自称中堅冒険者のアフターライフ   作:ギル・B・ヤマト

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自称中堅冒険者セレナの新しい冒険の始まり

 私セレナは転生者である。

 

 前世は日本で……確か2010年ぐらいまで生きていた。それでポックリ逝って中世のヨーロッパに魔法をチョイスした様な世界に転生した。

 死因は覚えていない。だいぶ前だから忘れちゃったテヘペロ。

 

 というかそれはどうでも良い。

 今大事なのは目の前にいる──

 

(良い女がいるね)

 

 ショート銀髪の美少女についてだ。

 動きやすく改造された鎧を着ている彼女は冒険者ギルドの前で立っている。ツナやかな目を持つ中性的な顔で建物を見上げながらただ静かに佇んでいる。

 

 なんか訳アリな感じで居るが間違いない。あれは……

 

(他所の町から来た冒険者かな、あの感じは)

 

 毎日ギルドに通っているがあんな子が居たら記憶に残るし、そもそもここの冒険者ならあんなとこで立っていない。

 多分新しいギルドだから緊張して入れないのだろう。

 

「ヤッホー、ここのギルドは初めてかな?」

 

 ならここの先輩として優しく誘導してあげようじゃないか。そんな思いで声をかけた結果は

 

「……アンタ誰だ?」

 

 冷たい目線と声だった。

 

「私はここの中堅冒険者であるセレナだよ……って何その胡散臭い物を見る目」

「……中堅というには軽装過ぎないか? そんなんじゃあすぐ死ぬぜ」

 

 ああ確かに。私の鎧は見るからに薄そうだし、守っている部分も胸とか足と腕の一部だけだ。

 デカイ魔猪を倒せたら中堅と言われる事を考えたら、その疑問視は最もだろう。

 うんこれは良くない。前世だって第一印象が八割とか言われていたからね。

 

「あぁーそうだね。確かに君の言うとおりだけど、クエストの場所が……っと、あったあった」

 

 そうして私は道具袋の中から手のひらサイズのカードを取り出して彼女に見せる。するとさっきまでの怪しい物を見る目が丸くなった。

 

「シルバーの三級……」

 

 私が見せたのはギルドから貰う冒険者の証明書だ。ファンタジーの世界観には似つかぬSFチックな技術で作られたそれは偽装されることも無い。この世界で絶対的な信頼がおける身分証だ。

 

 え、そんな事よりシルバーなんてショボい? 

 まあ大昔に魔王が死に冒険者全盛期時代をとっくに過ぎた今では充分すぎるランクなのだ。実際、目の前の女の子驚いてるし。

 

「それで君は他所から来た冒険者でここのクエストを受けに来たんだろ? 不安な事があるなら私が案内するけどいい?」

 

 証明書を見て素直になったのか、彼女は静かに頷いた。

 

「それじゃあ来客一名様でーす」

 

 そう言って私は冒険者ギルドの扉を開いた。

 

 

 

 

 

 

「おうセレナ。また新人を案内してんのか?」

「いーや、彼女は他所からの来た冒険者さ」

「うぃー後で酒いっぱいやらないか?」

「オジサンいつも言ってるだろ? 私は酒飲まないって」

 

 扉を潜ればそこは前世の私が憧れていた光景が広がっていた。エルフにドワーフに、しまいには龍人が。

 みんながテーブルでジョッキを持ちながら雑談している中で受付まで歩いていく。

 初めてこれをやった時はどれ程ワクワクしたか。

 

「エレメス、一つ手頃なクエストが欲しいんだが」

 

 そうして受付に着いた私は早速、書類整理を行なっている女性のエルフに声を掛けた。

 赤髪のポニーテールで黒のサングラスを掛けていて、クエスト受注の時によく私と話す人だ。

 

「おはようございますセレナさん。今空いているクエストだと……って、ああ」

 

 数枚クエスト用紙を持って来た彼女が、ずっと下げていた頭を上げると真顔から何か察した顔になる。

 

「手頃なというのはそちらの……別の街から来た冒険者様の為の──」

「そう、今日から此処で活動するらしくてね」

「そういう事でしたら……そちらの方。冒険証の提示をお願いします」

「あ、はい」

 

 想像より呆気なく受注出来たことに彼女の反応もタジタジだ。カワイイ。私はそんな彼女から離れながら話す。

 

「じゃあ後はエレメスさんの説明しっかり聞いといて。後は自分一人でも行けるだろ?」

「う、うん……ありがとう。助かった」

「困った時はお互い様〜」

 

 そうして手を振りながら去っていき……知り合いが座っているテーブルにつく。すると早速声をかけられた。

 

「良くやるねー。アイツがイジメられない様に一緒に入ったんだろ? 別にアンタには関係ないだろうに」

「ただの暇つぶしさ。それにギルドの前でポツンと立ってたら単純に気になる」

 

 まあ男の言う通りだ。他所からの来た冒険者というのは、地元の冒険者から見ればクエストを奪われる事もあって嫌われたりする。此処はマシな方だが。

 それに彼女は若いし一人だから舐められる。だからこのギルド内の実力者で上から数えた方が早い私が付いて行ったのだ。

 

