。

 

「ちなみにですが、何ができていないかは分かりますか?」

 

「えっとね、これってあれだね、ベンチプレスの上下逆転バージョンだ。てことは、もっと胸を床に近づけなきゃいけないんだよね?」

 

「お見事です。腕立て伏せと言うと腕のトレーニングみたいな名前ですが、メインターゲットは大胸筋を中心とした胸の筋肉です。ですのでベンチプレスと同じく、可動域を大きくして下ろしたときにはしっかり胸にストレッチが掛かるようにしなければいけません」

 

「おっと、もしかしてだけど、腕立て伏せって難しい?」

 

「懸垂よりは簡単ですよ」

 

「つまり難しい、と」

 

 なるほど、と一度頷いてから、美寧は早速腕立て伏せの2回目をチャレンジする。相変わらずやる気は旺盛だ。

 再び肘を曲げ、胸をマットへと近づけていく。

 先程は肘の高さまでしか沈み込ませていなかったが、今度はしっかりとマットのすれすれまで胸を下ろす。

 

「ふ……っ、にっ!」

 

 そして力を入れ、今度は上体を持ち上げて胸をマットから離そうとする。

 ぷる、と軽く腕が震えた。

 力を込め、ぐっ、と上体を持ち上げる。

 と言うか、反らす。

 

「……ちなみに先生、お尻が前に出たり後ろに引けたりするのって、腕立て伏せじゃアリですか?」

 

「なしです。体は一直線に、が腕立て伏せの基本ですよ」

 

「これベンチプレスよりキツくない!?」

 

 それはそうだろう。

 声を掛けるまでもなく3回目にチャレンジし始めた美寧の言葉に、秋水は思わず頷いてしまった。

 自重トレーニングと馬鹿にするなかれ。

 初心者はむしろ、自重トレーニングの方がキツいのだ。

 

「お……もっ!?」

 

 今度は尻が上に上がってしまい負荷が逃げてしまった。

 難しかろう。そうであろう。

 腕立て伏せは、真面目なフォームでやろうとすれば、意外と難易度が高いのである。

 メインターゲットはベンチプレスと同じく胸の筋肉だが、腕を動かす関係上、当然肩と腕の筋肉にも刺激が入る。そしてベンチプレスではベンチへ押しつけて固定していた体幹も、自力で安定させる必要があるので腹も背中もきっちり使わなければならないのだ。

 適当にやればいくらでも手を抜けるが、真面目にやればやるだけキツい。それが腕立て伏せである。

 

「腕立て伏せの負荷は、一般的に自身の体重の7割程だと言われていますね」

 

「私の体重の70%……はっ!? 言わないからね!?」

 

「ご安心下さい。聞きませんから」

 

 まあ、仮に40㎏と超軽量級だと仮定したとしても、ベンチプレス換算28㎏になる。RM計算上では、それでも美寧の限界より上になってしまう。

 つまり無理では、と呟きながら、美寧は腕立て伏せの4回目に挑戦した。

 大胸筋を伸ばすようにしながら、その胸をマットまで近づける。ちょっとぷるぷるしているが、胸から足まではちゃんと一直線だ。

 そのまま今度は体を上げようとする。

 一瞬だけ胸が反りかけるも、それに気がついたのがすぐに修正される。

 

「に、いっ!」

 

 結構良いフォームだ。

 ぐぐっ、と腕に力を入れて、ぷるぷると小刻みに震えながらもゆっくりと体を持ち上げていく。

 肘の高さまで胸が上がれば、後は楽なものだ。最後は一気に体を持ち上げ、最初のフォームへと戻った。

 

「ぜぇ……はぁ、どうだった先生!?」

 

「素晴らしい、よく頑張りました」

 

「てことは、ふぅ、私ってもうちょいベンチプレス重量上げられる!?」

 

「ちなみにですが美寧さん、ベンチプレスの時に肩甲骨はどのような形で固定すべきかは覚えてらっしゃいますか?」

 

「そりゃあ……うああっ、できてなかったあっ!?」

 

