棟区 秋水は人付き合いが得意ではない。
というか、苦手である。
経験値が少ないとも言える。
そんな秋水でも、薄らと察することができるような人間関係が目の前で繰り広げられてしまった。
「わっ、可愛い子だ! こんにちは! お店のお手伝いしてるのかな? えらいねー!」
「秋水くん! 誰ですかこの失礼なガキは!? わ、やめ、やめてくださ――いや抱きつくんじゃないよちょっと!? おっぱい押しつけないでというかホント発育いいな最近の子!? 助けて秋水くん! 女子中学生にまでストライクゾーン広げたら流石に言い訳できないです!!」
渡巻 紗綾音と栗形 祈織。
相性が悪いのかもしれない。
「へい棟区くん、お勉強もたっぷりしたし、一緒に帰ろっ!」
「イヤです」
「棟区くんが補導されちゃったこと、お姉ちゃんに黙ってたけど、断られちゃったら悲しくて口滑っちゃいそうだなー」
「承りました。ご一緒いたしましょう」
学年末試験初日が終わったにも拘わらず、突発で発生した勉強会にも区切りをつけ、参加面子も思い思いにさて帰ろう、となったところで紗綾音に誘われてしまった。
最低でも今日一日は、紗綾音の頼み事を断りづらくて秋水が辛い。
渋々手の平を返さざるを得なかった秋水を、自業自得だよなぁ、と竜泉寺 沙夜が冷めた目で見てくるので、割り増しで更に辛い。
深夜に出歩いてお巡りさんに補導された、という事実が、予想していなかった全然別の方面からボディーブローの如くじわりじわりとダメージが蓄積していく感じである。
同じく帰りの支度をしていた鶴舞 美々と日比野 道が、少し離れたところから紗綾音とのやり取り、というか脅迫現場を眺めていた。
「おー、即堕ち2コマだー」
「弱み握られちゃってるんだから、即堕ち1コマじゃないかな?」
「お、道くん、こーゆーネタ分かるんだねー」
「……さ、僕はちょっとジムにでも行ってこようかな」
話と同時に目を逸らしつつ、日比野は鞄を持ち上げる。
あ、ジムに行くのか、自分も行きたい。
ジムに行こうとする日比野を羨みながら、秋水は自分の鞄をちらりと見た。
その鞄の中には、ジムに行く用意は入っていない。
その代わり、今日の帰りにこなさなければいけない用事が入れられている。
ああ、そうだった。
「ああ、申し訳ありません紗綾音さん。ご一緒したいのは山々なのですが、今日は少し用事がありまして」
「ほえ?」
自分の鞄から紗綾音の方へと視線を戻し、秋水は深々と頭を下げた。
鞄には、ネックレスが入っている。
白銀のネックレスだ。
今日はこれを祈織の質屋に持って行かねばならないのだ。
なお、明日も明後日も、である。
秋水は理由をよく分かっていないのだが、鎬曰く、白銀のネックレスを週末ではなく毎日ペースで納品してほしい、らしい。
テスト期間中は持って行くということにしたのだが、それ以降はどうするのだろうか。鎬に聞いておかねばならない。今日の交渉会議の内容も気になるし。
そして、交渉会議と言えば、時間的にもそろそろ終わっているかもしれない。
祈織ならばなにか一報もらっている可能性もあるだろう。
となれば、一度家に帰ってから、ではなく、このまま祈織の質屋に向かった方が良い。
善は急げとも言う。
となると、紗綾音が帰る方向とは逆になってしまう。
いやー、困ったなー。
帰る方向が違うから、一緒に帰れなくなっちゃったなー。
残念だなー。
秋水は心の中で、そんな棒読みの言い訳を並べていた。
「家とは反対方向の店に行く用事があるのです」
「ありゃ、寄り道ってこと?」
「はい。ですので、ご一緒するのはまたの機会に、ということで」
「……そのまた機会とやらは、棟区くんの方から誘ってくれるのかな?」
「…………」
じとー、とまるで信用できない不審者でも見るかのような目つきで紗綾音が睨んできた。視線が痛い。
す、と秋水は顔を背ける。
わしりと紗綾音に両側から顔を掴まれ、無理矢理視線を合わせられてしまった。
「にひっ、今日は私も寄り道したい気分だよ♡」
