「おはようござ―――」
「おはようなんだよ棟区くん!」
静かに教室のドアを開け、そこに足を踏み入れたと同時に襲い掛かってきた明るい声に、秋水は踏み入れた足を一歩引きながらゆっくりとドアを閉めた。
気が重たい月曜日。
憂鬱な今日のゴングが鳴らされたとともに放たれた、先制パンチで鼓膜が痛い。
秋水は眼球マッサージでもするように、閉じた瞼をもみもみと軽く揉む。
しかし現実は、秋水の目の前でガラリと第2ラウンドの音を鳴らす。
「なーんーでー閉ーめーたーかーなー?」
閉めたはずのドアを開いたのは、クラスのチワワ、もといマスコット、渡巻 紗綾音であった。
口端を引き攣らせながらも圧を感じる笑顔を浮かべる紗綾音を見下ろしてから、秋水は2回目の溜息を吐きながら、ぽすり、とその頭へ右手を乗せる。
「おはようございます、紗綾音さん」
「うん、おはようなんだよ、棟区くん!」
ぐりぐりと撫で繰りながらの挨拶に、にぱっと笑顔で片手を上げながら、紗綾音は元気に挨拶を返してくる。
あれ。
いつものような 「やめろー」 というような反応ではない。
「ちょいや」
反応が違うな、と秋水が首を傾げるよりワンテンポ早く、紗綾音が気の抜けるような掛け声と共に素早く動いた。
頭を撫でるために前に出した右腕の、その脇の下へと、ずぼ、と紗綾音が挨拶のために上げた左手を突っ込んできたのである。
セクハラだろうか。
そして突っ込むや否や、その手をわきわきと動かし始める。
え、キモい。
「こちょこちょこちょ」
「……平熱ですね」
「効かない!? くすぐり耐性100%だこいつ!?」
いきなり脇の下をくすぐってきた紗綾音の額に、撫でてていたその手をそっと当てて熱を測る。
たぶん、平熱だ。
衣類の上とは言えども、異性の脇の下に手を突っ込むとか、高熱で頭がやられてなければ普通しでかさないと思うのだが。まさか、熱関係なく頭がやられていると言うのだろうか。それは納得だ。
残念な頭なのか、と秋水は若干哀れむような目をしながら紗綾音の頭を再びぐりぐりと撫でておく。
それはどうでも良いとして、早く教室に入りたいのだが。
「むーん、納得いかないんだよー」
頭を撫でられながらも、今度は脇腹を両手でもみもみとしてくる紗綾音を見下ろしてから、秋水はふと気になって教室内に掲げられている時計へと視線を移す。
秋水の登校時間は、いつもとだいたい同じくらいだ。
それはそうだろう。ダンジョンでは時間いっぱいまで地下2階で角ウサギを狩りまくり、地下3階でコボルトとのタイマンをし続け、セーフエリアで2時間程寝て起きたら、いつもの時間だったのだ。
そこから身支度を調えて朝食を食べ、鎬からのメッセージを既読無視して登校してきた。
いつも通りの時間だ。
そして、いつも通りの時間ならば、紗綾音の登校時間はもっと後である。
秋水が登校してきたことにより重苦しい雰囲気になった教室で、明るい挨拶と共に入室してくるのがいつものパターンであった。
今日は登校が早いのだな。
それはともかく、早く教室に入りたいんだがなこのチワワ。
「棟区くんは、もっとににこやかスマイルちゃんを浮かべるべきだよ」
「……ふ」
「いや、そーゆーのは違うんじゃないかな? あらざわうって言うんじゃないかな?」
「嘲笑う、ですね。廊下は寒いので教室に入りましょう。女性が体を冷やしてはいけません。脂肪は天然の保冷剤なのですから紗綾音さんは気をつけて下さい」
「心配するか喧嘩売るかどっちかにしやがろうねこのやろー!」
紗綾音を横に避けながら、ようやく教室に足を踏み入れて、秋水はほっと一息ついて着ていたコートを脱ぎ始める。
