TS願望持ちの転生者は理想のロリに成りきります 作:暇じゃない暇人
倒れた体をそのままに、ポーチの中から回復ポーションを取り出して中身を傷口にかけ、残った少量を口に含む。
このポーションは少々お高いものだが即効性で効きが良く、傷口にかければ数分で完治する。少量飲んだのは造血効果を期待してのことだ。
空になった瓶を捨てて立ち上がる。この間10秒も経っていない。
「なめやがって」
審判騎士の影とやらを睨みながらそうつぶやく。
先程の動きから見るに数秒もあれば俺を八つ裂きにすることなど難しくなかったはず。だというのにそうしなかった。
こいつ。完全に俺を下に見ている。
もちろんポーションを飲みながらも相手からは目を逸らしてはいなかったが、それでも攻撃するには絶好のタイミングだったはずだ。
「いいぜ、ソッチがやる気なら受けて立ってやるよ!」
自分を叱咤する声を上げて、俺は納刀していた剣を抜く。
この小さな体ではろくなリーチが確保できないが、今こいつに対抗できるものなんてこの剣くらいしかないのだ。
魔法は一応使えるがこの体になってから使えるようになったものなので、お世辞にも使いこなせるとは言えない。
剣を右手に構え、足に力を込めて……審判騎士に向かって全速力で吶喊した。
☆
剣の柄を握りしめ、手からはじかれないようにしながら、審判騎士めがけて短距離の世界記録を塗り替える程の速度で少女は走る。
踏み込むほど7歩。
少女の剣が届くリーチに審判騎士が入った。
「フッ!」
呼気と共に助走をつけた剣で審判騎士に切りかかる。
しかし
ガキン! という重い金属の音が鳴るだけで、審判騎士の体に剣が届くことはなかった。
いつの間にか前に構えられていた剣が少女の剣を押しとどめていたからだ。
「クッ!」という苦悶の声が少女の口から漏れたが、少女は鍔迫り合いには持ち込まずに剣を弾くようにして相手から一歩分の距離を取り、再度攻勢に出る。
「はアアアァァァ!!」
袈裟、胴、唐竹、逆袈裟と、流れるような連撃を少女は繰り出すが、その大半は審判騎士の剣は防ぎ、逸らし、跳ねのける。
決して少女の技量が低いわけではないが、彼女の剣は攻撃よりも守りに重きを置くものだった。
そのため攻めきれずに、ほとんどの剣閃を防がれてしまう。
防がれなかった剣も鎧を破壊するには至らず、僅かばかりの傷をつけることしかできなかった。
少女は反撃のスキを与えないように連続で剣を叩きつける。
もちろん防がれるが、織り込み済みだった少女は慌てずに体内で練った魔力を右手に集めてから、わざと一瞬攻撃の手を緩めた。
攻撃が緩んだスキを見逃さずに、審判騎士は少女に向かって袈裟切りを見舞った。
その瞬間。少女は持っている剣の先を左斜め下に向けた特徴的な構えを見せる
「刃車」
少女は袈裟に振り下ろされる剣を自身が持つ剣で下から掬うような動きを見せた。
相手の持つ剣の勢いを利用しながら右側に向けて素早く剣を回転させるように動かし、合わせた剣をそのままもう一回転させ、少女から見て左側に自分と相手の剣が来たタイミングで思いっきり外側に弾く。
少女の剣の動きに引っ張られた審判騎士の剣は大きく外側に弾かれた。が、剣は手にあり、1秒後には少女を叩っ切ろうするだろう。
だが、それだけの時間があれば少女の狙いを決めることは可能だ。
少女は剣を弾く瞬間に右手を離し、すかさず右手の手のひらを審判騎士へと向け
「ティンダー!!!」
そう叫んだ。
先ほど少女が練った魔力はワンフレーズの詠唱で魔法へと変わり、炎が手から噴き出した。
炎は審判騎士の鎧に直撃。灼熱が少女の敵を焼き尽くそうと唸りを上げる。
審判騎士は一歩二歩と後ろに下がり上体を前へ傾ける。
倒れるのかと一瞬だけ少女は期待するが、それはすぐに打ち壊された。
ブワッ! という風が審判騎士の体から吹き、少女の出した炎が搔き消されてしまったのだ。
チャキッ。と剣を構えなおす少女は自分の切り札が何の効果も見受けられなかったことに驚愕したが、すぐさま切り替える。
彼女は格上と戦うことに良くも悪くも慣れっこだからだ。
もう一度切りかかろうと相手のスキを少女は探すが、一瞬相手の姿がブレ…
