ウチの庭にダンジョンがあります   作:ShilonkS

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30『日々の掃除を怠けるといつか痛い目に遭う』

 美寧の筋トレに付き合った後、タイムアップとなった美寧と別れてから秋水自身の筋トレをじっくりと行って、満足した頃には冬の空が明るくなり始めるような時間であった。

 やはりポーションをちびちび服用しながらの筋トレは、今までにないレベルの捗り方だ。

 セット間の休憩がなくなる。筋疲労もなくなる。最初から最後まで1セット全力集中で追い込みきることを延々と続けられる。その上で、超回復を行う休息期間を経ることなく、その日の内に筋トレの効果を感じることができる。

 筋トレをしたことがある人ならば、それが如何に無茶苦茶なトレーニングかが分かるだろう。

 まあ、やり過ぎると周りからの目がもの凄いことになるのだが。

 高重量を、短すぎるセット間休憩で、黙々と、常にフルパワーで、チキンレッグなど知らんと言わんばかりに各種取り揃えたスクワット祭りを開催している時点で、周りからの目線は凄いことになっているのだが。

 100㎏のバーベルを持ち上げながらオーバーヘッドスクワットを、10秒休憩20セットぶっ通したときは流石に後ろがざわついて、まずい、とは秋水も思った。

 馬鹿みたいな筋トレは、自宅で自重トレをするときか深夜で誰も居ないジムで行うことにしよう。

 化け物みたいなトレーニングする奴がいるよ、みたいな視線をちくちくと背中に受けながら、秋水はジムを後にすることにした。

 雪が降りそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、秋水」

 

「げ」

 

 その帰り道、あまり遭遇したくない人物とばったり出会してしまった瞬間、秋水は思わず回れ右してジムに戻ろうとしてしまった。

 

「げ、って何よ。何で逃げようとしてるのよ。ちょっと待ちなさいよ秋水。あなたのハウスはそっちじゃないわよ」

 

 逃亡は失敗した。

 ばっちりと顔を合わせた時点で逃亡も何もないのだが。

 微妙な心情をそのまま表情に浮かべながら秋水はそろりと振り返るも、現実は非情だ。

 深紅のマウンテンパーカーに同じく深紅のファーキャップ、というかなり目立つ格好をしているが、それが不思議と似合っている女性が仁王立ちしている。

 

「……フード付きなら帽子必要なくない?」

 

「秋水はファッションセンス死んでるの? そんな今から工事現場から休憩で出てきた職人みたいな格好をして」

 

「職人のファッション馬鹿にすんなよ」

 

「彼らはファッションじゃなくて仕事として効率を求めた格好をしているのよ」

 

 呆れたように言葉を斬り返すのは、秋水の叔母、鎬(しのぎ)であった。

 何故か空のキャリーカートをからからと引き、鎬がずんずんと秋水に近寄ってくる。逃げたい。

 

「朝の早くからお出かけとは随分と健康的ね。お姉さんは安心したわ」

 

 言いながら近寄ってくる鎬は、表情の読みにくい真顔のまま、秋水の目を真っ直ぐに捉えっぱなしの状態である。

 え、なに、怖い。

 若干引きながら身構える秋水の目の前まで鎬は近くに寄り、と言うか互いの体が触れる寸前までというギリギリの距離まで詰め寄って、変わらず真顔のまま鎬はじろりと秋水の顔を見上げる。

 

「秋水、口を開きなさい」

 

「え、なんで、怖……」

 

「カートのタイヤを口の中にねじ込まれたくなければ言うことを素直に聞きなさい。川沿いを歩いてきたのよ」

 

「え、脅迫の文言が斬新で逆に怖いかどうか分からない……」

 

