織斑日記   作:青いカンテラ

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『金髪の貴公子』

【6月◆日/晴れ】

 

 転校生がきた。今度は一組に。しかも二人。片方は世界で二人目のISを使える男ことシャルル・デュノア。もう片方は同志クラリッサが愛してやまないラウラ・ボーデヴィッヒ。

 シャルルくんはフランスの代表候補生らしい。すげえ、俺とは大違いだぜ。金髪の貴公子とか呼ばれそうだな。そしてラウラちゃんも代表候補生らしい。ドイツの。こちらはドイツの冷水とか呼ばれていそうだ。黒眼帯がカッコE。いいなあ、あれ。

 

 「ラウラだ」と文字数にすると四文字だけの自己紹介を終えたラウラちゃんと俺の目が合う。目と目が合うー♪

 

 ⊂彡☆))Д´)

 

「カクリコン!!」

「貴様が・・・貴様が織斑一夏か。貴様のようなやつが教官の弟などと・・・認めるか。認めるものか!!」

 

 それだけ言うと空いていた席に着くラウラちゃん。叩かれた頬に手を添えたまま呆然とする俺。ありがとうございます!(クラスメイトドン引き) さすが現役軍人。躊躇なく人の頬を打ちぬきやがった。背筋の伸びた姿勢とかカッコよすぎだろ惚れる。ちなみに「教官」とは千冬姉さんのことである。

 

 ラウラちゃんは俺が凹んでるとか怒っているだとか思っているのかもしれない。ところがぎっちょん。この程度は日常茶飯事である。姉さんのブリュンヒルデ・アタックにくらべれば全然痛くない。ごめん痛いものは痛い。むしろがぜん興味がわいてきた。俺が姉さんの弟だって認めない? はっ、面白いじゃあないか。ラウラ・ボーデヴィッヒ。君は俺の恐るべき妹達計画の三人目として相応しいようだ。

 

「一時間目は二組と合同でIS模擬戦を行う。各人はすぐに着替えて第二アリーナに集合! おい織斑。同じ男子同士デュノアの面倒を見てやれ」

「あいあいさー」

「返事は『はい』だ馬鹿者」

「はい!」

「・・・まったく、返事だけはいいな」

 

 姉さんは山田先生と共に教室を出て行く。俺らも早く行きましょうかねー。第二アリーナの更衣室までダッシュ&ダッシュだぜ!!

 

「シャルルくーん、野球拳やろうぜー」

「や、野球拳? 野球じゃなくて?」

 

 野球拳しらんのか。つまらん。女子の何人かは「シャルルくんと織斑くんのドキドキ☆野球拳大会!? ポロりもあるよ!?」と反応している。ただし妄想は鼻から出る。遅れんなよー。

 シャルルくんの手を引いて走る。シャルルくんの手は男のわりにとても細い。まるで女の子みたいに綺麗だし。これが噂に聞く「男の娘」というものなのか? マジかよすげぇな。こんな可愛い子が女の子なわけがないとか俺得すぎるぜヒャッホーイ。

 

「織斑発見! 織斑発見!」

「彼が噂の転校生ね! 囲め囲めー!」

「逃げたぞ! 追え! ボスがお待ちだ!」

「待てーい織斑ー!!」

「ばっかもーん! そいつが転校生だ!」

「ダニィ!? 私を踏み台にしたあ!?」

「バ、バカな・・・速すぎる・・・」

「やっほー、一夏くん&噂の転校生くん。一枚写真撮らせてー。はい。ちーず。オッケー、いいのが撮れたよーありがとー」

「柔道部とレスリング部の混成部隊が足止めもできずに全滅だと!?」

 

 IS学園女子たちの包囲網を突破し、なんとか目的地まで到達した俺とシャルルくん。ふぃー、なんとかなったか。捕まってたら地獄の鬼教官直々に折檻されるところだった。それだけは勘弁願いたい。俺はまだ死にたくない。

 