!? と、不意を突かれた少女はそれでも回避行動を取ろうとした。
刺突を繰り出す剣に対して、咄嗟に後ろに跳び退る。
だが、少女が後ろに跳ぶ速度と剣が少女の体に届く速さは明確で。…
「ガッ!?」
しかし、不幸中の幸いか。後ろに跳んでいる途中であることと、審判騎士が放った攻撃は前方にエネルギーが集中する刺突であったことにより、少女の体は一時的に串刺しにはなったもののすぐに剣は体から抜けた。
回避こそはできなかったが、完全に動きを封じられる事態だけは避けることが出来た。
少女は、最初に審判騎士から攻撃を受けた時と同様に地面を転がり、数メートルほど後ろに下がったところで漸く止まった。
「グ……!? ガハッ!」
たまらず少女は吐血する。
先ほどの刺突は数センチ差で致命傷にはならなかったものの、恐らく肺が傷ついたと思われた。
すぐさま少女は立ち上がろうとするが、傷が痛むのだろう。立ち上がっても膝をついてしまう。
その様を見て。審判騎士は追撃をかけるわけでもなく、兜の下でニタニタ笑っているような雰囲気を醸し出す。
自分よりも弱いものが必死になってあがいて、抵抗して、それでも届かなくて膝を屈するのが心底愉快でたまらないのだろう。
そのような嗜虐心が審判騎士に追撃をするよりも静観を選ばせた。皮肉なことにそれが少女の命をつないだのだ。
小さな少女は片手でポーチの中を探り、何かを取り出す。
先ほどと同じく回復ポーションだと思った審判騎士は特にアクションを起こさない。傷が回復してまた立ち上がってくれば再び痛めつける楽しみが味わえるからだ。
一歩。審判騎士は少女に向かって歩み出し……
突如現れた結界は審判騎士から少女の姿を覆い隠す。
それを見て、どうやら相手は籠城するつもりらしいと結論した審判騎士は、時間をかけてその結界を破壊することに決めたらしい。壊し方は恐怖を与えるようにゆっくり激しくやろうと思い、審判騎士は自身の剣を結界に叩きつけ始めた。
☆
「ゴㇹッ!」
俺は血を吐き出しながらも回復ポーションを使う。
すぐに激痛が引き傷口が塞がり始める。
致命傷ではないとはいえ、あの傷を放置して戦うのは俺には無理だ。……まあ、スバルが契約していた連中の中には腹や胸に大穴が空いても問題なく戦い続けるようなやつもちょくちょくいたが、流石にあれはあいつらがバーサーカーすぎるだけだろう。
分かったことをまとめよう。
まず、あのムカつく騎士ヤロウの鎧を俺の剣や魔法で突破するのは無理だ。
次に剣の腕前だが、ほとんどの面でこちらが負けているな。死ににくさはこちらが上と思いたいが攻撃力や速さでは完全完璧に俺の負け。
そして、あれの動きについてだ。最初の時といいさっきといい突然目の前に出現するあの動きついて、少しだけ分かったことがある。
最初は俺が反応できない速度で近付いてるのかと思ったが、2回目を見て違和感を覚えた。
思えば最初の時も不自然にブレていたが、速さや技術による動きならあんな感じにはならないと思うんだよな。
特殊な歩法や縮地、単純な身体能力でありえねえ動きする奴ならギルドにいくらでもいたけど、あの感じはギフトや魔法とかのフィジカル以外が原因な気がする。
そして最後に。あのヤロー俺の事なめすぎだろ。
俺が吹き飛ばされてスキを見せても追撃してこねえし。俺の攻撃中でも反撃なんていくらでもできたはずだろうに俺の好きなようにさせるし。ホント俺の事をなめてやがる。
さっき使った刃車はアカネが使ってたやつを見よう見まねでやってみただけのものだし、あの天才剣術少女ならそもそも何が起きたのかもわからないレベルだけどな。俺にあいつのトンでも剣術を真似すんのは無理だ。
そんなオリジナルに全く届かないようなものが通用するとは思えない。実際、剣をあいつの手から飛ばそうとしたのに失敗したからな。
ちなみに、アカネの片割れのアオバの方は何が起きたのか分かるけどただ単に何もさせてくれない。ハハハ……俺ってなんでこんな弱いんだろ。
駄目だ。剣がうまい連中にしごかれた、もといかまわれたことを思い出しても自信を失うだけわ。いや、そもそも失う自信ってあったっけ?
