ウチの庭にダンジョンがあります   作:ShilonkS

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133『渡巻 律歌(わたりまき りつか)』

「そ、それじゃあ先生、おやすみなさーい!」

 

「はい、しっかり寝て下さいね」

 

 クールダウンのストレッチをしっかり行ってから、最後まで妙に機嫌が良さそうなまま美寧が大きく手を振りながらジムを後にした。

 ただいま丑三つ時を過ぎて午前3時。当然と言えば当然だが、美寧は帰ってから寝るのであろう。生活リズムが心配になってしまう女子高生である。

 睡眠5割、栄養3割、筋トレ2割、みたいな優先順位を考えると、しっかり寝ろというのは秋水の100%本心の言葉だ。

 もっとも、この時間にジムにいる秋水も同類だと思われているだろうことを考えると、あまり説得力はないかもしれないが。

 

「……ふぅ」

 

 ジムのドアが閉まってから、もう一度ぶんぶんと大きく手を振ってくる美寧に対し、ふりふりと小さく手を振って応えた後、秋水はゆっくり長く、ため息を静かに吐き出した。

 気疲れである。

 今までも何度か美寧には筋トレのやり方程度なら教えてきたのだが、今日は本格的にトレーナーの真似事をした。

 ただの筋トレを好きで行っているだけの一般人が他人様にものを教えるというのは、本来ならばタブーな行為だ。あれこれと教えた挙げ句、怪我や故障をさせてしまっては責任問題である。それが頭の片隅にあると、どうしても緊張してしまった。

 昔、筋トレを教えてくれた父も、これくらい気を張っていたのだろうか。そうかもしれない。

 

「教え方、ちゃんと勉強しとくか」

 

 ぐるりと肩を回してから、秋水は苦笑いをしつつ独り言ちる。

 美寧は、同志だ。

 筋トレをする同志である。

 下手な教え方なんぞして筋トレを苦手に思われたり、まして怪我や故障なんてさせるわけには絶対にいかない。

 やることは山積みだな、と思いつつぽりぽりと頭を掻いた。

 決して、嫌な気分はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、秋水としては軽く、余人から見ればみっちりハードに、ポーションありきのセット間休憩9割カット筋トレという頭のおかしなトレーニングを終わらせた。

 スクワットを4種類、ベンチプレスを3種類、デッドリフト系を3種類、というビッグ3祭りであった。秋水個人としてはバーベル担いでブルガリアンスクワットの記録更新ができたのが燃えた。ビッグ3ではないが、ミリタリープレスもそろそろ重量を引き上げられそうな感じがする。逆にインクラインベンチプレスが微妙な感じだったのが反省点。次は重量下げて回数を増やす基礎作りトレーニングにするとしよう。

 ノリノリで筋トレを終わらせ、ぽつりぽつりと他の筋トレ民が顔を出し始めたジムを後にしてダンジョンに、ではなく家へと帰る。

 そうして家へと辿り着き、風呂を沸かしてざぶんと浸かる。

 筋トレ後の風呂は最高である。

 激しいトレーニング後とは言えども、真冬の寒空の下を歩いて帰ってきて冷えてしまっている手足が、じんわりと温まる。

 軽く長い息を吐き出した。

 極楽だ、と言うのはジジ臭いだろうか。

 

「……ああ、そうだ、渡巻さんと会うんだったな」

 

 ふと、今日の予定を思い出す。

 今日はコンビニの新人凄腕アルバイター、渡巻さんと待ち合わせをしているのだ。

 建築や土木などの向けの工具や機材を取り扱っているという店を紹介してもらえるという話である。

 ありがたいことだ。

 店の位置だけ教えてくれたら十分なのだが、渡巻さんが一緒に来てくれるならばあれこれと教えてくれそうで非常に心強い。とても助かる。

 助かる、が。

 ふーむ、と秋水は一度唸った後、風呂のお湯を手で掬ってばしゃりと顔を洗う。

 

「汗臭かったら、流石に悪ぃよな……」

 