「早く着替えちまおうぜ。遅れたりしたら出席簿が飛んでくる」

「そ、そうなんだ。怖いね」

「おう。しかも超痛いから気をつけろよってシャルルくーんは着替えるの早いな。何かコツとかあんの?」

「え? 下に着てるだけだよ。動きの邪魔にもならないから、わざわざ着替える手間も省けるし」

「その手があったか!」

「織斑くんは着替えてたの?」

「その通りでござんす。俺も次からは下に着ようっと。ぬぎぬぎ」

「う、うわわ」

「ん、どしたよ」

「う、うん!? なんでもないよ!?」

 

 俺の裸を見て顔を赤くするとか愛いやつめ。

 

「シャルルくん」

「な、なに?」

「やらないか♂」

 

 うほっ♂

 

「や、やらないよ! 織斑くんのエッチ!」

 

 可愛いなあ。

 

 

 

「では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する」

『はい!』

 

 さすがに二クラス分ともなると迫力が違うなあ。気合の入り様もなんか違うし。あれか、ついに実戦訓練が開始されるからみんな血沸き肉躍るってか。一夏くんついていけない。

 

「今日は初日ということで戦闘を実演してもらおう。凰! オルコット! 前に出ろ!」

「へぁっ!?」

 

 一瞬鈴ちゃんが伝説のなんとかに見えたのは気のせいだ。そうに違いない。

 

「ところでお相手はどちらに? わたくしは鈴さんでもよろしくてよ」

「それはこっちの台詞! コテンパンにしてあげるわよ!」

「慌てるなバカども。対戦相手は山田先生だ」

 

 はて、その山田先生はいったいどこに?

 

 ―――キィィィン・・・

 

 ん? なんだこの音は。ジェット機が空気を切り裂く音によく似て・・・な、なんだあれは! 鳥だ! 飛行機だ! いや、

 

「ど、どいてくださぁぁぁぁぁぁい!」

 

 山田先生だ! っていうてる場合か! 退避! 総員退避!

 

 ドカァァァン!

 

 うおぉ、すげぇ音したぞ。大丈夫かみんな。大丈夫じゃないなら返事をしろ。よし、みんな無事のようだ。

 

「いつまで埋まってるんですか山田先生」

「穴があったら入りたいです」

 

 もう入ってます。というか第2の犬神家してます。

 

「・・・。えー、ではさっそく模擬戦を始める」

 

 スルーした! なんかなかったことにした! なんて担任だ!

 

「山田先生は戦えないようなので織斑、お前が相手をしろ」

「なんですと!?」

 

 おのれ山田謀ったな! オ・ノーレー!!

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 昼食。午前中の授業でぼこぼこにされた俺はぼろぼろのまま屋上にいた。いつもは他の生徒で賑わっていたりするのだが、今日は貸し切り状態である。やったね一夏くん! おいやめろ。

 

「あの、僕も同席してよかったのかな」

「いいのいいの。シャルルくーんは転校初日なんだから右も左もわからないだろ? それに俺は任せられたし」

「はい一夏、アンタの分」

「おーサンキュー。今日も酢豚か。妹の得意料理とはいえたまには別のを食べたい」

「妹?」

「いらないなら返しなさいよ。妹ってのはこいつが勝手に言ってるだけだから気にしないで」

「貰ったもんは返さない主義なのだ。未来の妹候補、それが鈴ちゃん」

 

 ちなみに妹候補は三人いる。今日はえある三人目となったラウラちゃんも食事に誘ったのだが「寄るな」と一蹴された。しどい。

 

「わたくしもお弁当を「また今度貰うわ」一夏さん!?」

 

 ああ、ごめんごめん。セシリアさんががんばってるの一夏さん知ってるからね。美味しくいただくよ。ちょっちからかっただけじゃないか涙目になるとか可愛いなあ。セシリアさんのドキドキ☆お料理教室は確実に彼女の料理スキルを上げている。いい傾向だ。アイリス先輩? 言わせんな冷や汗が出るわ。

 

「い、一夏。私も今日は弁当を持参してきたのだが「もちろん頂くに決まってるだろ常考」そ、そうか」

 

