「ああ、美寧さん、その服、よく似合っていますね」
「――――――――はっ、あ、ぅ、あ、りがと……」
相も変わらず誰も居ない深夜のジムに辿り着き、暖かな室温にほっと一息つきながらコートの前を開いた美寧の私服をとりあえず褒めてみれば、返事まで随分と間が空いた。
なお、秋水はなにも考えておらず、ほぼ脳死で私服を褒めている。
今まではジャージを着たままジムに来ていた美寧であるが、昨日からトレーニングウエアでの筋トレデビューを果たし、その関係でジムには私服で来るようになった。
女子高生の私服である。
まあ、とりあえず褒めておけばいいだろう、くらいのノリである。
そんな雑で心の籠もっていない褒め方に、さてなんと返事をしたものか、と戸惑っているような美寧は、見えた私服を隠すように開いたコートの前をゆっくりと閉じてしまった。
視線を泳がせつつ、赤い顔でしどろもどろに答える美寧に、はたと秋水は遅れて気がつく。
もしかして、私服を褒めるのはセクハラに当たるのだろうか。
そんなつもりは一切ないのに。
難しいな、と困ったように秋水が首の後ろをポリポリ掻いていると、なにかをもごもご口にしていた美寧が、意を決したように顔を上げた。
真っ赤である。
「せ、先生は、その、こういう、ふ、く…………っ」
「はい?」
「ぬぁんっ! 着替えてきますぅっ!!」
「はい、いってらっしゃいませ」
元気のいい着替えの宣言だった。
そして美寧がトレーニングウエアに着替え終わり、恒例のラジオ体操をウォーミングアップとして行うことにした。秋水も一緒である。
マナー違反は重々承知、かつ行う前にも美寧へは「他に人がいらっしゃるときはダメですからね」と念を押し、スマホからラジオ体操の曲を流した。
ラジオ体操第一。
まずは背伸びの運動から。
「…………」
何故だろうか、美寧からの視線をひしひし感じる。
ジムのストレッチを行うコーナー。
姿勢や体の動きを確認するために鏡に向かい、美寧と横並びになってラジオ体操を行う。
秋水は、自分の体の動きを見ている。
しかし美寧は、鏡を通してまじまじと秋水の体を見ている、ように秋水は感じた。
気のせいだろうか。
自意識過剰かもしれない。
美寧もちゃんと自分の体の動きを見ているだけで、秋水のことは気にしていないかもしれない。
横曲げの運動。
左手を腰に当て、右手を上に伸ばしてから上体を左へ曲げ倒す。
右脇から脇腹が伸びるのを感じる。
ついでに、やはり美寧の視線を感じる。
秋水の右に立っている美寧は、左に上体を曲げたまま、視線は正面ではなく若干上の方を向いている、ような気がする。
鏡に映っている、秋水を確認しているようであった。
うーん。
なんだろうか、と思いながら上体を戻し、今度は右手を腰に当てて左手を上へ伸ばし、そのまま上体を右側へと曲げて倒す。
「にゅふ」
美寧から変な声が漏れた。
ストレッチの合間に息をつく感じだろうか。なんだか笑っているような吐息であった。
まあ、呼吸法は人それぞれだ。それがデカい音で他者の集中の邪魔をするタイプでさえなければ、どんな呼吸法でも大丈夫である。
そのまま2人は揃ってラジオ体操を続けていく。
第一が終わる。
流れるように、ラジオ体操第二を始める。
第三まではやらない。
純粋なウォーミングアップであれば、しっかり体の動きを理解しながら行えるならば、ラジオ体操は第一だけでも十分だ。
ただ、現代人らしく体の関節が硬めの美寧の柔軟性向上を狙い、第一と第二を連続で行っているだけである。
最後の深呼吸を行う。
「すぅ……ふぅ……」
腹式呼吸で深呼吸を静かに繰り返す。
腹圧を高める。もしくは、腹筋を固める。
筋トレを行うときに、最重要とまで言われることがあるテクニックだ。
深呼吸をするときは、その腹圧を意識する。具体的には腹直筋と腹斜筋を意識する。
「ふー……すっ……」
隣で美寧も深呼吸をしている。