教室には暖房がついており、他の生徒にとっては暖かいくらいの温度設定になってはいるが、秋水にとっては若干暑く感じる室温である。筋肉量の多いマッチョ共の共通の悩み、暑がり、というやつだ。
正直、廊下の方が涼しくて過ごしやすい気がするな、と思いながらコートを脱いだ秋水の背中に、ぽて、と軽い衝撃。
いや、衝撃だろうか。
なんか、軽く押された。
「えい、えい、誰がお腹周りがお脂肪ポリマーだこのー」
「ああ、申し訳ありません、もう少し小円筋から菱形筋の辺りをマッサージしていただけると」
「それどこ!? アンド、マッサージじゃなくてパンチだこいつー!」
最近この子暴力的だなぁ、と軽く考えつつ、ぽて、ぽす、ぽこ、と背中を叩打法でマッサージをしてくれるチワワを引き連れながら、秋水は自分の席へと移動する。
その途中、最近はよく喋るようになったクラスメイト、日比野 道と女子生徒2人が、うわぁ、みたいな目で秋水の方を見ていた。
「お、おはよう、棟区さん」
「おはようございます、日比野さん」
少し戸惑ったように、もしくは若干引き気味に、日比野が挨拶をしてくれたので、秋水はぺこりと頭を下げて挨拶を返す。
秋水が頭を下げたのを見てから、日比野と喋っていたであろう女子生徒が、ども、おはよう、と小さいと共に慌てて頭を下げてくる。逃げられなくなっただけマシと考えるべきか、クラスの雰囲気として逆に逃げられなくなってしまったのが申し訳ないと思うべきか、気持ちとしては半々だ。
ぺち、ぺた、ぺと、と背中のマッサージは続いている。
拳が痛くなったのだろうか、グーではなくパーで叩かれている。
その様子を見ながら、半ば呆れたように日比野が秋水を見上げた。
「なんて言うか、仲良いよね、君ら……」
「仲良しこよしの山椒の木。今日は1日、棟区くんをストーキング観察するしょーぞーんだよ!」
「日比野さん、竜泉寺さんはまだ登校されていないのでしょうか?」
「なんで早々にサヨチに引き渡そうとしているのかな棟区くん!?」
正々堂々ストーカーする宣言をぶちかますこのチワワを預けようと、教室内では頼れる飼い主である沙夜の姿を探してみるが、残念なことにまだ登校してきていない様子である。
いつもなら秋水が登校するよりも早く教室にいるイメージがあったのだが、今日は紗綾音と立場が逆転しているみたいだ。早いところこの小型狂犬を引き取って頂きたい。
叩くのに疲れてきたのか、爪研ぎでもするかの要領で紗綾音は秋水の背中をカリカリとしている。最近、本当にペット化してないだろうかこの子。
「日比野さん」
「ごめん、ちょっと遠慮しようかな」
「まだなにも申し上げておりませんが」
「いやー、引き取ってくれって言うだろうなー、ってなんか想像つくようになっちゃった」
「正解です。そして残念です」
駄目元で日比野に紗綾音を押しつけてみようとしてみたが、交渉前に断られてしまった。
本当に残念です、と軽く溜息をつくと、日比野は苦笑いで返してくる。クラスメイトとこのような会話を交わすことになろうとは、先月までは想像もできなかった光景だ。
そう、先月までは。
鎬からのメッセージが、脳裏を一瞬だけちらついた。
すぐに、蓋をする。
彼のことは、どうでもいいことだ。
刑が決まろうがなんだろうが、どうせ。
「む、棟区くんは―――」
「ん?」
「うっ……」
と、日比野と喋っていただろう女子のうちの片割れが、秋水の名を呼んだ。
それを耳にした秋水がちらりとそちらへ目を向けると、視線がばっちり合ってしまい、思いっきり怯まれる。
しまった。
クラスメイトの数人とは会話をするようになったが、この人は初だ。
遠巻きに秋水を見て、怖がっているタイプの人だ。
名前は、確か、えっと。
「大丈夫だよノンノ!」