 性格がジジ臭いのは致し方ないとしても、体臭が汗臭いのは渡巻さんに対していくらなんでも申し分けなさすぎる。

 せっかく厚意で店まで案内してくれると言い出してくれた相手である。自分の外見が色々な意味で終わっているのは自覚しているし諦めているが、かと言って清潔感まで諦めるわけにはいかない。

 試しに自分の腕をくんくんと嗅いでみる。

 お湯の香りしかしない。

 自分の体臭というのは、残念なことに自分ではなかなか分からないものだと聞く。

 そして、マッチョは臭い、なんて話も聞く。

 もしかしたら今日の美寧だって、コイツ汗臭ぇな、と内心では思っていた可能性は大いにあり得る。懸垂直後は、思いっきり汗だくだったし。

 

「んー……」

 

 他人からの評価というのは努めて気にしないようにはしているが、かと言って他人を不快にさせる気はない。

 それなりに温まった体を、ざぼんと湯船から立ち上がって抜け出す。

 よし、体を洗おう。

 しっかり洗おう。

 幸いなことに秋水はバリカンで3mm程度に刈り上げた丸刈り頭である。頭のてっぺんから足の先までボディーソープでざっと洗えるお手軽スタイルだ。2度洗いくらいすれば、きっと汗臭さはとれるだろう。たぶん。

 高い背丈、悪い目付き、怖い顔、これらはどうにもできないけれど、せめて相手を不快にさせない程度に清潔を保つことはできるはずだ。たぶん。

 ボディータオルをお湯で濡らしてから、秋水は全身シャンプーのボディーソープをタオルにつけようとする。

 

「…………」

 

 秋水が愛用している全身シャンプーのボトルの隣の、違うボディーソープが目に映る。

 す、とそちらのボディーソープを手に取って、軽く持ち上げる。

 赤いパッケージ。

 薔薇が、なんとかかんとか。

 うるおいが、どうたらこうたら。

 

「……なんか違うんかね?」

 

 そのボディーソープを戻してから、秋水は改めてタオルにボディーソープをつけた。

 自分のボディーソープである。

 男性の臭い対策を謳ったボディーソープなので、とりあえず今ならこちらが適切だろう。

 まあ、2度洗いとかをするなら、香り付けとして赤いパッケージの方を使うのもアリかもしれない。

 と言うか、その方が良いだろう。

 使わなければ、なくならない。

 

 そのボディーソープを使うのは、秋水しかいないのだから。

 

 勝手に使いやがって、と怒る声は、もう聞けないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 丁寧に体を洗って、ダンジョンのセーフエリアで2時間ぐっすりと寝て起きれば、朝日はすっかり昇っていた。

 ただいま午前8時過ぎ。

 これぞセーフエリアの謎に贅沢なチート機能、睡眠時間の短縮だ。

 待ち合わせは10時。大分余裕がある。ダンジョン様々といったところだ。

 同じく真夜中にジムを利用している美寧は、当たり前だがダンジョンの恩恵は受けていないことを考えると、わりと真面目に生活リズムが心配になってしまう。

 軽く食事を摂ってから向かっても時間は大分余ってしまうな、と秋水は時計を見てから少し考える。

 まあ、下手にギリギリの時間に向かって相手を待たせてしまう方が問題外か。

 美寧の先生をしようと決めた以上、筋トレの教え方や美寧用の筋トレメニューの組み方を勉強しなければならないので、早く向かって待ち合わせであるコンビニで勉強して待つことにしよう。

 うん、と独りで頷いてから、秋水は体を解すように伸びをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてコンビニのイートインスペースで、秋水は頭を抱えていた。