 胸から足までは確かに一直線だった。ただし、体を上げるときに肩甲骨ががっつりと開き、脇も思いっきり開いてしまっているようであった。

 断末魔と共に美寧がべちゃりとトレーニングマットの上に崩れ落ちた。

 そんな美寧の隣に敷いたトレーニングマットに、今度は秋水が膝をついて腰を下ろす。

 

「では、そんな美寧さんに腕立て伏せのバリエーションを1つ」

 

 そう言いながら、秋水は腕立て伏せのスタートポジションを取った。

 ただ、美寧とは違い、足のつま先では支点をとらない。

 マットの上に膝をついたまま、下半身はその格好で腕立て伏せのスタートポジションである。

 

「え、なにそれ?」

 

「膝つきの腕立て伏せです。膝が床についている状態なので、お尻の位置が安定しますし、負荷もぐっと軽くなります。美寧さんもやってみましょう」

 

「あ、はい」

 

 続いて美寧も同じく膝つき腕立て伏せのスタートポジションを取った。

 その時点ですでに不思議そうな顔である。

 

「いや、力点まで近づくから軽くなるのは分かるし、姿勢保持も楽になるのは分かるけど……」

 

「はい、ではやってみましょう。それでは1回目」

 

「おおっと」

 

 美寧の言葉を聞き流しつつ、早速1回目の挑戦。

 秋水に促され、美寧は慌てて上体を沈み込ませる。

 胸をマットまで近づけ、そこで一時停止。

 胸から膝までは一直線か。大胸筋は伸びているか。肩甲骨の位置取りはどうか。脇は開きすぎていないか。

 美寧の様子を横目で確認してから、それでは起こして、と声を掛ければ、美寧は両腕に力を込めて体をぐいっと持ち上げる。

 通常の腕立て伏せから膝をつくことにより、トレーニング負荷はぐっと軽くなる。先程までは上手くできていなかった美寧も、膝つきの腕立て伏せは余裕でクリアできた。

 

「うん、OK、楽勝楽勝」

 

「いいですね、楽勝ですね」

 

「まあ、これくらいなら余裕だね」

 

 自分でも問題ないことは分かったのか、にぱっと秋水へ笑顔を向ける美寧に、秋水も同じく笑顔を返すことにした。

 にやり、と。

 何故だろう、美寧の表情が一瞬引き攣った。

 

 

 

「では、これを1セット40回、3セットやりましょうか」

 

 

 

「……40回!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく後、マットの上で美寧は打ち上げられた魚の如く息も絶え絶えになり、べちゃりとくたばっていた。

 

「ぜぇ、はぁ……ひぃ、ぜぇ……」

 

「頑張りましたね。34回、お見事です。1回が軽くできる筋トレでも、回数を多くするとキツくなるのはこれでご理解頂けたかと」

 

「ひぃ……ひぃ、ふぇ、ふぅ……き、きちく……ぜぇ……」

 

 お水はどうですか、と美寧の水筒を秋水はそっと差し出すものの、当の美寧はマットの上でうつ伏せになり、ちーん、となっている。腕すら上げられない様子だ。

 1セット目、美寧はなんと40回を根性でクリアした。凄いことである。

 しかし2セット目、最初の無理が反動で襲いかかってきたのか、30回を目前にリタイア。

 最後に3セット目、20回を超えた辺りですでに死にそうな顔になり、25回を超えた時点ですでにフォームは崩れ、30回で震えながらのスロートレーニングとなり、体を沈み込ませること35回目でそのままマットの上に崩れ落ちた。ナイスガッツだ。

 

「美寧さんの精神力には目を見張るものがありますね。素晴らしいです。よく頑張りました。大丈夫ですか?」

 

「ぜ、ふぅ、せ、先生には、これが大丈夫、けほっ……大丈夫そうに、見え、はぁ、見えるの?」

 

「疲労困憊のオールアウトを迎えたように見えますね」

 

「し、シバき倒したい……けほっ」

 