 パーソナルスペースはどうしたというような距離感のまま、まっすぐに秋水を見上げながら、今度は訳の分からない脅し文句を口にする。情緒不安定なのだろうか。

 何やら様子のおかしい鎬に目を白黒させながらも、秋水は少し迷った後、とりあえず口を開けて見せることにする。

 口、臭くないかなぁ、大丈夫かなぁ。

 若干ズレた不安を感じながらも秋水は口を開けるも、鎬の方はそれを気にすることなくじっと秋水を見上げた後。

 

「見えない。屈みなさい」

 

「えー……」

 

 理不尽である。

 そしていつもより高圧的である。

 一体どうしたというのか。

 戸惑いつつ秋水は視線を合わせるように中腰になると、鎬はポケットからスマホをさっと取り出し、あまり慣れていない手付きでスマホのライト機能をONにしてからそれで秋水の口の中を照らし始めた。

 歯医者さんごっこにでも目覚めたのだろうか。

 そして口の中をまじまじと見られるとか、意外と普通に恥ずかしい。何で天下の往来で羞恥プレイを喰らわないといけないのだろうか。

 

「秋水、私の目を見なさい」

 

「いや、さっきから見てるじゃん」

 

「口を閉じない」

 

「えー……」

 

 さらに至近距離で見つめ合うとかいう、耐久にらめっこまで追加される地獄。

 そこからしばらく、鎬は秋水の口と目を交互にじっくりと観察をする。

 朝で良かった。

 人通りの少ない道路で良かった。

 何をされているのかさっぱり分からないが、傍から見たら変な光景なのであろう自覚はある。

 20秒くらいだろうか、たっぷりと視姦してきた鎬は、やっと口を開いて。

 

「キスして良いかしら?」

 

「キャリーカートぶんどってタイヤを口の中にねじ込んでやろうか? それとも歩いてきたとか言う川沿いまで担いで行って頭から突っ込んでやろうか?」

 

「あらやだ、冗談よ」

 

「やめような、甥相手にセクハラかますのは本当にやめような?」

 

「1割は冗談よ」

 

「それほぼ本気なんよ。9割本気って意味なんよ。マンホールに物理的にぶち込まれるのとブタ箱に法的にぶち込まれるの、温情で選ばせてやろうか?」

 

 真顔のままで分かりづらいが、それでも鎬の雰囲気が少し緩んだ。

 そして緩んだせいで軽口も漏れ始めた。別の恐怖である。

 秋水はすぐに中腰姿勢を止めてすくりと立ち上がり、ついでに鎬の頭をファーキャップごとがしりと掴んだ。

 

「あら大胆」

 

「今日は9時って言ってたじゃん。まだ7時台なのに何で鎬姉さんがこの辺りにいるんだよ」

 

「デートが楽しみで早く到着しちゃったの」

 

「うわキモ」

 

「ちょっと秋水、流石に女性に対してそれは失礼と思わないの? たった4文字で心を綺麗に抉り取ってくるとか本当にやめましょう?」

 

 頭を掴まれながらもぶーぶーと文句を言う鎬は、すっかりといつもの調子である。

 さっきのは何だったのだろうか。

 それは気になるも、直近の問題としてはそちらではなく、何でこの時間に鎬がここにいるのかという問題である。

 家に来ると言っていたのは、確かに9時という約束だったはずだ。

 それが10分前に到着したとかならまだ分かる。だが、まだ1時間以上前なのだ。

 流石に早い。

 

「……あのな、一応俺、今から家に帰って掃除しようとしてたんだよ」

 

 肩を落としながら秋水は溜息を吐き、鎬の頭を解放する。

 正直な話として、客を招くとなるとちょっと埃が気になる状態なのだ。ゴミ屋敷ではないし、秋水自身はあまり気にならないレベルなのだが。

 鎬が来るまでの間にぱぱっと掃除しようと思っていたのだが、見事に破綻してしまった。

 

「あら、おもてなししてくれるのね。嬉しいわ。でも掃除とか気にしなくても良いのよ」

 

