TS願望持ちの転生者は理想のロリに成りきります   作:暇じゃない暇人

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 うぇ!?なんかめっちゃ伸びてるんだけど、なんで?
たくさんの感想と評価ありがとうございます。感想貰うと筆がノるわノるわ(調子乗ってます)

 誤字報告もありがとうございます。1話のユーアーネームのところは主人公の発音の問題なので誤字ではありません。(主人公は英語を捨てていました)
 あと2話で特攻は特効ではないかといただきましたが、作者はFGO的な意味の特攻をイメージしてるで誤字ではないと考えています。(だ、だめでしょうか?)

 あと今回は1万5千文字と長いですが特に話は進みません。スバルの現状を知りたいなら最後だけ読めば大丈夫です。

 それではどうぞ


2・5 いつもの日常

「ん?ふ、あ~ん…むにゃむにゃ」

 

 可愛らしい声を出しながら、起きたばかりの少女は伸びをした。

少女ことシュバイエル、通称スバルはいつも通り、爽やかな朝を迎え『ドカ――――――――ン!!!!!』た。

 

 ……何か、爆発音のようなものが聞こえたが気にしない。

 

 さて、目が覚めたらまずは着替えをしないとだ。

そうしてスバルは、まだ温かい布団の中にいたいという思いに(頑張って)フタをし、クローゼットに近づ『ボカ――――ン!!』く。

 クローゼットの扉を開け、いつもの服を手に取った。この服は可愛らしくて品もある一品でスバルのお気に入りの一つだ(何よりもまず、初めてフェイルが選んでくれた服というのが大きい)

 

 スバルは寝間着を脱ぎ、選んだ服(ちなみにこれはワンピースタイプ)を着る。ふむ、やはり上から被るだけだから着るのが楽だなとスバルは思った。

 朝は低血圧気味のスバルにとっては着替えすら面倒に感じられるため、着脱がしやすいこの服は何気に着ている回数は最も多かったりするが、スバルは特にそういうことは考えていない。考えるとしたらそれはもっぱらフェイルである。

 いつも同じ服を着ているスバルを見かねて、時々新しい服をプレゼントしたりしてるのだが、やはり朝の着替えが面倒なのだろう。結局いつもの服をチョイスするため、メイドロボであるヴィルムをつけて着替えさせるという手法を取ったが、やがて”あれ?もしかしてこれだとめんどくさがりが改善するどころかさらに助長しちまわねえか?”ということに思い至って頭を抱えたりしていたりするのだが、スバルが感知するような問題ではない。

 

 『ボボカー――ン!』

 

 「うるせーぞ!今何時だと思ってやがる!?いい加減にしろこのマッドサイエンティストどもが―――!!」

 

 時間帯を考えぬ爆発にキレた少年の怒号が聞こえてくる。

 

 「メフィール!いい加減時間帯を考えろッ!?もう今月何回目だ!……反省しろ…………やめっ……………!!?」

 

 流石に遠いからか、途中からよく聞こえなくなった。

まあ、心配することはない。いつものことだ。

 

 着替えをすましたスバルは部屋を出るために扉へと向かう。

扉脇にある靴入れからいつもの靴を取り出し、着脱時に床を汚さないために敷いたマットの上で靴を履く。

 廊下はともかく部屋内で靴を脱ぐのはフェイルの影響を受けたからだ。フェイルがスバルに与えた影響は大小関係なく非常に多い。まあ、スバルはあまりそういうことは意識しないし、フェイルも気づく様子がないのだが。

 

 スバルは扉に手をかけ「やめろッ!!こんな時間に花火とかいろんな意味で何考えてんだお前!?頭湧いてんのかッ!!?」て部屋の外に出た。

 ”そういえば”とスバルは考える。

 いつもは朝起きたらヴィー(ヴィルム)がノックして入ってくるのに今日はなかったことに疑問を覚えた。

 ヴィルムはいつも、スバルが起きたら(センサー類を駆使して感知する)部屋に入り着替えの手伝いをするのだ。

 

 あれ、やっぱりいない。と、スバルは廊下を見渡してから思った。

 

 「やめるはずがないだろう!君から着想を得たスタングレネードとやらを利用して作った音響兵器【花火】を!」

 

 「花火が音響兵器なはずねえだろいい加減しろっ!このアホが―――!」

 

 「誰がアホだって誰が!いいだろう。だったら見せてやるよ僕の花火を!!」

 

 「もうそれ花火じゃねえからやめろー!」

 

 にぎやかだな~。とスバルは暢気に考えている。いつものことだからか、特に慌てた様子はない。

一応耳は塞いだ方がいいかな?と考えたところで

 

 『ヒュ~~~~~』

 

 『ドチュン!』

 

 何かを打ちあげる音とそれを打ち落とす音のようなものが聞こえてきた。

”今のは、ヴィー(ヴィルム)が使ってるビーム砲の音”とスバルが気づいたすぐ後に

 

 「ナイスだヴィルム!」

 

 「ありがとうございます先輩」

 

 「うわー!僕の花火(音響光学兵器)がー!」

 

 そんな声が聞こえてきた。

どうやらヴィー(ヴィルム)は、怒号をあげてマッドサイエンティストを叱る少年ことフェイルを手伝っているようだ。

 

 どうして今日はいないのかの理由が判明したところで、スバルは食堂へと向かって歩き出した。未だ成長期であるスバルが朝食を抜くのは体に悪いからというより、食べないとフェイルが何としても食べさせようとしてくるからというのが大きな理由だったりする(なお、以前フェイルに食べさせてほしくて、わざとご飯を食べなかった時があったがその際フェイルが”まさか、スバルが拒食症に!?ヤバい何とかしないと!”という勘違いをしたせいでひと悶着あったため、スバルはちゃんとご飯を食べるようにしたのだ)

