セーフエリアに帰った秋水は、買ったばかりの羊革コートをハンガーに掛け、それを見てから盛大に溜息をついた。
渋くて大人っぽい、マットブラックなコート。
単体で見れば、間違いなく格好いい。
そして、秋水が着ても、間違いなくよく似合っている。
「……殺し屋スタイル」
呟いてから、ガクリと項垂れる。
本物のヤクザじゃん。
古着屋で偶然に遭遇した須々木の言葉が脳裏に蘇り、再び秋水の胸を見事に抉り取った。
傷つく。
自分の容姿に関してダメ出しをされるのは慣れているから平気だが、良いと思って買った服装にダメ出しをされるのは、予想以上に心理的ダメージがデカすぎる。
秋水はしょんぼりとしながら、もそもそと制服を脱いでから部屋着に着替えた。
そしてアイマスクを手に取って、ごそごそと布団に潜り込む。
「うぅ……」
クラスの女子に買ったコートをディスられたのを引き摺りながら、秋水は昼寝に入った。
またの名を、不貞寝とも言う。
「まあ、昼間は着ないから大丈夫だろ」
2時間近く寝て起きた秋水は、早々と気持ちの切り替えができていた。
須々木からはヤクザスタイルと吐き捨てられたが、どうせ深夜のジムに行くときに着るための羊革コートである。基本的には誰に見られるということもないだろう。見られたとしても、美寧くらいだ。
なら大丈夫だな、と肯きながら秋水は布団から起き上がる。
「さて、楽しくダンジョンアタック……の前に、そうだ、ゴミ」
起きた秋水は早速ダンジョンアタックに行くための準備をしようとしたところで、セーフエリアの片隅に寄せていたものを見る。
ライディングジャケットやヘルメットなどだ。
どれもしっかり壊れてしまっている。
今朝、というよりも未明程まで行っていたダンジョンアタックで、色々とあって防具がほぼ一式全部破損してしまったのだが、片付けを後回しにしてしまっていたのだ。
秋水は脱ぎ捨ててある防具の山に近づいて、ひょいとヘルメットを持ち上げる。
顔面を守るべきシールドが、ない。
しかも所々が溶けかけている。
「こりゃダメだな」
見たら分かることを呟きつつ、秋水はヘルメットを横に置く。
ライディングジャケットも、右肘から先がさようなら。安全靴は左足のが半分とろけるチーズ。ライディンググローブに至ってはそもそも右手が行方不明。
無事っぽいのはズボンだけなのだが、よく見たらぽつぽつと融解している箇所がある。使えると言えば使えるが、万全かと問われたら違う、といったところか。悩ましい。
「とりあえず、新しいの出さないとな」
ほとんどが駄目になっている防具を確認してから、秋水は軽く溜息を1つ。
律歌に教えてもらったジャケットなどのバイク装備は、品名と番号を控えており、ネットショップで同じサイズのをまとめ買いしてストックはしている。色違いだが、そこはどうでも良いだろう。
出費が痛い。
ダンジョンアタックは、やはり色々とお金が掛かる。
防具は壊れてしまったし、なんならバールも1本紛失した。
一方で、ダンジョンアタックは出費が嵩むが、同時に儲けもある。
ドロップアイテムだ。
それを売ったお金があるので、トータルで見れば現状は黒字だ。と言うか、スーパーブラックな超大儲け状態である。
株式用に持っている特定口座の方に鎬から入金されている金額は、先週だけでもビックリするような額であった。夏頃には安い家が買えちゃうな、と若干遠い目をしたくらいだ。
まあ、本来であればダン・ジョンさんとかいう正体不明の職人さんとかいう架空の人物に流すはずの資金であるので、ある意味納得の金額かもしれない。
もっとも、それは未知の元素とかいう付加価値のブーストが乗っかっている現状の話で、将来的にはどうなるか分からない。
むしろ、その未知の元素とかいうやつのせいで、今は大変なことになっている。
ドロップアイテム以外にも、資金調達を模索した方が良いだろうか。
