助けて旧神様!(旧題クラインの壺ナウ)   作:VISP

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本編終了後の世界についてのお話です。


エピローグ  終わった後も続いていく

 

 綺麗な月明かりの夜、アーカム郊外に位置する公園で、1人の女性が佇んでいた。

 銀髪碧眼白磁の肌、典型的な白人の美女、否、絶世とも言える魔性の美貌を持った女性がただ1人で佇んでいた。

 その手には掌大の淡い光を放つ球体、彼女/彼の母親だった人の魂があった。

 魂は不意に風に吹かれる様に自然に浮かび上がり、数度リーアの頭上を回った後、音も無く宙に溶け、消えていった。

 

 「産んでくれてありがとう。さようなら。」

 

 彼女の眼は、母の魂が輪廻へと還っていった事を確かに見届けた。

 

 「良いのか?」

 「あぁ。あの人は普通に生きて、そして死んだ。それだけで十分さ。」

 「だな。ま、言いたい事も聞きたい事もあったけど、そりゃ蛇足ってもんだ。」

 「多少言えただけでも良しとすべき、か。」

 

 何時の間にか、否、いたにはいたが姿を消していた半身たる魔道書の言葉に、普通ではない手段を取るべきではないと返す。

 実際、既にマスターテリオン程とはいかずとも、鬼械神相手にも戦える程度に人外な彼女/彼にとって、人1人の魂を縛る事は簡単だ。

 だが、それはしない。

 それは死者への、母への侮辱にして冒涜に他ならないから。

 

 「母さーん!お肉焼けましたよー!」

 「そろそろ食べよー!」

 「ははは、普通に肉を焼くと言うのも楽しいものだね、エセル。」

 「はい、マスター。あ、そちら焼けています。」

 「おっと、アレクにアリス、そろそろ肉を取ってくれ。焦げてしまうよ。」

 「「はーい!」」

 

 なお、本日は家族4人+叔父夫婦を加えた6人でバーベキューをしている。

 …材料は全て普通の鳥、豚、牛と野菜各種なので、心配はありません。

 

 

 …………………………………………………

 

 

 こうして、邪神の陰謀は打破され、世界に平和が戻った。

 少なくとも、暫くは平和になるだろう。

 しかし、この世界は邪神の脅威と破壊ロボの性能が世間に認知されている。

 到底何も起こらないなんて期待できない。

 というか、飛翔編を考えると何か起こるかなんて決定している様なものだ。

 

 あの戦いの後、私達は地球に戻った。

 と言っても、既にこの地球は5年近い時間が経過し、自分の知るそれとは差異が出来ていた。

 そう言えば、ドクターが自分達を発見できたのも奇跡に等しいとか。

 マスターテリオン&エセルドレーダも同様だ。

 それに対し、九郎とアル=アジフは見つからなかった。

 まぁあの二人に関しては別の地球か旧神化して邪神ハンターをやってる事は簡単に予想できるので、実はあまり心配していない。 

 あいつらの息子がこっちに来たら、またぞろ気合いを入れ直さねばならないが、それまではキ○○イの鎮圧や外道魔術師の討伐とかをしながら子供達とのんびり過ごそう…。

 

 ドクター達はあの後、覇道財閥の下で日々研究開発に勤しんでいる。

 大抵馬鹿騒ぎを起こすが、被害が出始めればうちの一家の誰か、或いはウィンフィールド辺りに鎮圧される。

 しかし、被害以上の成果を出してるので、研究費用を出し渋られる事だけは無い。

 

 覇道財閥は今現在も世界経済をけん引し、あの戦いの後遺症を癒し、人類の対邪神戦力を整えようと奮起している。

 なお、総帥である瑠璃には主戦力がデモンベインを目標とした魔術戦力ではなく、独自改良・開発された量産型破壊ロボ(有人式)が主流なのは実に微妙な思いなのだとか。

 

 そして、我らがミスカトニック大学では…

 

 

 ………………………………………………………

 

 

 「私が教師、ですか?」

 「その通り。君こそ適任だと私は考えている。」

 

