助けて旧神様!(旧題クラインの壺ナウ)   作:VISP

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今回は皆大好きドクター・ウェェェェェェェェェェェスト!が大活躍!

シリアス? あいつなら途中で死んだよ。



日間    3位
日間加点 15位
週間    1位
月間    6位
ルーキー  8位
感想数  178

何故こんな事になってしまったんだ…!


最終回 下 キ○○イに何とか 前編

 「現状は今説明した通りだ。」

 

 

 傷ついた泥神礼賛の精霊、アーリが区切った。

 

 覇道財閥の地下秘密施設、急ピッチで修復されているデモンベインの傍らにの人影がいた。

 アル=アジフを失った大十字九郎。

 主と記述の一部を奪われた愚神礼賛の精霊、アーリ。

 ブラックロッジを抜け出して、現在療養しなければならないドクター・ウェスト。

 本来、不倶戴天の敵同士、或いは同じ敵相手に共闘するだけの関係の面々は同じ脅威に対し、欠けた力と足りない時間、無い知恵を絞って策を考えていた。

 

 「デモンベインは本領発揮出来ずに修理中。私は鬼械神の記述と主が無いから機神召喚は不可能。リトル・エイダは復活したてだし、アレクの技量が不安だから戦闘は避けたい。ドクターも負傷中かつ破壊ロボも無い状態だから同上。」

 「実質、手立ては無い、か?」

 「幸いというべき、人外っつっても全身バラバラにすればアンチクロスの連中はティベリウスを除けば死ぬ。機神召喚をさせない内に火力を叩き込めばギリワンチャンって所だな。」

 「実際、我輩としては時はプラチナの精神で色々動きたいのであるが、死ぬから止めろとエルザに止められているのであ~る。」

 「つっても、来るだろうな…。」

 「そこは間違いないだろーよ。今まで散々煮え湯を飲まされたんだ、私ならここらで徹底的に叩いて二度と立ち上がる事も出来ない様にするね。」

 

 装備・人員・時間。

 何もかもが足りない状況で、それでも抵抗者達は悪足掻きの準備を着々と進めていた。

 

 「さてドクター、デモンベインの方は?」

 「今はエルザが最終調整をしているのであ~る。まぁ最低限は動けるが、武装はバルカンとレムリア・インパクトだけなのであ~る。」

 「じゃ、私らは施設の防衛設備を強化しとくよ。こういう時こそリトル・エイダの出番だ。アイツはかなり役に立つ。」

 「あ~…その笑顔、レポート忘れてきた時のアシュトン先生にそっくりだな…。」

 

 

 …………………………………

 

 

 「主、面を上げて欲しい。」

 

 その頃、ネクロノミコン:機械言語訳の精霊リトル・エイダは蹲ったまま顔を伏せている主の下にいた。

 無理もない、とリトル・エイダは考えた。

苦楽を共にしてきた母が囚われ、生死不明という事実に動揺を隠せないアレク。

 だが、彼はまだ10年程度しか生きていない子供だ。

 例え、その素質が成長すれば単独で地球を滅ぼし得る程のものだったとしても、今の彼は魔術を齧っているだけの歳相応の子供なのだ。

 

 「主は今、とても辛いと思う。しかし、ただ下を向いたままでは何も出来ない。」

 「……………。」

 

 「もう直ぐアンチクロスが攻めてくる。此処にか、或いはアーカムか。それとも他に行くのか。」

 「……………。」

 

 「どの道、多くの人が死ぬ。貴方と同じ思いを抱く人が増え続ける。」

 「……………。」

 

 「私は機械の一部として望まれて生まれたから、こんな時に何と言えば良いのか解らない。」

 「……………。」

 

 「でも、主がこの現状を打破したいと言うのなら、行動しなければ始まらない。」

 「………九郎さん達は?」

 

 「現在、対応策を実行中。この後、私も参加する。」

 「エイダも?」

 

 「私にしか出来ない事がある。現状、デモンベインを除けば、メタトロンと私が最大戦力となる。」

 「エイダは、怖くないの?」

 

 「私にも感情は存在する。しかし、邪悪に対する感情は最初から一つしか抱いていない。」

 「それは、何?」

 

 「怒り。理不尽を行う彼らへの憎悪。その存在を許せないという激情。私の父たる覇道鋼造は、その一心を胸に私を書き上げた。」

 「………凄い人だったんだ。」

 