僅かに止まった会話の流れを縫うように、秋水の背中からひょこりと顔を出しながら紗綾音がその女子生徒を呼んだ。
ノンノ。
そう言えば確か、紗綾音などからはそう呼ばれている子だ。
だが駄目だ、ノンノと呼ばれていることは思い出せても、肝心の名前の方が思い出せない。このニックネームは名字から派生しているのか、それとも名前から派生しているのか、さてどっちだ。
これが1年近く同じ教室で過ごしていたはずの、秋水の記憶力である。
「棟区くんは元々目つきがヤバいから睨んでないし、元々声がヤバいから威嚇もしてないよ! しっかり躾の行き届いたサーベルタイガーみたいなもんだよ!」
「日比野さん、この犬科が私を絶滅した猫科に例えてくるんです」
「君らって打ち合わせしてないんだよね? 台本なしでそんだけ喋ってるんだよね?」
フォローしているのだかトドメを狙いにきているのだか分からない紗綾音の言葉に、言外に助けてくれという色を込めながら秋水は日比野へ訴えかけるも、何故か日比野は心底不思議そうに首を傾げている。助けてくれ。
えっと、えっと、とノンノと呼ばれている子は困ったように紗綾音と秋水の顔を何度か見比べてから、ふ、と何故か安心したかのような笑みが小さく浮かんだ。
「棟区くんって、紗綾音がウザい絡み方しても、怒らないなー、と、思って、えと、うん……ごめんなさい」
そして秋水の顔を見上げ、ノンノという子が喋るも、目が合えばやはり視線は横に逃げ、段々と言葉が尻すぼみになっていく。
睨んでいるわけではないのだ。申し訳ない。
ノンノがもう1人の女子生徒へと1歩だけ近寄り、その女子生徒は心配そうにノンノと秋水を見比べる。別にそんな発言くらいで気分を害したりはしないのだが、気分を害したら何をしでかすか分からないような外見をしているのは自覚しているので、重ねて申し訳ない気持ちになる。
ちなみに紗綾音は、え、ウザくないよね、と確認を取るように日比野へと顔を向け、日比野はそれから逃れるように顔を背けている。助けてくれ。
ふむ、と秋水は鼻を鳴らしかける。
鳴らしかけたが、それだけでも怯えさせてしまうかもしれないと思い、急遽飲み込む。
紗綾音に絡まれて怒らないのが不思議とのことだが、これは何と返事をしたものか。
そもそも、仮に秋水が怒ったとしたら、それは周りが大迷惑を被ることが確定してしまう。
普通、誰かが怒鳴り散らかしたりしたら、場の雰囲気は悪くなるだろう。しばらくは気を使うことにもなるだろう。
秋水の場合はそれにプラスして、絵に描いたような暴力上等ヴィラン役みたいな外見だ。怒りに任せた行動なんてしたら、周りはより一層の恐怖を感じることであろう。場合によってはそれだけで子供が泣くかもしれない。
故に、秋水は怒りを表面に出すわけにはいかない。
と言うより、どんな感情であろうと、秋水はそれを表面に出すべきではない。
経験上、どの感情を表に出しても、怖がられるからだ。
実際には紗綾音に絡まれて、ウザいなー、とか、めんどくせー、とかはしょっちゅう思っている。いや、9割くらいで感じているかもしれない。
しかし、それをそのままぶつけては、誰も得をしないと、秋水は知っている、経験上。
だから、生の感情というのは、表に出せない。
怖い思いをさせるのは、本意ではないからだ。
「……怒りはしませんが、困ってはいますよ」
「ふっ、手のかかる子ほど可愛い、ってね!」
「ぐりぐり」
「やーめーろー」
とりあえず、ノンノにはいきなり怒り出したりはしないというニュアンスだけ伝えようとしたが、何故か背後から顔を出している紗綾音がドヤ顔で会話に乗っかってくる。
その紗綾音の頭を振り向きながら、いつものようにぐりぐりと撫で繰り回せば、いつものように撫でる腕をぽこぽこしてきた。
