ウチの庭にダンジョンがあります   作:ShilonkS

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222『ちっちゃい人と、ちっちゃい人』

「それではすみません、本をお借りいたします。明後日には返却いたしますので」

 

「慌てなくていいよー。それより、お姉ちゃんの送り狼よろしくなんだよー」

 

 渡巻邸の玄関先。

 秋水は渡巻 紗綾音に対し、深々と頭を下げていた。

 手には青い花柄をあしらった可愛らしいトートバッグ。中にはファンタジー系統の事典が10冊入っている。なお、トートバッグは可愛いが、持っている秋水のベクトルは正反対であり、あまりに似合っていなかった。

 秋水がトートバッグを持った瞬間、「鞄が可哀想……」とかホザいた紗綾音の髪の毛をぐしゃぐしゃにしてやった。後ろで聞いて思いきり噴き出した沙夜は、怖いので手が出せない。

 そんな紗綾音に対しても、事典を借りることができたのはありがたいことなので、秋水は素直に頭を下げている。

 そのお礼を受け取っている紗綾音の髪は、まだちょっと乱れていた。

 

「紗綾音、ちゃんと言葉の意味分かってる?」

 

「お前、律歌先輩を変なところに連れてったら、ただじゃおかないからな?」

 

「沙夜ちゃん!?」

 

 そして、秋水の隣でわたわたと慌てているのが、紗綾音の姉、律歌である。

 紗綾音とお揃いの青いニット帽にダッフルコート。コンビニ以外の外で会うときの律歌はだいたいこの防寒セットなので、秋水からしたら見慣れたいつもの律歌の格好だ。

 ぐるる、と低く唸りながら秋水を睨んでくる沙夜を、慌てながら律歌は止めている。

 紗綾音がチワワなら、沙夜はドーベルマンだろうか。

 なるほど、律歌は2匹も犬系女子を躾けていて大変そうだ。

 2人ともなに言ってるの、と顔を赤くしながら怒っている律歌を後ろから眺め、秋水は軽く同情した。

 

「お姉ちゃん、駅前の方に連れて行かれそうになったら防犯ブザー鳴らすんだよ?」

 

「鳴らさないよ!? そもそも私、駅前の方に用事なんだよ!?」

 

「律歌先輩、あいつが先に律歌先輩の用事に付き合いますとか言い出したら注意して下さいね」

 

「それって普通に親切心なんじゃないかな!?」

 

「その、お泊まりになりそうなら私の方に連絡してね。ちゃんとお父さん誤魔化しておくから」

 

「そんな連絡絶対しないからね!? ちゃんと帰ってくるからね!?」

 

「律歌先輩はちゃんと用意ありますか? ホテルのって信用できないんで、私のだったらあげますけど……サイズがちょっと……」

 

「なんの話してるのかな沙夜ちゃん!?」

 

 女が3人で姦しいと書く。

 まさにその通り、秋水の目の前で紗綾音と沙夜が律歌を2人がかりで心配し、律歌は目を回しながらツッコミをいれている。大変そうである。

 いや、流石にそろそろ可哀想か。

 

「お2人とも、そんなに心配でしたら、一緒に来られては?」

 

「やっぱ行く!!」

 

「まってサヨチ、お馬さんに蹴られちゃうんだよ」

 

 助け船のつもりで2人に声を掛けたら、律歌に詰め寄っていた沙夜がやや食い気味に手を上げながら向かってこようとするのを、紗綾音が呆れたように押し止める。

 馬に蹴られるわけがない。

 相変わらず、紗綾音は秋水と律歌の関係を誤解しているようだ。

 律歌に対して失礼な勘違いをしている紗綾音を、秋水もまた呆れたような目で見る。

 なんでもかんでも色恋沙汰に結びつけようとするなチワワ。

 

「せっかく久しぶりに律歌先輩に会えたのにぃ……」

 

「サヨチ、どんだけお姉ちゃんのこと好きなのかな?」

 

 なお、わりと真面目に落ち込んでいる沙夜は見ないことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、なにか2人がはしゃいじゃって、すみませんでした」

 

 紗綾音と沙夜と別れ、渡巻邸からある程度離れたところで、今度は律歌が深々と秋水に頭を下げてきた。

 姉とは大変である。

 秋水はチワワとドーベルマンの世話をしている律歌に同情しつつ、いえいえ、と軽く首を横に振った。

 

「楽しそうでなによりです」

 

「楽しそうと言うか、楽しんでる感じでしたね……特に紗綾音」

 