 「それは主の母も同じ。」

 「母さんも?」

 

 「あの人もまた戦い続けている。ずっと、ずっと。」

 「母さんはどんな理由だったの?」

 

 「『人々が理不尽に泣かぬように、子供達が笑って暮らせるように。当たり前の生を謳歌できるように。』」

 「母さんらしいや。」

 

 此処に来て、漸くアレクは立ち上がった。

 その顔には既に涙の跡も、絶望の痕も無い。

 何処かすっきりとした、晴々しい顔だった。

 

 「少しは元気が出た?」

 「うん。ありがとう、エイダ。」

 「当然の事をしただけ。」

 

 暫く動かないでいたからか、アレクはう~んと身体のあちこちを解した。

 

 「ちょっと長く凹み過ぎたね。母さんに怒られちゃうよ。」

 「問題ない。主はまだまだ子供。」

 「うん、でも『やるべき事があるなら、躊躇わず全力でいく』って約束してるから。」

 「そう。」

 

 復活した主の姿を記憶を眺めながら、リトル・エイダは次の用件を口にした。

 

 「それと、アーリから伝言。」

 「へ?叔母さんから?」

 「『元気出たら少し話す事があるから出頭な。』との事。」

 「さっきも思ったけど声真似上手いよね、エイダって。」

 「これは合成音声。では、私も用事があるので行ってくる。」

 「うん、いってらっしゃい。また後でね!」

 

 

 ……………………

 

 

 対クラーケン戦後 覇道邸地下空間の一室にて

 

 「よーす。具合はどー?」

 「アーリ叔母さんは相変わらずだね…。」

 

 もう一人の家族の様子にアレクは安心したのか呆れたのか、それとも両方か、取り敢えず気が抜けた様に溜息をついた。

 

 「気にすんなっての。で、お前の親父の事なんだけどさ。」

 「あー、あの黒人神父の姿をしたナニか?」

 「そー、それ。今回は神父だったかー。」

 

 どっこいしょ、と爺臭い掛け声と共に、積まれたコンテナにアーリが腰掛ける。

 その表情は苦虫を噛み潰した様な、実にいやーな感じだ。

 

 「アレを親とは思うな。血縁があろうが無かろうが、アレは周囲を引っかき回す事しか考えていない。その目的にしたって大抵碌でもないもんしかない。極稀に違うが、そりゃ先への布石に過ぎない。」

 「母さんとの関係も?」

 「そうだな。つか、元々そのつもりでアイツを生み出したからな。」

 

 益々苦そうな顔をするアーリの言葉に、アレクがギョッとした。

 

 「それ、近親相姦なんじゃ…。」

 「少なくとも、リーアも私も知らなかった。あの野郎は知ってたみたいだがな。」

 

 ケッ!と吐き捨てるアーリ。

 邪神崇拝の奉仕種族の一部にはそんな風習もあると言うが、自分の母がそうであった事へ驚きを抱く。

 同時に、それを仕掛けたアレには怒りが沸々と湧き上がった。

 

 「言っとくが、アレをどうこうしようなんて考えるなよ。今のお前じゃ遊ばれてボロ雑巾みたく使われて、てきとーに捨てられるのが関の山だ。」

 「でも、母さんは戦ってるんだよね?」

 「私らだって四六時中戦ってる訳じゃねーぞ? ただ、そうしないとこっちまで被害が来るだけで…。」

 「叔母さん?」

 「あーもう!そうだよ、確かに私ら戦ってばっかりだよ!だって見逃すとか後味悪過ぎんだろ!?お前の世話シスターに任せてさ!」

 

 だから言いたくなかったんだよー!私はロリコン探偵じゃねー!とコンテナの上で悶え転げるアーリ。

 何気に短パンの隙間からショーツが見えているが、その程度はよくある事なので気にしないアレク。

 女所帯にここまで慣らされたお前の明日はどっちだ。

 

 「さってと、次はちょっとリトル・エイダ借りるかんな。」

 「そう言えばあの子も言ってたけど、何をさせるの?」

 「とっても素敵な事さ☆」

 

 キラリ―ン☆とアーリが歯を輝かせながら微笑む。

 すっごい悪い顔をしていた。

 