そんなとりとめのないことを思い出していた俺の耳に届いたのは、張った結界に剣を叩きつけて破壊しようとする効果音。
やべ、早く攻略方法見つけねえとBADエンド迎えちまう。
剣を叩きつけて出るとは思えないような轟音が響く中、俺はとれる選択肢を思考する。
今わかっていることは
1,俺の攻撃力(魔法も含む)では鎧を破壊できない。
2,恐らく特性かなんやらで疑似的な瞬間移動が可能。
3,俺をなめ腐っている。
……駄目だこれだけじゃ足りない。ほかに何かないか?
え~と。今持っているのはっと。
俺はポーチの中身を外に出して並べる。あまり多くの量は入っていないので外に出すのは一瞬だった。
スライムからの戦利品の液体。
ダンジョン外に出るための転移結晶。
それに……うん? なぜこれがある?
ポーチから出てきたのはこの世界では見ないはずの非殺傷武器のスタングレネード(どっかのバカが花火として使わなかったために残ったあまり)だった。どうやら
スタングレネードよりシンプルに手榴弾だったらよかったがまあ、使えそうだからポッケに入れとくか。
あとは……あ、これって確かあの時回収した回復ポーションという名の高純度聖水じゃん。
思い出すのはある聖女が小遣い稼ぎに回復ポーションを売り出して、その性能のせいでなんやかんやあって俺たちが回収したことだ。どうやらあの時回収した聖水が余っていたらしい。
確かこれの効果は、アンデットからの攻撃に耐性を得てなお且つ高い回復性能を持っているだったか?
ちなみに件の聖女は普通に仲間になっていた。冒険がしたいからだとかなんだとか言ってたけど自由すぎね。あの聖女。
いや、懐かしんでる場合ではないし、そもそもそんな昔のことじゃなかった。
って、そんなことはどうでもいい。今あるもので何か見つけないと本格的にマズイ。
転移結晶はエクストラボスの出た空間では基本使えないから意味なし。
さっき回収したスライムの戦利品は確か金属を脆くさせるような性質があった気がするけど、流石にあの鎧にぶっかけたとしても大した効果は見込めないだろう。
あとは今持ってる武器くらいか。
さっきから大変酷使しているこの剣はギルド仲間であるドワーフの姫が打った剣で、今は滅んだ帝国で使われていた魔法剣の技術を流用して作った試作品だ。
流用とはいってもほとんど文献とか残ってなかったからギルドの賢者組(見識が広くて頭いいやつら)の力も借りたから、これが原型をとどめたものなのかはよくわからないけど。
ちなみにこの魔法剣は自身が使える魔法を剣に流し込んで使うもので、分かりやすく言えば炎の魔法を使うとファイアーソードができるみたいな感じ。
大量生産して売りに出す計画だったが、ドワーフの姫様が『フェイル。今回はお前の使う武器を作るというからそれを作ったが私はおすすめしないぞ。よその武器の製造法を継ぎ接ぎだらけの文献から導き出したことは認めるが……はっきり言って、その剣より私がいつも作っているタイプの剣の方が全然いいぞ? 出来るならその妙な剣は作りたくないな。…フェイル、今度私がお前専用の別の剣を作って……は? これがあるからもういい? 私がせっかく作ってくれたものだから? そ、そうか(小声で)そんなに私が作った剣が良いの? だとしたら嬉しい……は!? おいまて、どこへ行くまだ話は終わってないぞ!』といった感じでどうやらもう作りたくないらしく、無理強いするつもりもなかったため量産計画は断念したのだ。
今思い返すと最後らへん何か言っていたような気がするが、怒鳴られそうだったのでさっさと逃げたのだ。いや~あの人迫力あるんだよな~。180センチ代の美人が持つ迫力は俺にはきついものがあるのだ。
今持ってるものを簡潔にまとめると、スライムの体液・脱出用の転移結晶(使用不能)・スタングレネード・中級回復ポーション(聖)・魔法剣の5点。
う~ん、どうするか。
バキン!