 ようやく少し話せるようになったのか、ぬ、と美寧は顔を上げるものの、息はまだ荒い。

 ようこそ、これが低負荷高回転の筋トレである。なかなかの地獄であろう。

 美寧の上げた顔の前に水筒をぽすりと置いてから、秋水はゆっくりと美寧の隣へと腰を下ろす。

 

「さて美寧さん、これからの美寧さんが行う筋トレの方向性について改めて説明します」

 

「ちょ、ちょっと待って……」

 

「ああ、そのままで大丈夫ですよ」

 

「そうは、はぁ、いかないって」

 

 撃沈している美寧の休憩中に説明を入れようとしたが、美寧はぐっと踏ん張って体を起こした。腕がぷるぷるしている。別に寝転がったままでも良かったのだが。

 マットの上に美寧もどかりと座り込み、もうちょいタイム、と断りを入れてから水筒の水をぐいっと呷る。

 

「ぷは……ふぅ、ごめん先生、私のメニューの話?」

 

「そうですね。美寧さん、軽い負荷で回数を多く行う筋トレは如何でしたか?」

 

「死ぬかと」

 

「そうでしたか。ちなみに、この低負荷高回転と呼ばれるタイプの筋トレを、美寧さんのメインメニューにしようと思っています」

 

 わぁお、と美寧が絶句した。

 

 筋肉をざっくり2種類に分類すると、『速筋』 と 『遅筋』 に分けることができる。

 

 速筋とは、持久力はないものの、瞬発力やパワーに優れた筋肉で、主に糖質をエネルギーとして消耗する筋肉である。Ⅰ型筋とも呼ばれる。

 一方で遅筋とは、瞬発力やパワーには劣るものの、持久力に秀でた筋肉で、糖の他に酸素や脂質をエネルギーにして動く筋肉である。Ⅱ型筋とも呼ばれる。

 魚の身の色と同じ分類であり、瞬発の白身、持久の赤身、である。

 速筋はとにかくパワー。鍛え方もパワー。筋肉に大きな負荷をかけ、できるだけ短時間にガンガンとトレーニングを行うことが大事となる。

 そして鍛えれば鍛えるだけ、筋肉は太く逞しく成長するのだ。

 

 そう、太くなるのだ。

 

 世の筋肉ムキムキのマッチョ共が、激しい筋トレで筋肉を育てる、と言うのは、この速筋を鍛えることにより太くしているのである。

 より重い重量で、より高い抵抗力で、そうやってトレーニングに励んでいる。

 秋水が行っている筋トレは正にこちら側、速筋を鍛える筋トレだ。

 そして残念ながら、高重量を扱いたがっていた美寧もまた、速筋を鍛える筋トレをしようとしていた。

 もちろん、男性と女性とではテストステロンと呼ばれるホルモンの分泌量がまるで違うので、流石に秋水のようにムキムキになるとは言えないのだが、美寧の行っていた筋トレは、基本的には太るための筋トレなのである。

 

 よって、美寧がすべき筋トレは、速筋のトレーニングではなく、遅筋のトレーニングとなる。

 

 遅筋は速筋とは逆に、鍛えても大きくなりにくい性質があるのだ。

 そして、その鍛え方も逆であり、ウォーキングなどの有酸素運動をはじめとして、時間をかけて軽い負荷をじわじわ与え、刺激を入れる回数をじっくりとこなしていくことによって鍛えることができる。

 脂肪を燃焼させて体を引き締め、スタイルを良くするのであれば、行うべきトレーニング方法は低負荷高回転が良いのだ。

 なにせ、美寧がジムに来ている理由は、綺麗なボディラインを目指すため、なのだから。

 

 

 

 確か、彼氏さんに見られても恥ずかしくないように、だったか。

 

 

 

「私のように高重量を10回くらいで行う筋トレは、基本的には筋肥大を目的にしていますからね。スタイルを良くするためでしたら、有酸素運動と低負荷高回転の筋トレをメインに据えましょう」

 

「まあ確かに、脚とか肩とか筋肉で太くなっちゃうのは問題かな……あれ、て言うか先生、私のスタイル方面気にしてくれてるんだぁ」

 