んー、と秋水は小さく喉を鳴らしつつ、壊れたバイク装備を余っている袋へ詰める。
「あ、そう言えば」
そこで秋水は、壊れたバイク装備と共に雑に転がしていたある物を見つけた。
ドロップアイテムでお馴染みの白銀でできた、綺麗な装飾品だ。
頭全体をくるりと囲むであろう飾り環。
サークレットだ。
白銀のサークレット。
頭を飾るアクセサリーである。
これは秋水でも分かるアクセサリーだ。
西遊記で孫悟空の頭にはまっている輪っかみたいなものだ。確か緊箍児とか言ったか。孫悟空の頭を締め付けて痛みを与える拷問染みた制御装置である。
あれ、緊箍児はサークレットと呼んで良いのだろうか。
白銀のサークレットを手に取ってから、秋水は軽く首を傾げる。
まあ、頭を飾っている輪っかなのは同じなのだから、緊箍児もサークレットなんだろう、たぶん。
恐らく西遊記の強火なファンから刺し殺されるであろうことを思いつつ、秋水はそのサークレットをマジマジと見る。
角ウサギが落とすアンクレット。
コボルトが落とすネックレス。
その2つとは、どうにも趣が違う。
あまりアクセサリー系統には詳しくない秋水は、なにがどう違うのかという説明を具体的にはできないが、そんな秋水ですら今までとは違うと分かるような作りであった。
アンクレットもネックレスも、どちらも作りは非常にシンプルだった。
凝った装飾は施さず、アンクレットは板をひん曲げた輪っか、ネックレスは小さい輪っかを繋げたチェーン、といった具合だ。
祈織は凄い凄いと言うものの、秋水にとってはその凄さが良く分からない。
綺麗なアクセサリーというのは、なんかこう、ごちゃごちゃと装飾を施して、うねうねとした模様を刻み、ぐにゃりと複雑な形をしたものの方が良いのではないのだろうか。素人なのでよく分からないけれど。
そんな飾りっ気のない装飾品という、矛盾を感じるシンプルなのが白銀のアンクレットとネックレスである。
しかし、このサークレットの方は、明らかに趣が違う。
白銀の細長い金属が複雑に絡み合い、それが伸びて輪を作っている。
花冠のようだ、と言えば良いのだろうか。もう少し規則正しい絡まり方をしていたら、絹織物のようだ、と表現できたかもしれない。
ただ、秋水は拾った瞬間、こういうチョコレート菓子あったな、というロマンチックの欠片もない感想を抱いてしまった。
そして、このサークレットの最大の違いは、石が飾られていることだろう。
綺麗な石だ。
色は深い新緑。
やや透明で、奥の台座である白銀の色と混ざって見える部分もある。
光を受けて輝くこの石は、宝石、だろうか。
生憎だが宝石にも詳しくない秋水は、この石が宝石というジャンルに当てはまるかどうかすら分からないので、あくまでも綺麗な石、と言うべきかもしれない。
装飾品にはてんで疎く、本当に分からない。
うーむ、と秋水は唸ってから、スマホを取り出して白銀のサークレットをパシャリと正面から撮影する。
「とりあえず、栗形さんに聞いておくか」
撮影した写真を添付して、これは宝石なのでしょうか、という文章と共に、祈織へメッセージを送信。
ド素人の秋水が首を捻っているよりも、ここは宝石にも詳しいらしい祈織に聞いた方が良いだろう。確か、宝石鑑定士の資格が飾られていたはずだ。
メッセージを送信してから、秋水はスマホを閉じて立ち上がる。
壊れた防具であるバイク装備の予備を出さないと。
スマホとサークレットを棚に置いてから、秋水は荷物を取りにセーフエリアの縦穴を昇って家に戻ることにした。
秋水は、とんでもない爆弾を祈織に投げつけたという、その自覚は少しもなかった。
そして新しくおろした防具を身に纏い、秋水は意気揚々とダンジョンを降りる。
セーフエリアから地下2階へ。
地下2階から地下3階へ。
背中にはいつものリュックサック。腰にはバールやらポーチやら剣鉈などが取り付けられたいつもの腰ベルト。そして右手にはメインウェポンである巨大バールだ。