 決して彼女の美貌を近くで見たいとかそう言った下心ではない。

 

「まあ今は賭けをしようぜ賭けを!」

「また始まった……」

「お前負けたばかりだろ、やめとけって」

 

 とにかく彼女と関わるのはこれからだろう。彼女はきっと体験クエストをやるだろうから、その間私は賭けという名のお遊びをしようとして……

 

「セレナさーん!」

「……ん?」

 

 エレメスさんに呼ばれた。

 

 

 

 

 ♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 

「……で、体験クエストの相棒として私が呼ばれたわけか。まあ妥当だな」

 

 場所は変わって町の外にいる私達はクエストの目的地であるフラウスト洞窟へと向かっていた。勿論例の冒険者も一緒で。

 

「フラウスト洞窟はよくクエストに行くから覚えておけ、って言われたがどんな場所なんだ?」

 

 最初の挨拶にあった突き放している感じは薄まっていて、今は当たり前の様に私が広げている地図を見ながら質問してくる。

 

「言ってしまえば資源洞窟かな? この辺りだと珍しい魔法石が取れるんだ」

 

 まあさっきいたエンミール町の財力とも言えおう。

 供給があって尚且つ貴重だからお金になる。ならたくさん欲しいとなるが洞窟の中には魔物がいっぱい居て危ない。じゃあ冒険者の出番、となるわけだ。

 

「この辺りは四大魔族戦争や終末の光みたいな争いばっか起きてたからねー。その影響で魔法石も多いんだよ」

「へー……」

「で、もう察してると思うけど。その石を取りに行くのが今回のクエスト」

「受注してからそのまま出たけど、クエストの準備とかは?」

「それも大丈夫、私がいつも常備してる道具袋だけで必要量は回収できるしね。今回はあくまで体験だし」

「そうか……」

 

 それで必要な会話は終わったからか、彼女から話す事は無くなった。こっちも今話すべき事は全て話したから話す内容は無い。

 暖かい日光が差す平原を二人の足音だけが通っていく。

 でも私はそんな無音の時間は長くいたくない。一人の時ならいいが今は二人居るんだから勿体無いだろう。

 

「どうして君は冒険を?」

 

 だから聞いた。最初に感じた訳アリの理由を。私はこの世界でも長く生きてそれなりに人も会ったから分かる。彼女からは新しい冒険の匂いがすると。

 

「…………」

(でも簡単に話すわけでは、ないか)

 

 口を閉ざすのは予想通り。最初から話してくれるとは私も思っていない……そう考えていたが、彼女は予想に反して質問を返した。

 

「自分探しだ」

 

 頬を少し赤くしてそう言ったけど。カワイイ。

 

「ほぉー」

「や、やっぱりおかしいか?」

「いいやおかしくない。私もそういう時期は会ったからね。なんでこの世界に生まれたのか、どう生きればいいのか。そう悩んでたこともある」

「……そうか」

「…………その事を深く聞くのは辞めておこう。でも私のお節介を一つ」

 

 滝の音が聞こえる。

 なら此処だと足を止めて、彼女の前に回った。

 

「結局、自分はどう生きるかではなくどう生きたいか。それが大切だ」

 

 そうして両手を広げて私は言う。

 

「そしてようこそ。ここがフラウスト洞窟だ」

 

 まるで巨人が通る様な大きな入り口の奥には。昔の遺跡らしきものがチラホラ。そして大きな湖も相まって神秘的になっている。昔戦争があった場所とは思えない場所だ。

 

「……あぁ」

 

 その光景に彼女は圧倒されながらも採掘クエストは始まった。

 

 

 

 

 ♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 

「これで全部だ! 早速撤収するとしよう」

 

 採掘自体は簡単だった。私が取りやすいポイントを一部だけ教えて実際に取る。後は魔物や地形の情報を少々教えただけで終わり。1日目ならこんなものでいいだろう。

 

「ありがとうセレナ。今日は助かったよ」

「困った時はお互い様〜」

 

 彼女も不安が少し取れたのか笑顔で握手を求めてくる。それに釣られて私も少し笑みをこぼして手を取り出して。

 

 

 

 

 

 ザシュ。

 

 

 

 

 

 私の左腕は切断されて何処かへ吹っ飛んでいった。

 

「セレナ!」

「あ、れ……?」

 

 だらだら血が流れる左腕と、顔が血で汚れてしまった彼女の顔を見て、一瞬の疑問も持たないまま私は業火に焼かれたのだった。

 

「……くだらない下等生物が」

 

 突如頭上から現れる漆黒のマントを持った者。

 肌は青く目は血の様に真っ赤だった。口の隙間から見える牙の生えた歯。

 

 昔の四大魔族戦争で退廃の一途を辿っている上位種。

 

 吸血鬼だ。

 

「お前、セレナを!」

「醜い生き物がいたんだ。我慢できず掃除してしまうのは当然だろう?」

 

 

 彼女の新しい冒険は始まったばかりだ。

 

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