 ふ、と律歌が遠い目をする。

 お疲れさまである。

 現在、秋水と律歌は祈織の店、質屋 『栗形』 へと向かっている。

 白銀のネックレスを納品だ。

 これは秋水の用事である。

 ファンタジー系の事典を一通り読ませてもらった秋水は、そのまま渡巻邸より退却することにした。

 そのとき、律歌も用事で出掛けると言いだし、今に至る。

 至るというか、至らされたというか。

 面白かったら事典を貸すよ、と言ってくれた紗綾音が、ついでに律歌を途中まで送ってあげて、とか言い出したのである。

 まあ、方向は一緒だしな、と秋水は軽く了承した。

 びっくりしたのは律歌の方だ。

 わざわざ悪い、と慌てて遠慮して、だったら私が最後まで送る、と沙夜が立候補しだし、気の利かないお馬鹿さんは抑えて抑えて、と紗綾音が沙夜を押し止め、そこでまた一悶着はあった。

 そして、祈織の店には律歌と一緒に行くことになった。

 何故だ。

 秋水が祈織の店に行くと知った律歌が質屋に興味を持って、それを見た紗綾音は、だったら2人で行っちゃえ行っちゃえ、と囃し立てたのである。

 なお、紗綾音は祈織に会いたがっていたし、沙夜は律歌について行きたがっていた。

 だったら女子3人で出掛けりゃ良いものを。

 あのクソチワワめ。

 律歌に少し遅れ、秋水も遠い目をした。

 

「まあ、竜泉寺さんも珍しくテンションが高かったですし、学年末試験が終わって2人ともはしゃいでしまったのでしょう」

 

「え?」

 

 2人が秋水と律歌の関係を邪推する感じできゃいきゃい騒いでいたのを思い出しつつ、とりあえず秋水は2人をフォローしておいた。

 別にフォローをする必要などないかもしれないが、紗綾音は律歌の妹である。流石にシスコン気味の姉の目の前で、その妹をコキ下ろすわけにもいかない。

 沙夜も律歌によく懐いているのか、べったり甘える感じでテンションが高かったので、きっと試験明けのテンションで騒いでいたのだろう。

 そう思いながら秋水が言うと、律歌は何故か首を傾げた。

 

「沙夜ちゃんって、いつもあんな感じじゃないんですか?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「…………そうですね、いつもあのテンションです」

 

 沙夜は律歌の前ではあんな感じなのか。

 秋水は頭の片隅で考えながら、とりあえず大きく肯いて律歌に同意することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試験勉強は必要なのか、という雑談をするくらいで、道中は特に何事もなく祈織の店に到着した。

 ちなみに雑談は、秋水と律歌は勉強に対する考え方が似通っているせいで、学力試験のために勉強するとか本末転倒だよね、という感じでわりと盛り上がった。互いに一般的な感覚から自分がズレているのだと自覚している分、同じ感性を持っている人と喋る機会が少ないのだ。

 

「はー、おしゃれなお店ですね」

 

 祈織の店に近づきながら、その外観を見て律歌が感心したように褒める。

 思わず秋水は質屋の方を2度見してしまった。

 お洒落、だろうか。

 新装開店を疑われるくらいに店を綺麗にしたものの、もとより和風な作りの店である、お洒落と言うよりも渋いと表現した方がいいような気がする。

 よく言えば燻し銀といった感じだ。

 お洒落と言うには煌びやかさが足りないんじゃなかろうか、と思いつつ律歌を見下ろす。

 まあ、女子の感覚、というやつだろうか。

 秋水は深く考えないことにした。

 

「それを聞いたら、栗形さんも喜ぶと思います」

 

「栗形さん……お店と同じ名前ですね。店長さんですか?」

 

「はい、栗形 祈織さんです。あの質屋を切り盛りしている店長で、先月に店の改装を頑張っていらしたので、褒められたら喜びますよ、きっと」

 

「……えーっと、この前、紗綾音が 『ちっちゃい店長の祈織ちゃん』 とかいう人がいるお店って、もしかして」

 

 何故か律歌の顔が、さぁ、と青くなった。

 あのチワワめ。

 秋水は思わず天を仰いだ。

 

「……恐らく、あの質屋の栗形さんのことですね。一昨日には栗形さんに絡んでらしたので」

 

「あわわ……菓子折買ってきた方がよかったでしょうか……」

 

「だ、大丈夫ですよ。栗形さんにも、そんなに迷惑は……あ」

 

「え?」

 

「……大丈夫ですよ。栗形さんは、そんなに心の狭い方ではないので」

 

「迷惑掛けちゃったんですね!?」

 

