ぼくのSubの二宮さんがあまりにもズルすぎる   作:熊々楠

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幕間*二宮さんと出会う直前の話*出待ち事件から数日後の話

*二宮さんと出会う直前の話

 

 

「こた~~! 今日も防衛任務がんばろーね!」

「たつき」

 

 柳瀬は隊に所属していないフリーのB級のため、防衛任務では臨時の混成部隊で任務に当たる。担当地区は違うものの、同じ時間帯に任務に当たることになる柿崎隊の一員、そして柳瀬のクラスメイトである巴を見付け、うりうりひっつきにいく。

 

「まだ任務まで時間あるけど、来るのはやいね」

「家にいても暇だからさー。ボーダーに来たら誰かしらに会えるし」

 

 現にこたに会えたし。うりうりすると巴もくすぐったそうに笑った。

 

「でも言うわりにはこたも早いじゃん」

「おれは次のランク戦のミーティングもあるから」

「まじめだ~」

 

 ちょうど待ち合わせをしていたのだろう、巴の部隊長である柿崎と照屋が二人を呼んだのに気が付き会釈した。

 

「柿崎さん、照屋先輩、お疲れさまです!」

「お疲れさま」

「相変わらず仲いいな」

「へへへ~」

 

 照れ笑いを浮かべる柳瀬と巴を微笑ましく見ながら、柿崎が思い出したように言った。

 

「そうだ。防衛任務が終わったらみんなで飯に行く予定なんだが、よかったら柳瀬も来ないか?」

「行きます!」

 

 勢いよく手を上げて主張する。特に予定がない限り大体こうやって元気よく返事をするのが気持ちよくて、積極的に構おうとする隊員が多いのだ。今回も食い気味に主張した柳瀬に柿崎はうんうんと頷いている。

 

「じゃあ、シフト終わったら作戦室に…──」

 

 伺いますね、そう続けようとした柳瀬の言葉がふっと途切れた。遠くをじっと見つめて、全く違う話を振る。

 

「柳瀬くん?」

「……あそこの廊下の、さらに向こうの方って、何かありましたっけ」

「ん? いや、あの辺りは今は使われてない区画のはず……なんかあったか?」

 

 依然じっと見つめている視線の先を柿崎たちが追う。夕方という時間帯もあり人通りは多いが、特に問題点は見当たらない。誰がいたのだろうか。

 

「あっちに困ってる人がいる……って、ぼくのサイドエフェクトが言ってます。ので、ちょっと行ってきます!」

「迅さんの真似?」

「たつき一人で大丈夫? おれもついてこうか」

「んーん、とりあえず大丈夫」

「何かあったら呼べよ」

「あいあい! あとで作戦室いくんで、うい先輩にもよろしくお伝えください~!」

 

 ぱたぱたと去って行く小さい背中を見つめ、残された柿崎隊三名は予定通りミーティングのため作戦室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

*出待ち事件から数日後の話

 

 

 

「あ、辻先輩!」

「あ、柳瀬くん」

 

 個人ランク戦ブース。柳瀬が孤月使いに対戦を申し込んだら、転送先で会ったのは辻だった。同じアタッカーというつながりで関わりは多いが、それにしても何故か柳瀬は辻によく懐いているため、辻は不思議に思いつつも少しくすぐったく思いつつ接していた。

 ちなみに柳瀬が辻に懐いているのは、柳瀬がスコーピオン使いである反面、辻が元々使いたがっていた孤月使いで、そのオプショントリガーである旋空とバッグワーム以外を使用しないのが「渋くてカッコいい。しかも強い」との理由がある。

 ……とは言っても、柳瀬にも年相応の憧れの先輩に対する恥じらいは持ち合わせているし、機会もないのにわざわざ言うのは気が引けるため、今のところ辻に伝える予定はないのだが。

 辻は十戦を勝ち越した後、ブースから出てきた柳瀬に思い出しついでに話かける。

 

「そういえば柳瀬くん、最近うちの二宮さんと仲いいの?」

「……それ、最近みんなから言われるんですよね……」

 

 うっと言葉を詰まらせて、少々疲れたようにため息を吐いた。辻にとっては懐いてくれている後輩と隊長が仲がいいとなんとなく嬉しい、という気持ちがあったが、どうやら柳瀬は辟易気味のようだ。二宮のことをどう思っているかというよりは周りの対応に疲れている様子だが。

 

「ええと、ちょっとご縁があって話す機会があった、みたいな?」

「そうなの……?」

「辻先輩こそ、二宮さんから話聞いてないんですか?」

「詳しくは……」

 

 噂されている目撃情報は「二宮隊の隊長がフリーのB級の中学生の腕をつかんで呼び止めていた」というものだった。真偽の確認のため辻は(というか辻が尋ねる前に犬飼が面白がって)二宮から話を聞いたのだが、あまり詳しい話はされなかった。知っているのは行動自体は本当であることと、少し話をしたということだけ。

 すわ欠員補充のスカウトか、それともカツアゲかという冗談のような噂はさておいて、必要な情報であれば比較的共有する二宮から聞かされていないと言うことは、つまり個人的な事情なのだろうと辻はあたりをつけていた。前者であれば辻や犬飼、氷見が聞かされていないはずはないし、後者はそもそもありえない。

 故に柳瀬に尋ねたのだが、彼はもにょもにょと口をもごつかせたあと「二宮さんが話してないなら、ぼくが話していいことではないので……」と事情の説明を拒んだ。ということは柳瀬側の事情というよりは、二宮側の事情なのだろうと察せられる。どうしても知りたいと言うわけでもなくただの世間話のつもりだったので、そっか、とすぐに切り上げて、まだ続けるか休憩するかを尋ねようとしたところでふと柳瀬が呟いた。

 

「でも、あれですね。二宮さんとまともに喋ったのっていままでなかったですけど、あの人ってすごーく……律儀、っていうか、丁寧? な人ですね」

「えっ」

 

 言葉を選んでいるのか、首を傾げたところで柳瀬の端末が震えた。内容は"飯行くぞ"のひとことのみ。

 

「……あ。すみません、マサ……影浦先輩に呼ばれてるのでもう行きますね。対ありでした!」

「あ、ああ。うん」

 

 辻が驚いている間に、彼は一礼し去っていった。

 

 

 言葉を溜めたところで、冷たい、と続くのかと思っていた辻は感慨深げなため息をついた。

 二宮は、端的に言うと誤解されやすい。主な原因は表情があまり変わらないことと言葉が足りないところにあり、辻は理解し慣れた上で一緒にいるがたまに第三者からの二宮評を聞くとそう思えるのだな、と思うことがあった。そのような印象になるような振る舞いをしているのは二宮自身なのだし、特に否定も肯定もせずスルーすることが常だったのだが。

 故に、柳瀬からの意外な評価に驚いた。

 

(……一体どんな話をしたのか、余計に気になるな……)

 

 無論、二宮からも柳瀬からも、無理矢理に聞き出すつもりなど毛頭ないけれど。

 

 

 

 

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