エロい。
深夜のジム、彼に逢える、とるんるんの浮かれ気分でやって来た錦地 美寧の頭の中は、実際に出会えたその瞬間に低脳極まりないたった3文字に支配されてしまった。
190に迫る長身。
鍛え抜かれた分厚い筋肉。
鋭く真っ直ぐで優しさもある三白眼。
彫りが深くて迫力があって印象的な顔。
短く刈り揃えられて清潔感のある髪。
ジムの扉を開けて、既にそこにいた彼、棟区 秋水の下へと思わず駆け寄ったはいいものの、駆け寄っていざ秋水の真っ正面に立てば、彼の魅力の前に美寧は一瞬でノックアウトされてしまっていた。
「ああ、こんばんは、美寧さん。良い夜ですね」
「ぅきゅっ」
「はい?」
オマケに素敵な超低音のバスボイス。耳が孕みそう。ありがとう母さん、やはりコンドームはお守りとして必要です。
いやもうオマケじゃない。オマケにしては明らかに火力が高すぎる。
秋水を前にして独りで勝手にノックアウトされて無防備にならざるを得なかった美寧は、腹の底を震わせてくれる素敵ボイスというオーバーキルの高火力兵器を情け容赦なく至近距離から放たれてしまい、なに1つ抵抗することすら許されずに撃沈してしまった。
いけない、変な声が出た。
咄嗟に美寧は口元を手で隠すが後の祭り。
はて、と秋水が首を傾げた。
おいヤメロ。
なにその可愛い仕草。
あなたのその見た目と声で即死させられた無垢で哀れな少女に対して、そんなギャップ萌えの極地のような仕草で死体蹴りするとか人の心ないのか好き。首を傾げるだけでなんでそんなに可愛くできるんだ好き。人の心を鷲掴みにするだけじゃ飽き足らず掴んだその瞬間にご自慢の握力で握り潰しにくるとか悪逆非道すぎるだろ好き。はあもう好き。
美寧よりも先に到着していたものの、まだコートを着ていてリュックサックを棚に置いているところを見るに、秋水も先程着いたばかりなのであろう。あなたのそのコート、『働く男』 で同じの見ました。買えば良かった。お揃いにするべきだった。くそう、格好いい。
あ、ヤバい、思考がとっ散らかってる。
脳が完全に焼かれてる。
「お、お、おは……っ」
「はい」
首を傾げるとか凶悪な見た目のくせにアホ程可愛らしい仕草をして下さりやがる秋水へ、どうにか返事を変えそうと美寧は声を絞り出すが、その声がひっくり返ってしまった。
うわ最悪。
恥ずかしい。
思わず顔が真っ赤になるのを自覚してしまう。
いや、顔は既に赤かったかもしれない。なんだそれ、恥ずかしさが上乗せじゃんか。
しかし秋水はそんな美寧の声を笑うことも眉を顰めることもせず、静かに返事をして待ってくれた。
優しい。
あ、ヤバ、好き。
「……ぉはょぅござぃますぅ」
「はい、おはようございます。凄い早いおはようですね」
やばいやばいやばい、なにあの人誰あの人いや先生だけど、え、ちょっと待って先生ってこんなにイケメンだったっけ? 今日の先生なにあれ何でこんなにかっこいいの? いやいや前から格好良かったけど今日はなんか次元が違わない? 整形? 整形でもしたの? でも顔は怖いよね? めちゃめちゃ怖いハズなんだけどそれすらも美しさの一部みたいに見えるっていうかあの三白眼が獲物を見据える猛禽類みたいでえっちょっと今視線あたしに向いたよね? 視線が刺さるどころか貫通してるんだけどやばいやばい殺されるって思ったのに心臓がキュンってしたよね? どういうこと!? あと声! 声低っっっ!! 低すぎてお腹の底に響くっていうか子宮が振動したっていうかなんかもう体の芯から揺さぶられる感じであの声で 「おはよう」 とか言われたら五臓六腑が恋に落ちるんだけど? 言われたんだけど? もう落ちてるんだけど? なにそれ卑怯すぎるでしょもうやばい好きすぎるていうか今までこの人にどうやって話しかけてたっけ? 目を見て喋ってた? 嘘でしょ? 信じられないんだけど!? 尊い無理心臓破裂するちょっと落ち着けないないんだけど!? やばいやばい変な声出そうなんだけど!? 好きなんだけど!?