 テーブルの上には、このコンビニで買ったばかりのノートが1冊。

 ノートを前にして頭を抱えるヤクザ顔負けの顔面凶器型大柄筋肉男。

 ビビって客が逃げるので、コンビニ側としては大迷惑極まりない客である。

 うーん、と秋水は軽く呟く。

 秋水視点での軽く、であり、端から聞けば地響きの如く超低音のドスが利いた唸り声である。迷惑だ。

 ノートにはいくつかの筋トレ種目の名前が並んでおり、その隣にはその筋トレがどこの筋肉を狙った物なのかを書き連ねてある。

 そして、種目名の上には、番号を書いたり消したりした跡が見られた。

 筋トレメニュー、考え中である。

 美寧の筋トレメニューを考えてみたのだが、それが結構難しいのだ。

 週に土日だけで、低負荷高回転の種目、時間の都合上で多くの種目数を行えない。

 そうなれば全身法で、それぞれの部位を満遍なく鍛えられるようにしたいのだが、それがなかなか上手くまとまらない。

 同じ部位を狙った種目を連続させるのは、疲労の関係から避けたい。しかしそうなると、何処かでコンパウンド種目ではなくアイソレーション種目を挟まねばならない。しかし時間制限がある。できれば多関節運動であるコンパウンド種目だけでメニューを組みたい。だがそうするとトレーニング部位に偏りが出る。しかし、美寧の弱点である背中に関しては多めに設定したい。

 色々考えてしまって思考がこんがらがりそうだ。

 

「他人のを考えるって、こんな難しいのか……」

 

 秋水は独り言ちった。

 大まかな流れこそは事前で決めているものの、自分の筋トレメニューはわりとノリで決めがちであり、筋肉の疲労度などと自分で相談しながら決めていた。

 なので、かっちりとしたメニューを組んだことがなかったのである。

 まあ、メニューの素案くらいだったらすぐに組めるだろう、なんて甘く見積もって考えてはじめたのだが、見事にドツボにはまってしまったようだ。まさかこんなに難しいとは。

 ノートから顔を上げて天井を見て、ついでに時間を確認した。

 10時の、だいたい20分前。

 随分と考え込んでしまったみたいである。

 そして、なんの結果も出せていない。

 これは宿題だな。

 そろそろ店外で待つことにしようと、秋水はノートをリュックサックの中に詰め込んで店を出ることにする。

 

「あ、ありがとうございましたー……」

 

 少々腰が引けた店員の声が背後で聞こえ、声がしたその方向へちらりと顔を向けた。

 昨日、渡巻さんと一緒に店を回していた店員である。少し表情が引き攣っている。

 どうも、と秋水は軽く会釈をしてコンビニから外に出る。

 空気はひんやりと冷たい。

 夜は雪がちらついていたのだが、今はすっかり晴れている。

 晴れてはいるが、日差しはまるで暖かくない。

 もう少し待つか、と秋水は駐車場を歩いて看板の近くまで近づいて。

 

 

 

「へーい! 棟区くーん!」

 

 

 

 なんか聞こえた。

 歩いたその格好で、ぴたりと秋水は固まってしまう。

 なんだか、聞き覚えのある声が、した。

 幻聴だろうか。

 

「やっほーなんだよ、このどこかだけはハッキリしてる馬の骨ー!」

 

 幻聴ではないようだ。

 そして思いっきり罵声のようだ。誰が馬の骨か。

 聞き覚えのあるその声は、具体的には学校のクラスでよく聞く声であった。

 幻聴であってほしかった。

 その声がした方へ、ゆっくりと秋水は顔を向けた。

 

「おハローございますなんだよ、今日は晴れて清々しい天気だね棟区くん。だけど私の心は怒りに燃えてぷんぷんモードの紗綾音ちゃんだよ!」

 

「……おはようございます、渡巻さん」

 

 振り向いた先にいたのは、秋水のクラスの人気者・兼・ペット枠、渡巻 紗綾音であった。

 なんでここに居るのか。

 もこりとした青いニット帽子に、これまた青いダッフルコート。手袋まで揃えた色の全身青コーデという毛並みになったチワワ、ではなく紗綾音はぶんぶんと手を振りながら、にこにこの笑顔で秋水へとてとてとと小走りで駆け寄ってきている。

 笑顔である。

 

 ただ、何故だろう、目が笑ってない。

 