「ダメですよ紗綾音さん、学校帰りに寄り道をしては」
「今、棟区くんの頭にめちゃくちゃデッカいブーメランが8割くらいメリ込む勢いでぶっ刺さってるの自覚してるのかな?」
断れなさそうだった。
そして渋々、紗綾音と一緒に祈織の質屋、『栗形』 へと向かうことになったのである。
正確には、紗綾音たち、だ。
「いや、なんか今日の紗綾音から目を離したら、絶対何かしでかすだろ……」
「ありがとうございます竜泉寺さん。頼りにしています。お願いします」
「お前も頑張れよ。ちゃんと拒否しろよ」
秋水の隣には、どこか呆れた様子の、もしくは疲れた様子の沙夜が歩いている。
学年末試験で疲れたのだろうか、続け様にあった勉強会で疲れたのだろうか。
じとーっとした目を向けてくる沙夜に、秋水はぺこりと頭を下げる。
本日の紗綾音は、なんかちょっとテンションがおかしい。
いや、テンションはいつもおかしな女なのだが、今日は殊更おかしなチワワと化している。
そんな紗綾音を沙夜が押し止めてくれるであろうことを、秋水は強く希望していた。
頼むよ、紗綾音の飼育員。
なお、当の紗綾音は現在、秋水の腕にぶら下がっている。
「おーん? 今日の棟区くんが、この可愛い紗綾音ちゃんのお願いを断れるとでも思ってるのかなー?」
沙夜とは反対側、秋水の右腕にしがみついて体を寄せてくる紗綾音が、にやにやとムカつく表情で煽ってきやがる。
教室を出た瞬間、紗綾音はずっと秋水の腕に抱きついたままであった。
歩きにくいったらありゃしない。
秋水は軽く溜息をつきながら、そうですね、と口にしつつ左手で紗綾音の頭をぐりぐりと撫でる。
頭を撫でられた紗綾音は、むふー、と満足そうな笑みを浮かべ、逆にぐりぐりと秋水の肩に顔を擦りつけていく。
今日は本当に拒否しないなこのチワワ。
「竜泉寺さん、すでに紗綾音さんがしでかしています」
「いや、腕に抱きついてるくらいはもう、セーフかなって……」
「正気に戻って下さい竜泉寺さん。男子とむやみにベタベタしない、という律歌さんの教えを思い出して下さい」
「おぉう、棟区も律歌先輩から聞かされてんのか……」
どこか遠い目をしている沙夜が、盛大に溜息を吐き出しながら頭を抱えた。幸せが逃げそうだ。
抱きつく擦り寄る膝に座るなどなど、本日は狂ったスキンシップデーと言わんばかりに秋水にじゃれつきまくっていた紗綾音の様子を見続けたせいで、腕に抱きつくくらいはセーフか、なんて沙夜の感覚がすっかりバグってしまっていた。しっかりしてくれ。
これくらいはセーフの領域さー、と便乗するかのように軽口を漏らす紗綾音は、秋水の肩に頭を乗せている。
こらチワワ、恥じらいを持ちやがれ、胸がモロに当たってるだろうが。
紗綾音の姉である律歌が見たら、憤死するかもしれない。
あの人シスコンっぽいもんな、と秋水は考えながら、ぐりぐりと紗綾音の頭を撫で続けた。
「むふー♡」
ご満悦な紗綾音。
なんだこの状況。
半ば諦めで心を無にしている秋水の後ろで、足音が2人分あった。
「なあ、アイツらあれで付き合ってねぇって、マジ?」
「…………羨ましーなら、私が腕組んであげよーかー?」
「え、ヤだよ歩きづれぇ」
「……ぶー」
後ろを歩いているのは、クラスメイトの覚王山 未来と、ミッチと呼ばれている鶴舞 美々である。
秋水と紗綾音の関係を覚王山が疑わしそうに見ている横で、ミッチはどことなく機嫌が悪そうだった。
2人とも何故か、一緒に向かう形になってしまった。
正確には、覚王山が「俺も一緒に行く!」と割って入ってきて、特になにも言うことなく当然のような顔でミッチが覚王山についてきたのである。
「あの、覚王山さん達はよろしかったのですか? 随分と歩かせてしまってますが」
「ん? いや、いーよ。俺ん家こっち側だし」
「……そうでしたか」
振り向きながら秋水は尋ねたが、覚王山はしれっと答える。
覚王山は朝、日比野と一緒に登校してくる秋水を待ち構えていた。
そんな覚王山の家がこちら側なのだとしたら、朝に待ち構えていた秋水の通学路は、学校を挟んで反対側である。