 

 かくしてスバルは音を出して食べ物を催促する自身の腹を満たすために食堂へと行くのだった。

 

 「ヴィルム。そのアホを押さえといてくれ、後でこってり絞ってやるから」

 

 「分かりました。さあ、大人しくしてもらいますよ、メフィール博士」

 

 「いやだー!やめろ!やめてくれ~。フェイルのお仕置きは本当に心に来るんだからー!」

 

 「メフィール博士をここまで怯えさせるなんて。…先輩は一体何を?」

 

 「……さ~て、逃げられると思ったのかな?ミルクちゃ~ん」

 

 「にゃにゃ!?」

 

 「んじゃ、お縄に着け。………手伝った時点でお前も同罪だ」

 

 「……バイにゃら!!」

 

 「(深呼吸)……逃げられるとか、思ってんじゃね-ぞこの駄猫が~~~~!!!」

 

 

 スバルが悠々とした足取りで食堂へ向かう一方。花火(音響兵器実験)を手伝った猫獣人が、般若の面でも被ったのかと思われるような形相で追いかける少年と鬼ごっこ(生存競争)を繰り広げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした」

 

 スバルは空になった食器に手を合わせてから、食器をカウンターへと持っていく。

 

 「ありがとう、おいしかった」

 

 「ははっ。そう言ってもらえてうれしいぜ、スバル」

 

 嬉しそうな顔を隠すことなくトラ耳の料理人少女は皿を流しに運んで洗い始めた。

 

 「ところでスバル、フェイルのやつ見なかったか?今日はまだ飯食いに来てね―みたいなんだけどよー」

 

 「フェイルなら、メフィーを絞ってミルクを追いかけてると思うけど」

 

 「ミルクか。あの猫娘ホント元気だね~」

 

 「まあ、それがあの娘だから」

 

 「ははっ、確かに違いねえや。そいじゃ、今日もがんばれ、スバル」

 

 「うん、あなたもね」

 

 そういってスバルは食堂を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ~疲れた〜」

 

 途中でヘロヘロになったフェイルと遭遇した。

 

 「あ、フェイル。おはよう」

 

 「ん?あ、あ~大将。おはよう~」

 

 フェイルはそう言ってから、首を”ガクッ”とした後動かなくなった。

 

 ただ会えただけで満面の笑みを浮かべそうになる顔を意識して平静なままにし、スバルはフェイル(愛しい人)に話を振る。

 

 「今日も元気そうだね。」

 

 「え、元気そうに見えますか?ついさっき種族差とか若さとかによる差を見せつけられたばっかなんだけど……は~、なんなんだよあの猫娘は。もうおっさんにはつらいよ~」

 

 先ほどのデットヒートを思い出してため息を吐く。結局、メフィールとヴィルムを含む3人がかりで捕まえることになったのだ。

 こんなところでも種族差を見せつけられてしまい、ただでさえない自信がさらになくなっていくこの感覚。このようにフェイルの自信を無意識のうちにへし折る事態が頻発するため彼の自己評価は常に最低ラインを行っているのだが、それを感づかせないよう意識してる賜物か。あまり心配されるようなことにはなっていない。

 これは仮定の話だが、もしもフェイルがスバルあたりに弱音を吐いたりしたら、フェイルを全力で慰めたり褒めたり甘やかしたりしたことだろう。そんな事態になればいくら鈍感なフェイルも自身の価値が分かり、スバルや仲間たちに対しての行動が大きく変わったかもしれないが、まあ、そんなことにはならなかった。なることがあるとしても、それは全てが始まった後。どうしようもないくらいに暴走して手が付けられなくなった状態でのことだろう。

 

 まあ、それはともかく。

 

 自身をおっさんと呼んだフェイルに対してスバルは

 

 「おっさん?おじさんじゃなくて?」

 

 「おっさんってことは否定してくれなかった!いや待ってくれ、もしかして大将におっさんて思われてたの!?俺まだ若いから!」

 

 おっさん発言を否定してくれるとフェイルは思っていたが、なんということか!スバルはフェイルがおっさんであるという発言を否定するのではなく、なぜおじさんではないのかというフェイルの予想斜め上をいく質問をしてきたではないか!

 

 「それで?なんでおじさんじゃなくておっさんなの?」

 

 まだ聞くかこいつ~と。フェイルは思うがすぐに頭を切り替えてそれらしき理由を考え出す。

 

 「まあ、おじさんだと俺が知ってる有名キャラに一人称被るからな。某水着おじとか某トロイアのおじさんとか」

 

 「?」

 

 「いやごめん、忘れてくれ。特に深い意味はないんだ」

 

 今みたいに、時折フェイルはスバルが全く分からない話をする。そういう場合はすぐに忘れてくれと言って話を終わらせてしまう。

 スバルはこのことに少しだけ疎外感を覚えるがすぐに頭を切り替えた。

 

 

 「フェイル。まだご飯食べてないの?」

 

 「え、あーはい。まだ食べませんけど……」

 

 スバルは分かっていたことでも一応確認をした。なぜなら、ヴィー(ヴィルム)は必要とあらば簡単な軽食を体内に貯蔵してる食料から作ってしまうからだ(どうやら魔力を用いて食料の情報を記録・圧縮しているらしい。フェイルは前世のパソコンのファイルの圧縮・解凍を思い浮かべてヴィルムにできるかどうか聞いてみて、なんかできてしまったらしく。今まで考えつかなった方法を伝授されたヴィルムよりもフェイルの方が驚くといったことがあったが、今は特に関係ない)