息を吸うのがだいぶ力強い。腹圧のことを意識しすぎているのかもしれない。
ラジオ体操第二が終わった。
「ふう……温まった!」
一息入れてから、バンザイをするように両手を挙げて美寧がウォーミングアップ終了を宣言する。
今日はなんだか元気だ。良いことである。
やはり、何だかんだでラジオ体操はよく考えられている体操だ。
美寧に付き合って一緒に行った秋水も、自分の筋肉が適度に温まり、関節の各所もしっかりほぐれているのを感じる。あとはハムストリングスがもうちょっとなぁ、と思わなくもないが、それは贅沢な悩みというやつだ。
拳を作るように手を握り、開き、肩を回し、屈伸をする。
体の動きに問題なし。
本日も絶好調。
よし、楽しい筋トレの時間だ。
とは言っても、まずは美寧の筋トレである。
屈伸をしてから秋水は改めて美寧へと顔を向けた。
ばっちり目が合った。
「みゅっ」
「そういえば美寧さん」
「あ、は、はいっ!」
目が合った瞬間、ぴくっ、と美寧の肩が跳ね上がるのが分かったが、努めて気にしないようにした。
美寧は秋水の厳つい顔やら体型やらに慣れてくれてはいるものの、怖い、と認識していることは秋水側もちゃんと分かっている。
不意に目が合えば、思わずびくりとするのは、女性として普通のことであろう。
こうして普通に会話をしてくれてありがたい反面、それでも怖がらせてしまう自分の外見を申し訳なく思いつつ、なるべく穏やかな声というのを意識しながら美寧へと話しかける。
美寧からは元気な返事。
ちょっと緊張しているような、少し硬い声色だ。
「―――うわぁ、先生って少し目を細めて三白眼じゃなくなると、流し目みたいで不意打ちヤッばぁ……」
少し目を逸らしながら、ぼそり、と美寧がなにかを呟く。
かなりの小声でよく聞こえなかったが、最初の「うわぁ、先生って」の部分と、最後の「不意打ちヤッばぁ」という部分だけはなんとなく分かった。
なるほど。
『うわぁ、先生って目が怖いから睨まれてるみたいで、分かってても急に見られると不意打ちヤッばぁ』
みたいな愚痴を呟いたんだろう。
なんと言うか、ごめん。
女子高生のリアルな愚痴に少し悲しくなりながらも、秋水は声にも表情にも出さないで会話を続けることにした。
「ラジオ体操、なにか疑問とかありましたか?」
「え? 疑問?」
「はい。やっている最中、なんとなく視線を向けられているように感じましたので、なにか気になることでもあるのかな、と思いまして」
「―――ひゅっ」
何故か美寧が息を飲み込んで硬直してしまった。
はて。
秋水は首を傾げる。
ウォーミングアップでラジオ体操をしている間、鏡越しにちらちらと美寧からの視線を感じていた。
それは自意識過剰による気のせいだったのかもしれないし、単純に、近くて邪魔だなぁ、という視線だったのかもしれない。
しかし、もしも何らかの疑問があるのであれば、忘れる前に答えておいた方が良いだろうな、と思っただけである。
他意はないのだが、何故か美寧は、なんでバレたの、と言わんばかりの表情になってしまった。どうしたというのか。
なお、秋水が首を傾げたら、「ギャップッ!」という謎の鳴き声を美寧は上げていた。
昨日といい今日といい、美寧のリアクションは非常に大きい。
これが美寧の素の反応なのだとしたら、打ち解けてくれているようで少しこそばゆい感じがする。
「い……ぃやぁ、べつにそのぉ……ぁの、先生の身体見て、疚しいこと考えたりなんて、えっと、してないよぉぉ?」
そして再起動を果たした美寧が、何故か言い訳のようなことを口にし始める。
顔が赤い。
視線が右へ左へと忙しない。
わたわたと手がパントマイムに忙しそう。
更には声が若干裏返っている。
どうしたというのか。
「ええと……つまり、見てはいた、ということでよろしいですか?」
「ぴ゛」
どうやって発音したのだろうか。