 そう言えば、陽キャが、とか言って紗綾音とはばっちり相性が悪そうだった祈織の様子を思い出して、秋水は何事もなかったかのように掛ける言葉を仕切り直した。

 だが、何かを察してしまった律歌を見るに、仕切り直しは失敗したようだった。残念。

 アワアワと律歌が焦っているが、もう祈織の店に到着である。

 まあ、別に祈織も紗綾音に対して本気で怒っていたわけでもなかったので、大丈夫だろう。

 秋水はそんな風に気楽に考えながら、ひょいと店の中を覗いた。

 祈織と鎬が、カウンターのところでノートパソコンを見ながらなにかを話し合っている。

 客に扮した外国人はいない。

 平和そうだ。

 律歌もいるし、裏口から入る必要もなさそうだ。

 謝罪の菓子折を、とか言っている律歌を軽くスルーして、秋水は質屋の入口を早速開ける。

 

「あ、いらっしゃ……げ、この前の……あれ?」

 

 来店の音に素早く顔を上げた祈織は、見事な百面相を披露してくれた。

 営業スマイルをぱっと浮かべ、来たのが秋水だと分かっていつもの笑顔になり、その秋水の隣にいる律歌を見て紗綾音と思ったのか顔を顰め、律歌の背丈が小さいことから不思議そうに首を傾げる。内心の変化が手に取るように分かる分かる。

 なお、祈織が、げ、と漏らした瞬間に、律歌の口から、ひぃ、と軽い悲鳴のようなものが漏れ出ていた。

 

「いらっしゃい秋水。その子は?」

 

 140㎝組が互いを見て固まっている中、ゆるりとノートパソコンから視線を上げた鎬が秋水を見る。

 その流れで秋水は律歌を横目でちらりと見る。

 さて、実のところ秋水と律歌の関係というのは、地味に説明のし辛い関係だ。

 正直に言ってしまえば、律歌は秋水がよく利用しているコンビニのアルバイト店員であり、その関係性はただの客と従業員でしかない。

 一応は去年まで律歌も秋水と同じ中学校に通っていたので、先輩後輩の間柄と言えなくもないが、去年までは律歌と一切の関わりがなく、そう表現するのは躊躇う。

 友達では、ない。間違いなく。

 平たく言えば、ただの知り合いだ。

 しかも、知り合ったのは1ヶ月前くらいという、極々最近のお知り合い。

 ここに紗綾音がいたら、この駄犬の姉、と簡単に説明できるのだが、肝心なときにあのチワワがいない。ちくしょう。

 

「ちょっとした知り合い」

 

 少し悩んでから、上手い言葉が見つからなかった秋水は、律歌を手で指し示しながら雑に説明した。

 その律歌は鎬を見てから、美人さんだ、と滅茶苦茶びっくりしていた。

 鎬は確かにかなりの美人である。

 中身を知らなければ、だいたいそう思うであろう。

 は、と秋水は思わず軽く笑ってしまう。

 そんな秋水の内心を察したのか、鎬の眉間には軽く青筋が立っていた。

 

「あの、渡巻 律歌と申します! 一昨日はここで、紗綾音が迷惑を掛けたとのことでっ!」

 

 そして律歌ははたと我に返り、そのまま自己紹介をしながら、がばり、と顔を青くしながら頭を深々と下げる。

 迷惑は掛けていない、と言い切ることができなかった秋水の反応を重く受け止めてしまったようである。

 いきなり謝罪に入ってきた律歌に、鎬はなんのことかと首を傾げたものの、紗綾音に絡まれて実に迷惑そうにしていた祈織の方はすぐに気がついたようだった。

 

「ああ、やっぱり!」

 

 ぽん、と手を鳴らしながら祈織は声を上げる。

 

「ていうことは、あの紗綾音ちゃんのいも――」

 

「はい、紗綾音の姉です」

 

「――うと……あ、え、あね……あ、お、お、お姉ちゃんね! そっか、そうだと思いましたよ!」

 

 頭を下げながら続けた律歌の言葉に、少しだけ戸惑いながらも祈織は明るく律歌へ言葉を掛ける。

 絶対に紗綾音の妹だと思ったのだろう。

 誤魔化すように視線を逸らしながら冷や汗を浮かべた祈織を、鎬がジトッとした目で見ていた。

 まあ、律歌の背丈は、小学生低学年と勘違いされまくっている祈織と同程度しかない。

 対して、紗綾音は平均的な身長である。

 ぱっと見では律歌の方が妹だと思われるのも、自然なことかもしれない。

 ただ、子どもだと見られることに毎回激怒している祈織からすれば、罪悪感が物凄いのだろう。

 