「はぁ……はぁ……」
出会い頭で秋水に軽く5回か6回くらい瞬殺されて内心がボロボロにされた美寧は、ほうほうの体でなんとかジムの女性更衣室まで一時撤退することに成功した。
ボストンバッグを置くことなく、コートも脱ぐことなく、ロッカーにもたれ掛かるようにして美寧は荒ぶる息を整えようとする。
鏡を見る。
顔が真っ赤だ。
あー、もう、ちくしょう。
「あ、あんなの反則じゃーん……」
ごつ、とロッカーに軽く頭を打ち付ける。
土日の深夜に通う、誰も居ないジム。
秋水と2人だけになる、秘密の空間。
やっと秋水に逢うことができると浮かれ気分だった10分前の自分をシバき倒してやりたい。
気をつけろ。
気を引き締めろ。
気を確かに持て。
秋水が、あり得ない程にイケメンと化している。
いや別に、秋水の顔や姿形が大幅に変わったわけではない。ないと思う。たぶん。自信はない。
縦にも横にも奥行きにも大きくて、高い・広い・分厚いの3拍子揃った威圧感はなにも変わらない。
相変わらず顔は怖いし声も怖い、はずなのだ。
はずなんだが。
「……かっこよぉ」
なにあのイケメン。
めっちゃタイプなんですけど。
タイプになっちゃったんですけど。
タイプになっちゃった挙げ句に自ら突っ込んで沼に沈んでしまったおバカが私ですけど。
ぬあぁ、と美寧は頭を抱えて蹲った。
冗談みたいな話だ。
馬鹿みたいな話だ。
秋水がめちゃくちゃ格好良く見えるのだ、美寧には。
よし、深呼吸、深呼吸だ。
いやもう、あっぶな、死ぬかと思った。
目が合った瞬間、思考が全部溶けた。どろどろになっちゃった。
あれが “好き” のフルパワーか。自分は恋で死ぬタイプの生き物かもしれない。
「いやいやいやいやいや!」
違う。
違うだろ錦地 美寧。
今日の目的はなんだったのかを思い出せ。
いや筋トレだけど。
それはそうだが、隠された重要ミッションを思い出すんだ。
連絡先の交換だ。
メッセージをやり取りしちゃいたいから、そのためにIDを交換するんだよ。
まずはとにかく連絡先をゲットする健全かつ計画的な恋愛アプローチを仕掛けるんだよ。
なのに実際はどうだ。
ぉはょぅござぃますぅ、ってなんだ、どうやって発音したんだ自分、陸に打ち上げられた魚みたいに挙動不審になりおうておバカ。脳味噌からスケジュール表が蒸発してたんじゃないのか。いや完全に焼き払われて蒸発してたな。
ていうか、なに。
なにあの迫力満点の顔面。めっちゃタイプなんですけど。最高なんですけど。思い出しただけでゾクリとくるのが恐怖って感情じゃない時点で既に頭がバグっちゃってるんですけど。先生の顔で恐怖を感じないのが逆に恐怖なんですけど。好きなんですけど。
それに声、声がヤバい。お腹じゃなくて子宮に響いた。物理で。恋物理。新ジャンル。好き。
そして何より首を傾げるとか。
所々で控えめに仕草が可愛いとか。
もう、もうね。
なにそれ!?
こちらとその瞬間でまた死んだんですけど!?
殺してから埋めて花まで供えるつもりですか!? 人の心がないの!? あるでしょ!? 優しさが殺意なの!? 好き!!