うわ、結界から出ちゃまずい音出てる。
結界を張るのに使った宝石は使い切りタイプだし、たまたまポーチに入れっぱなしにしてた物だから2個目なんてない。
このままだともって1分か。
バリン! バキン!!
何かないか、あの鎧を倒す作戦は…………
ガン! バギ!
作戦は………………
そのとき、一際きわ大きいガラスにひびが入るような音が聞こえ
あ、もしかして……これなら行けんじゃね?
俺はアイテム類をすべて手早くポーチに入れ、剣を腰に吊るしている鞘に納刀する。
バキン! バキン!!
耐久度の限界に達した結界が今にも割れそうな音を出す。
作戦は決まった。となればやることは一つ。
さあ、第二ラウンドの始まりだ!!
☆
審判騎士は結界を破壊した。
”パリーン”と、子気味良い音を出しながら壊れる。
さあ、続きを始めようと言わんばかりの審判騎士はしかし、困惑で硬直した。
なぜなら少女が、剣を鞘に入れた状態で膝立ちに近い状態で構えるという、審判騎士が知らない構えを見せていたからだ。
もし審判騎士が東の剣術について知っていればそれが抜刀術の構えだと気が付いただろう。
あるいは紛い物の【審判騎士 影】ではなくオリジナルの方ならば気づけただろうが、それは言っても詮無いことでしかない。
審判騎士の一瞬の硬直のスキを突き、少女はあらかじめ準備していた風魔法を逆噴射のように使いながら審判騎士へと高速で突っ込んだ。
「!?」 といった感じで審判騎士は驚くような反応を見せるが、彼の反応速度では加速した少女をとらえ切ることはできない。
少女は審判騎士の左側を通り、すれ違いざまに抜刀術を左足にお見舞いする。
加速した少女の体は審判騎士の背後数メートルで停止、そして即座に反転。転倒した審判騎士に追撃をかけようとしたが、
少女の目の前に剣を振りかざし今まさに首を刎ねようとする審判騎士がいた。
「ッ!?」 と、少女は驚くが即座に剣を間に挟み、首が斬られるのを防ぐ。
ガキン! という重い音を出しながらも剣を受け止めるが膂力の違いか、じわじわと少女の剣は彼女の体に近付いていく。
剣の腹が少女の肌に触れようとする寸前で、彼女は魔法剣を起動した。
使った魔法は風の魔法で、相手の剣を弾くために使用する。
ブワッ! という音を出し、審判騎士の剣を一瞬だけ相手に押し込んでから後ろに跳び退ろうとしたが、 審判騎士は後に下がる少女を見逃さず、
”ガ八ッ!”という苦悶の声を少女は漏らし吹き飛ばされるも、何とか体勢を倒れないように維持することはできた。
少女の靴が”ズザザッ!” という音を出しながら地面を滑り、止まる。
少女の着ている服は既に各所が血に濡れているが、新しく腹部からも赤色が広まり出す。
傷を押さえそうになる手を止め、ポーチの中から回復ポーションを取り出した。
その動きを審判騎士は止めようとしない。彼にとって相手は意表を突いてくることはあっても、所詮は己よりも劣った弱者でしかないという認識だからだ。
審判騎士のその認識は間違っていない。
事実として少女が正面から戦っても勝ち目がないことなど、もしこの戦闘を眺めているものがいたら明らかなことなのだから。
だが、それは流石に審判騎士は少女のことをなめすぎだった。
もう少しだけ少女の行動に警戒心を持っていれば、この後の流れは全く変わっていたことだろう。
ポーションを取り出した少女はしかし、審判騎士の思いもよらぬ行動に出た。
手に持ったポーションを自身に使わず相手に向かって
その行動を見て、やけっぱちになったのだろうと当てをつけた審判騎士はその場を動かなかい。
そして、投げたポーションは狙い違わず命中してビンが割れ……
「Ggoooooo!!!]