 色々と考えた結果として筋トレのメインメニューの変更を提案してみれば、意外とすんなり美寧は納得してくれた様子であった。

 重量を扱いたがっていただけに少しゴネるかと思ったのだが、どうやら考えすぎだったようである。

 代わりに何故か、にやぁ、としたからかうような笑みを美寧が浮かべる。

 

「ええ、まあ」

 

 なんと返して良いものか判断に迷いつつ、秋水は少しだけ言葉を濁した。

 美寧に最初に教えた筋トレはスクワットで、その後にボディラインを綺麗にする筋トレはないかと強請られたので、姿勢の矯正を中心としたトレーニングメニューをアドバイスしたのだ。出会った初日のことである。

 そのインパクトが強いものだから、頭の片隅にずっとあっただけなのだが、それは確かに気にしているとも言える。

 そんな美寧が高重量低回転の筋トレに突き進もうとしているのを見て、大丈夫なのかな、と今までは内心で思っていたのだ。

 まあ、美寧の良好なスタイルを見るに、そんな高重量低回転の筋トレをしたとて、即座に見た目に影響が出ることはないだろうとも思っていたのだが。

 

「ただ、今の美寧さんのスタイルですと……あ、いえ」

 

「ふぇ!?」

 

 そんな考えを馬鹿正直に口にしようとして、中途半端に言葉にしてから、秋水はそれを慌てて引っ込める。

 いや馬鹿か、ただのセクハラじゃねぇか。

 それにそもそも、秋水の知っている美寧の格好はジャージかコート姿しかなく、そのスタイルがハッキリ分かる姿を見たことがないので下手なことは言えない。

 いいや、下手なこと以前に言えるか馬鹿野郎。

 

「え、私の、え、あ」

 

「すみません、セクハラとかではなく、今の美寧さんのボディラインですと、トレーニングで今以上に綺麗にするのは難しく……あ、これもセクシャルな話題ですか……うーん」

 

「ぁぅ……綺麗……」

 

 謝罪に見せかけ失言を重ねてしまい、秋水はもごもごと言葉に詰まってしまう。

 マズい。

 ほら見ろ、いたずらっ子のように笑みを浮かべていた美寧の頬が朱に染まり、ジャージの裾をぎゅっと握って引っ張っている。申し訳ない、女性に対して恥ずかしい話題を振ってしまった。

 

「せ、先生から見たら、その……」

 

 秋水が言葉にまごついていると、美寧もまた言い辛そうに口を開いた。

 少し伏せた顔は赤く、ちらり、と秋水を上目遣いで見てくる。いやこれは、もしかして睨み上げられているのだろうか。だとしたら眼力が足りない気がする。

 

「今の私のスタイルって、良い感じ……?」

 

 どう答えろと。

 彼氏持ちの女性のスタイルに、他の男がどう言及しろと。

 良いスタイルですね、と言ったら純粋なるセクハラで、悪いスタイルですね、と言ったらただの言葉の凶器である。意趣返しの質問としたら殺傷能力が高すぎやしないだろうか。

 何かを期待するように見上げてくる美寧の目を見て、秋水の背中に脂汗が浮かぶ。

 

「よ……良いと思いますよ。とても女性らしいスタイルですし、美寧さんも美人ですから……」

 

 少し迷ってから、秋水は軽く揉み手をしながら答えることにした。

 いやー、彼氏さんが羨ましいですね、なんて持ち上げてみた方が良いだろうか。

 いや、流石にキモい、止めよう。

 と言うか、良いと思う、だけで言葉を止めて良かった気もする。ミスった。

 

「ふ、ふーん……」

 

 そんなセクハラ丸出しみたいな返答に、ぱっと美寧は顔を伏せてしまった。

 ヤバい、会話間違えた。

 気まずさを覚えつつ、あー、と秋水は天井を向いた。

 美寧の耳が真っ赤になっていたのを、見逃した。

 

 

 





 大前提として、秋水くんは美寧ちゃんに彼氏がいると思い込んでいます。最初に嘘つかれてるので。

 で、美寧ちゃん、それ忘れてる(・ω・`)
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