Archive of Coral 作:コーラルの色彩
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メインシステム ミッションブリーフィング開始
MAIN SYSTEM
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MISSION BRIEFING
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【ハンドラー・ウォルター】
SOUND ONLY
621、仕事だ。先程、連邦生徒会長からのメッセージが届いた。
現在、連邦生徒会長は行方不明だという情報もあり、この依頼が騙りである可能性を考慮したがどうやら特定の時期、若しくはある人物がキヴォトスを訪れることで送信されるようになっているようだ。
依頼内容は『シャーレの先生』である人物の護衛だ。現在、その人物は複数の護衛を引き連れて目的である『シャーレ』のある該当地区へ向かっている。
該当地区では現在、矯正局から脱走した生徒による街路の封鎖や周辺住居の占領が行われている。それを先回りして露払いするのが今回の任務だ。
…今護衛対象の素性を確認した。どうやら『先生』はキヴォトス外から来ているようだな。その為、銃弾一発でも致命傷になりかねない。
更にはブラックマーケットから作業用二脚MTが買い取られたとの情報が入っている。不良学生がなけなしの大金をはたいて買った中古品だろうと公でACを使用することの出来ない現状では油断できない相手だ。
621、MTに対して対AC装甲用兵装の使用を許可する。可能であれば『先生』との接触前にMTを片付け、速やかに処理を行い帰還しろ。
私はユウカたちと共にシャーレの部室を目指して車を走らせていたところ。後、数百メートルという場所で不良生徒たちの抵抗が激しくなった。
これ以上は不良生徒を振り切って車を走らせるのは危険だと判断し、車から降りて迎撃を行いながら前進している。
「うひゃぁ!!」
「先生!危ないので車体から身体を出さないで下さい!」
「前方、不良学生たちの設置したバリケードが道を塞いでます。このままでは目的地に辿り着くのは難しいですね」
「い、痛いってばぁ!何よ、あの不良たち違法JHP弾使ってるじゃない!」
「ユウカ、此方の遮蔽に。それとホローポイント弾は違法指定されていません」
「ミレニアムではこれから違法指定になるの!こんなの傷跡になるでしょう!」
「傷跡になるで済むってキヴォトスの皆は凄いね…」
車の裏に隠れているとはいえ流れ弾の一つでも当たれば危険な私をハスミが大きな翼で私を覆って守ってくれている。ユウカは身を乗り出して迎撃を行っていたので銃弾を受けて痛がっている。
「先生、どうしましょうか。前に進むには先生の安全を確保できません。ですが、このまま此処で迎撃をしていたらシャーレの部室を占領されてしまいます」
「………うん、このままじゃダメだね。私が指示するから皆はその通りに動いてもらえるかな?」
「え!?先生って戦術指揮も出来るんですか!?いや、先生だからなんですかね?」
「分かりました、これより先生の指揮に従います」
「ユウカとスズミは遮蔽物を経由して前線へ詰めていって不良生徒たちの相手、チナツは二人のケアをお願い。ハスミは後方から上に飛んでいるドローンとかの相手をして貰えるかな」
「「「「了解」」」」
私が指示を出すと四人は素早く自身の配置についた。ユウカとスズミは徐々に前方に向かって距離を詰めながら不良生徒たちを撃退し、チナツは二人の死角になっている位置のクリアリングや補給物資を受け渡し、ハスミは空から私を狙ってか此方に向かってきているドローンを排除してくれている。
先程の膠着状態とは打って変わって徐々に私たちが前線を押し上げている状態で相手側に動揺が見られ始めた。
「おい!何で押されてるんだ!」
「君たちが前線を維持できてないからうまく動けないんだよ!」
「あぁぁん!?私たちのせいだっていうのかよ!?」
「そうだと言っているだろ!」
どうやら彼女たちは味方同士といっても仲の良いチームというわけではないみたいで連携が崩れ始めると彼女たち同士での言い争いが増えてきている。
「彼女たち、もう仲間内の争いで脳内のリソース使っていない?ドンドンと動きが杜撰になってるわよ…」
「私たち的には先生を護衛しつつ前進できているから問題ないですが」
「戦意喪失した生徒たちが続々と撤退していっているようです」
「ドローンも品切れの様ですかね、もう飛んでくる様子もありません」