なお、左手にはデカいビニール袋を持っている。中には壊れたライディングジャケットやヘルメットが入っていた。
「やって来ましたこんにちは」
超低音で鼻歌を歌いつつ、秋水は地下3階へと辿り着く。
階段を降りてすぐは小さめの部屋で、スライムがぽよんぽよんと暢気に這いずり回っているだけのゾーンだ。
「ほーい、スラ太郎どもー、美味しい餌の時間だぞー」
ダンジョンの地下3階に降りて秋水が真っ先に行ったのは、そこにいるスライムに向けて壊れたバイク装備を投擲することだった。
スライムというモンスターは、ゴミ処理装置としてあまりに優秀なモンスターである。
左手に持ったビニール袋から取り出したヘルメットやらライディングジャケットやらを、ぽい、とスライムに投げつければ、近づいてきたそれらに対し、スライムは素早く触手を伸ばしてキャッチして、体内へと引きずり込む。
後はこのまま待っていれば、スライムの中に飲み込まれたものは溶けてなくなるのだ。
曜日を守ってゴミ出ししなくても良いのは、地味に助かる。
ダンジョンの入口である縦穴を、ゴミを持って上がるのは意外と面倒だったので、スライムというゴミ処理モンスターの存在はありがたい。
「ついでに包装のゴミもお食べー」
新しいバイク装備をおろしたので、それを梱包していた袋やら箱やらも秋水はスライムに投げつける。
それらのゴミもキャッチして、スライムは半透明の体内に取り込んで食べてしまう。
ゴミ類を飲み込んだスライムが、ぽよぽよと揺れている。
喜んでいるのだろうか。
うん、きっと喜んでいる。そう思っておこう。
一通りゴミの処分が終わった秋水は、気を取り直してこの部屋の出口へと視線を向けた。
「おっと」
部屋の出口の目の前に、1体のスライム。
ぷよんぽよんと体をわずかに波打たせながら、ずりずりと少しずつ移動している。
意図的に出口を塞いでいるというよりも、適当に動いていたら、たまたま出口の近くまで来てしまった、という感じだろう。
でも、邪魔だ。
スライムの移動速度は遅い。
デカい図体で動く速度はナメクジ並みである。
しばらく待ってたら普通に通れるだろうけど、うん。
秋水は空になったビニール袋を、地下3階入口の階段のところに置いてから、巨大バールを握る。
巨大バールに、魔力を供給。
供給しながら秋水はゆっくりと歩き始める。
向かう先は、当然部屋の出口。
この先に進まねば、コボルトと殴り合いができないのだ。
巨大バールに魔力を流し込む手応えが変わってから、遅れて巨大バールより魔力の回収を平行して始める。
魔力の擬似的な循環、よし。
「……名前、決めてねぇな」
秋水は呟きながらスライムに近づき、すっと巨大バールを前に構えた。
そして、スライムに向けて巨大バールを突き出して。
「ちょっと退いておくれー」
ずり、とスライムを巨大バールで押し退ける。
まさに柔らかぷるぷるの水饅頭を突いたかのように、ぷにりとスライムは突かれたところから変形しつつ、ずりずりと押されて強制的に出口の前から退かされてしまった。
安全に通れるくらいにスライムを移動してから、巨大バールを引く。
転がそうと思ったのだが、意外と床面との接着力が強いようだ。
不思議な生態である。
いや、生き物じゃないか。
「すまんね。ゴミ処理よろしくー」
秋水はスライムに対して気楽に手を振りつつ、地下3階最初の部屋を後にした。
殴って殺す。
斬って殺す。
本日も絶好調でコボルトを殺して回る。
身体強化の魔法に続き、武装強化の魔法を使えるようになった途端、コボルトとの戦いはほとんど一方的な展開であった。
「よっと」
コボルトが横凪ぎに振るった棍棒を、秋水は躊躇うことなく脇腹で受け止める。
ゴッ、と鈍い音。
しかし。
「おやすみなさいなまた来世!」
プロテクターも入っていない箇所に思いきり棍棒を喰らったはずの秋水は、全く怯むこともなくバールを上段から振り下ろし、コボルトの脳天を叩き割る。