疚しいことは考えていないが、こちらの身体は見ていた、という意味に解釈した秋水は確認をすると、ぴしりっ、と美寧が石のように固まった。メデューサなどここにはいないぞ。
もとより赤くなっていた美寧の顔が、かぁぁ、とよりいっそう赤くなる。
「ち、ちが……っ、くは、ない、けど、いやあのちょっと待って言い訳タイム言い訳タイム!」
「あ、はい、どうぞ」
「えーっと、えとえと、えーっと…………ええっとねっ!?」
そしてすぐに石化の解けた美寧は、両手でTの字を作るようにハンドサインを出してタイムを求めた直後、頭を抱えてしゃがみ込む。
言い訳ってなんだろうか。
あと、そんなに懸命に頭を捻らねばならないような質問をしたつもりはないのだが。
前回に引き続き、やはり体調がよろしくない可能性があるなと思った秋水は、考え込んでしまった美寧を心配そうに見つめた。
もしかして、これが美寧の素なのだろうか。
だとすれば、学校ではさぞ賑やかで華やかなタイプなのだろう。紗綾音みたいな感じか。いや、それはちょっと美寧に対して失礼か。
しばらく頭を捻りまくっていた美寧は、ようやく考えが纏まったのか、そろり、と顔を上げて秋水を見上げてきた。
「せ、せ、先生ってあの……体、柔らかい……よね?」
なるほど。
素晴らしい着眼点だ。
美寧のその質問を聞いた瞬間に、秋水は美寧の挙動不審さに対する疑問を全て投げ捨て納得した。
良い疑問じゃないか。
「な、なんかほら、あの、体を曲げる系の運動するとき、ぐにーっ、て先生めっちゃ曲がるから、すごいなー、っていうかね、あのね、うん」
「なるほど、だから見られていたのですね」
「…………うん、そうだよっ!」
少し間があったものの、素直に答える美寧のそれに、見られていたという疑問が綺麗に氷解する。
こいつ体柔らけぇなー、という感じの視線だったのか、あれは。
なるほど、納得。
柔軟性。
これは筋トレにおいて、とても大事な考えの1つである。
まず、体が柔らかい、つまり筋肉や関節の可動域が広くなると、怪我のリスクが下がる。
そして血行が良くなると酸素や栄養が全身に行き届きやすくなり、筋トレの効果が向上し、なおかつ筋肉の回復も促進される。
そもそもにおいて、関節が硬いと筋肉に効かない筋トレが多いので、体の柔らかさ、というのは秋水も意識的に保つよう心掛けていることである。
美寧に対してはよく、ウォーミングアップしましょうね、クールダウンでストレッチしましょうね、と秋水がアドバイスしているのは、体の柔軟性を向上させる目的があるからだ。
そう、柔軟性、大事。
とても大事。
「そうですね、筋トレをする上では、体の柔らかさというのはとても重要です。関節が硬くては可動域が狭くなって効果が激減してしまう種目や、そもそもスタートポジションにすら入れない種目がありますからね。これに関しては、美寧さんが痛感されているとは思いますが」
「うっ」
図星を指されたかのように、美寧の表情が一瞬渋くなる。
関節が硬く、スタートポジションにすら入れない筋トレの種目。
それは美寧にとって、とても身に覚えがある種目であり、それを思い出したのだろう。
ベントオーバーロウである。
中腰のような姿勢で尻を後ろに引くように姿勢を低くしながら、床に置いたバーベルなりダンベルなりを下腹部まで引っ張り上げる、そんな背中の種目だ。
そして、関節と筋肉が硬かったせいで、かつて、そして今現在も美寧が習得できていない筋トレの種目だ。
それを思い出して渋い表情をしたのだろうか。
だとすれば、それは悔しいということなのだろう。
自分の失敗をバネにしようとする。良い感情じゃないか。
「まあ、ともかくとしまして、私の体が柔らかいのは、単純にストレッチを入念に行っているからに他なりません。柔軟性が低いと怪我にも繋がりますし、筋トレも効かなくなってしまうので」
「効かなくなる?」
「そうですね。例えばですが……」