そんなことを話していると撤退していく不良生徒の流れに逆らってヘルメットを被った少女が現れた。
「やっぱり、不良生徒を数多く雇ってもダメだねぇ。これなら
「君がこの騒動の主犯なのかな?」
「ん?実行犯って意味ではそうかもね。まあ、私も上からの指示で動いているだけですけどぉ…って。そこに居るのは噂のシャーレの先生ですかね?お初にお目にかかります、ヘルメット団の下っ端幹部のぉ…【印相ニマ】でいいですかね、ニマっていいます。以後お見知りおきを」
少女はバイクの様なヘルメットを被っているがその所作自体は優雅なものであり、懇切丁寧であるようにも慇懃無礼のようにも感じ取れた。
「明らかに偽名じゃない!それに何でこんなことするのよ!先生がシャーレに到着すればサンクトゥムタワーは復旧してインフラや物流も改善するのよ!」
「うぉ!そんなに急に怒らないで下さいよぉ…ミレニアムのお姉さん。それで何でこんなことをしているのか?ですか…」
「私も詳しく知りたいな何故君たちは私の行く先を妨害したりシャーレを占拠しようとしているのかな?」
「私も詳しくは知りませんけどキヴォトスが混乱状態である方が行動しやすい人がいるんでしょうね。私に下された指示は先生をある建物に到達させないことですから、貴方達の話と照合するに私たちが占拠しようとしている建物がシャーレなのでしょうね」
「だったら、退いてはくれませんか?貴女もキヴォトスで生活しているのです。これ以上の混乱はマトモな生活を送る事すら困難になります」
「そういう訳だから通してくれないかな?ニマちゃん」
私が少し前に出て彼女を説得、ユウカたちは銃口を向けてはいないがいつでも対応できるようにしている。
「私個人の感情としてはもう面倒なのでお通ししたいのですが裏稼業は信用問題です。依頼の成功・失敗は勿論のことですが一度受けた依頼を放棄するというのはヘルメット団という看板に泥を塗る行為です」
「交渉決裂ですね」
「ええ。ですので、これで最後の抵抗とさせて頂きます」
返答を聞いたハスミがライフルをニマに向けると彼女は右手を挙げた。勿論それは降伏の意思表示ではなく何かの合図で…。
「ユウカ、スズミ、先生、下がってください!上から何か来ます!」
「っ!先生!」
「うわっぷ!」
ユウカに手を引かれて後方へ飛び退く。するとニマと私たちの間に何か巨大なものが降り立った。
現れたそれは二脚で立っていて左手にショベルカーの様な機構、右手にはドリルという工事現場に居そうな雰囲気も出しつつも左肩に申し訳程度に設置されているバズーカが異質な巨大ロボットだった。
「ロ…ロボットだぁ!!!」
「ちょ、先生…今はロボットに興奮するタイミングじゃないでしょ!」
「ブラックマーケットにMTが流れている話はしましたがまさか早速相手することになるとは…」
「あれがMTなんだ…」
「こんなぼろっちいMTですら私たちの懐を真冬の如く素寒貧にする程なんですよぉ。普通の生徒を相手するには過剰な装甲だけどお相手が『シャーレの先生率いる各学園の実力者』となれば足止めには丁度良いでしょう!それでは私はこれにて…おつかれさまでした!」
MTを挟んで反対側に居たニマはそう言い残すと足早に撤退を開始した。それをユウカが追おうとするがMTが右手のドリルを振り下ろし行く手を阻む。
「ちょっと逃げるつもり?!待ちなさいよ!うわぁっ!あっぶない!!」
「ユウカ、彼女を追いたい気持ちも理解できますが今は目の前のMTに集中して下さい」
「くっ…ミレニアムに帰ったら学園の監視システムを使って見つけ出してやるんだから!」
四人は正面のMTに対抗すべく行動を再開。だが、不良学生を相手していた時の様の容易に対処することは出来ない。
ユウカやスズミの使用する銃ではMTの装甲を抜くほどの火力を容易には出せず、チナツが爆発物を設置しようとするが両腕の武装が容易に接近することを許さない。ハスミは時折、此方に向けて飛ばされるグレネードを狙撃して迎撃するのに神経を割いている為攻撃に転じれていない。
「先生は私の背後から出てこないで下さいね。万が一の場合、私の身体を遮蔽にして防爆しますので」
「ありがとう。でも、無理しないでね。最悪の場合はシャーレの部室に到着出来なくても撤退するから」
「全然、効いてる気がしないんですけど!」
「実際、私たちの攻撃があのMTに有効打になっていない。あちらの攻撃も鈍重で私たちに対しては当たる気はしないが…」
「先生を連れて横切るには少々問題がありますね…ヘルメット団の彼女が言っていた様に私たちの足止めにはピッタシという事でしょう」