だとすれば、口には出さなかっただけで、やはり覚王山にも補導の件で随分と心配を掛けさせてしまったのかもしれない。
頭を掻こうと無意識的に右手を上げかけたが、紗綾音にがっちりホールドされていて動けなかった。
「鶴舞さんの家もこちら側でしたか?」
「そーだよー。未来の家のお隣さんさー」
「なるほど。お2人は付き合いが長いのですね」
「ふふーん、幼稚園より前からのながーいお付き合いなのだー」
どこかドヤ顔でミッチがするりと覚王山の手を握って胸を張った。
その手を、覚王山は即座にペちりと払いのける。
「ま、腐れ縁って奴だな」
「殺すぞー?」
「なんでだよ、殺意の沸点意味不明で怖ぇよ」
間延びした声で殺人予告をするミッチに恐怖しながらも、覚王山はミッチの隣から離れようとはしていない。
幼馴染みの距離感というやつだろうか。
よく分からない。
昔に仲が良かった人は全員離れてしまった秋水にとって、そういう関係は未知のものである。
まあ、生まれつき目つきは非常に悪かったので、遊んでくれるような同年代は、昔から少なかったのだが。
払われた手で覚王山の背中をぺちんぺちんと叩いているミッチから、秋水は紗綾音の方へと視線を戻し、それから前へと顔を向ける。
目的地である祈織の質屋が見えてきた。
本当は秋水1人で来るつもりだったのだが、何故だかぞろぞろと5人で押しかけるような形になってしまったが、大丈夫だろうか。
白銀のネックレスを渡して、そして鎬からの連絡はあったかどうかを聞くだけなので、用事自体は大したものではない。
祈織の質屋だって、正直に言ったら申し訳ないが、中学生が見て面白いと思える店ではない。
そして、中学生がガヤガヤと押しかけたら、祈織も迷惑かもしれない。
何故だろう、このまま祈織の店に向かったとしても、誰も得をしないような気がする。
そんなことを考えていると、紗綾音が秋水の肩から顔を上げた。ついでに腕も放してほしいところだが、がっしりと抱きしめられてしまっている。
「ところで棟区くん、用事のお店ってまーだ?」
「いえ、もう見えています。あちらです」
「……あれ、こんなところにあんなお店、あったっけ?」
こんなところ扱い、かつあんな店扱いである。
秋水が紗綾音の頭から手を離し、見えていた祈織の質屋の看板を指さすと、そちらを見た紗綾音が首を傾げた。
確かに、先月に大掃除やら改装やらをしたばかりなので、知らない人からすれば新規オープンした店にも見える。
「えーっと、なんか前、この辺にボロいリサイクルショップあったような……」
ボロい扱い、かつリサイクルショップ扱いである。
以前の様子を知っているらしい沙夜が、記憶を引き出すように額に指を当てながら言葉を漏らすそれは、半ばただの罵倒であった。祈織は泣いてもいいかもしれない。
「あー……栗形さん家か」
と、そこで覚王山が声を上げた。
祈織の質屋の店名は 『栗形』 だが、それをちゃんと名字として認識しているということは、店として知っているというよりも祈織の家族を知っているという感じである。
くるりと秋水は振り向けば、同じくミッチも、あー、と声を上げていた。
「そーいえばー、なんか最近色々改装してたよーなー? してなかったよーなー?」
「店の名前は変わってねぇから、たぶん改装、だよな?」
「さー?」
ミッチも覚王山も首を捻っている。
そうか、2人とも家がこちら側だと言っていた。近所の店ということで、認識はあったのか。
「ご存じでしたか」
「ま、家が近ぇからな。でも詳しくはねぇぞ? 質屋なんてガキが入る店じゃねぇし」
「私もー。随分前に店長さんが代替わりしたとかなんとか、おとーさんが言ってたっけー?」
唇に指を当てながらミッチが再び首を捻った。
先代店主のことも知っているのか。
流石は地元民、と思いつつ秋水は前を向き直る。
そのタイミングで、覚王山が何の気なしに口を開いた。
「あー、交通事故な」
ぞわり、とした。
背筋と、頭と、心が、粟立つような感覚。