「あ、紗綾音の方が背が大きいので、妹と思われるのはいつものことなんです。気にしないで下さい」

 

「店長、身長のことを揶揄されたときの対応は、この子のを見習った方が良いと思うわ」

 

 祈織が姉妹を逆に認識したのを悪いと思ったことを察したのか、律歌はぱっと頭を上げ、すぐに祈織にフォローを入れた。大人の対応である。

 対して、子どもにフォローを入れられた大人の方は、ぐ、と言葉に詰まる。

 ついでに鎬が後ろからちくちく刺してくるものだから、ぎ、と祈織は鎬の方を一睨み。

 

「店長、そうやってすぐにムキになるから、余計に子どもっぽいと言われるのよ?」

 

「……ぐぅ」

 

 リアルぐうの音。

 なにかを言う前に鎬に釘を刺された祈織が盛大に肩を落とす。

 

「あ、いえ、栗形さんはこのお店を立派に切り盛りされていると伺いました。このお店の改装も頑張ったとのことで、凄くおしゃれになっています。お若くてもしっかり店長の務めを果たしている栗形さんは、立派な大人の女性だと思いますよ」

 

 言い返す前に落ち込んでしまった祈織を見て、律歌は慌てて再びフォローに入る。

 棟区家の2人が思わず微妙な顔をしてしまった。

 鎬がアルバイトとして乱入してくるまで、この質屋は赤字が膨らんで廃業寸前にまで追い込まれていた。

 さらに店の改装は、全面的に鎬プロデュースである。

 白く明るく清潔感のある店内したものの、雑多な商品を並べざるを得ないリサイクルショップ状態の店内はごちゃりとしており、お洒落と表現するには飾り気が足りない。

 ついでに、この店の経営生命線は、秋水の持ち込んでいるダンジョンのドロップアイテムである。

 しかも、そこから検出されてしまった未知の元素というもののせいで、その取り扱いに関して日本政府と真っ向対立中で、交渉の前線に立っているのは鎬である。

 別に祈織を馬鹿にするつもりは一切ないし、働いてないとも思っていない。

 しかし、律歌のフォローで口にした言葉の内容には、ちょっと思うところがある秋水と鎬であった。

 ただ、その律歌のフォローを聞いて、ぱぁぁ、と祈織は顔を明るくしたのだった。

 

「そ、そうかな? やっぱり私って普通に大人のレディーですよね?」

 

「はい! 栗形さんは立派に大人のレディーです!」

 

「そ、そ、そうだよね!? ちょっと身長が小さいってだけで、子ども扱いされる謂われなんかないですよね!?」

 

「そうです! 栗形さんは大人です! 元気出して下さい!」

 

「ですよね!? 秋水くん! その子めっちゃ良い子ですね! ご贔屓にしちゃいましょう!」

 

「単純すぎて心配になるわ店長」

 

 励まそうとよいしょしてくる律歌の言葉を真に受けて、調子に乗って満面の笑みになる祈織を、鎬は呆れたように見た。

 なんだとぉ、と祈織は再び鎬を睨む。

 

 睨んだ先の鎬は、美女である。

 

 顔だけで食べていけるであろう、下手な女優ならば裸足で逃げ出すくらいに暴力的な顔面偏差値。

 バストサイズは明らかに平均以上であり、男受けすることは間違いないが、かと言って同性から敵視されるほど下品と評される線は越えていない。

 ウエストはしっかりと細く、ボディラインのメリハリがしっかりとしている。

 腰から下の肉付きも程よく、痩せすぎと心配されるほどに細くもなく、太いと思われるほどの肉ではない。

 すらりと背が高く、全体的なバランスは整っており、クールビューティーといった雰囲気。

 まさに大人の女性。

 美女である。

 鎬を睨んでから、祈織は静かに自身の胸に両手をぺたりと置いた。

 顔はロリっとしている。

 上から順に、つるーん、すとーん、しょぼーん。

 ちびりと背が低く、全体的なバランスは残念であり、小学生低学年女子児童といった雰囲気。

 まさに子ども。

 ロリである。

 

「…………泣きそう」

 

「わー! 落ち込まないで下さい!」

 

「うぅ……なんて良い子……紗綾音ちゃんとは大違い……」

 

「本当にウチの紗綾音がご迷惑をおかけしちゃったみたいでゴメンなさい!」

 

 いきなり表情に影を落として再び落ち込んでしまった祈織に駆け寄って励ましを入れ、流れるように謝罪に移行する律歌の様子を見て、大変そうだなぁ、と秋水は他人事のように考えながら、持っていた鞄をゴソゴソと漁って紙袋を取り出した。