 箒さんの手作り弁当なら金出しても食うね。

 

「お、織斑くんってモテるんだね・・・」

「ははは、これが人徳ってやつですよ。あと俺のことは一夏でいいぜシャルルくん」

「なら僕も呼び捨てでいいよ、一夏」

「ん、了解。箒さんのから揚げうめ、うめ。また一段と腕上げたな。あ、シャルルも一口どうよ」

「え、じゃ、じゃあいただこうかな」

「ほいさー」

「ん・・・。あ、ほんとだ美味しいね」

「だろー? 箒さんはマジいい奥さんになれるぜ」

「お、おくさ!?」

 

 おや、箒さんがオーバーヒートした模様。何かいい事でもあったのかい?

 

「・・・面白くありませんわ」

「・・・ロリコンで変態だと思ってたらホモで変態だったのね。どうりで女子の告白も断るわけだわ」

 

 誰がホモやねん。俺はノンケだっつってんでしょうが。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

「んじゃま、改めてよろーシャルル」

「うん。よろしくね一夏」

 

 夜。夕飯を終えて俺とシャルルは部屋でのんびりとしていた。あー、お茶がうまい。男子の部屋も本来二人部屋なのでシャルルがいるとちょうどいい感じだ。うん、やっぱり一人には広すぎた。

 

「紅茶とは随分違うんだね。不思議な感じ。でも美味しいよ」

「それは重畳。気に入っていただけたようで何よりです、王子様」

「あはは、王子様はやめてよ」

「ならフロイライン(お嬢様)だな。男に対して言うのもあれだけど」

「・・・そうだね」

 

 おや、どうやら機嫌を損ねたらしい。男の娘は女の子扱いされると不機嫌になる子が多いと聞くしな。ここは一つ別の話題でも出すか。

 

「日本茶が気に入ったんなら今度抹茶でも飲みに行こうぜ。俺、いい店知ってるから」

「抹茶って畳の上で飲むやつだよね。着物を着て「結構なお手前で」って言うらしいけど」

「本格的なのはさすがに俺も経験ないなー。そうじゃなくてカフェとかで飲める簡単なやつな。苦味抑え目」

「そうなんだ。じゃあ今度誘ってよ。一度飲んでみたかったんだ」

「おう。ついでに色々見て回ろうぜ。せっかく日本に来たんだしな。今度の日曜にでも出かけるか」

「本当? 嬉しいな。友だちと一緒に遊ぶのって初めてだから」

「ハハハ、またまたー。ご冗談を」

 

 社交スキルがカンストしてそうなシャルルさんがぼっちなうとかそんなわけないやろー。ないよな?

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

【6月◆日/晴れ】

 

 すっかり忘れていたが、今月末のタッグトーナメントに向けてタッグパートナーの申し込みをしないといけない。

 候補はモッピー、セッシー、鈴ちゃん、のほほんさん、簪さん、シャルル。ラウラちゃんはたぶん無理なので除外するとして。

 

 ちなみにいま現在有力候補として上がっているのはシャルル。世界で二人目のISを使える男子だし、同じ部屋で寝起きとしている仲というものあるが、何よりシャルルと一緒にいると心が安らぐのだ。のほほんさんとはまた別の意味で癒し系というか。のほほんさんがマイナスイオン発生娘ならシャルルは包容力があるって感じだろうか。

 

 ラウラちゃんには何回もアタックしているのだが、中々心を開いてくれない。むしろ猫みたいに警戒心を剥き出しにしている。可愛いなあ。鈴ちゃんでもいじって遊ぶかな。背が似てるし。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

【6月◆日/晴れ】

 

 シャルル が 特訓に 加わったぞ !!

 

 男の娘参戦なんですか!? やったー!