ああ。
やっぱり似てるな。
嫌な感じだ。
「……ふふっ、なんか紗綾音が妹みたい」
ぴた、と秋水の手が止まる。
ノンノ、ではない。
もう1人の女子だ。
頭を撫でる秋水の様子を見て、噴き出すように軽く笑いながら、そんな軽口が漏れ出した。
妹みたい。
冗談じゃない。
思わず止まってしまった手に、紗綾音はぽこぽこ腕を叩いてくるのを止め、一瞬だけ秋水の顔を見上げた。
およ? と不思議そうな顔をしているものの、何故かその瞳は、こちらを見透かそうとするようである。
しかし、それは実に一瞬であり、紗綾音はすぐに声の主の方へと顔を向けた。
何故かドヤ顔で。
「ふふん、溢れ出る棟区くんのお兄ちゃんパワーに、私の妹パワーが反応しているんだよ!」
やめてくれ。
いつもの軽口で、そして冗談交じりで、紗綾音はふんすと胸を張る。その頭には秋水の手が乗っかったままだ。
なにそのパワー、とノンノの方が毒気が抜けたように笑った。
「……あれ、もしかして棟区さんって、弟か妹がいる感じなの?」
やめてくれ。
紗綾音の言葉に一瞬だけ考え込んだ日比野が、当然の質問を飛ばしてくる。
「そうだよ! 棟区くんはね、こう見えても可愛い妹ちゃんがいてね。そうだ、妹ちゃんの写真ってさ―――」
やめてくれ。
秋水は答えるよりも早く、にぱっと笑顔で紗綾音が昨日聞いたばかりのその話を切り出しながら、秋水の方へと再び目を向けた。
可愛いとか。
そもそもテメェ、妹の顔も知らねぇだろうが。
紗綾音と目が合った。
頭に手を置いた、その秋水の手を境として、目が合った。
「―――あれ、棟区くんって今来たばっかりだよね? お手々ぽかぽかのぽっかりさんだ」
急に、話題が逸れた。
え、と3人の声が上がる。
日比野と、ノンノと、名前が未だに思い出せないもう1人の女子生徒。
その疑問の声が上がるのが先か、紗綾音が頭に置かれた秋水の手を押し退けるようにして、ぼすり、と秋水の背中へとタックルを仕掛ける。
軽い衝撃。
女性に向かって重いという言葉を使うわけにはいかないので、心の底ではどう思っていても、軽い衝撃、という表現をしておけば問題ないだろう。
そして軽い衝撃と共に、タックルをしてきた紗綾音がむんぎゅと秋水の腹へと腕を回してきた。
柔らかい感触。
抱きつかれた。
女の子に後ろから抱きつかれてドキリとしそうな場面だが、秋水の脳裏には 「バックドロップ」 という物騒なプロレスの技名しか浮かんでこなかった。
何やってんだこいつ。
姉の律歌から、男子にはボディタッチをするなと教え込まれているんじゃなかったのか。
今度は秋水の方が毒気を抜かれたように胡乱な視線を紗綾音に向け、同時に女子2名が盛大に顔を引き攣らせた。
「ちょ、紗綾音!?」
「いや、温かい! あったかポカポカ湯たんぽ状態だよ棟区くん! お熱あるんじゃないかな!?」
慌てる女子2名の呼びかけを遮るようにして、背中の感触的にがばりと紗綾音が顔を上げる。
と言うかこのチワワ、人の背中に顔を埋めるんじゃない。真冬とは言えども、コートを着て歩いてきたのだから、若干汗ばんでいたはずだ。汗臭くないだろうか。大丈夫か。
思いっきり抱きつかれている現体勢がヤバい体勢だと改めて気がついて、秋水はじんわりと背中に冷や汗が浮かんでしまう。
まずい、より一層汗臭くなってしまう。
ではなく。
熱が高いという心配をされているのか。風邪と疑われている感じのようだ。
違う違う、違うのだ。
マッチョの体温は高いのが標準なのだ。
「あのですね、哺乳類は恒温動物ですから、熱がなければ死んでいるのですよ?」
「お決まりみたいなボケ! やっぱり秋水くんはボケキャラなんだよ!」