 白銀のネックレスである。

 今回は武器に魔力を浸透させ、身体強化の魔法が応用できないか確かめながらコボルトをぶっ殺していたので、ネックレスの数は昨日よりも少し少ない。

 この紙袋を祈織に渡そうかと思ったが、コントみたいなことを繰り広げている現状では渡しづらい。

 しかたなく秋水は鎬へと歩み寄る。

 

「はいこれ」

 

「はい、確かに受け取ったわ。ありがとう秋水、愛してるわ」

 

「ひょぇっ!?」

 

 そのまま紙袋を鎬へと渡す。

 中身については察してくれるはずなので、律歌の前では中身が白銀のネックレスであることは口にはしない。

 それは鎬も理解しているのであろう。特になにも質問することなく、鎬はいつもの軽口とともに秋水から紙袋を受け取った。

 その軽口に、大袈裟に反応したのは律歌である。

 

「え、え、え、え、あ、あ、愛して――――え、む、秋水さん、その美人さんって……!?」

 

「あー……」

 

 鎬の軽口を真に受けてしまったようである。

 秋水はすぐに訂正を入れようと口を開いて。

 

「秋水の女よ、お嬢さん」

 

「えええええええええええっ!?!?」

 

 カウンター越しに秋水の腕を胸に抱き締めるように手繰り寄せ、律歌に向けて鎬が爆弾を投げつけた。

 その冗談に、大袈裟なくらいに律歌は驚く。

 まさに、跳び上がらんばかりに、といった様子だ。

 仰天とはこんな様子を指すのだろうか。

 なに言ってんだこの女。

 むぎゅりと鎬の胸に抱き締められた腕を、秋水は軽く振って脱出させながら鎬を白い目で見た。

 ふふん、と鎬は得意げに鼻を鳴らしている。

 いつもの真顔ながらも、どこか律歌に対して警戒心を滲ませているようにも見えた。

 なお、鎬を白い目で見ていたのは秋水だけではない。

 

「鎬さん、牽制の仕方がエゲつない & 大人げない」

 

「だって店長、この子、たぶん私の敵よ?」

 

「どこまでブラコン拗らせちゃってるの鎬さん……」

 

 秋水と同じく鎬を白い目で見ながら祈織がツッコミを入れる。

 第2回、なに言ってんだこの女。

 鎬の意味分からない発言に、秋水は再度じっとりと白い目を向ける。

 そこで、目を白黒させていた律歌が何かに気がついたように、あ、と声を上げた。

 

「ブラコン……秋水さんのお姉さんですか!?」

 

 さらに驚いたように、律歌が秋水の鎬の顔を見比べながら言う。

 似てない、と思っているのだろうか。

 律歌の問いに、やっぱり勘違いされるよな、と秋水は軽く溜息。

 しかし、鎬の方はどこか誇らしげに胸を張った。

 

「そう、秋水の最愛のお姉ちゃんよ」

 

「いえ、叔母です」

 

「ぶっ殺すわよ?」

 

「こえぇよ。事実じゃねぇかよ」

 

 即座に訂正を差し込んだ秋水の手を握りながら、鎬が首を傾げながら殺害予告をしてくる。サイコパス過ぎる。

 そんな秋水のツッコミに、ぎょ、と再び律歌は驚いたように目を剥くのだった。

 しまった、素の言葉遣いを漏らしてしまった。

 

 

 





 チワロリは相性悪くても、ロリロリの方は相性良好です。
 なお、鎬さんは性格上大半の人と相性悪いので、たぶん渡巻家のどっちとも相性悪いです。

 ……あれ、チワワは誰とでも仲良くなるタイプのはずなのに、メインキャラからは悪く思われまくってる(;´Д`)
 頼む美寧ちゃん、仲良くしてあげて(^_^;)
※ なお美寧ちゃんもねじ曲がった性格上、鎬さん以上に大半の人と相性悪い。


 &、投稿したのが大晦日なので、イラストが少し。
・生成AIのイラストが「嫌い」という人は閲覧しないよう気を付けてください。
・私は生成AIに関して肯定派ですが、否定派の理屈は十分に納得もしているつもりです。仲よくしてぇ(;´・ω・)
・私の中のイメージなので、完全に自己満足でございます(*'ω'*)

【渡巻 律歌】(わたりまき りつか)

【挿絵表示】


【渡巻 紗綾音】(わたりまき さやね)

【挿絵表示】


【錦地 美寧】(にしきじ みねい)

【挿絵表示】


【栗形 祈織】(くりがた いおり)

【挿絵表示】
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