 

 それにしても新コーチシャルルの説明は懇切丁寧でわかりやすい。素晴らしい。鈴コーチ、モッピーコーチ、セッシーコーチとは大違いである。ますますシャルルの株が上がったぜ。

 

 今日は銃の特製を理解しよう、ということでシャルルの専用機『ラファール・リヴァイヴ・カスタムセカンド』に搭載されている武器をいくつか試射させてもらった。使用するのはもちろん模擬弾だが、それでも十分『速い』というのは理解できた。あと反動すげえ。

 

 みんなこんなのを戦闘中にばかすか撃ってるのか。しかも高速機動も合わせてである。すげえなあ。俺みたいに刀持って振るうだけでも四苦八苦してるようなやつには銃なんて到底無理だわ。ISのハイパーセンサーと連動させて照準補正もできないとか俺に特攻しろといってるようなものだし。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

【6月◆日/曇り】

 

「ラウラちゃん、昼食いこうぜ」

「断る。貴様と一緒にいく理由がない」

「織斑先生と会えるかもしれないぜ」

「・・・いく」

 

 ちょれえ。

 

「ラウラちゃんはなにがお好みなんだ?」

「基本的にはドイツ料理だ。しかし最近は日本食にも興味がある」

「そうなのかー。俺はラーメンライスセットにしよう。デザート欲しいなら奢るよ?」

「プリン」

「あいさー」

 

 プリン人気だな。さすがみんなのアイドルプリンである。わかっているとは思うがポケットなモンスターの方ではなく食べるほうである。

 

「って、なぜ貴様と一緒のテーブルで会話しながら昼食を取っているのだ私は!」

「説明乙」

「別のテーブルにいく」

「残念ながらもう埋まっていますよフロイライン(小さなお姫様)。もうちょっと楽しもうぜ」

「・・・貴様と話す舌など持たない」

「なら俺が一方的に話すだけさー」

 

 鈴ちゃんも誘えばよかったかな。あ、でも一触即発になりそうだな。やめておこう。

 

「ところでラウラちゃん。ずっと気になってたんだけどさ、俺を認めないってどういう意味よ」

「・・・」

「答えてくれたら俺のプリンもつけよう」

「・・・貴様がいなければ、教官は世界大会二連覇という偉業を成しえていただろう。いまだ誰も成し遂げていないその偉業をな」

 

 IS世界大会『モンド・グロッソ』。ISを競技としての枠組みに入れるためだけに行われる世界最高のIS操縦者を決める大規模な大会。姉さんは第一回大会の覇者であり、第二回でも優勝候補筆頭として名を挙げられていただけに、決勝戦棄権による不戦敗というのは当時大きな騒動を呼んだ。

 

 そして、姉さんが決勝戦を投げ捨てざるを得なかった理由。それが俺、織斑一夏の誘拐である。犯人グループの直接の目的は不明だが、少なくとも姉さんを優勝の舞台に上げさせたくない誰かが仕組んだことなのだろう。事実、姉さんは決勝戦を投げ捨てて俺を助けに来たのだから。恐らくは犯人の思惑通りに。

 

 ちなみに俺の居場所を真っ先に特定したのはドイツらしい。そのこともあって、姉さんは一時期ドイツに渡っていた事がある。

 

「姉さんのことを尊敬してるっぽいラウラちゃんにとってみれば、それは確かに許せないことだろう。自分が目標とする人の経歴に傷をつけたんだから。でも逆に考えてみないか? その事があったからこそ、君は姉さんと出会えた。初日から俺を引っ叩くほど姉さんのことが好きなら、救われたんでしょ? いくらかは」

「・・・」

 

 ラウラちゃんは答えない。ただ黙って箸を口に運ぶだけだ。箸の使い方うまいな。ドイツ人すげえ。

 

「今月の末、タッグトーナメントが開催される。君が望むならそこで決着をつけよう。異論は?」

「むしろ好都合」

「OK。今日から俺たちは敵同士だ。せいぜい全力で戦おうぜ」

「うむ。ところで約束のプリンを渡してもらおう」

「え」

「寄越せ」

「・・・容赦ないなあ」

「敵に情けはやらん」

 

 幸せそうにプリンを食べるラウラちゃんマジ天使。

 

 

 

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