読んで字の如くだ。
叩いて、割った。
スイカ割りよろしくバールでコボルトの頭を粉砕すると、ぐるりと振り返って次の標的に狙いを定める。
この部屋のコボルトは3体。
1体は今、頭蓋骨大爆発に処して殺したので、残り2体。
1体は棍棒を振りかぶって向かってきている。
もう1体は、生意気にもスライムを盾にして様子を窺っている。
コボルトの殴り殺したバールを軽く投げ、くるりと半回転させてからキャッチする。
握ったのはバールのL字側。
そのL字の部分に指を掛けるようにして持ちながら、腕ごとバールを思いきり後ろへと引き絞る。
「ブゥゥ、メラン!!」
そして即座にバールを投げる。
投擲先は、こちらに向かってきた方のコボルト。
腕を振るって前に出し、重心を移動させるように足を踏み込み、投げた瞬間に踏み込んだその足で地面を蹴った。
バールを投げたコボルトとは、別のコボルトの方へと、走る。
そのコボルトはスライムの背後に隠れている。
真っ直ぐ進むとなると、スライムが邪魔だ。
秋水は全身に魔力を流す。
全身。
全身の定義。
ヘルメット。
ライディングジャケット。
ライディンググローブ。
ライディングパンツ。
安全靴。
身に着けた防具、全てが一塊に、全身。
各種装備にはすでに魔力が満ちている状態だ。
そこへさらに魔力を流し、同時に回収する。
回収した魔力を別の所に流し、同時に回収する。
回収した魔力はまた別の所へ流し、同時に回収する。
その魔力循環を意識せずとも行えるのが理想だが、どうしても最初の段階はまだ意識してしまう。
だがしかし。
「武装強化!」
流す魔力に色をつける。
身体強化とは、また別の色。
別の魔法の色彩が、魔力の流れに沿うように身体強化の魔法の上から一気に広がる。
魔法は、一度発動すれば、あとは半自動だ。
そしてさらに、別の色も魔力に落とし込めば。
「鎧!」
声を張った次の瞬間、秋水は大きく跳躍した。
走って、跳ぶ。
前方は、スライムだ。
スライムを盾にするように隠れていたコボルトに、秋水は一直線に走っていた。
迂回などしない。
スライム突っ込み、跳ぶ。
跳び越える。
秋水が跳び越える瞬間、にゅっ、とスライムが秋水に向けて触手を伸ばした。
そうなることは予測済みだった秋水は、伸ばされた触手に向けて右の手の平を向け。
ばんっ、と触手を手で弾き、さらに高く跳ぶ。
ふわ、と秋水の巨体が宙を舞った。
跳び箱の如くスライムを跳び越えて、隠れていたコボルトの頭上にこんにちは。
無重力のような一瞬の浮遊感。
犬の表情など分からないが、コボルトが呆気に取られたようにぽかんと口を開けて秋水を見上げている。
にぃ、と秋水の口元に笑みが浮かんだ。
「爆砕重力加速度キィィィィックッ!!」
いつものように思いつくままに適当な掛け声を脊髄反射的に叫びつつ、秋水は落下するエネルギーを上乗せするようにしてコボルトの頭を踏みつけるようにして真下に蹴り抜いた。
『ギャッ!?』
コボルトが潰れるように倒される。
爆砕してない。残念だ。
上から蹴り抜いたことで落下のスピードを殺した秋水は、1歩だけタタラを踏みながら着地する。
同時に、腰ベルトからバールを引き抜き、平側を倒れたコボルトに向け。
「あ、ヤベ」
流れるようにコボルトへバールを突き刺してやろうとした次の瞬間、素の呟きと共に秋水は動きを急停止する。
ぴた、と秋水が動きを止めるとの、びた、と倒れたコボルトの足に触手がくっつくのは、ほとんど同時だった。
『グギャアアアァッ!?』
「やっちまった」
そして急激に引き摺られるコボルトを秋水は見送る。
スライムだ。
先程秋水が跳び越えた、スライムである。
そのスライムから伸ばされた触手が、倒れたコボルトの足をキャッチしてしまったのだ。
哀れ、倒れたコボルトが、スライムの射程圏内に入ってしまったようである。