たまらないといった様子で、兜の中から絶叫が響いてきた。
その様を見て、少女は”狙い通り”と言った感じで口元に笑みを浮かべる。
彼女がやったことは至極簡単なことで、ただ単に相手の弱点を突いただけ。
では、審判騎士の弱点とはいったい何なのか。それを少女は大まかにあたりをつけていた。
2度行われた不自然な移動。それは少女の経験にあるとある敵がしていた動きによく似ていたのである。
その存在とは、かつて少女がとある屋敷で戦ったゴーストアサシンのことだ。
ゴーストアサシンは意表を突く動きを得意としていて、少女(その時は少年だったが)は手も足も出なかった。ちなみにその時は、一緒に居た狂戦士が野生の本能とでも言うべき尋常ならざる直感で居場所を探知し、斧で空間ごと粉砕していた。
あの時の突然目の前に出現する動きは、アサシンだからできることなのだと考えていたがそうではなくてゴーストだからできることなのだと、先ほど少女は気づいたのだ。
相手がゴースト系なのだとしたら、対処法はアンデットにする方法で問題ない。
ではアンデットの弱点とは何か。この世界のアンデットの弱点は日本のサブカルチャー、つまりゲームなどとほとんど同じ。
聖属性魔法、光魔法、浄化魔法と続き、回復魔法も当然のごとく弱点である。
だが、少女は上記の魔法のいずれも使えない。よって彼女になすすべはないと言ってもよかったのだが、実のところ回復魔法に関してはちょっとした裏技というものが存在する。
それは魔法ではなくとも回復する効果があるもの。例えば
そして彼女の場合は、運がいいことに
ただでさえダメージがある回復ポーションに、アンデットに関しては特に天敵ともいえる聖女がかけた祝福まであるのだ。
これにはさすがの審判騎士の影といえどたまったもんじゃない。
[G、GAAAA!!!」
ポーションがかかった部位に尋常ならざる痛みが走ったのであろう審判騎士は、先ほどまでの厭らしい雰囲気はすでになく。あるのはただ単に怒りと憎しみを孕んだ殺気だけだった。
激情に駆られた審判騎士は、仕立て人に対して攻撃を行うべく猛スピードで突撃する。
「GuuuuuAAAAaaaa!!!」
雄たけびを上げながら時速に直すと100キロオーバーの速度で接近し剣を横なぎに振るう。
それに対して少女は
”スっ” と僅かに並行よりも剣先が上を向くように剣を構える。
構えたその瞬間。
ギギン! という金属を削ったかのような甲高い音が響いた。
審判騎士が振るった剣を少女が持つ剣で滑らせて、狙いを上に逸らしたのだ。
少女の身長では審判騎士が剣を真横に振るった場合肩に近いところを狙うところになり、上に逸らせば相手の剣の下を潜り抜けて回避することが出来る。
激情に任せて剣を振るった審判騎士は、狙いを上に逸らされたことで大きく体勢を崩した。
そのスキを少女は見逃さずにポケットに片手を入れ、パイナップルのようなフォルムをした何かを取り出してから口を使って素早くピンを取り、審判騎士の眼前に放り投げ、後ろに跳ぶ。
即座に耳を塞いで目閉じて口を半開きにする。そして1秒後、
部屋を光と音が包んだ。
キーンという耳鳴りが残りながらも、少女は何とか立ち上がる。
見渡してみると、先ほど立っていた場所に審判騎士が仰向けになって倒れていた。
これは少女が知らないことだが、先ほどのスタングレネードを作る際に光魔法とわずかながらも聖属性魔法が使われていた。
もちろんスタングレネードを再現するためにほかにもいろいろと使われていたりするが、それは少女が知らないことだ。