 

 確認を取った理由はスバルがフェイルに朝食をふるまってみたいと思ったからだ。

 

 スバルは(一応)貴族出身であるが、コネクターとして旅をする中で簡単ではあるが料理ができるようにはなっていた。

 流石にスバルと契約している者たちの中で特に料理上手な面々にはかなわないが、それはそれとして、自身が作った料理をフェイルに食べてもらうのは一入の喜びでもあるのだ。

 

 「じゃあフェイル。……よかったら朝食、わたしが作って「フェイルさ~~~~~ん!!!」「グべっ!?」

 

 スバルが勇気をもってフェイルに朝食の誘いをしようとしたところ、何か白い影が弾丸もやかくという速度でフェイルに衝突もとい抱き着いた。

 

 「大変なんですフェイルさん!」

 

 「ど、どうじだんだジロッブ」

 

 軽自動車にでもはねられたのかと思うような衝撃を受け、フェイルはダウンした。まあ、あんな速度でぶつかってきたのを受けてまだ生きてるのだ。いくら弱くてもフェイルはファンタジー世界の住人だということが分かるだろう。……少女の突進ひとつでダウンするのがファンタジー?と思わなくもないが、本人の名誉のため追及はしないでおく。

 

 「て、わ~!大丈夫ですか!?」

 

 「は、はは。問題ないね。それでどうしたんだシロップ?」

 

 ギャグマンガ補正とばかりの回復力を見せるフェイル。……実際はただのやせ我慢だ。

 

 シロップと呼ばれた呼ばれた少女は白犬族という種族だ。

特徴として、犬系種族の中でもトップレベルに感覚器の性能が良く、鎌鷹(れんよう)種と視力の良さで争ったりするらしい。ちなみに、両種族共に30キロ先にある米粒を視認できるというとんでも種族だったりする。

 

 シロップは髪の毛や肌などは真っ白で瞳は黄色という目立つ容姿をしているが、この場ではあまり目立たない。なぜならスバルと契約した者たちが集うこのギルドは、いろいろな意味で目立つやつらが多すぎるからだ。だが、決して彼女の容姿がかすんでいるわけではない。ここには(性格はともかく顔は)各種族のトップを張る美女美少女がいるため、各々の性癖にしたがって好みは完全に分かれるのである。

 

 ……ちなみにシロップはフェイルに対して仲間以上の感情を持っているが、残念。フェイルはケモナーではなかった。

 

 

 「ショコラが今大変なことになってるんですフェイルさん!」

 

 「…………いやな予感しかしないが一応聞こう。…何があった?」

 

 「ショコラが街の大聖堂の鐘を壊してしまったらしくて……」

 

 「……鐘?ステンドグラスじゃなくて?鐘の方を?」

 

 「は、はい。鐘の方を……」

 

 

 …………。という感じでフェイルは沈黙した。

ちなみにショコラというのは黒犬族の少女でシロップの幼馴染であり、同時に姉妹のような存在だったりする。

 

 それはともかく問題はそのショコラがやってしまったということなのだ。……今月に入って早3回目。

そろそろ神官に土下座するのも視野に入れた方が良いかもしれない。とフェイルは思った。

 

 「はあ、仕方ない。……とりあえず物づくり得意な連中呼ん「フェイルさ~~~ん!!」今度は何だ!?」

 

 新しく出てきたのは緑色の髪と猫耳を持った少女だ。ちなみに、朝フェイルと鬼ごっこした猫ではない。

 

 「大変です!金庫番をしていたゴルドさんが何者かに眠らされていました!」

 

 「はっ!?何やってんだよゴルド!それで、被害はどれくらいだ?」

 

 「え、え~とですね。ギルドの運営金の方は無事だったんですが……」

 

 「ですが?」

 

 「……フェイルさんが使っている貸金庫だけ荒らされてまして……すっからかんです」

 

 哀れ、フェイルは今この瞬間。自室内にある財布(中身は日本円に直すと約2000円ほど)が全財産になった。

 

 「(深呼吸)……犯人は分かってるのか?」

 

 「は、はい。その、これが残されてました」

 

 猫耳少女がおずおずといった感じで一枚の紙を差し出してきた。

 

 そこには、『ごめん(m´・ω・`)m カジノで全部摩ったから使わせてもらいますわ☻倍にして返すから許してね(*´ε`*) PS・あなたの親愛なるギャンブラー・タマモより』

 

  

 「……」

 

 「……」

 

 「……」

 

 「……」

 

 哀れ。今度こそフェイルはもう金が返ってこないことを悟った。

 

 その場の誰も何も言えない状況がしばし続き、やがて

 

 「あ、あんのクソギツネが―――――――!!!!!お前いい加減に分かれよ!てめえにギャンブルの才はない!!!摩るのは勝手だが俺の金は使うな――――!!!!」

 

 魂からの咆哮。その場の誰も何も言えない。

 

 「ゼー、ゼー」

 

 「あ、あの~、フェイル?今すぐ呼び戻せば、何とか…なりは……しないかな」

 

 「グホッ!」

 

 スバルが何とか慰めようとしたが、戻ってくるビジョンが全く浮かばなく、結局トドメをさすだけとなった。

 

 「い、いくら。入れてたっけ?」

 

 フェイルは基本。稼いだ金を殆どギルドの金庫に預けている。

自身で持つよりも黄金竜が守っている金庫の方が安全だからだ。だがしかし、仙妖狐などという太古の昔から生きている大妖狐であるタマモにとっては、たかだか数百年しか生きてない黄金竜でしかない。