 「程々にね…。」

 「勿論勿論!ちゃんと適材適所で適度に頑張ってもらうさ!」

 

 

 ………………………

 

 

 VS ロードビヤーキー後

 

 「私、大活躍。」

 「うん、そうだね。かなりびっくりした。」

 

 またしても覇道の地下施設の一室で、此処の所恒例となった寛ぎの時間がやってきた。

 

 「私が操る機械は、鬼械神と同様の力を得る。そのため、鬼械神とでも通常兵器で戦闘可能。」

 「で、施設内の防衛兵器を操って、クラウディウスだっけ? アンチクロスに大ダメージを与えたんだっけ?」

 「もう少し火器があれば完全に追いこめていた。残念。」

 

 寛ぎと言うには、大分物騒な内容だったが、本人達は実に生き生きとしていた。

 

 「エイダって、自分を電子情報に換えられるんだよね?」

 「その通り。それがどうした?」

 「じゃあさ、ものは試しなんだけど…。」

 

 ごにょごにょごにょ…。

 後に、少年の思いつきは思わぬ方向へと進んでいく。

 

 

 ………………………………

 

 

 デモンベイン格納庫

 

 「おいーす、ドクターいるー?」

 「おぉう?その声は瑕疵付き本むsブゲリュッ!?」

 「人を傷者みたいな言い方すんな。」

 

 忙しなくあっちこっちに顔を出してるアーリがドクター・ウェストを訪ねてきた。

 ぶっちゃけ、何やらかすか解らないから積極的に絡ませたくない2人組である。

 

 「ドクター、そこで転がってないでこのデータ見なー。」

 「い、いや、転がしたのはお前なので…って何であるかこのデータ?」

 

 格納庫にあった端末に表示されたのは、とある図面だった。

 

 「前にてけとーに組んだ奴。ま、大本はあんたのだがな。」

 「んん!? こ、これはまた…凄まじいのであ~る!まるで冒涜的で狂気的な名状し難き山脈の様な!しかししかし探険隊は止まらぬ!新たな発見と未知への探求のために彼らはその先に何が待ち受けていようと進む以外の道は無く、それ故に待ち構える恐怖の下へ知らずに踏み込んでしまった!この後、恐怖の権化が彼らの前に姿を「五月蠅い。」しょごすッ!?」

 

 端末に表示されたデータを見て狂喜乱舞するドクターを、アーリが殴って現世へと帰還させる。

 ドクターは打撃の衝撃でその場でクルクル回った後にべちゃりと床へ沈んだ。

 

 「その通り。あんたの機体から取ったデータが大元(※嘘ではない)だが、これじゃ未完成なのは解るな?」

 「あだだだ…しかし、このままではどうやっても資材が足りないのであ~る。」

 「安心しな。お嬢ちゃんから許可は取ってきた。更に資材に関しては撃破した破壊ロボのジャンクを集めたし、強度面や処理能力に関しても宛てはある。あんたには是非これの作成をやってほしい。」

 「な、成る程。しかし、どうして我輩に?いや、確かに専門家ではあるが…。」

 

 その一言に、アーリがにまぁ…っと邪悪な笑みを浮かべ、あのドクター・ウェストが顔を引き攣らせた。

 

 「あんた、戦いが終わった後の事を考えてるか?」

 「ぬん?いや、我輩は過去を顧みず未来へ飛翔するために現在を全力で生きる主義であるからにして。」

 

その一言に、アーリはぐいと顔を近づけながら更に邪悪に表情を歪める。

 

 「あんたの今までのやらかしっぷりからして、事が終わったら真っ先に追求されるよな。」

 「あ!?」

 「だから、その前に何処かの保護が必要になる。出来れば、ブラックロッジ並に資金力があるスポンサーが。」

 「い!?」

 「覇道ならいけるが、今のままじゃあくまでデモンベインの修理業者でしかない。それも大事だが、代わりがいない訳でもない。」

 「う!?」

 「今後も研究を続けるには、あんただけの希少価値が必要なのさ。そのためにも、この図面のものがいる。」

 「え!?」

 「やってみたくはないか?純粋な、とはまだ言えないが科学の力でアンチクロスの連中を、あのアウグスティヌスにほえ面かかせたくはないか?」

 「お!?」

 「あんたの頭脳なら、何れ純粋な科学の力で鬼械神に、否、この世界を覆う邪悪に対抗できるだろうさ。そして今のどんな発明よりも、あんたとあんたの破壊ロボこそが最高で最優で最強なのだと世界に堂々と宣言できるんだぜ?」