 凄みと言うか、圧と言うか、まさかの言葉通りに怒りを滲ませている紗綾音が、とん、と着地するように秋水の目の前でブレーキを掛ける。

 そして、右腕を振り抜いた。

 

「このやろー、お姉ちゃんをたらぶかしやがってー!」

 

 ぺちり、と秋水の胸に向かってストレートパンチである。

 パンチ、で良いのだろうか。

 マッサージにもならない威力で逆に驚いてしまうのは、3学期の始業式でも味わった気がする。

 

「おはようございます。たらぶかし、ではなく、たぶらかし、ですよ渡巻さん」

 

「改めておはようなんだよ棟区くん! ちょっとモヤモヤが収まんないからもう1発、えい!」

 

 さらに追加で怒りのパンチ。

 手加減をしている、のは間違いないのだろうが、そもそもがあまりに非力である。胸を狙ってきているのは丸わかりだったので、試しに大胸筋に力を入れて固めてみれば、ぽす、と情けない威力の拳がいとも簡単に弾かれてしまう。なにがしたいのだろうか。

 簡単に防御されてしまい、逆に 「いたーい」 とか泣き言を漏らす狂犬チワワに、秋水は首を捻った。

 出会い頭に連続パンチ。

 はて、紗綾音はそんなに暴力的な人ではないと思っていたのだが、どうしたのだろうか、明らかに機嫌が悪そうだ。

 

「えーっと、渡巻さん、一応暴力は―――」

 

 

 

「な、な、なにやってるの紗綾音!?」

 

 

 

 そんな紗綾音を窘めようと声を掛けたのをかき消すように、焦ったような声が響いた。

 聞き覚えのある声だ。

 紗綾音ではない。

 その声に反応するように秋水は言葉を切り、自然とそちらへ顔を向けようとした。

 そして何故か、その秋水の陰に隠れるように、紗綾音がぱっと秋水の脇腹へとしがみついた。

 

「やっばい、昨日からお姉ちゃんが情緒不安定継続中で助けて棟区くん」

 

「はい?」

 

 お姉ちゃん?

 なんて?

 しがみついてきた紗綾音の戯けるようなその言葉に、明らかに聞き逃せないワードが混ざっていたせいで秋水は向けかけていた顔をぐるりと紗綾音の方へと戻した。

 視線が近距離で噛み合った。

 にやり、と笑う紗綾音の表情。まるで、してやったり、といった顔だ。

 どうしよう、シバきたい。

 

「さや、紗綾音、はぁ……ちょ、ちょっと、はぁ、はぁ、暴力……」

 

 とりあえずチワワの顔面を鷲掴みにでもしてやろうかと思っている間に、もう1人の声の主が秋水の近くまで来ていた。

 なんか、息も絶え絶えである。

 改めてそちらへと顔を向ければ、小柄な女性が小走りで駆け寄ってきている。

 びっくりするくらいフラフラしながら。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、ふぇ、はぁ……」

 

「いやお姉ちゃん、体力なさ過ぎてJ・R・R・トールキンが真顔になるレベル」

 

「指輪、はぁ、もの、ふぇ、ふ、ものがたり、はぁ……」

 

 へろへろになりながらも秋水の下まで辿り着いたその人は、膝に手をついて息を切らしながらも、紗綾音の言葉にツッコミを入れようとしている。もはや普段の関係性が垣間見える。

 いや、関係性。

 関係性か。

 紗綾音よりも深く青い、落ち着いた色のダッフルコートとニット帽を被ったその小柄な女性は、本日の待ち合わせ相手である渡巻さんであった。

 その渡巻さんは何度か深呼吸をした後、ふにゃあ、と変な掛け声と共に紗綾音にタックルを仕掛け、秋水の物陰に隠れていた紗綾音を強引に引き剥がしてくれた。

 おお、ナイスだ。

 そして手慣れている。

 

「暴力なんて駄目だよ紗綾音! そんなのお姉ちゃんが許しません!」

 