 主婦業務に専念していたある日、アーミティッジ教授に唐突に呼び出された。

 

 「今まで君は陰秘学科に籍を置き、幾度も教鞭を執っていた。だが、それに専念していた訳ではない。」

 「まぁ、確かにそうですが…。」

 「我々だけでは教えられる事に限界がある。生徒達には最高峰の魔導師からの教えを直接受けさせてあげたいのだよ。」

 「私にシュリュズべリィ先生になれ、と?」

 「そこまでは言わん。だが、我々も何時までも現役ではいられんのだよ。」

 

 邪悪と戦うのは1人では不可能だ。

 それが彼のラバン・シュリュズべリィ教授の思想であり、信念だった。

 そのために己が窮地になろうと、その結果として道半ばで果てようと、あの人は最後まで躊躇わなかった。

 対し、私は即戦力化できない者に用は無く、専ら非常勤の講師としての役割を果たしていた。

 それが、正式に陰秘学科のカリキュラムに組み込まれ、後進を指導する立場になる。

 

 「委細承知しました。その話、お受けしましょう。」

 「おお!やってくれるか!?」

 「た・だ・し!」

 

 喜色ばむ教授に釘を刺す。

 あんまり調子に乗らせると、苦労ばかり持ち込んでくるのだこの人は。

 

 「私は人にものを教えるのが上手い方じゃありません。フィールドワーク優先でお願いします。」

 「(お主が苦手レベルなら何人教師が止める事やら…。)解った。その様にしよう。」

 「ありがとうございます。」

 「では、今後ともよろしく頼むよ。」

 

 こうして、私は正式にミスカトニック大学陰秘学科の教師となったのだった。

 

 

 …………………………………………………

 

 

 こうして、私/俺達の物語りは一区切りを得た。

 幸い、今暫くはあの混沌からの干渉も無いだろう。

 だが、この平和が何時までも続く訳ではない事は重々承知している。

 なので、これからも私/俺達は形を変えて戦い続ける。

 少なくとも、人類が自らの意思と力で邪悪と戦えるまでは。

 

 

 

 

 

 

 「で、なんでうちの大学にいるんだ大導師殿?」

 「ははは、今の僕はぺルデュラボー、一大学生さ。それ以上でも以下でもない。」

 「マスターは暫くは極普通の人間として生活なさるとの事。どうかご内密に。」

 「まぁ良いが…頼むから問題だけは起こさないでくれよ?」

 「ちなみにサークルも作ったんだ。是非顧問になってほしい。」

 「あ、そう…。で、名前と内容は?」

 「オタ部。活動内容は今後流行するであろう電子ゲームの研究。」

 「………………………………ちなみにそれ、誰から聞いた?」

 「アーリから。」

 「よし、モン○ンしようぜ!」

 「私はス○ブラを…。」

 「よし、順番にどっちもやろう。」

 

 「その前にネーミングを直せぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 以下、次への布石

 

 

 「ふんふふんふーん♪」

 「博士、今度は何を作ってるロボ?」

 「おぉエルザよ!今回は我輩、あのデモンベインの動力機関を再現できないか挑戦しているのである。」

 「獅子の心臓ロボ?今更どうして?」

 「今後、化け物共や他の破壊ロボと戦うなら、現在の核融合炉ではエネルギー不足が起きる事必至!ならば先んじて並行世界より無限の魔力を汲み出す守護神銀鍵機関を我輩の科学力で作成し、今後も我輩こそが科学の叡智の最先端を直走っていると証明するのであーる!」

 「ふーん。でもこの装置、何か光ってるロボよ?」

 「ゑ?…のほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?何故に起動しているのであるかーーーッ!?緊急停止スイッチは何処――!?!」

 「ロボ!……あれ、スイッチ壊れちゃったロボ。」

 「ちょおまwwwwww ってもう手遅れなのである!今すぐ退避ー!?」

 「ろ、ロボーーー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 




これにて本当に完結。
皆さん、お付き合いありがとうございました!




まぁまだまだリクエストとかやるんですけどねw

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