もしくは、冷えるような感覚。
耳鳴りがして、舗道の色だけが急に濃く見えた。
交通事故。
秋水の足が、ぴたりと止まる。
止まらなかった紗綾音によって、捕まえられた右腕だけが引っ張られた。
そう言えば、祈織の両親が、どういう結末を辿ったかは、聞いたことがなかったな。
祈織の両親が他界していることは、知っている。
それで祈織が店を継いだのも、知っている。
だが、そうか。
交通事故か。
祈織の両親もまた。
「――っ!? い、いや足止めんな棟区! さっさと用事済ませようなっ!」
足を止め、不思議そうに紗綾音が振り向いたのと、ほとんど同じタイミングだった。
ぱんっ、と背を叩かれた。
沙夜である。
どこか焦ったような表情で、足を止めた秋水を急かすように、もしくは気を散らすように、わざとらしく大きな声であった。
はたと秋水は我に返る。
止めた足を、無理矢理動かした。
「申し訳ありません。この面々で店に入って良いものかを考えてしまいました」
「そ、そうだよな! 紗綾音とか迷惑かけそうだもんな!」
「ほえ? え? ちょ、酷ーい!」
気遣うように向けられた沙夜の視線から、す、と目を逸らす。
やはり沙夜は、知っているんだな。
やりづらい。
学校では、いや、クラスでは、沙夜の他に誰が知っているのだろうか。
覚王山は知っているのだろうか。
ミッチは知っているのだろうか。
紗綾音は知っているのだろうか。
やりづらい。
ただただ、やりづらい。
胸の内側が冷えて、言葉が出ない。
こちらの顔色を窺うような視線を送る沙夜に気がつきながらも、質屋の前についた。
店には、客がいた。
数名程の、客がいた。
客、か?
祈織の質屋には、ガラス越しに5名程の人がいるのが分かる。
ただ、誰も彼もが、日本人ではないように見える。
鎬曰く、お客様ではない、という面々だろう。
それらが、カウンターに群がっているのが見えた。
「ところで棟区くん、このお店になんの用事―――」
「申し訳ありません紗綾音さん、手荒く抜きます」
「え―――ひゃんっ!?」
紗綾音がなにかを尋ねかけたものの、秋水はそれを無視して紗綾音にがっちりと抱き締められていた右腕を無理矢理引き抜いた。
一応、紗綾音が怪我などをしないように気をつけたつもりではある。
横目では、腕を引き抜いた勢いでなにか衣類が乱れたのか、慌ててスカートを押さえた紗綾音が見える。転んだりしてなければ大丈夫だろう。
紗綾音を振り切った秋水は、即座に質屋のドアを開け放って店内へと足を踏み入れた。
「When exactly is that necklace going on sale!? Aren’t you taking reservations? Tell me!!」
“そのネックレスは具体的にいつ販売されるんだ!? 予約は受け付けていないのか!? 教えてくれ!?”
「Could it be made from the same metal as that anklet……? No, the colour is different. The composition must be different. So then—does this one also contain a new element……」
“それは、あのアンクレットと同じ金属なのでしょうか……いや、違いますね、色味が違う。素材の配合が違うのですね。これにも新しい物質は配合されているのでしょうか……”
「Composition? So you mean the raw materials are accessible to the maker, and the alloy ratio can actually be altered—or is it something extremely difficult to achieve!?」
“配合? つまりなんだ、原材料はその制作者とやらが入手できて、かつ合金としての割合を変更できるくらいの難易度ということなのか!?”