 そして、渡巻さんはぴしゃりと厳しい口調、いや声が可愛いのであまり厳しくは聞こえないのが悲しいが、しっかりした口調で紗綾音を叱りつける。直前のタックルは暴力の一種ではなかろうか。

 しかし、お姉ちゃん、か。

 なるほど、そういう関係性。

 すぅ、と深呼吸しながら、秋水は天を仰ぎ見た。青空が綺麗である。

 

「えー、じゃれてるだけだよー。愛情表現だよー。本気でぱちこーんっ、なんてしないって」

 

「それは叩いてる側の理屈! どんな理由があったって叩かれるのは悲しいんだからね! 謝りなさい!」

 

「ぶー。でも今回は、棟区くんの方に非が……」

 

「そんなものはありません! 暴力に正当な理由なんてないんだからね!」

 

「まさかの真っ正面の真っ向唐竹割りで正当防衛全否定」

 

 コンビニの店員として秋水を相手にするときとは違い、若干砕けた口調で、しかしはっきりと叱りつける渡巻さんの姿は、確かに教育熱心の姉である。

 ああ、そうか、そう言えば、紗綾音には姉がいるとかなんとかという話は聞いた。

 確か、男子との距離感というやつを教え込んでくれたのは姉、みたいな話だった。

 そして、渡巻さんに妹がいるという話も聞いた。

 確か、身長はとっくに妹に追い越されてしまっているとかなんとか。

 なるほど。

 なるほどなあ。

 

「むーん、棟区くん、ごめ」

 

「申し訳ありませんでした棟区さん! お怪我はありませんでしたか!?」

 

「謝れって言ったわりにはなんで謝罪潰しにかかるのかな!?」

 

 呼ばれて下を見てみれば、渡巻さんがぺこぺこと頭を下げていた。

 いや、あんなボディタッチレベルのパンチで怪我をする方が無理難題な気がする。

 そんな必死に謝っている渡巻さんの脇腹を、不満そうに紗綾音がもこもこと揉みしだいていた。どういう意思表示なのだろうか。

 えーと、と戸惑いながら、秋水は慌てて返事をすることにした。

 

「いえ、怪我はありませんが……ああ、とりあえず、おはようございます、渡巻さん」

 

「あ、はい、おは」

 

「何度目かのおはようございますだね棟区くん! やっほー、どーもー、私だって渡巻でーす☆」

 

 うぜぇ。

 紗綾音の方へと一歩近づき、お前には言ってないんだよと紗綾音の頭を帽子ごとぐりぐりと乱雑に撫で回す。

 

「わー、やーめーろー!」

 

 撫で繰り回された紗綾音はポコポコと秋水の腕をシバいてくるが、言葉自体には笑いが含まれている感じであった。

 その様子を、ぎょっとしたように渡巻さんが見る。

 しまった、お姉さんの前だった。

 いつもの調子で紗綾音を黙らせたものの、渡巻さんの表情を確認してから秋水はぱっと紗綾音の帽子から手を離す。

 クシ持ってきて正解ー、と愚痴りながら帽子を直す紗綾音の方を、じっと渡巻さんは見てから、ゆっくりと秋水の顔を見上げた。

 なんだろうか、戸惑っているような、怒っているような、安心しているような、何とも言えない複雑な表情をしていた。

 そんな表情で数秒程秋水を見上げてから、渡巻さんはニット帽をとり、ぺこりと頭を下げるのだった。

 

 

 

「改めまして、紗綾音がいつもご迷惑をおかけしています、紗綾音の姉の、渡巻 律歌(わたりまき りつか)と申します」

 

 

 





 はい、明確なるお邪魔虫(;´・ω・`)

 第6話、という秋水くんを除いたら他の誰よりも早く登場しておきながらも、今までサブタイトルにすら上がってきませんでしたが、ようやく秋水くんに名前が認識されました。良かったですね。

 JRRトールキンの指輪物語は古臭さのない面白さがありますが、日本語訳をする人の技量が直で反映されるというデメリットがですね……(´゚ω゚`)
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