「ふぅ……ふぅ……」
心の中で絶叫しつつ、息を整える。
10分程前、ジムに向かって夜道を歩いていた美寧は非常に軽く考えていた。
ID交換とか余裕余裕。だって私、恋してるもん。恋してる人に話しかけるの、当たり前じゃん?
それに誕生日も聞いときたい。好きな食べ物とか好きな色とか好きな音楽とか好きな女の子のタイプとかどこら辺に住んでるのとか性癖とか恋人いるのかとか好きな人いるのかとか結婚してるのかとかとか、それとなーくセット間休憩の間とかにリサーチしちゃいたい。
母さんからのアドバイス通りにまずは情報収集だ。これが恋愛戦略ってやつ。うん、完璧。めっちゃ冴えてる。これはもう勝ち戦じゃんね、ふふん。
ばか。
ばーか。
そんな上手くいくかばーか。
なにが勝ち戦だ、出会った瞬間にボロボロの負け戦じゃんね。
恋愛は惚れた方が負けって言うけど、こんな容赦なくオーバーキルしてくることってある? 核兵器の方がまだ手心と人の心があるじゃんね。
これが恋愛か。
ヤバい。
舐めてた。
こんなのを母は経験した挙げ句、只今旦那じゃない別の男に対して続行中かつきっちり不倫の沼に沈めてやったというのか。
やはりあの母は凄いぞ。同じ女として本日好感度がストップ高である。
まだ筋トレどころかウォーミングアップすらしていないのに額に浮かんでいる汗を拭いつつ、ふぅ、と美寧は一息ついた。
この脳内を美寧の母が見たならば、「え、いくら何でもそこまで激しくない……」 とドン引いたことだろう。
それから美寧はちらりと時計を見た。
「あ、やば!」
更衣室に逃げ込んでからまだ2分くらいしか経っていないが、秋水を待たせっぱなしである。
やばい。
ばかばか。
美寧は慌ててボストンバッグを下ろしてコート脱ぐ。
今日はジャージではない。
なので、コートを脱いでバッグを仕舞えば準備完了、とはならないのだ。
着替えなきゃ、と急いで服を脱ぎ、バッグの中から袋を取り出す。
「……むふ」
思わず変な笑みが漏れてしまう。
さあて、お披露目だ。
ジャージではない、本格的なトレーニングウエアだ。
いや、本来であれば作業服を売っているはずの店で買ったこれが本格的なトレーニングウエアなのかという疑問は僅かばかりあるのだが、少なくとも筋トレ歴が長いであろう秋水が着用しているのと同タイプのウエアであれば、それは美寧にとっては本格的なトレーニングウエアということで間違いはない。
そう、同じタイプのウエアだ。
お揃いである。
デザインは年度の違いかヴァージョン違いかで僅かばかり違うが、カラーは秋水と同じものを選択した。
これはペアルックと言っても過言ではない。
よぉし、攻めたぞ。
これは結構攻め攻めモードである。
似合うだろうか。
いや、秋水が似合うと思ってくれるだろうか。
秋水の好みだろうか。
秋水が好きな感じだろうか。
同じの着てるぅ、とか引いたりしないだろうか。
情緒がジェットコースターのように壊れてしまっている美寧は、ずっと高鳴り続けている胸を軽く押さえつつ、そのトレーニングウエアに袖を通した。
「ついにトレーニングウエアのデビューですか。美寧さんによくお似合いですね」
はい死亡。
なんでそんなにさらっと息するように褒めてくれるの好き。どういう神経してるの好き。気付いて褒めるがしれっとやれるとか、絶対女の扱いに慣れちゃってるってこの筋肉ムキムキイケメン先生好き。むしろ似合ってるとかお決まりの定型文みたいな雑な褒め方だって頭では分かってるはずなのに一発で嬉しくなっちゃう自分があまりにもチョロチョロのチョロすぎ女で笑えないのはたぶん先生のせいで少女マンガでも最近お目にかかれないくらいの恋する女の子なんてやつに無理矢理させられちゃったせいなのは分かりきってるんだからやっぱり先生が諸悪の根源かつ女の敵ということでファイナルアンサーしちゃうんだからな好き。