 

 黄金竜、ゴルドは悪くない。むしろ金庫番としては贅沢すぎるほどなのだ。ただ単に分が悪い。ただそれだけなのだ。

 ……まあそんな大妖狐も、(ズルをしなければ)賭け事には滅法弱いのだが(つまり、金が戻ってくることは期待できない)

 

 「……はー。戻ってこないもんはしゃあない。とりあえず、目先の問題から片すか」

 

 金を早々に諦めたフェイルは(この切り替えの良さも彼の力なのだろう)ひとまずほかのことから片すことに決めた。

 

 「じゃあ、二人はショコラを回収してきてくれ。その際、弁償の意思と俺が後で謝りに行くってこともしっかり伝えておいてくれ。ゴルドを起こすのは……大将と俺の二人で大丈夫だろう」

 

 白犬娘と緑猫娘の二人に黒犬娘の回収を頼み、自分とスバルで金庫番の少女竜、ゴルドを起こしに行く。と、そこまで考えてからやっと思い出す。

 ”そういえば、スバルなにかを言いかけてたような”

 

 「二人とも頼んだ」

 

 「「はい(分かりました)」」

 

 フェイルの声に元気よく返事し、二人のケモっ娘は駆けだした。ギルドホームの廊下は広いため、走っても誰かとぶつかることはあまりない。それに、今は大規模遠征を行ってるからか普段よりも人は少ない。

 

 二人を見送った後。フェイルはスバルに話しかけた。

 

 「あ~すいません大将。それでさっき何か言いかけてませんでしたか?」

 

 「え、えーと……なんでも…ないよ?」

 

 「?そうですか……じゃあ、ゴルドを起こしに行きますか」

 

 「う、うん。そうだね、そうしよう」

 

 なんということか。せっかく話を振られたというのに、チキってしまったスバルは話すのをやめてしまったではないか。

 こうなったらもう無駄だ。普段は鋭いフェイルも、こういうことには全く気が回らない。お前、別に鈍感系主人公じゃないんだから気づけ。

 

 結局スバルはフェイルに手料理を振る舞う機会を失ったが、まあ大した痛手ではない。”今度振る舞えばいい”とスバルは考えた。この考えは別に間違ってはいないのだが、その後、どうせなら振る舞っておけばよかったと後悔することになるが、それは()の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「は~完全にお昼時ですね大将」

 

 「そうだね。…食堂で何か食べる?」

 

 あの後、気絶していたゴルドを起こしたら早々に泣き出してしまった。どうやら彼女は自分の守りを抜かれて宝物を奪われるのがよっぽどキタらしく、あやすのに大変苦労した。

 

 数時間かかったが、何とか立て直すのには成功した。

今頃は妖術に対する特訓をしているはずだ(なお、特訓用のゴーレムは全てメフィールに用意させた。最初は渋っていたものの、フェイルが”やってくれたら少しくらいはお仕置きの量を減らしてやる”と、言ったところ喜んで協力してくれた。その光景を見たスバルはフェイルが一体何をしてるのか非常に興味を惹かれたが、鬼気迫る顔で用意を進めるメフィールを見て質問するのはやめておいた。ふむ、正しい選択である)

 

 「そうだな、何か食べ…あれ?ヴィルムじゃん。何やってんの?」

 

 「あ、先輩。それにスバル様も」

 

 「おはようヴィー(ヴィルム)

 

 「おはようございますスバル様。って、もうお昼ですよ」

 

 廊下を歩いていたヴィルムをフェイルが発見し、何をしていたのか疑問を示し、スバルはかなり遅めの朝の挨拶をする。

 

 「今日はちゃんと起きれたよ。ヴィー(ヴィルム)

 

 「はい。偉いですよ、スバル様」

 

 ほわほわした空気を漂わす空間にフェイルは、”う、浄化される”と眩しいもの見るかのように目を細めた。

 幸運にもそのような奇行をするフェイルは目に入らなかったらしく、スタンを喰らってしまったフェイルに変わってスバルがヴィルムに、何をしているのか尋ねた。

 

 「ヴィー(ヴィルム)は何してたの?」

 

 「私は、メフィール博士に言われてミルク様をゴルド様のところへ届けた帰りです」

 

 どうやら(朝フェイルと追いかけっこをした猫娘)ミルクをゴルドの特訓相手として届けた後らしい。

スバルは流石に戦闘能力的にまずくないかと思いフェイルの顔を見たが、満足そうな顔をしていたため”まあいいか”と判断した。

 哀れなり、ミルク。黄金竜と風猫族という、種族差が冗談抜きで天と地ほどある戦いを余儀なくされるとは(ちなみにスバルと契約している者同士がどれだけ本気で戦ったとしても、死ぬことは決してない。だが、痛みはちゃんとある。もう一度言おう、痛みはちゃんとある)

 

 そして、スタンから復帰したフェイルがヴィルムに向かって話を振った。

 

 「ヴィルム、俺たち今から食堂で昼食食べようと思ってんだけどよかった「フェイルくーーーん」…もうヤダ」

 

 「で、一体何の問題が起きたんだ?」

 

 「え?なんで問題が起きたってわかるの?」

 

 そこに現れたの羊の角を持ち、ふわふわとしたまるで毛玉のような印象を持たせる少女が現れた。

 

 ちなみに彼女は放浪羊と呼ばれる種族で、名前はネム。何気にスバルと契約している者の中ではかなりの初期からいる人物だ。

 戦闘能力はそこまでないが、重要局面を切り抜けるのに一役も二役も買ったことがあり、やりようによっては種族差をひっくり返すことができるということを身を持って体験しているメンバーでもある。