捕まってしまえば、もはやそれまで。
コボルトにスライムから脱出する術はない。
「南無三」
バールを持った手とは逆の手の平を立てながら、秋水はスライムに捕まってしまったコボルトに黙祷を捧げる。
にゅもんっ、とコボルトの体がスライムに飲み込まれた。
魔素が勿体ない。
秋水はコボルトを張り倒す向きを間違えたことを悔やみつつ、気を取り直して最後のコボルトの方へと顔を向ける。
投擲したバールはコボルトに向かって命中コースだったはずだが、そのコボルトは元気に棍棒を変わらず振り翳しつつ秋水に向かってきている。
大したダメージが見受けられないのは、たぶん切り払ったんだろう。小癪な。
「刈り取ってやんよ!」
バールを構え直し、秋水は再び地面を蹴った。
「鎧……は、なんかしっくりこなかったなぁ……」
しっかりコボルトを3体殺し終え、いや正確には2体殺して1体スライムに横取りされてから、魔素とドロップアイテムを回収し終えた秋水は、ブツブツ呟きながらダンジョンの通路を歩く。
実にどうでもいいことで悩んでいる。
悩む必要など全くないのだが、どうにもスッキリしないと言うか、引っ掛かりを感じると言うか。
んー、と喉を鳴らしつつ岩肌の洞窟通路を進んでいく。
次の部屋の入口は、もう目の前である。
「まあ、名前はなんでもいいけどさぁ……」
言うわりには、どこか納得していない風な秋水は、ふぅ、と一息。
さて、次の部屋だ。
その入口近く立った秋水は、背負っていたリュックサックを下ろして床に置く。
リュックサックは基本的に、戦う部屋には持ち込まない。
部屋の中に持ち込んで、なにかの拍子に荒らされたりスライムに捕食されたりしたら、さすがの秋水も泣いてしまう。
ポーションやらタオルやら非常食やらはともかくとして、スマホを紛失したら困るどころの話じゃないのだ。それに、ドロップアイテムも入っているので、なるべくリュックサックは安全地帯に置いておきたい。
リュックを置いてから、サイドに装着している腕時計をちらりと確認する。
まだ夕方前。
午前授業様々といったところか。時間的余裕はまだまだたっぷりある。
巨大バールを右手に持ちつつ、左手でリュックサックに括り付けていた片手斧を取り外し、握る。
握りながら、魔力を供給する。
巨大バールを始め、他の武器、そしてヘルメットなどの防具には、すでに魔力を流し込み終えており、供給と回収を平行して魔力循環を始めている。
片手斧に送る魔力の手応えが変わる。
流れるようにして、魔力循環に切り替える。
「さぁ……てと」
ゆっくりと立ち上がって、秋水は伸びをした。
美寧の筋トレ教室まで、まだ時間はある。
今日はあと何戦できるだろうか。
軽くストレッチをしてから、呼吸を整えるように大きく深呼吸をする。
「身体強化、60%」
体の中を巡る魔力に、色をつける。
まずは身体強化の魔法。
出力は扱いやすい60%。
体に力が満ちるのを感じつつ、再び深呼吸。
「武装強化」
次いで体の外の装備品を巡る魔力に、色をつける。
武装強化の魔法。
そう言えば、こちらは出力を決めることはできるのだろうか。
試してなかったな、と思いつつ、ゆっくりと息を吐き出す。
「よし」
準備OK。
さて、次の戦いだ。
秋水は気負うことなく、軽やかな足取りで、次の部屋へと踏み入れることにした。
その前に、閉じられていた扉を、蹴り開ける。
「お邪魔しやがるぜこの野郎っ!!」
ダンジョン。
地下3階。
その最奥。
秋水は、しれっとボス部屋に突撃していた。
出迎えたのは10を超えるスライム。
そして、体長2mはあるだろう、秋水よりも大きな体格の巨大化したコボルト。
巨大バール並みの長さがある棍棒を持ったデカいコボルトは、間違いなくボスコボルトだ。
それが、3体いた。
いつの間にかスライムに適応してやがる(;´Д`)
ぬるっとボス戦ですよ!