「まあ、真面目に答えますと、筋肉が多い人は基礎代謝量が高くなりますので、平熱が高くなってしまうのですよ。私も平熱は7度前半です」
「37度!? それって私だと、普通にお熱でくらりんこしてるんだけど……」
そうである。
筋肉とは熱を生産する器官の1つである。
筋力量が多くなると、平均体温が高くなってしまうのは自然なことなのだ。
秋水はムキムキゴツゴツの体型が体型であるが故に、平熱が一般人の微熱並みに高いのである。
体温を測って風邪を疑われるのはよくあることなので、秋水は慣れた調子でボケ混じりに紗綾音へと説明しておく。
「ところで棟区くん、いつまで鞄持ってるのかな?」
続けてさらに話が変わる。
急だな、と思うこと半分、誰のせいだよ、と思うこと半分。
「私も置きに行きたいのですが……」
「よし、じゃあ行こうか。日比野くんにノンノにサロちゃんまたねー」
席に行かせてくれと素直に伝えれば、秋水はようやく釈放されることとなった。最初から言っておけば良かったのか。
紗綾音がぱたぱたと秋水の腹の前で小さく手を振って解散となったのを見てから、秋水は一歩踏み出す。
ずり、と紗綾音が引き摺られる。
紗綾音は何故か、背後に抱きついたままだった。
「あの、離れていただけると……」
「これは良い湯たんぽだー」
「離れて……」
「寒いときは棟区くんにくっつけばいいのかー」
「…………」
一歩踏み出す。
ずり、と紗綾音が引き摺られる。
もう一歩踏み出す。
さらに紗綾音が引き摺られる。
ええい、鬱陶しい。そして歩きづらい。
人の背中で暖をとり始めたチワワを一歩一歩引き摺りながら、秋水は日比野へと軽く手を振ってから自分の席まで移動をした。
「……こびりついてるご飯粒。洗っても取れなさそう」
「ぶっ!」
「く―――っ」
背後でサロちゃんと呼ばれた子が呟いて、ノンノは盛大に噴き出し、日比野がどうにか笑いを堪えたのが聞こえる。おいチワワ、穀物にまで格下げされてるんだが。
どうにか自分の席にまで辿り着いた秋水は、本日何回目かの軽い溜息を吐きながら席へと鞄を下ろす。
ランジウォークをした気分だ。大臀筋とハムストリングスに効きそうだ。
それから椅子へと腰を下ろすと、背中にへばりついていた紗綾音は背もたれに当たらないよう、抱きつく位置がもそもそも這い上がってくる。
と言うか、うん。
最終的に、肩に抱きつかれている感じになってしまった。
紗綾音は背後から肩へとべったり抱きつき、なんならば顎を秋水の肩に乗せてくる。
なんだこの体勢。
今から首でも絞められるのだろうか。
「ときに、棟区くんや」
そんな絞め落とされる恐れにドキドキしていると、耳元でそっと紗綾音が囁いた。
小さい声だ。
いつもの、大きく、元気よく、という声量ではない。
まるで周りに聞かれないよう、内緒話でもするかのような呼びかけに、秋水は横目で紗綾音をちらりと見る。
結構な至近距離で、目が合ってしまった。
肩に顎を乗せてくるという体勢だ、距離が近いのは当然か。
「はい、なんでしょう」
思わず秋水も小声になってしまった。
んー、と紗綾音が小さく零す。
言葉を選ぶようにして、紗綾音は数秒程沈黙を置いてから、やはり小声で秋水へと尋ねてきた。
「もしかして棟区くん、妹ちゃんのことって、あんまり聞かれたくない感じ?」
紗綾音の最大の長所は、相手の懐に潜り込んで仲良くなること。
なので、相手の懐に潜り込むだけの、勘と嗅覚は備えています。
……お姉ちゃんの方には、ない(;´・ω・`)
ちなみに、いちゃついているような体勢になっているのは、登校しているクラスメイト全員がガン見している(*'ω'*)ホッコリ
そしてお姉ちゃんの方に報告が飛ぶ(;´・ω・`)