 

 「ネム、それで何が起きたんだ?」

 

 「簡単に言うと、研究者組がやらかして実験動物が逃げ出したっぽい」

 

 「……そうか。……あいつら、問題ごとしか起こさないよな……」

 

 「あーまあ、そうかもね」

 

 ものすごく温厚で優しい気質を持ったネムにも、流石に研究者組を擁護することはできなかった。

 

 「昼食は抜きかー。……そろそろ切れていいかな?」

 

 「私も一緒に怒ることにするよ~」

 

 「うん、フェイルはよく頑張ってる。わたしも一緒に叱るね」

 

 「ネム、大将~」

 

 一瞬、フェイルは歓喜のあまり本気で泣こうか真剣に考えたが、それよりも早く動かなければと思い至り、行動を起こそうとした。が、問題はまだまだ増える。

 

 「フェイル~~~!!」

 

 「ハイハイ、フェイルさんですよ~」

 

 新しく聞こえてきた声に振り返る。そこにいたのは

 

 「鐘壊しちゃってごめんなさーい!」

 

 黒い犬耳を持つ少女。街で鐘を壊すだとかいう意味の分からないことをやらかしたショコラであった。

 

 「ショコラ。謝るなら俺じゃなくて街の神官に謝るべきだと思うぞ」

 

 「は、は~い。今度あやまりに行きます(´・ω・`)」

 

 「おう、一緒に謝りに行こうな」

 

 まるで兄妹、いや、まるで母と娘のように見えるがこれがいつものことなのだ。

 

 「フェイル。どうするの」

 

 スバルがフェイルに尋ねた。基本的にこういうことはフェイルの方がうまくやるため、スバルはフェイルの言うことを聞くのが多い。

 

 「神官さんには悪いけど、鐘の件は後に回させてもらうとして、まず実験動物がギルドから逃げるのを防ぐべきだな。……これ以上よそ様に迷惑はかけられん」

 

 そうフェイルは判断したが、よそ様への迷惑など既に”今更かよ”というほどかけてるので手遅れ感は否めない。

 しかしそれでも街の皆さんに甘えっぱなしではいけないのだと示すように、フェイルは毎日努力を重ね(面倒ごとに振り回され)ている。

 

 だがしかし、油断することなかれ。今までのは地震でいうところのただの余震。本震はこれから来る。

 

 

 「おにいさーーん!」

 

 「(悟った目で)どうしたアストリット?さては研究者組に何かされたろ?」

 

 フェイルのことをおにいさんと呼んだのは一人の少女だ。

 

 見た目は12歳くらいでぱっと見は人間と変わらない。しかし、侮ってはいけない。

アストリットと呼ばれた少女の種族は覇王族。少々特殊な種族ではあるが、少なくともアストリットと本気でヤればひき肉になることは確定だろう(分かり切ったことなので誰がとは言わない)

 

 「は、はい。そうなんです。何か変なものが寮内をうろついてて、多分研究者の皆さんのモノだと思ったのでおにいさんに助けを求めに来ました」

 

 「うんうんそうか。分かった。俺たちに任せておけ!」

 

 頼もしく映るように意識して返事をするが内心では”言ってるそばからかよ。…あいつらを辺獄送りにするので決まりだな”と思っていたりする。

 

 ちなみに辺獄とは、このギルドの地下にある特殊ダンジョンのことであり手っ取り早く金目なモノ見つけるのに適している(なお難易度は凶悪の一言に尽き。一度でも行った者のほとんどは口をそろえて”二度と行きたくないです”と言う。が、一部の変態(バトルジャンキー)は”すごく楽しかった。また行きたい”と言う)

 

 しかしまだだ、まだまだフェイルの災難は終わらない。

 

 

 「お~い小僧。怪しいきつねがいたから捕まえておいたぞ~」

 

 そういって現れたのは、キツネ耳の少女。彼女の名前はシロコといい、ワケあってフェイルにくっついている守り神的存在だ(守り神とはいっても四六時中一緒にいるという訳ではなく、フェイルの自室を聖域化してるざしきわらしというのが近い。個人ではなく、このギルドホーム全体のラッキーアイテムというのが最も正確な言い方でもあったりする)

 

 「怪しいきつねとは何ですか!?確かに(わたくし)はキツネですが、それを言うなら貴女もでしょう!?」

 

 シロコに首をひっつかまれるようにして連れてこられたのは、幼い見た目をした白狐とは対照的に成熟した妖艶さを漂わす、妙齢の美女。

 その名はタマモといい、今をときめくギャンブルスター。しかして現在はただの窃盗犯である。

 

 「よータマモ。それで、なにか弁明があるのかな〜?」

 

 「あ、あはは。本日はお日柄もよく、たいへん気分がいいのですわ」

 

 「そうかそうか、それで?」 

 

 額のあたりがピキッとなっているフェイルに、冷や汗をかきながらもタマモは弁明を続ける。 

 

 「珍しいことに気分が良い私は、友であるあなた様の失われた財産を取り戻すための御力添えをさせていただこうと考えております」

 

 失われた財産とタマモは言った。つまり、それが意味することは。

 

 「……タマモ。おまえ今所持金いくらだ?」

 

 「フェ、フェイルさま。流石にレディのお財布の中身を聞くの不躾すぎるでは……ないです、か?」

 

 「そうだな。確かに不躾だったかもな。……でもよー…拒否権なんてあると思ってんのか?」

 