話を戻しつつ、秋水は肩幅に足を開く。
そして、そのままゆっくりと腰を落とすようにしてしゃがみ込んでいく。
筋トレのビッグ3が1つ、キング・オブ・エクササイズ、スクワットである。
「スクワットというのは、深くしゃがめばしゃがむほど、太ももの筋肉が大きく伸びます。なので基本的には深くしゃがむことを推奨される筋トレです」
説明しながら秋水は腰を落としきる。
足の裏はしっかりと地面を捉え、腰を落としきった状態でなお背筋は真っ直ぐになっている。
それを聞いていた美寧は、ほえー、と小さく声を上げながら、秋水の真似をするように自身もスクワットをするように腰を下ろす。
足の裏はちゃんとついている。腰も曲がっておらず、背筋も真っ直ぐだ。
綺麗な姿勢である。
「しかし、体が硬く関節の可動域が狭くなると、そうですね、足首が硬いとしゃがむときに踵が浮きますし、股関節が硬いと腰が丸まってしまいます。その状態でスクワットを無理に行おうとすると、丸まった腰のまま膝だけで動こうとするので、結果として腰や膝を痛めます」
「うっ」
「筋肉も関節も硬いまま無理をしますと、ちょっとした角度のズレで筋繊維がブチリといきます。腱も痛めます。割と大ダメージですよ」
「ひぇー、最初の私ってよく無事だったね……」
言いながら、秋水はわざとスクワットでしゃがみ込んだ姿勢のまま踵を上げ、背中を丸めてみる。さらには膝を前方へと出しながら、膝も内側に入れてみた。
そんな秋水の格好を見て、再び美寧が図星を指されたように渋い表情になった。
なるほど、覚えているのか。
この姿勢は、美寧と最初にあったとき、秋水の隣で行っていたバーベルスクワットの姿勢である。あれはなかなか衝撃的なフォームであった。
「では体が硬い人なりに、踵がしっかりついて、腰が曲がらないようにしゃがむとなると、しゃがみ込みがこれくらい浅くなってしまいます。これでは太ももやハムストリングス、大臀筋などの筋肉の伸びもそこそこないので、スクワットの効果もそこそこ、という感じになってしまいます」
続いて秋水は普通のスクワットの姿勢に戻り、ゆっくりと腰を上げていく。
だが、立ち上がりはせず、中腰くらいで止める。
太ももは床と平行よりも浅い。
尻が膝よりも上、という程度だ。
スクワットとしては、かなり浅い。
と言うか、スクワットと呼んで良いのか迷うくらいの浅さである。
「体が硬いと、無理に行えば体を痛め、動ける範囲だけでは筋肉への刺激が弱い、となります。ですから、ストレッチをしっかりと行って、動ける体、というのを作るのは大事なことなのです」
そして説明を締めくくりながら、秋水は今度こそしっかりと立ち上がる。
柔軟性は大事だ。
とても大事だ。
なので、美寧にはこれからも頑張ってストレッチを続けてほしい。
これは昨日、正確にはまだ今日なのだが、背筋やハムストリングスを伸ばす柔軟体操をしっかりと行っている成果が現れてきたのか、美寧の座り姿勢が、きちっとしてきているなと思った。
現にスクワットの座り姿勢をしている今の美寧も、ちゃんとした姿勢になっている。
踵は上がらず、腰は曲がらず、背中も曲がらず、バランスを取るために巻き肩にならず。
ちゃんとした、座り姿勢なのだ。
ベタ足のヤンキー座りとも言える座り方だが、その座り方すらできない人は、かなり多い。
それを、美寧はできている。
ストレッチを続けてきた、それが結果として表れているのだ。
ぜひ。
ぜひぜひ、これからもストレッチを頑張って続けて欲しい。
「ほえー……ちなみになんだけどさ先生、どれくらい体が柔らかくなった方が良い、って感じの目安ってあるの?」
「目安、ですか?」
「あー、柔らかければ柔らかいだけ良い、っていうのは分かるんだけど、最低限、これくらいできると筋トレが効果的にできるよー、みたいな」
「ふむ」
そんな美寧も立ち上がりながら、首を傾げて質問を飛ばしてくる。