審判騎士が倒れてる理由は込められていた光魔法と聖属性がダブルコンボで効いたからであり、意図してやったわけではなくとも少女にとってはスタングレネードが勝利の要因となった。
……まあ、少女が真相を知ったら少しだけ複雑な顔をするだろうが。
少女は審判騎士に近付く。
起き上がる様子はないが、エクストラボスが出たことによって変化した部屋が戻っていないことからまだ戦闘は続いているという判定になっている。
となると、少女は審判騎士にとどめを刺さないといけないが、如何せん少女には火力といえるモノがあんまりない。
見る限り鎧はボロボロで耐久力もそれなりに落ちているのだろうが、一撃となるかは彼女からすれば不安が残る。
少しだけ思案した少女は、スライムの体液をかけてからそこに魔法剣を全力で差し込んで魔法を叩きつけようと考えた。火力の心配をするならそれくらいはしなければならない。
変に手を抜いて仕留めそこない起き上がられたら、第3回戦に突入しかねないからだ。
ポーチからスライムの体液の入ったビンを取り出して、中身を鎧の胸の部分に掛ける。
「魔法剣。全開」
そう言ってから鎧の胸に突き刺し、
「燃えろ」
その一言で剣から伝わった炎が空っぽだった鎧の節々から吹き出した。
それがトドメとなり、【審判騎士 影】は少女の前から影も形もなく消滅。
虚ろな騎士の偽物と少女の戦いは死闘の末、少女の勝利で決着した。
☆
足元にダンジョンの出口に送られる魔法陣が浮かび上がる。
エクストラボスを倒したことで、ようやくダンジョンをクリアしたと見做されたということだ。
魔法陣の光が強くなり、反射的に目を瞑る。
一瞬してから目を開けるとそこは既にダンジョンの外。
入り口からはそう離れていないが、後ろは壁があるだけでダンジョンとはつながっていない。ここはクリアした者が送られるだけのスペースで、ダンジョンの出口とは一般にこのような場所を指す。
「はあ、疲れ…うっ!」
戦闘中だったから無視できた傷の痛みが意識できるようになった。
あのヤローのつま先に付いていた刃が刺さった腹が痛みを訴える。
俺は剣を鞘に納めてから痛む腹を片腕で押さえ、移動をするために立ち上がった。
「確か、近くに小屋があったはず……」
以前このダンジョンに入ったときに利用したやけに小奇麗だった無人の小屋。
まだあるならそこで応急処置くらいはしておきたい。
もうポーションは残っていないし回復魔法も使えないため、包帯くらいは欲しいところだ。傷の方も急所ではないため運がいい。
それにいくらこの辺に強力なモンスターはいないはずとはいえ、手負いの状態では満足に戦えない。そのため会敵を避けて安全地帯まで行くのが急務となる。
そこまで考え、俺は記憶を頼りに森の中を歩き出した
「よかった、あった……」
運よく獣にもモンスターにも見つかることなく、俺は傷をかばいながら10分ほど歩き、ようやく目的の小屋を発見した。
その小屋は見たところ綺麗で使えそうだが、中はどうなってるのか分からない。外観が以前来た時と全く変わっていないから大丈夫な気はするがまあ、最低限雨風を凌げたらいいくらいの心持で行けばいいか。
木製の扉を開き、中に入る。
驚くべき(でもないのか?)ことに中も清潔に保たれているように見え、この部屋で最も汚いのは血や泥、汗に塗れたこの俺だ。あ~シャワー浴びたい。
もちろんシャワーなどないが、探せば包帯くらいは見つかるかもしれない。
勇者行為(RPGで人の家を探索するあれ)をするのは一般的日本人の道徳的にまずい気がするが、緊急事態なので治療道具くらいは見逃してほしいというのが正直な気持ちだ。