 冷たいまなざしでタマモを見るフェイル。今更ながらに”あ、これヤバいやつだ”とタマモは思った。

 

 「シロコ。そのまま押さえといてくれ」

 

 「うむ、よいぞ」

 

 「ぎゃー待ってください~」

 

 わめくタマモを無視し、肩に掛けられていたバックから財布を抜き取る。すると

 

 「……オケラじゃん。タマモ、お前もうギャンブルやめろ」「いやです」

 

 フェイルの注意に対して食い気味に否定したタマモ。分かっていたことではあるが、こいつのギャンブル狂いはもうどうしようもねえわ。とフェイルは思った。そしてフェイルは何かを考え、やがて

 

 「……よし、タマモ。お前今から騒ぎを収めるの手伝え。拒否権はない」

 

 そう言った。

 

 「つかぬことを聞きますが、騒ぎとは「拒否権はない」ですが「拒否権はない」あ、はい」

 

 流石のタマモもこれ以上歯向かうのは危険と判断した。フェイルは基本大抵のことは許すが、やるときはやる。タマモは一度本気のフェイルを相手したことがあるが、それは正真正銘のトラウマになっていたりする。

 

 「そいじゃアストリット。このバカギツネが研究者組の厄介ごと何とかするから安s「助手君!助けてくれ!」出たな問題児H」

 

 今度現れたのは問題児組である研究者組のうちの一人。変人吸血魔ことドルルだ。ちなみに吸血鬼とは別の種族だ。

 

 「おいドルル。おまえ、というよりはおまえらだな。おめえらいい加減にしろ、人様に迷惑かけんな!」

 

 「?迷惑?よくわかんないけど、とリあえず助けてくれ助手君!」

 

 「知るかバカ、お前よりもアストリットの方が優先だ。ていうか、おれはお前の助手じゃない」

 

 「助、助手くん……前から思ってたけど。僕たちとアストリット君との扱いの差は、やっぱり君は……ロリコンなんだね?」

 

 「扱いの差は日ごろの行いの差だ。少しは日ごろの行いを顧みろ」

 

 そういうフェイルの言葉をもどこ吹く風といわんばかりスルーしたドルルは

 

 「いやね、助手君。ついさっき転送実験をやってみたんだけどね」

 

 「聞けよ。あとなんだよ転送実験って。何か危険なことするならまず言って?」

 

 「転送したものが予想した場所になかったんだよ」

 

 「……それで、一体何を転送したんだ?」

 

 嫌な予感しかしないが、聞かないわけにはいかないフェイル。そして、出てきた答えは

 

 「爆弾」

 

 「は?」

 

 「だから、爆弾だよ。正確には火の魔石と風の魔石で作ってみた手作り魔石爆弾だね」

 

 「…………それで、それはどこに行った?」

 

 聞けば聞くほど悪くなってい状況。フェイルの嫌な予感はとどまることを知らない。そして、それは間違っていない。

 

 「いや~それが分からなくて困っててね」

 

 「おい。どうすんだよそれ」

 

 途方に暮れかけたフェイルの耳に、『バタッ』と、なにかが倒れる音が聞こえた。

振り返るとそこには

 

 「大丈夫?ゴルド」

 

 「あ、あるじ……ガクっ」

 

 「ゴ、ゴルド様!?」

 

 服がボロボロになって倒れ伏すゴルドと、それを心配そうに(はたから見ると全くそうは見えないが)見るスバル。ヴィルムは突然のことで驚きを隠せない。仲間がボロボロになっていたら心配する。なんという善性だろうか。機械の体を持つ機械人形(マギアドール)なのにそれを感じさせないほど感情豊かな少女だ。

 

 ちなみに、ほかの面々はあまり心配していない。言っておくが、これは人格的な問題ではなくただ珍しくもない事態だからだ。……実のところ、ゴルドは仲間内で問題が起きるとなぜかとばっちりを受けることが多い。そのためこのように倒れてるのは珍しくなく、本人の頑丈さもあってかあまり心配されることがない。

 

 その証拠に

 

 「はっ!?私は一体何を!?」

 

 すぐさま起き上がる。これじゃあまり心配されなくなるのも当然だろう。

 

 起き上がったゴルドにスバルは何があったのか尋ねる。

 

 「ゴルド。何があったの?」

 

 「え、あ~」

 

 記憶が混濁しているのか、少しの間頭を抱え

 

 「確か……妙な魔石がポンッと現れて、……あー!そうだ!私の宝が全部吹き飛んだのだっ!」

 

 ゴルドが守る金庫の中身は、預けると一時的にゴルドの所有物と認識される。これを利用して金庫の防備を強化していたりするのだが、今は割愛する。

 重要なことはただ一つ。ゴルドが守る金庫の中身にはこのギルドの運営資金(というか生活するための資金)がほぼほぼ全額入っているということだ。

 

 「…………ド・ル・ル。で、弁明を聞こうか(圧)」

 

 先ほどタマモに向けた威圧感よりもなお強い圧を受けてドルルは

 

 「……」(汗だらだら)

 

 という感じになっていた。

 

 これは後でこいつも辺獄行かせるか。などとフェイルが思ったのを感じ取ったのか、ドルルは先ほどよりも多く汗を搔き始めた。

 

 だが、フェイルにとってはそんなこと知ったことじゃない。

 

 それより今やることは、この(物理的な)財政難をどうしたものかということだろう。だが、焦ることはない。

 腐ってもこのギルドは世界を救ったコネクターが率いているのだ。明日あたりに世界最高難易度のダンジョンに潜り、財宝を乱獲すればいい。

 