秋水を待たせすぎてはいけないと、トレーニングウエアに急いで着替えて更衣室を飛び出した美寧に浴びせられたのは、相変わらず落ち着いている秋水の褒め言葉であった。
すでにリュックとコートを棚にしまって準備が終わっている秋水は、いつものトレーニングウエアであり、それはつまり、美寧と同じシリーズのトレーニングウエアだ。
お揃いだ。
更衣室を出た瞬間に秋水を見て、その事実に美寧は嬉しくなった。
そして、似合ってる、なんて言葉を出会い頭にぶっ放されて、消し炭と化して膝から崩れ落ちそうになるのを美寧は気合いで耐える。
「え、えへへ……せ、先生とお揃いにし、してみましたー……なんて」
声が。
声が上手く出ない。
上擦るというか、なんか、甘っぽい感じの声になってしまう。
なにこれ。
明らかに発情した雌猫の声じゃん。
ああ、もう、自分は今どんな表情しているのだろうか。
これでニヤけていたりだらしない顔していたりしたら最悪だ。
声どころか表情まで発情した雌猫になっていたら秋水にあらぬ誤解を与えてしまいかねない。
え、誤解なのかと?
……はいそうですよ発情してますよ! 仕方がないだろこんちくしょう!
同じトレーニングウエアのハズなのに、ムキムキに肥大している強靱な筋肉がコンプレッションのウエアを窮屈そうに押し上げているせいでぴちっと張り付いて、その隆々たる重武装筋肉のボディラインがはっきりくっきり分かるのだ。エロい。あまりにもエロい。恋愛なんてそっちのけで生きてきた初心な女子高生にはいくらなんでも刺激が強すぎるくらいにエロい。誘ってんのか。目に毒という言葉があるが、こんな微量で即死するような劇薬を眼球に直接流し込んでくるようなエロスは猥褻物陳列罪で取り締まるべきだと思う。でも見たいから取り締まられたら困る。いや見たいというのはそんな変な意味なんかじゃなくて、あ、ヤバい鼻血出そう。あまりにも性的刺激が強すぎる肉体美に気絶しないだけ褒めて欲しいくらいだ。ああそうか自分で自分を褒めなくちゃ。よっ、美寧ちゃんエロい! 違うわバカヤロウ! それだと私がただの痴女みたいになっちゃうだろ! エロいのは先生だよ! そもそも今まで私って先生のこんなにヤバい肉体を前になにも感じないでお喋りできたとか不感症過ぎなんじゃないの!? ていうか今までどんなテンションで先生とお喋りしてたっけ!? いやもう本当にヤバいんですけど!?
「ええ、良いですよね、このウエア。値段も手頃で、着心地も良いですし」
「そ、そうだよね。えへへ、買って良かった」
このトレーニングウエアに思い入れがあるのだろうか、秋水は僅かばかり笑みを浮かべながらウエアのことを褒めてくる。
はい笑った。
笑顔だ。
無表情というか仏頂面というか、あまり表情豊かとは言えない秋水ではあるが、よく見れば苦笑いをしたり小さく笑ったりしてくれるときがある。
その笑みは、ちょっと子どもっぽい笑みなのだ。
まるでそう、年下の男の子みたいな、少年のような笑み。
再び心臓を突き刺される。
今日という日付はまだ始まったばかりだというのに、すでに何回死にそうになっているのであろうか。
トキメキすぎて心臓がエイトビートのロックンロール。ウォーミングアップが必要ないくらいに体がポカポカしているところ、新しいトレーニングウエアの吸汗速乾機能のおかげか気化冷却でちょっとだけひんやり。これがトレーニングウエアの効果ということか。まだ筋トレしてないんだけど。
慣れろー、この魅力に慣れるんだー、と自分に催眠術でも掛けるかのように繰り返し念じながら、表面上はなんでもないように取り繕おうと美寧は気合いを入れる。