 

 アーリは眼をぐるぐるにしながら、ドクターウェストへと「自分の欲に正直になれ」と囁く。

 彼とて学問の徒であり、研究者としての名声を求める欲もある。

 嘗ての死者蘇生の研究で大敗し、無二の友を無くした身ではあるが、それでもこれだけ言われると色々と込み上げてくるものもあった。

 

 「うぬぬぬぬぬぬぬ…解ったのである。ただし、ちゃんと我輩達の安全確保はよろしく頼むのであ~る。」

 「オーケーオーケー。契約は成立だ、大天才ドクター・ウェスト。これであんたの栄達は確定した。そして、私の全力でアンタ達の身柄を守る事を誓う。(ま、もし出来なくても、コイツで活躍すればそれだけで引く手数多だろうさ。)」

 「そうであるかそうであろう!ぶひゃーひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっッ!!」

 「そうそうその通り!アはハハはははハハはははハハハハはははハハはははハハはhッ!!」

 

 コンソールに表示された「全長100mオーバーの7体の破壊ロボの図面」を視界に入れながら、格納庫に不気味な高笑いが響き渡った。

 

 

 …………………………………

 

 

 太平洋上 南緯47度9分西経125度43分の周辺海域にて

 

 そこは人類の、地球上の多くの生命の命運は賭けた決戦場だった。

 何処までも広がる海と空の中、鋼の戦船と邪悪の眷属が犇き合っていた。

 空には各国軍の戦闘機と無人の破壊ロボが縦横無尽に空を飛び、ミサイルと機銃、レーザー砲を撃ち合いながら、互いに落とし、落とされる。

 デモンベインを除いた多くの兵器が、人命が散っていく。

 それが正史におけるこの海域での戦いだった。

 だが、実際は違う。

 少なくとも、この回、この時だけは違った。

 

 『全艦へ通達。クトゥルーの触手の震動により津波が発生。ご注意を。』

 『通常の量産型破壊ロボクラスの火力では現在のこちらの防御を抜く事は無い。攻撃に集中を。』

 『転覆する可能性が上がった場合、速やかに脱出と人員の救助を。ボートの上ではディープワンズ共の餌になるだけだ。』

 『後方、破壊ロボが接近。ブレイクを。』

 『D-2海域が現在押されている。余力ある者は支援を。』

 

 ネクロノミコン:機械言語訳、その精霊たるリトル・エイダ。

 彼女は電子情報に自らを変換し、通信設備のある場所になら何処にでも行ける上に、彼女の宿った機械は鬼械神と同様の力を得る。

 そして、今現在の殆どの兵器には大なり小なりCPUが搭載され、通信機だって世界中に無数に存在する。

 これを利用しない手は無い。

 アレクの発案の元、覇道の地下施設の時よりも遥かに大規模に、リトル・エイダはその力を全力で振るった。

 各国には「新開発された独自技術による国連軍への支援」とされたが、実際はオカルトによるものだと多かれ少なかれの一部の者は気付いたが、貰えるモノは貰える主義なのは何処も同じだった。

 ほんの十数分程、覇道管轄の艦艇や戦闘機と通信を繋げるだけで、自国の兵器が劇的に強化されるのだ。

 例え今回限りだとしても美味しい事には違い無かった。

 結果、各国の艦船の管制室やコクピットには掌大の二頭身にデフォルメされたリトル・エイダが的確に情報面でもサポートする姿が見られ、国連軍は本来よりも遥かに低い損害で破壊ロボの群れを相手取る事になった。

 更に…

 

 『げーひゃっひゃっひゃっひゃ!よっくも我輩の作品を勝手に使ってくれたのであるなアウグスティヌスめが!かくなる上は我輩の手によって海の藻屑にした後、漁礁として海の底でオブジェとなるのであーる!エェェェェェルザ、GOォォォォォッ!!』