これはまた難しい質問だ。
最低限必要な柔軟性の目安、となると、正直ぱっと思いつかない。
なにせ、人間の体というのは、関節まみれだからだ。
ベタ足のヤンキー座り。
これができればスクワットは効率的にできるのは間違いないが、じゃあそれができれば必要最低限なのか、と問われたら疑問が残る。
できなくても他の筋トレはできる、とも言えるし、できたところで肩などのトレーニングには使用しない部位、とも言える。
「そうですね、悩ましいところですが……やはり肩甲骨が自在に動かせるぐらい、でしょうか」
「肩甲骨?」
「ええ。腕を使う筋トレでは、ほぼ確実に肩甲骨の姿勢をどうするかという話は出てきますし、挙げ句にはバーベルを担ぐときも肩甲骨を上げることができれば、バーベルも安定して担げますので、一番出番は多いかな、と」
そして悩んだ結果、とりあえず秋水は肩甲骨周りの柔軟性を推すことにした。
どの部位の柔軟性も決して馬鹿にはできないので、あえて言うなら、というレベルの話だ。
秋水としては、胸椎、腰、股関節、足首、そして肩甲骨を入れ、この5ヶ所を推したいところだが、美寧からしてみれば、いきなり5つ言われても、となってしまうかもしれないと思い、肩甲骨周りの柔軟性を選抜である。
ただ、言ってから、足首の方が重要じゃないかな、とか、股関節の方が日常生活で出番多いよな、とか、色々後悔が湧いてくる。
やはり5ヶ所全部を推すべきだったかもしれない。
「あ、なるほどー。私もそれなりに肩甲骨は動かせるつもりだけど……先生ってどんだけ動かせるの?」
「私ですか?」
そんな秋水の内心を余所にして、肩甲骨ね、と呟きながら肩をぐるぐる回していた美寧は、流れるように秋水へと尋ねてきた。
肩甲骨の動きか。
ボディラインがはっきり分かるコンプレッションシャツだが、服の上からでも動きが分かるだろうか、と思いつつ秋水は美寧に背中を向ける。
「これくらいでしょうか」
「おわ、おー……」
言いつつ、秋水もまた両肩をぐるりぐるりと回す。
正確には、肩甲骨を動かす。
上に。
開く。
下に。
閉める。
肩甲骨で円を描くように回す。
ついでに前後にも動かす。
服の上から分かるかな、と思っていたのだが、なにやら凄く感動したように美寧が声を漏らしていることから、動きはなんとなく伝わっているようである。
しばらくデモンストレーションをしていると、微妙に熱っぽい声を漏らしていた美寧が、恐る恐るというように声を掛けてきた。
「そ、その、先生?」
「はい?」
「ええと、えっと、その、ね?」
言い淀まれてしまった。
なんだろうか。
肩甲骨を動かすのを止め、秋水は振り返って美寧を見る。
何故だろうか、顔がかなり赤い。
えーっと、あの、と美寧は言葉を探し、少し間を置く。
そして、意を決したように顔を上げ。
「…………さ、触ってみても、いい、かなぁ、なんて……」
ああ、やはりちょっと分かり辛かったか。
恐らく動かしていた肩甲骨の動きが分かり難かったのか、触って確認をしたいという類いの申し出をしてきた美寧に、ですよねー、と秋水は苦笑する。
やはり足首や股関節のように、見て分かり易い部分を推すべきだったかもしれない。
見て、分かり易い部分。
あ、と秋水は小さく声を上げた。
見て分かり易い、と言うより、見たら分かり易い、だ。
「いいですよ」
「……あ、いいの? やったぁ」
「ついでに見てみますか?」
「え?」
言うが早いか、秋水は再び美寧へ背中を向けるようにくるりと振り返る。
そして、コンプレッションシャツに手をかけた。
脱いだ。
「ぴきゃっ」
美寧の短い断末魔の悲鳴が聞こえたような気がした。
柔軟性の話は余分だったかなぁ、と思いつつ、ノリノリで書く。
みんなもレッツ・ストレッチだぜ(`・ω・´)
なお、最後のあれは美寧ちゃん的には500ポイントくらいのダメージです。まだ軽傷ですね。
(最大HP:100)