私たちがMTに対して有効な一撃を与えることが出来ず、手をこまねいていると背後から声が聞こえた。
「護衛対象確認。敵機、無人MT…【WK750R】系統の改造機と推測。敵機排除を開始」
「えっと、君は…?」
「ちょっと貴女危ないわよ!」
「…発射」
彼女のレーザーライフルから放たれた一撃はMTの装甲を貫通し、着弾地点を融解させた。
「すご…ロボットの装甲に穴が開いた…」
「MTの装甲をものともしないなんて凄い火力ね…エンジニア部の造っていた宇宙戦艦の砲台を思い出したわよ…」
「あのレーザーライフル…アーキバス製の物に似ていますが見たこと無いですね」
「…あのMTは大した耐EN装甲は無い筈…【VE-66LRA】の射撃を受けてまだ動けるはずは…」
私たちが彼女の武器に驚いていると彼女は彼女で何かを考えているようで小声で話している。そこへ私は近づくと彼女に話しかけてみた。
「ねえ、君は一体誰なのか教えてくれないかな?私は今日赴任したシャーレの先生なんだ!」
「ちょっと先生、そんな呑気なこと言ってる場合じゃ…」
ユウカが少し焦った様にしていると彼女は取り出した手榴弾をMTへ向けて投げた。
「着弾を確認、目標MTに効果有り…………これで少しの間はあのMTは行動不能になるはず」
「あれはジャミンググレネードですか?」
「あのMTはAIの無人操作だからセンサー類がマトモに機能しない状態なら対処は簡単」
『VE-66LRA…チャージ70%…80%…90%…100%。EN充填完了最大出力照射可能です』
「射撃モードをマニュアルエイムに変更。目標確認…発射」
彼女の持つ武器から先程の一撃とは比べ物にならない一撃が放たれた。その一撃はジャミング弾で未だセンサー類が正常に動作せずに右往左往しているMTに当たると正面から背面までの装甲を貫き溶解させた。
「【VE-66LRA】に異常発生…最大充填照射で発生したオーバーヒートによる銃身の溶解を確認。…周辺に敵性反応無し。任務完了…」
「ねぇ、聞いてる?貴女は一体何者なの?」
「…先生、既にシャーレ周辺の安全は確保しています。まだ、残党が残っているかもしれないが後はそちらの四人でも対処可能は筈。今優先すべきなのは私ではなくシャーレへ行くことだろう?」
彼女は淡々とした喋りは少し冷たさを感じるが私はそんな話し方の中に此方を本心で心配しているのが伝わった。確かに彼女の事をしっかりと聞くべきなのだと思うけど優先順位を見誤ってはいけない。
「そうだね、今は優先すべきなのはそっちかも。ありがとう、また今度貴女の事を教えてね、シャーレで待っているから!皆、シャーレに向かうよ」
「了解しました」
「それでは引き続き私が先頭を歩きます」
「ユウカ、行きますよ」
「ちょっと!置いて行かないで!」
MTの横を通りシャーレの建物を目指す。少し先に進んでから背後をチラリと見てみたが既に彼女の姿はそこにはなかった。彼女はまた会いに来る等の返事はしなかったけど何故か私はまた彼女と会える気がした。
■不良生徒
キヴォトスにいる一般的な不良。ただの不良なので学校にも通っているし、授業も受けている。ただ、キヴォトス基準で不良なので街中で銃撃戦を繰り広げる。
■ヘルメット団
キヴォトスでよく見かける武装不良集団。一般的な不良生徒と比べるともう少し過激なことをする生徒も居る。
幾つかの派閥が存在する様で『カタカタ』や『ジャブジャブ』を名乗るヘルメット団が存在する。
ヘルメット団という括りで見れば構成人数は多いかもしれないが実際は各派閥で好きなように動いている為、ヘルメットを被った幾つもの不良学生集団の総称である。
■印相ニマ
自称ヘルメット団下っ端幹部。顔はヘルメット団お馴染みのヘルメットで見えないが服装は黒を基調とした学生服を身に着けている。
言葉遣いは丁寧だが言葉の節々から此方を観察するような意図を感じる。
■WK750R
元々、工事現場で使用されていたMTで腕にはドリルとシャベルが備わっている。肩に半ば無理やり装備している大豊製のバズーカは購入者が攻撃性に乏しい当機を少しでも強くしようという努力の結果。
それでもコックピット部分が露天である為、有人機として活用する場合はほぼ間違いなくコックピットを狙われる。それ故に対歩兵を想定してもお世辞には強いとは言えない。
■VE-66LRA
アーキバス製のAC用単身式レーザーライフル。621がキヴォトスで通常使用しているのはこれの小型化したカーラ特性の製品。
威力は小型化した割には高めを維持しているがそれ故にチャージ出力に銃身が焼き切れる等、まだまだ安定して使用するのは難しい