 『破壊ロボ、出撃ロボー!』

 『さぁ、今こそ「スーパーウェスト天下無敵ロボ29豪R-1~試作なのに量産機より強―い!~」の力を見せる時なのであ~る!』

 『お前ら、雇っててなんだがほんっとにやかましいのな…。』

 『あ、アーリ叔母さん元気出して!ほら、凄い活躍だよ!?』

 

 何故か4人乗りに改装された、全長約100mの新型破壊ロボに乗って、量産型破壊ロボもダゴンもハイドラも一方的に蹂躙していった。

 はっきり言って、1人先行してクトゥルーの触手やティトゥスの皇餓と交戦しているデモンベインよりも攻撃範囲が広いため、目立ちまくっていた。

 

 『主、私だけ除者か?』

 『そんな事無いよ!? でも此処狭いし、エイダには別の大事な仕事があるからだよ!』

 『………くすん。』

 『ご、ごめん!後でお詫びするから!僕に出来る事なら何でもするから!』

 『ん?』

 『今』

 『なんでもって』

 『なんで此処で三人とも注目するのさ!?』

 

 カオスに囲まれたアレク君の明日はどっちだ。

 

 

 …………………………………

 

 

 とある鬼械神のコクピット。

 ここは今、本来無い筈の大量の触手に満たされていた。

 本来この鬼械神を操る筈の魔導師は気を失ったまま、小さな喘ぎ声を洩らしながら触手に凌辱され、魔道書は此処にはいない。

 しかし、仮初の操縦者として、その魔導師の娘が眼を虚ろにしたまま此処にいた。

 

 「守らなきゃ…誰でも…近づかせない…母さん…私の…守らなきゃ…私だけの…。」

 

 ブツブツと何かを呟いているが、その殆どは事情を知らぬ者には全く意味の無い言葉でしかなかった。

 だが、知る者にとってはそれで十分だった。

 そして、この場にもう一人。

 惨状を創り出した者だけが、呆れた様子で意味ある言葉を発していた。

 

 「いやいやいや、此処は九郎君の目立つ所だろ。君の役割はもうチョイ役じゃないか。っていうか、此処で機械言語訳が活躍とか…うん、そっちに関しては完全にこちらの手落ちだね。大勢に影響は無いとは言え迂闊だった。」

 

 「じゃぁ、少し早いけど出番と行こうか。」

 

 「さぁ、君から母親を奪おうとしてくる連中が来たよ。大勢で、遮二無二頑張っているけどね。それ程君から奪いたいみたいだ。そして、奪わせないためには何をするべきか解っているよね?」

 

 「では往くと良い。感動の親子の触れ合いと共に、ね。」

 

 

 ……………………………………

 

 

 防御力の差から、ほぼ一方的に駆逐されていたクトゥルーの眷属達が、一瞬だけ動きが止まった。

 先程、デモンベイン召喚時に同じ様な現象が起こったが、今度は何が現れるのか。

 

 『来なすった!一端後退だ!』

 

 それに最速で反応したのは、やはり主従にして半身としての繋がりのあるアーリだった。

 

 『まさかッ!?』

 『あぁ、リーアだけじゃなく、私の鬼械神まで…!』

 『何と!?子持人妻仮面戦士で御主人様が寝取られるとはあぁ何と言う悲劇!○郎系ラーメンだってそこまで属性増し増しにはせんのであ『人の母親を寝取られとか言うなぁ!!』ビューティホゥ!? 』

 『あ、出番取られたロボ。』

 『良いから構えろマジで来るぞ!』

 

 艦隊が急ぎクトゥルーから距離を取り始める。

 同時、何も無くなった筈の海面下から、濃密な神気が溢れ出る。

 

 『汝、光飲む深海の水

  汝、太陽無き地下の土

  悠久の時より立ち上がり、

  星辰の時より顕れ出でよ! ワダツミ!』

 

 瞬間、海面が膨大な水飛沫と共に爆ぜ、全長300m級の鬼械神ワダツミが姿を現した。

 その全長に匹敵する4枚の盾を周囲に浮かばせ、何処かデモンベインに、否、アイオーンに似た意匠を持ちながら、生物的であり、神々しくもあるこの世でネームレスワンと並び、ただ二つのデウス・エクス・マキナだ。

 無限螺旋の中で生まれ、鍛え、今なお成長し続ける土と水の二重属性の神の写し身は今、場に満ちるクトゥルーの神気を存分に吸収し、万全の状態で出現した。

 