「こっちが気にすんだよ。鎬姉さん、あんまり掃除してこなかったから分かんないだろうけど」

 

「そうは言っても元々私も暮らして……あ、ごめんなさい、そうね、掃除は必要よね」

 

「え、何で急に聞き分け良くなるん?」

 

「だって、秋水も男の子なんだから……」

 

「違うから、そういう隠蔽的な掃除じゃなくて普通に綺麗にする方の掃除だから」

 

「年上系やお姉さん系のものだったらテーブルに出しておいて大丈夫よ。私、ちゃんと勉強するわ」

 

「鎬姉さん、もしかしてお酒入ってる? 凄いセクハラを稲妻右ストレートでぶっ放してるよ? 自覚できてる? 警察呼ぶ?」

 

 朝の早くから何を口走っているのだこの叔母は。

 もう一度鎬の頭をガッチリ鷲掴みにして、押し退けるように物理的な距離を取る。

 げんなりした顔をするそんな秋水を、頭を片手でホールドされたまま、そして真顔のまま、鎬はそれでもじっと変わらずに秋水を見上げて。

 

 

 

「……麻薬じゃないわね」

 

 

 

 ぼそっと、小さな声で一言。

 

「…………いえ、ごめんなさいね。連日で秋水と逢えてテンションが上がったみたいね」

 

 しかし漏らした言葉などなかったかのように、頭を掴まれたまま首を振り、鎬は大人しく謝罪を口にする。

 きょとんとするのは秋水の方だ。

 麻薬?

 何の話だ?

 一瞬その疑問が頭に浮かんだものの、すぐに思い当たる節が記憶に引っかかる。

 ああ、ポーションの話か。

 あれを麻薬の類いではないかと疑われていたことを思い出し、秋水は思わず納得してしまう。まじまじと目を見ていたことも、口の中を観察されていたことも。

 

「え、やっぱあの水、なんか問題あったのか?」

 

「あら?」

 

 白々しくも聞いてみた秋水の言葉に、鎬はさっと口に手を当てる。

 真顔のままだが、たぶんこれ、意外そうな表情だ。

 

「もしかして、口に出てたかしら?」

 

「や、思いっきり喋ってたやん」

 

「気が緩んだわ」

 

 心の声が漏れたようだ。

 独り暮らしかつ仕事のし過ぎで独り言が増えているのかもしれない。別の意味で心配になってしまう。

 しまったな、と言うように、いつもの真顔をやや崩れてしょんぼりとしてしまった鎬がちょっと可愛そうになってしまい、秋水はすっと再び頭を離すと、すぐに鎬は頭を下げてきた。

 

「ごめんなさい。流石にちょっと気分を悪くさせてしまうわね」

 

「いや、別に大丈夫だよ。いつものセクハラの方がちょっとなって感じだし」

 

「ガチ恋距離で私が一方的にドキドキして得した感じになってしまったわ」

 

「流石にちょっと気分悪いわぁ」

 

 本当に謝る気あるのだろうかこの叔母は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、軽い雑談という名の軽口による殴り合いをしつつ、秋水は鎬と共に家に帰ることになった。

 どうやら本当に1時間以上早く鎬は家に突撃してくる予定だったらしい。

 そんなにポーションを早く手に入れたかったのだろう。気持ちは分かる。鎬自身はあれからすぐにポーションの買い取り金額についてなど、その場で取引内容を決めようとかしたくらいである。

 流石に寒いので、先に家に行こう、という話に落ち着いた。

 幸いにして距離は遠くない。鎬の歩幅に合わせても10分程度で到着した。

 

「ただいま、っと。鎬姉さん、ちょっと待ってな、スリッパ出すから」

 

 玄関を開け、先に家に入ってから秋水はシューズボックスからスリッパを一足取り出す。

 赤いスリッパ。

 鎬が好んで使ってる色のスリッパだ。

 

「ほい、んじゃこれを……あれ?」

 