なお、表情はカップアイスの食べ頃サインのようだし、声は砂糖を追加した炭酸ジュースのようだし、極め付けに顔はほんのりと既に赤い。すでに手遅れ。
「さて、まずはウォーミングアップを行うのですが……美寧さん」
「あ、は、はい! やる気はばっちりです先生!」
「ああ、いえ……なにかこう、体調が優れないなと思いましたら、すぐに言って下さいね?」
「大丈夫です! 体調ばっちりです先生!」
「はあ……ならば、良いのですが……」
明らかにいつもとは様子の違う美寧を怪訝な目で見る秋水を横に、むんっ、と美寧はガッツポーズをする。
まずはそう、筋トレだ。
秋水が筋トレを教えてくれるので、それをしっかり習得していくことを頑張らねば。
せっかくの時間を秋水が割いてくれるのだ、無駄にはできない。
メインの目的は筋トレなのだ。そこを間違えたら秋水から呆れられてしまうので、それは勘弁である。
まずは筋トレに集中しなくては。
すぅ、はぁ、と美寧は大きく深呼吸をした。
やっぱり調子悪いのかなぁ、という秋水の視線には気がついていない。
今日は秋水に色々聞きたい、とかなんとか考えながら来たけれど、はっはっは、聞けるわけがない、無理無理。
こんなイケメンに個人情報聞いちゃうとか、心臓が幾つあっても足りる気がしない。もう今日は筋トレだ。なにはともあれ筋トレだ。
まあ、その。
今日はできたら、連絡先の交換だけでも、頑張ってみようかなぁ、なんて。
思ったり。
思わなかったり。
その。
うん……
あ、明日もあるし、明日までには、連絡先ゲット、できたらいいなぁ、くらいでなんとか……
考えれば考えるだけ、段々と目標設定が低くなるのは自覚しながらも、美寧は気合いを入れ直すのだった。
錦地 美寧は、常に天才の姉と比べられて育った。
姉に劣った存在と評価され続けても、決して諦めず努力を続けた秀才である。
ただし、その努力には、犠牲があった。
人間関係だ。
美寧にはまず、愛されるという経験が不足している。
正確には、自覚の不足である。
両親からも周囲の人々からも、そして姉からも確かに愛はあったはずなのだが、美寧自身は姉に対する劣等感へ立ち向かうことに必死となり、その愛をずっと受け取ってこなかった。今でなお、クラスメイトから高嶺の花だと思われているとは欠片程にも予想できていないのがその証拠だ。
そして同じく、他者を愛する、という経験も不足していた。
執着することはできるのだ。
姉に勝つ、周りに評価させる。それにずっと執着して燃え続けていたのは、美寧である。
だから、恋愛に対しても、美寧は一瞬で夢中に、いや執着することができた。
自分が秋水から愛されることはいまいち想像できないが、秋水を自分が愛して執着することはすんなりと想像できた。
知りたい。
もっと知りたい。
深く秋水のことを分かりたい。
美寧の恋愛に対する原動力は、その執着心だ。
しかし、美寧はそもそも他者を愛するという経験自体が不足している。
人を好きになるとはどういうことなのか。
どういう感情なのか。
親愛や友愛、もしくは幼いおままごとのような恋愛という経験すらも切り捨てて生きてきた美寧にとって、他者を愛するというのはほぼほぼ未経験であり、未知の領域だ。
上っ面だけの薄くて浅い人間関係しか構築してこなかったツケが、美寧には降りかかってきたのだ。
右も左も分からない。
なにが適切なのか分からない。
どれくらいの距離感でいるべきかが分からない。
だから、尻込みしてしまう。
端的に言って錦地 美寧は、恋愛に関しては驚く程に 『へたれ』 であった。
・冷たいの(疑心暗鬼で闇堕チワワ)
・暖かいの(ぶっ壊れた美寧ちゃん)
風邪ひきそう……((((;゚Д゚)))))))