 『薙ぎ払えッ!』

 

 シールド裏から展開された100本もの触手の先端から、魔力によるレーザー砲が放たれる。

 それは全てが異なる標的へ向けて放たれ、薙ぎ払われる。

 

 『消えろ消えろ消えろ!』

 

 照射と連射を繰り返しながら、100本のレーザーが海域を蹂躙していく。

 結果、多くの艦船だけでなく、ダゴンやハイドラ、破壊ロボに深き者共も諸共に薙ぎ払われていく。

 

 『やべぇな、此処まで来て艦隊壊滅は避けたい。』

 『んじゃ行くロボ!』

 

 唯一命中しても無事だった破壊ロボが前に出る。

 しかし、相手は全長3倍近い鬼械神であり、火力も防御力も出力も次元が違う。

 

 『あわわわ…な、何か手立てがあるんですか!?』

 『イエスイエス!全く以て何の心配もいらないのであ~る!さぁ今こそあのセリフを言うべき時!コード入力ぅっ!!』

 『『『こんな事もあろうかと!』』』

 『コード承認。合体プログラム始動。』

 『さぁいざ来たれや我が子らよぉ!』

 

 ドクター・ウェストの言葉と同時、転送術式により計5体の破壊ロボが虚空より出現する。

 それは皆100m級のスーパーウェスト天下無敵ロボ29豪R-1~試作なのに量産機より強―い!~と同型だが、ウェスト達の乗る緑に対し、赤、青、黄、白、ピンクというド派手なカラーリングが施されている。

 

 『ちょ、それうちの設備でしょう!?』

 『合体シークエンス開始。』

 

 司令官やってる少女の非難を無視し、合体シークエンスは続いて行く。

 邪神眷属をも含めた周囲が突然の事態に唖然とする中、6体は何故かドラム缶状の胴体底部からロケット特有の白煙を噴出しながら一斉に宙に躍り出て、それぞれが変形しながら一つになってゆく。

 

 赤と青は両脇に陣取ると同時に手足を格納、底部からジョイントパーツを展開し、胴体上面から巨大な拳が出現、数回の回転の後に固定される。

 白とピンクは殿に陣取り、こちらは手を格納、上面からジョイントパーツを展開し、足が前後に移動、爪先と踵となる位置で固定される。

 黄は先頭に移動し、手足を格納後、何と中央から真っ二つになって切断面を他機に向ける様にして飛行する。

 最後に残った緑が中央に位置し、ドリル部分を強制排除、手足を4本の接続パーツへと変形させた。

 そして、6体は一切減速せぬままに海面の一カ所へと突っ込み、盛大な水飛沫を上げた。

 

 『な、なにこれ!?』

 

 ワダツミの中、ケルヴィエルである少女が動揺した様に叫ぶが、時既にお寿司。

 膨大な水飛沫が薄まっていく中、鋼の巨体が姿を現した。

 

 『天が呼ぶ!地が呼ぶ!人が呼ぶ!』

 『悪を倒せと轟き叫ぶ!』

 『天上天下無敵ロボ28號超合金DX限定版「~私の自前のドリルが天元突破~」此処に爆誕ロボ!』

 『さぁ我輩の叡智と血と汗と涙と思いつきと偶然とアーリとエイダとアレクの協力が産んだ科学と魔術7:3の申し子よ!そのぶっとい奴であの甲殻類ロボを叩いて砕いて冠婚葬祭に出るグラタンの器にしてやるのであ~る!』

 

 何故か見事なS字立ちと共にリトル・エイダを除いた全員で勢いのままに名乗りを上げる。

 が、周囲は邪神眷属も国連軍も鬼械神も、果てには此処ではない何処かで見ていた邪神すらもあんぐりと口を開けて呆然としていた。

 

 え、なにこれ?

 

 きっと彼らの思いを代弁したらこんな感じになるだろう。

 

 

 

 

 こうして、デモンベインに続く第二の科学と魔術の申し子がこの世界へと誕生した。

 周囲の意思を10万光年程置き去りにして。

 

 

 

 

 なお、出待ち状態のネロとマスターテリオンは後にこの時の事を「腹筋がつる位笑った」と述懐した。

 

 

 

 




長くなったので二分割。
次回か次次回で完結します。

その後は番外編とリクエストの消化に入ります。

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