 そのスリッパを置いてから秋水は振り向く。

 てっきり鎬は玄関をくぐって来ると思ったのだが、開けた玄関先でじっとしていた。

 元より小さな家だ。靴を脱ぐスペースも広いわけではないので、体の大きな秋水がいては純粋に邪魔だから入れないだけであろう。

 そう思って秋水は慌てて靴を脱いで自分のスリッパに履き替えるが、鎬はまだ玄関先にいた。

 

「…………」

 

「おーい、鎬姉さんやーい」

 

「…………ええ、そうね」

 

 真顔のままで感情は読み取れない。

 それでも秋水の呼びかけに、鎬は一度頷いてから足を踏み入れ、踏み入れようとして一瞬だけ固まり、それから玄関をくぐった。

 ああ、なるほどね、と秋水も一度頷く。

 

「ほい、おかえり、鎬姉さん」

 

「…………えっと」

 

 何を考えているかは分からない。

 何を思っているかも分からない。

 ただ、野暮なことを尋ねる気もない。

 

「おかえり、鎬姉さん」

 

 もう一度繰り返す。

 別におかしなことは言ってない。

 5年程前までは、ここは鎬の家でもあったのだから。

 

「……ええ、ただいま、秋水」

 

 どことなくほっとした様子の鎬を見てから、秋水は顔を背けるようにして背を向ける。

 そう言えば、あれから帰ってなかったもんな、とは思い出せるが、それで鎬の心情を推し量る気には秋水はなれない。

 

「まずは、そうね、挨拶……」

 

「先にシャワー浴びてきて良い?」

 

 何か言いかけた鎬の言葉を遮るようにして、秋水は背負っていたリュックサックを下ろしながら振り返らずにそう尋ねる。

 別に、振り返ったところで、鎬の表情は相変わらず真顔のままだろう。表情筋が死んでいる叔母なのだ。きっとそのはずである。

 

「筋トレした帰りだから汗が気になるんだよ、流石にさ」

 

「……そう」

 

「10分くらいで上がるから、適当に待っててよ。父さんと母さんの部屋の方に行ってても良いし」

 

「…………そうね。ありがとう、秋水」

 

「あいよー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とは言ったが、ぶっちゃけ秋水はジムの方で既にシャワーを浴び終わっていた。

 いや、別に良いのだが。筋トレした後はなるべく筋肉を温めておきたいし。

 特に大した理由もなく2回目のシャワーを浴びながら、秋水は風呂場から出るタイミングをそれとなく窺う。

 10分くらいと言ってしまった以上、烏の行水みたいなことはできない。鎬の別口の用事が終わるのを見計らってから出られればそれが一番良いのだろうが、流石に風呂場からそれを察することは無理である。

 

「はぁ、めんど……」

 

 ついつい本音を漏らしつつ、とりあえず秋水はここからの予定を考える。

 まずは鎬にポーションの売却だ。

 色々根掘り葉掘りと聞かれる可能性はあるが、そこはもう、のらりくらりと躱すしかない。と言うよりも、真面目に答えてもデメリットが大きい。危ないからとダンジョンへ潜るのを禁止されるのも、頭大丈夫かと精神科に連れて行かれるのも。

 とりあえずは、どっかから汲んできた天然水で、正確な場所は覚えてないで通すしかない。

 ポーション買い取って貰ったら、さっさと帰って頂こう。

 そして、鎬をどうにかしてご退去願ったら、ダンジョンセーフエリアの床改造計画に取りかかるとしよう。

 抜き取った雑草はまだあるので、それを敷き詰めて畳を入れたら良いだろう。雑草足りなさそうである。簀の子みたいなのがあれば良いだろうか。ホームセンターで使えそうな物がないか探すべきだろうか。