 「爆発しちまったモンはしょうがない。金は明日何とかするとして、まずは逃げ出した実験動物を捕まえて、そのあとは飯食って。まあ、寝るか」

 

 そう考えたフェイルだが、どうやらまだ問題は増えるらしく「ちゅんちゅん!!」という雀の鳴き声が聞こえてきた。

 

 「ん?この鳴き声は、エンラか?」

 

 エンラと呼ばれた雀がフェイルの前まで飛んできた。その雀は全身が赤っぽい色している上に、羽ばたいている翼は炎。およそ地球では一生見ることはないだろう雀だ。

 

 そんな雀はフェイルの前で一瞬滞空すると炎に包まれ、炎から出てくると和服チックな洋服を着た赤髪の少女が現れた。彼女の名前はエンラ。種族は火炎雀といい、雀形態と人形態の姿を持つ。

 ちなみにフェイルはエンラと初めて会ったとき「紅○魔!?」と言って驚愕してしまったが、もちろんエンラは何の関係もない。

 

 「フェイ坊。大変なことになった」

 

 「今日だけでそのセリフ何回目だ?それで何があったんだ?」

 

 「食料庫が爆発した」

 

 「……ごめんもう一回言って」

 

 「食料庫が爆発した」

 

 ”ギロッ”っとドルルの方を見たフェイル。しかしドルルは心当たりがなく、必死に首を振る。

 

 「あたしは今日の料理当番だったから、一足早く夕餉の用意をしようとして食料庫に向かったのだが、中が爆発でもしたのか食料がぜ~んぶダメになってた」

 

 ”やっぱりお前だな”といったマジの目を受け、ドルルは先ほどよりも強く首を振る。”これは犯人にされたら終焉を迎えるやつ”と感づいたからだ。食の恨みは恐ろしい。

 

 「中を確認したら何か変なものがあってな。フェイ坊なら何とかできそうだったから持ってきた」

 

 「いや言っとくけど、俺はそんな万能キャラじゃないぞ。…それで変な物ってどんなもの?」

 

 フェイルがそう聞くと、エンラは胸元に手を入れ、何かを取り出した(今普通に胸元から取り出したが、雀の時には何かを持っていなかったはず。そうなると雀の姿の時はどこに持っていたのか疑問だが誰も気にしない。だってファンタジーだもの)

 

 「これなんだが、分かるか?」

 

 そう言ってフェイルに見せたのは何かの部品だろうか。機械の持つ質感のように見える。

 

 「ん?なんかどっかで見たような?」

 

 疑問符を浮かべるにフェイルの代わりに、後ろから声が聞こえてきた。

 

 「それは、さっき私と一緒に金庫内で特訓してたゴーレムじゃないか?」

 

 そう答えたのはゴルド。

 

 彼女が言うには、エンラが持ってきたものは先ほどまでタマモの妖術に対抗するために使っていたゴーレムの部品のように見えるとのことだ。

 

 そこまで聞いてフェイルは、食料庫爆発の原因を知っているだろう人物に目星をつけた。

 

 「大将、ちょっと問いただしたいことあるからメフィール呼んでくんない」

 

 「わかった。ちょっと待って」

 

 フェイルの要望に即答したスバルは右手を握って胸の前までもっていき、左手で右手の手首をつかんだ(ちなみにこのポーズはフェイルが教えたものでやらなくても支障はない)

 一瞬だけ右手の甲に紋章のようなものが現れたかと思えば、スバルの目の前の床が光り出して円を作り、ひときわ強く輝いたかと思えば光は消えた。そしてそこに現れたのは……

 

 「あれ、スバルにフェイルじゃないかい。一体どうしたのかな?」

 

 いきなり召喚されたことにも特に驚く様子のないメフィールだった。

 

 「メフィール。これが何か正直に答えろ。返答によっちゃお前も辺獄送りにする」

 

 「はっ!?いきなり呼び出して物騒だな、わざわざ僕の貴重な時間を使ってまでのこt「……(圧)」……わかったよ。正直に答えるからその殺気に満ちた目をやめてください」

 

 下級亜種精霊に恐れをなした、種族的に見れば圧倒的強者であるマッドサイエンティスト(笑)はびくびくしながら文句を取り下げた。

 どうやら上下関係はしっかりと覚え込まされているらしい。

 

 「えーと、これだね。フムフム……見た感じ僕がさっき作った対妖術訓練ゴーレムに見えるけど……なんでこんなボロボロなんだい?」

 

 「犯人確保」

 

 「え、何をいってグギャ!ちょ、エンラ!一体何をするんだ!」

 

 「メフィール。貴様だったか、言え!なぜ食料庫を爆破した!」

 

 「は!?爆破!?知らないよそんなこと!」

 

 「とぼけるな!お陰様で夕餉の支度が出来なくなったぞ。どう落とし前をつけるつもりだ!」

 

 メフィールを警○二十四時の逮捕劇のようなに鮮やかに取り押さえたエンラ。台所を預かる料理組のエンラを怒らせた以上、マッドサイエンティスト(笑)にできることなど何もない。

 

 「本当に知らない!爆破って何のことだい!?」

 

 「貴様が作ったゴーレムが食料庫を爆破したのだ。メフィール。貴様の命令でやったのか?」

 

 「いや待ってよ!なんで僕のゴーレムが食料庫壊してるのさ!」

 

 心当たりのないメフィールに、ドルルは説明を加えた。

 ドルルの実験の失敗のせいで金庫が爆破され、そしてなぜか食料庫も爆破され、残っていたものがメフィールお手製ゴーレムの破片だったこと。その結果犯人(ギルティ)として扱われていることを。