「No, hold on. That would only apply if this necklace also contains a new substance. We can’t say anything for certain without testing it. There’s every chance it’s just an ordinary necklace made from common materials」
“いや待って下さい。それはあのネックレスにも新しい物質が使用されている場合の話です。調べてみないと何とも言えませんが、一般的な物質でできた、ただのネックレスの可能性も十分にあります”
「You there! You, the lovely young lady! That necklace—didn’t your mother tell you what metals were combined to make the alloy!?」
“キミ! キミ! 可愛いお嬢さん! そのネックレスはなんの物質がかけ合わさった合金か、お母さんから聞いていないかい!?”
「あわ、あわわ、あの、一斉に喋られると音声認識が上手くいかないので、1人ずつ順番に喋ってもらえないでしょうか!? スピーク1人ずつ! スピーク1人ずつ!」
「We’re not suspicious at all! Well——no, I can’t vouch for the others, since we only happened to be here at the same time…… But I myself am a researcher in molecular engineering at a university in England! I’m not suspicious, truly!」
“僕たちは決して怪しいものじゃないんだ! いや、たまたま居合わせただけだから他の人たちの身元は保証できないけれど、僕はイギリスにある大学で分子工学の研究をしている者でね! 怪しくないんだよ!”
「You can’t expect academic titles to impress a child. So then—how about it, young lady? Won’t you join me for a cup of tea and a little chat? There are just a few things I’d like to ask」
“子ども相手に学問の権威が通用するわけないだろう。どうだいお嬢さん、おじさんと一緒にお茶でも飲んでお喋りしてみないかい? 少しだけ聞きたいことがあるんだ”
「How about it, young lady? I’ve some lovely sweets, so might you let me have a little look at that necklace of yours?」
“どうだいお嬢さん、美味しいお菓子があるから、私にそのネックレスを少し見せてはくれないだろうか?”
「Are you lot grown men trying to snatch a child? What a disgrace to any gentleman! Don’t you dare steal a march on me!」
“お前らは子どもを攫う大人か! 紳士の恥さらしめ! 抜け駆けをするな!”
「How much stock is there? And is it possible to place a reservation right here and now?」
“在庫はどれくらいありますか!? この場で予約をすることは可能でしょうか!?”
「Yes, regarding the purchase — will there be a limit on quantities? Will reservations be on a first-come, first-served basis? Or by lottery? And if by lottery, will the method be fair?」
“そうだ、購入に関しては個数制限はありますか!? 予約は先着順でしょうか!? それとも抽選でしょうか!? 抽選の場合は抽選方法は公平なのでしょうか!?”
「あわわわわわ、一気に喋るからAIも変な文章生成してるぅ……わー! 助けて鎬さーん!」
「静かに静かに静かに静かーにっ! お前ら全員1列に並んでくださいやがりませやーっ!!」
なんだか楽しくパニック状態であった店内に、秋水は横隔膜に力を落として大きな声を張り上げながら突入した。
低い声を更に低く。
脅しを掛けるように一喝する。
ぎょっとしたように、カウンターに詰め寄っていた明らかに日本人じゃない面々が秋水へと振り向いた。
カウンターの椅子に座って目を回していた祈織が、びくぅ、と跳ね上がった。
「うわぁ! ヤクザまで来たー!!」
「私です栗形さん!」
「はっ、しゅ、秋水くーん! ヘルプ! ヘルプですー!!」
この質屋の店主である栗形 祈織は、両手をバタバタと振り上げて助けを求めていた。
その首には、白銀のネックレスが輝きを放っている。
そして、カウンターには達筆な字で、こんな張り紙が貼られているのだった。
『The necklace I'm wearing is expected to be released next month. It's the latest creation by the same artisan who crafted that mysterious anklet』
"あの不思議なアンクレットを制作した職人による最新作。現在私が着用しているこちらのネックレスは、来月より販売開始となります"
何故だろう、祈織が研究者の面々に追い詰められていても、まるで悲壮感が出てこない(・ω・`)
ま、祈織だから良いか(思考放棄)
【秋水④】幼く、小さく、声は高く、筋肉はない、当然ながらそんな時期が秋水にもあった。その時期には友達みたいな子もいた。今はいない。いなくなった。