 寝泊まりをセーフエリアで行うことを考えると、着替えなどもセーフエリアでした方が手っ取り早そうだ。だとしたら、衣類ケースを持って行くのが良いだろう。

 後は何を持っていこうかなと考えながら、秋水は頭からシャワーを浴びて。

 

 

 

「……いや、ちょっと待て」

 

 

 

 ふと、嫌なことに気がついた。

 と言うか、何で気がつかなかったのだろうか。

 

「やべ」

 

 気がついた途端、さぁ、と秋水の顔が青くなる。

 シャワーを止める。

 何故だろう、背中から冷や汗がおはようございますである。

 まずい。

 いや、まずい、かもしれない。

 

 

 

 雑草を根絶やしにした庭に、テントをそのままにしている。

 

 

 

 鎬が来ているにも関わらずに、だ。

 

 

 

 がちゃんと風呂場のドアを開けて慌てて飛び出すが、流石に全裸かつずぶ濡れの状態で出て行く訳にもいかず、秋水は大急ぎでタオルで体を拭き上げる。丸刈り頭で本当に良かった。ドライヤーなど不要だ。

 それから下着だけ着て脱衣所から飛び出、そうとして渋々かつ素早く部屋着も着ていく。鎬の前へ下着姿で飛び出すのは自殺行為だ。

 そして身支度を最低限調えてから飛び出して。

 

 

 

「あら、早いじゃない」

 

 

 

 はい詰んだー。

 用事一つを手早く終わらせたのは鎬も同じだったのか、既にダイニングテーブルの椅子に腰を下ろしていた鎬は驚いたように秋水へと顔を向ける。

 若干目の周りが赤いが、今はそんなことはどうでも良い。

 マウンテンパーカーを脱いだ下が、何故かきっちりスーツ姿なのも今はどうでも良い。

 秋水へと振り向く前、鎬は思いっきり窓の方へと顔を向けていた。

 

 庭を見ていた。

 

 バチクソ見ていた。

 

「お、おおお、おう、うん。もう良いかなー、って」

 

「重ね重ね気を遣わせて申し訳ないわ。私は大丈夫よ」

 

 動揺を隠し切れていない秋水の言葉にも、鎬は丁寧に一度頭を下げた後、何故か改めて窓の方へと顔を向けた。

 と言うより、思いっきりテントの方へと目を向けた。

 はい詰んだー。

 

「随分と庭が綺麗になったわね」

 

「ん、お、おう、雑草抜き頑張ったからな、うん」

 

「草だらけのときは緑の見える風景鬱陶しいくらいにしか思ってなかったけど、なければないで寂しいわね。それに広く感じるわ」

 

「そ、そーだなー、うん」

 

「秋水、何を慌てているのかしら?」

 

「う」

 

 鎬が再び振り向いた。

 にやぁ、と口元が笑っている。

 おい、いつもの鉄仮面はどこにいった。随分と楽しそうじゃないか。いや、これは明らかに慌てている様子を見て楽しんでやがる。

 秋水は平静を保てなかった己の失態を悟ったが後の祭りだ。

 

「あー、鎬姉さん、あの水、あの汲んできた水、買いたいとか何とか……」

 

「ええ、そうね。本題はそれよ、天然の生水よ」

 

「うん、持ってくるから、今持ってくるから、うん、ちょっと待ってて」

 

 話題を逸らすようにポーションのことを口にすると、鎬はすぐに真顔に戻り、ポーションの話題に食いついてくる。

 よし、そのままテントのことは忘れてくれ。

 期待するような目で見てくる鎬からそろりと秋水は距離を取る。

 テントのことは認識しているだろうが、まだテントの中には興味を持っていない。

 大丈夫、まだバレてない。

 そんな希望的観測を秋水は抱いて。

 

 

 

「じゃあ、待ってる間にあそこのテントの中を見てきて良いかしら?」

 

 

 

 にやぁ、と笑った鎬が、悪魔のようなことを口にしやがった。

 詰んだ。 

 

 

 

 

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