 

 「……フェイル、転送された魔石が僕のゴーレムに使っていたコア部分とどんな反応を起こしたのか分からないが、金庫から離れた食料庫になぜかゴーレムが転送されてしまい、爆発したということなのだろう」

 

 「そういうことか……あれ?そういえば……ミルク、あいつどこ行った?」

 

 そういえばとフェイルは思い出す。金庫内ではゴルドの訓練相手(罰も兼ねる)としてミルクを置いてったのだ。

 

 「まあいいか。どうせあのすばしっこいやつのことだし、大丈夫だろう」

 

 一瞬”ぜんぜん大丈夫じゃないにゃ———!”なんて声が聞こえた気がしたが、恐らく気のせいだろう。

 

 「とりあえず逃げ出したらしい実験動物を捕まえて、メフィールとドルルにタマモにあとミルクも辺獄送りにしておくか」

 

 「「はっ!?」」

 

 「ん?なんか静かだな……あ?なんか減ってる」

 

 先ほどからやけに静かにしていることに違和感を覚える。スバル・ヴィルム・アストリットは分かる。がそれ以外は言われても静かにしないし煩わしゲフンゲフン元気いっぱいの娘たちなのだ。

 そんな奴らが静かにしているはずがなく、フェイルが振り向いたらスバルとヴィルムとアストリットだけだった。

 

 「ヴィルム。あいつらどこ行った?」

 

 「逃げ出したタマモ様を皆様が追いかけていき、当機とスバル様、アストリット様はここに残りました」

 

 タマモが逃げたこともそれを追いかけていったこともフェイルは気づかなかった。”ホントあいつら隠密技能凄いよな。いや、ただ俺が鈍いだけか。泣けてくる”こういう何気ないところで勝手に自己評価を下げるのがフェイルという男である。

 

 「サンキューヴィルム。何から取り掛かるかね~」

 

 困ったように言ってから

 

 「大将(スバル)、どうする?」

 

 そう、スバルに向かって尋ねた。

 

 (ああ、そうだ。これがわたしの日常。いつも騒がしくて大変で、でも、いつも笑い声がしていてみんな楽しそうで、そして……)

 

 「う~ん……みんなで考えよ?」

 

 (フェイルがいる)

 

 そう答えてからスバルは、一歩。訳もなくフェイルに近付き

 

 「フェイルっ!ずっと一緒にいようね」

 

 そう言って満面の笑みを見せた。その言葉を聞いたフェイルは

 

 「……はは、そうですね大将。いつまでもお供しますよ」

 

 と、どこか嬉しそうにそう言った。

 

 スバルは幸せな気持ちを隠せず、さらに一歩。フェイルに近付く。

 

 そして、フェイルの顔に手を伸ばして…………()()()()と視界が歪んでいき……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 「フェイル!」

 

 スバルはガバッとベットから背を起こした。

 

 場所は自室で、カーテンを閉め切っていて光が差し込まず、今の時間は分からない。ただ、感覚的には朝だと思われた。

 

 「……」

 

 スバルはおもむろに右手の甲を見る。

そこには紋章があり、契約した者たちとのつながりが感じられた。

 

 だが、一つだけ感じられない。スバルがスバルに()()()日から常にあった感覚。

 多種多様な者たちと契約してもなお感じられた異質な、しかしスバルにとっては最も安心できる愛しい感覚が。

 

 スバルはベットに背中から倒れた。

右手の甲で目元を覆い、誰がいるわけでもないのに顔を隠す。

 

 「うそつき」

 

 スバルは言葉をこぼす。

 

 「う、そつき」

 

 スバルは言葉をこぼす。

 

 「うぞ、つき」

 

 目元から雫が流れる。

 

 「フェイ、ルの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「フェイルの嘘つき!」

 

 

 悲しみに暮れ、悲嘆に溺れ、慟哭を挙げる

 

 

 「ずっと、一緒に居てくれるんじゃ…なかったの?」

 

 どうすればよかったのだろう?スバルは考えても答えの出ない問いに、頭がどうにかなりそうだった。

 

 「フェイル、…ふぇいる」

 

 涙が止まらない。

 

 止めてくれる人も、またいない。

 

 「会いたい……もう一回……もう一回……会いたいよ……フェイル」

 

 静かな部屋で一人、絶望に暮れる。

かつて、独りぼっちだった少女を連れ出した少年(少女の英雄)は来ない。だって、もう死んでしまったのだから。

 

 やがて、泣きつかれたのか。少女は気絶するように意識を失った。再び幸せだったころの夢を見られることを祈って。

 

 

 

 

 

 

 そう、これこそが新しい日常。

 

 とある少年がいなくなってからの、()()()()()()

 

 笑い声は響かず談笑の気配も全くない。

 

 研究者組のやらかしを叱りながら悲鳴を上げる声も、誰かの失敗を必死にフォローするために走り回る音も……誰かを無意識に笑顔にする、とてもやさしい声も。

 

 もう、聞こえることはない。

 




 ちなみにギルドの男女比は1:99を超えていてほぼ女性しかいません。(なおギルドに所属・スバルが契約している数は三百を超えています)
これは別に男女差別をしているわけではなく、世界観的にこの世界は美少女ゲーなので、主人公格であるスバルがあんまり男キャラと関わらないためです(主人公は除く)
 
 それに普通の男は(いくら美女、美少女揃いとはいえ)自分を瞬殺できる女性ばかりの職場など怖がって入ってきません。(主人公は恐怖心がどうにかなっているためあまり気にしません)

 
 次回 主人公死す!?(死にません)デュエルスタンバイ!
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