まあ、謎の小屋ではあるが持ち主がいるのか不明なところがあるからな。あまり漁りすぎるのは良いこととは言えないだろう。
物取りのようなことをするが生きるためにはしゃあない。と、俺は自己弁護の言葉を並べてから室内を探索する。
暫くして
タンスの中に救急箱があるのを見つけ、中から包帯を取り出して応急処置を済ませる。
まあ、応急処置とはいっても包帯を巻いただけなため不十分感は否めない。が、この世界はファンタジーだし、かくいう俺の体もファンタジー原産のものだ。このくらいなら寝れば(少しは)よくなるはず。
「はあ……ねむい」
流石に血を流しすぎたか。俺の意識は朦朧としてきた。
立ってるのも辛くて、座り込むがそのまま視点が下へズレていき、気が付くと俺は”バタリ”と床によこたわっていた。
「だれ、…か……」
無意識のうちに助けを求めてしまうが、もちろん誰も来ない。
(まだ、やらないといけないことがあるのに)
そう思いながらも少しずつ意識は黒に飲み込まれていく。
(まさか死ぬ? こんなところで? 冗談じゃない。俺はまだ……)
視界は既に黒に染まり、指も動かせなくなってきた。
それでも何かできないかと思考だけはなぜか回る。だがそれも徐々に回らなくなっていく。
(いたい、でもまだだ。……俺は)
(絶対に)
「理想のロリに…なって、や…る」
そして俺の意識は完全に闇に沈んだ。
主人公が生き残った理由。
1 敵がクッソ舐めプしてた。舐めプしてなかったら最初の斬撃で上半身と下半身が泣き別れしていた。
2 ギルドで剣が上手いやつらの不器用なスキンシップ(という名の泣く子も黙る鬼の修練。基本途中で気絶するため完遂したことなし)をよく受けていた。これがあったからある程度剣を振って戦えた。
ちなみに主人公の剣の技量を1としたら【審判騎士 影】は5。ギルドの連中は100オーバーがたまにいる感じ。
3 ポーチの中身にいれっぱにしていた。回復ポーションは以前買ったものがそのまま残っていたから。聖女の魔法がかかったポーションがなかった場合主人公の攻撃が相手に通ることはなかった。
4 スタングレネードがなかった場合は本気になった状態の敵と戦うことになり、たとえ手負いだとしても九分九厘主人公は死んでいた。
5 持っていた魔法剣がすごかった。作った当人からすればとても良いモノとは言えないが、それでも十分名剣と言われるようなもの。もし主人公が下手な剣を持っていた場合2,3合打ち合った時点でへし折れていた。そして魔法剣だったのもあってとどめを刺すための火力が何とか届いた。
もしトドメさせていなかった場合は3回戦目が行われ、7対3の確率で主人公は死んでいる。
6 運よく敵に襲われなかった。あの状態の主人公では人間の盗賊(雑魚)に襲われても撃退することは至難の業。モンスターや獣でも同様。
以上。主人公が生き残れた理由でした。
一言でまとめれば主人公が生き残れた理由はご都合主義です。
今後見るとしたらどれがいい?
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速攻で捕まってごめんなさいif
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速攻で捕まってごめんなさいif R18
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過去編が読みたいな~
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そんなんいいから早く進めろ